くは)” の例文
くはかついで遺跡ゐせきさぐりにあるき、貝塚かひづかどろだらけにつてり、その掘出ほりだしたる土器どき破片はへん背負せおひ、うしていへかへつて井戸端ゐどばたあらふ。
さうなると、もう悪魔の宝なんかはどうでもよく、元の人間の姿になつたのがうれしくて、くはや帽子も打捨てゝ帰りかけました。
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
ふり𢌞まはくはをよけながら、いや、おばあさんばかりぢやありません、みなつてるよ、とつてもつてるから承知しようちをしない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかかれ重量ぢうりやうある唐鍬たうぐはかざして一くはごとにぶつりとつちをとつてはうしろへそつとげつゝすゝむ。かれその開墾かいこん仕事しごと上手じやうずきである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金のかめを盜み出しに來て、床下から幾つかの瓶を見付け、裏切の香之助の口をふさぐつもりで、くはで毆つて逃げ出したに違ひないといふんです
それから二三日たつた後、三男はふきの多い築山の陰に、土を掘つてゐる兄を発見した。次男は息を切らせながら、不自由さうにくはふるつてゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ある日、また一場の話がつたはつた。それは町の外れに住んでゐるすきかまくはなどをつくる鍛冶屋の店での出来事であつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
次の日から、森はその人たちのきちがひのやうになつて、働らいてゐるのを見ました。男はみんなくはをピカリピカリさせて、野原の草を起しました。
狼森と笊森、盗森 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
みつはと振り返へると、横のこみちからくはかついで來た百姓に小腰をかゞめつゝ、物をいてゐたが、やがて嬉しさうな顏をして小走りに小池に追ひ付き
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
人々は土をつかんで、穴をめがけて投入れる。叔父も丑松も一塊ひとかたまりづゝ投入れた。最後にくはで掻落した時は、崖崩れのやうな音して烈しく棺の蓋を打つ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
くはをかついで来た勘又さんが、掘りはじめた。みんなはその周囲まはりに立つて見てゐた。良寛さんも見てゐた。まるで他人ひとのことのやうに平気で見てゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
そこで仙蔵と、次郎作は、かまくはとをもたされて、おぢいさんの巨人の鼻の中へ入ることにされました。そのとき、仙蔵は次郎作にむかつて申しました。——
漁師の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
なんでも井戸浚さらへの時かで、庭先へ忙しく通りかゝつた父が、私の持出してゐたくはつまづき、「あツ痛い、うぬ黒坊主め!」と拳骨を振り上げた。私はかつとした。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
男は『それ豚の子が産れた。』と飛びあがつて喜び、手にもつてゐたくはを投りなげてかけつけました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
その古錢こせん小刀こがたなかたちをした刀錢とうせんくはかたちをした布泉ふぜんといふものでありまして、それがしゆうをはごろ出來できぜにであるといふので、年代ねんだいたしかにきめられるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
この分では天下の田はこと/″\く墓となりさうであるが、いづれも無名卑民の墓であるから十年二十年ののちには大抵畑主はたぬしくはに掛けて崩して仕舞しまつて格別苦情も出ないのだと云ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そして、私の家に出入りしてゐた和助といふ老人夫婦が、自ら望んでそこの留守番になつた。くは肥桶こえをけや僅かな農具をたづさへて渡つて、島のはたけを耕すのだと云つてゐた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
運動をして飮めば惡醉をせぬといふ信念のもとに、飮まうと思ふ日には自らくはを振り肥料を擔いで半日以上の大勞働に從事する創作社々友がいま私の近くに住んでゐる。
樹木とその葉:07 野蒜の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「オイ、自暴やけに寒いと思つたら其筈だ。雪だぜ。」と一人のくはの様なものを担いだ男が云つた。「此土地に歳暮くれの中に雪が降るなんて、陽気の奴、気が違ひやがつたな。」
また或る者はくはの刃を時々キラキラと太陽の光に照返へらせながら去年のうね犂返すきかへしてゐた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
男ども苅り置きたるまぐさを出すとて三ツ歯のくはにて掻きまはせしに、大なる蛇を見出したり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
夕方になつてから、津島は大工が張つて行つた、湯殿の板敷をくはたゝきこはしてゐた。
風呂桶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
此のとこの上にきら々しき物あり。人々恐る恐るいきて見るに、二〇二狛錦こまにしき二〇三くれあや二〇四倭文しづり二〇五かとりたて二〇六ほこ二〇七ゆきくはたぐひ、此の失せつる二〇八神宝かんだからなりき。
斜なるはたの上にてはたらける浦上人うらかみびと等のそのくはひかる
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
しぎ遠くくはすゝぐ水のうねりかな
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
つちを上げる手、くは打つ手
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「自慢ぢやねえが、薩張さつぱりわからねえ。——どうかしたら、箒だの鎌だのくはだのつて、お百姓の道具調べぢやありませんか」
赤鉢卷隊あかはちまきたい全力ぜんりよく山頂さんてうむかつてそゝぎ、山全體やまぜんたいとりくづすといふいきほひでつてうちに、くはさきにガチリとおとしてなにあたつた。
柄の長いくはをかついで、黒い着物をきて、大きな帽子をかぶつてる百姓らしい男が、すぐうしろについてきてるんです。
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
ひろくもないはたけのこらずが一くはれるのでおの/\たがひ邪魔じやまりつゝ人數にんずなかば始終しじうくはつゑいてはつてとほくへくばりつゝわらひさゞめく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
清作はびつくりして顔いろを変へ、くはをなげすてて、足音をたてないやうに、そつとそつちへ走つて行きました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
塾のおとさんが時々見廻りに来て呉れるのに任せである。自分のくはは入口の庭の隅に立て掛けたまゝだ。畠も荒れた。しかし私は今、それをかへりみいとまが無い。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
良寛さんは畑へはいつていつて、そこにあつたくはをとつて、よく肥えてゐるところを少しりとつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
彼は落胆がつかりして吐息をついた。持つてゐたくはが彼の手から滑り落ちて、力なく地べたに倒れた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
彼女と日の出と共に畠に出、日の入りには、くはや土瓶を持つて並んで家に帰るであらうこと。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
へゞれけに醉拂よつぱらつて、向顱卷むかうはちまきで、くはけたやつを、夜警やけいものに突張つツぱりながら
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悪魔は、早速、すきくはを借りて来て、路ばたの畠を、根気よく、耕しはじめた。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「しかし、自分ですきくはを持つて働くつもりなら何かやれんことはないさ。」
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
自分が始めてこの根本家を尋ねた時、妻君がしきりに、すきくは等を洗つて居た田池たねけ——其周囲には河骨かうほね撫子なでしこなどが美しくそのしをらしい影をひたして居たわづか三尺四方に過ぎぬ田池の有つた事を。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
そして軽い気持で、昨日から運びこんだまゝになつてゐる植木を植ゑるために、くはとシャベルを裏の物置から引張りだして来た。木でも植ゑたらすさんだ庭が、少しは生気づくだらうと思はれた。
花が咲く (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
またおなじようないしつくつた品物しなものくはかたちをしたものや、腕輪うでわかたちをしたものなどがますが、このなかにははたしてなに使つかはれたものか、よくわからないものもおほくあるのです。(第七十三圖だいしちじゆうさんず
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
くはふり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
潜戸を入つて二三十歩行くと、新に芝地を掘り返した畑で、くはの跡も生々なま/\しいところへ、白いものが一つ落ちて居ります。
すると、かちとくはにあたつたものがあります。それに力を得て掘つてみると、小さな木の箱が出て来ました。
悪魔の宝 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
おつぎは勘次かんじあといてはたけ往來わうらいする途上とじやうこん仕事衣しごとぎかためたむら青年せいねんときには有繋さすがこゝろかされた。かたにしたくはへおつぎは兩手りやうてけてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
くはを担いで行くものもあり、俵を背負つて行くものもあり、中には乳呑児ちのみご抱擁だきかゝへ乍ら足早に家路をさして急ぐのもあつた。秋の一日ひとひの烈しい労働はやうやく終を告げたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで清作も、くはをもたないで手がひまなので、ぶらぶら振つてついて行きました。
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その辺に捨置いてあるくはの柄のやうなものにまで真白に霜がおき、そして松のチカ/\ととがつた針のやうな葉の一本々々にも白銀の粉でもふりかけたやうに美しく霜が光るのである。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
くはすきを洗ふ為めに一間四方ばかり水溜が穿うがたれてあるが、これはこの地方に特有で、この地方ではこれを田池たねけとなへて、その深さは殆ど人の肩を没するばかり、こひふなの魚類をも其中に養つて
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
土臺下は少し掘り散らされて、血の附いたくはが抛り出してあります。多分この前香之助をつた鍬と同じものでせう。