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緩
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ゆる
ふりがな文庫
“
緩
(
ゆる
)” の例文
尤も八五郎は決して手を
緩
(
ゆる
)
めたわけではなく、追分の梅吉のところを足場にして、淺嘉町のあたりを、せつせと嗅いであるきました。
銭形平次捕物控:285 隠れん坊
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
十一丁目までの間は、壁にのぼるような
急勾配
(
きゅうこうばい
)
。それから道は
緩
(
ゆる
)
やかになって、そこで駕籠屋たちも無駄話をする余裕が出来ました。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すると、病人は手を合わして、三郎次の方を拝むように見えましたが、それで安心して気が
緩
(
ゆる
)
んだと見え、そのまま息が絶えました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
細川家のものが声を掛けて、歩度を
緩
(
ゆる
)
めさせようとしたが、浅野家のものは耳にも掛けない。とうとう細川家のものも駆足になった。
堺事件
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼はこう注意して、じかに局部を
抑
(
おさ
)
えつけている個所を少し
緩
(
ゆる
)
めて見たら、血が
煮染
(
にじ
)
み出したという話を用心のためにして
聴
(
き
)
かせた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
奔馬
(
ほんば
)
は
中
(
ちゅう
)
を
駈
(
か
)
けて、見る見る腕車を乗っ越したり。御者はやがて馬の
足掻
(
あが
)
きを
緩
(
ゆる
)
め、渠に先を越させぬまでに徐々として進行しつ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の歩調も
緩
(
ゆる
)
んだ。
丁度
(
ちょうど
)
二人が目的の部屋の前に来たからである。黒い
漆
(
うるし
)
をぬった札の表には、
白墨
(
はくぼく
)
で「病理室」と書いてあった。
蠅
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「ここから上流の方は水勢がよほど
緩
(
ゆる
)
いんです。河底の
勾配
(
こうばい
)
にも因りましょうが、もう一つには天然の
堰
(
せき
)
が出来ているからです。」
麻畑の一夜
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
果してその翌日位からのあの無口だ。どう手を替へて見てもそれが
緩
(
ゆる
)
まない。わたしは海水浴にも婆やを附けて行かせる事にしてゐる。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
……も、もすこし手を
緩
(
ゆる
)
めておくんなさい。あの時
懲
(
こ
)
らされた目は今でも忘れちゃおりません。旦那の腕には、充分と、
懲
(
こ
)
りております
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
更にその
末
(
すえ
)
が裾野となって、
緩
(
ゆる
)
やかな傾斜で海岸に延びており、そこに
千々岩
(
ちぢわ
)
灘とは反対の側の
有明
(
ありあけ
)
海が
紺碧
(
こんぺき
)
の色をたたえて展開する。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
容易に夫人の警戒が
緩
(
ゆる
)
みそうもないのを
看
(
み
)
て取ると、河内介は懐から小さな錦の袋を取り出して、それを二三度押し
戴
(
いたゞ
)
きながら云った。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼は
殆
(
ほとん
)
ど我家に帰り
来
(
きた
)
れると見ゆる態度にて、
傱々
(
つかつか
)
と寄りて戸を
啓
(
あ
)
けんとしたれど、啓かざりければ、かの
雍
(
しとやか
)
に
緩
(
ゆる
)
しと謂ふ声して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
径
(
みち
)
は
一縷
(
いちる
)
、危い崖の上を
繞
(
めぐ
)
って深い谿を
瞰下
(
みおろ
)
しながら行くのである。ちょっとの注意も
緩
(
ゆる
)
められない径だ、谿の中には一木も一草もない。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
列車の速力がダンダン
緩
(
ゆる
)
くなって来て、蒼白いのや黄色いのや、色々の光線が窓
硝子
(
ガラス
)
を
匐
(
は
)
い
辷
(
すべ
)
った。やがて窓の外を大きな声が
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
戸棚を開き
菅秀才
(
かんしゅうさい
)
の顔を見て、始めて気の
緩
(
ゆる
)
みし心にて、後へべたりと尻餅をつき、手を合せ拝み、また正面を向きて上を見上げて拝む。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
狐を追つてゐる中に、何時か彼等は、曠野が
緩
(
ゆる
)
い斜面を作つて、水の涸れた川床と一つになる、その丁度上の所へ、出てゐたからである。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
さらにその
特点
(
とくてん
)
をいえば、大都会の生活の
名残
(
なごり
)
と田舎の生活の
余波
(
よは
)
とがここで落ちあって、
緩
(
ゆる
)
やかにうずを巻いているようにも思われる。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
お前様ア先い出るとき
緩
(
ゆる
)
りと食べろとって会釈して、お前様ア忘れもしねえ、なんとお
武士様
(
さむらいさま
)
でも身柄のある人ア違ったもんだ
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
捕り方の方では、その響きを聞いて、ほっと気が
緩
(
ゆる
)
んだであろうが、そうした気持を、よく見抜いている闇太郎は、あべこべに
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
こゝにても次の圓よりいと急に垂るゝ岸、かゝる
手段
(
てだて
)
によりて
緩
(
ゆる
)
まりぬ、されど右にも左にも身は高き石に觸る 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
透谷の『
蓬莱曲
(
ほうらいきょく
)
』が出た。鶴見の回想は今この本のイメエジをめぐって渦動をはじめるかに見える
緩
(
ゆる
)
やかな曲線をえがいている。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
午餐
(
ひる
)
に
勘次
(
かんじ
)
が
戻
(
もど
)
つて、
復
(
また
)
口中
(
こうちう
)
の
粗剛
(
こは
)
い
飯粒
(
めしつぶ
)
を
噛
(
か
)
みながら
走
(
はし
)
つた
後
(
あと
)
へ
與吉
(
よきち
)
は
鼻緒
(
はなを
)
の
緩
(
ゆる
)
んだ
下駄
(
げた
)
をから/\と
引
(
ひ
)
きずつて
學校
(
がくかう
)
から
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
昨夜歩きながら道の行手に黒い山がしだいに迫ってくるように見えたのは、いま見ると、村が
緩
(
ゆる
)
く上りになって、山に続いているのだった。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
「仕事の手を
緩
(
ゆる
)
めて怠ける算段
計
(
ばか
)
り
為
(
し
)
てけツかる、
互
(
たげえ
)
に話ヨ為て、ズラかる相談でも為て見ろ、明日ア天日が拝め無えと思え」
監獄部屋
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
五分經つ……十分經つ……そして少年は緊張した心持から覺め何物をも發見しなかつたといふ安心から、多少氣が
緩
(
ゆる
)
んだやうに歎息をした。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
山田と伊沢は四時
比
(
ごろ
)
になって寺を出た。
晩春
(
はるさき
)
の空気が
緩
(
ゆる
)
んで
靄
(
もや
)
のような雨雲が、寺の
門口
(
かどぐち
)
にある新緑の
梢
(
こずえ
)
に垂れさがっていた。
雨夜続志
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それと同時に、彼女もあたかも初めて現われてきたときのように、気の進まないような
緩
(
ゆる
)
い歩調で、出てきたのである。コスモはふるえた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
但
(
ただし
)
世人は
緩
(
ゆる
)
く歌ふを指して歌ふといひ、詩想複雑にして音調また変化するを指して思を主とすといふにやあらん。(五月三日)
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
先着の三人の紳士淑女が、まず
其
(
その
)
舟に乗込むと、少女の櫂が静かに水を
掻分
(
かきわ
)
けて、ゴンドラは細い淵を、
緩
(
ゆる
)
やかに
辷
(
すべ
)
り始めた。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
伝吉
(
でんきち
)
が
駕籠
(
かご
)
の
中
(
なか
)
で
鼻
(
はな
)
の
頭
(
あたま
)
を
引
(
ひ
)
ッこすってのひとり
啖呵
(
たんか
)
も、
駕籠屋
(
かごや
)
には
少
(
すこ
)
しの
効
(
き
)
き
目
(
め
)
もないらしく、
駕籠
(
かご
)
の
歩
(
あゆ
)
みは、
依然
(
いぜん
)
として
緩
(
ゆる
)
やかだった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「それは末の問題だ。少くとも直接の問題ではない。……で、話を進めよう。
梟帥
(
たける
)
、お前はどうあっても、妨害の手を
緩
(
ゆる
)
めないつもりか?」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女兒
(
むすめ
)
が
優
(
やさ
)
しき介抱に
心
(
こゝろ
)
緩
(
ゆる
)
みし武左衞門
枕
(
まくら
)
に
着
(
つき
)
てすや/\と眠りし容子にお光は
長息
(
といき
)
夜具打掛て
密
(
そつ
)
と
退
(
のき
)
側
(
かたへ
)
に在し硯箱を出して墨を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
けたたましい動物の
叫
(
さけ
)
びと共に
眼
(
め
)
を
瞋
(
いか
)
らして
跳
(
と
)
び
込
(
こ
)
んで来た青年と、
圜冠句履
(
えんかんこうり
)
緩
(
ゆる
)
く
玦
(
けつ
)
を帯びて
几
(
き
)
に
凭
(
よ
)
った温顔の孔子との間に、問答が始まる。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「だが僕は、毎日々々セッ付かれて困ってたんだから、地震のお
庇
(
かげ
)
で催促の手が少しは
緩
(
ゆる
)
むだろうと地震に感謝している、」
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
吸筒
(
すいづつ
)
が倒れる、中から水——といえば其時の命、命の綱、いやさ
死期
(
しご
)
を
緩
(
ゆる
)
べて呉れていようというソノ霊薬が
滾々
(
ごぼごぼ
)
と流出る。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
妙念 (
怪体
(
けたい
)
なる微笑を浮べつつ声調きわめて
緩
(
ゆる
)
やかに)だんだん赤くなって来た。依志子、もう一度眼をあけて見ないか。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
軒の
風鈴
(
ふうりん
)
をさえ定かには鳴らし得ぬ
微風
(
そよかぜ
)
——河に近い下町の人家の屋根を越して唯
緩
(
ゆる
)
く大きく流動している夜気のそよぎは
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
一體
(
いつたい
)
家屋
(
かおく
)
が
新
(
あたら
)
しい
間
(
あひだ
)
は
柱
(
はしら
)
と
横木
(
よこぎ
)
との
間
(
あひだ
)
を
締
(
し
)
めつけてゐる
楔
(
くさび
)
が
能
(
よ
)
く
利
(
き
)
いてゐるけれども、それが
段々
(
だん/″\
)
古
(
ふる
)
くなつて
來
(
く
)
ると、
次第
(
しだい
)
に
緩
(
ゆる
)
みが
出
(
で
)
て
來
(
く
)
る。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
結局藝術とか思想とか云つてゝも自分の生活なんて實に
慘
(
みじ
)
めで下らんもんだといふやうな氣がされて、彼は歩みを
緩
(
ゆる
)
めて
子をつれて
(旧字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
エクレシアにおける霊のつながりはできるだけ
鞏固
(
きょうこ
)
であり、制度的つながりはできるだけ
緩
(
ゆる
)
いことが、エクレシヤの本質に適うものと思います。
キリスト教入門
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
と、信吾は急に取濟した顏をして大胯に歩き出したが、加藤醫院の手前まで來ると、フト物忘れでもした樣に足を
緩
(
ゆる
)
めた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
やがて
緩
(
ゆる
)
い斜面に沿つてまつすぐにこつちへ延びているのだが、その男女の人影が彼の視線から
外
(
そ
)
れると、彼は、もうそのことは忘れたように
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
篩った粉を入れて
捏
(
こ
)
ねて固ければ牛乳で少し
緩
(
ゆる
)
めて小さくちぎって
掌
(
てのひら
)
でグルグルと細長くちょうど親指位の太さに
円
(
まる
)
めて
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
朝に成って
反
(
かえ
)
って気の
緩
(
ゆる
)
んだ岸本はいくらかでも寝て行こうとした。一眠りして眼を
覚
(
さま
)
すと、その度に彼は巴里が近くなって来たことを感じた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私は私の背後に太いロップや金具の
緩
(
ゆる
)
く緩くきしめく音を絶えず感じながら、その船首に近い右舷の
欄干
(
てすり
)
にゆったりと両の
腕
(
かいな
)
をもたせかけている。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
主墳
(
しゆふん
)
では
有
(
あ
)
るまいが、
人氣
(
にんき
)
の
緩
(
ゆる
)
んで
居
(
ゐ
)
る
折柄
(
をりがら
)
とて、
學者
(
がくしや
)
も、
記者
(
きしや
)
も、
高等野次馬
(
かうとうやじうま
)
も、
警官
(
けいくわん
)
も、
悉
(
こと/″\
)
く
此所
(
こゝ
)
へ
集
(
あつ
)
まつて、
作業
(
さくげふ
)
の
邪魔
(
じやま
)
となる
事
(
こと
)
夥多
(
おびたゞ
)
しい。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
それをながめていると、顔面に漂うている表情から、陶酔にやや心を
緩
(
ゆる
)
うしているらしい曇りのない快活な情緒が、しみじみ胸にしみ込んで来る。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
だが、にんじんは、早くなる足並みを、やっとのことで
緩
(
ゆる
)
めているのである。足の中を
蟻
(
あり
)
が
這
(
は
)
っているような気持だ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
俳優らの声はこの上もなく豊量で
緩
(
ゆる
)
やかで荘重で厳格だった。あたかも言葉づかいの
稽古
(
けいこ
)
をでも授けるかのように、あらゆる
綴
(
つづ
)
りを皆発音していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
緩
常用漢字
中学
部首:⽷
15画
“緩”を含む語句
緩々
御緩
緩慢
弛緩
緩漫
遅緩
緩急
手緩
緩和
間緩
緩怠
緩徐調
緩頬
緩然
緩舒
怠緩
緩下剤
緩傾斜
遲緩
緩流
...