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ほと
ふりがな文庫
“
殆
(
ほと
)” の例文
しかし『赤い鳥』ではそれが
殆
(
ほと
)
んど全部変名になっていて、随分意外な方が、意外な題目で書いておられるのもちょっと面白かった。
「茶碗の湯」のことなど
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そういう墓石のあったことさえ、いままで私は
殆
(
ほと
)
んど気づかなかった。気づくことはあっても、それを気にしないで見すごしていた。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
これからは
殆
(
ほと
)
んど人の歩るいた事のないような谷合を通り、
前黒山
(
まえぐろやま
)
、
釈迦
(
しゃか
)
ヶ岳の山の中腹を迂回して深林の薄暗い中を
行
(
ゆ
)
くのである。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
春になり仕事が無くなると、カムサツカへ
出稼
(
でかせ
)
ぎに出た。どっちの仕事も「季節労働」なので、(北海道の仕事は
殆
(
ほと
)
んどそれだった)
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして、終戦後、めっきり増えて来た、ちんぴらの不良少女や、若い露天商の女の
粗末
(
そまつ
)
な刺青なぞは
殆
(
ほと
)
んど眼にも
留
(
と
)
めて来なかった。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
▼ もっと見る
戸が何んの抵抗もなく開いて、八五郎が突つ轉んだのは、まさに、正面佛壇の下に横たへた、
殆
(
ほと
)
んど半
裸體
(
らたい
)
の死骸の上だつたのです。
銭形平次捕物控:300 系図の刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
良心と云う奴は、今では
殆
(
ほと
)
んど先天的の不可抗力を以て、人間の胸に喰い込んで居るから、その桎梏を破壊する事は、到底出来ない。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この山の上に住むものは、十一月から翌年の三月まで、
殆
(
ほと
)
んど五ヶ月の冬を過さねば成らぬ。その長い
冬籠
(
ふゆごも
)
りの用意をせねば成らぬ。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
或時はこんな光景が
殆
(
ほと
)
んど毎日のように三人の間に起った。或時は単にこれだけの問答では済まなかった。ことに御常は
執濃
(
しつこ
)
かった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こないだ、盗賊の害を、未然に防いでくれたというので、土部家の歓待は、前にもまして、今は
殆
(
ほと
)
んど、内輪の者も同然の心易さだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
薯蕷
(
じねんじやう
)
掘
(
ほ
)
る
九州
(
きうしゆう
)
の
山奥
(
やまおく
)
に
到
(
いた
)
るまで
石版画
(
せきばんゑ
)
と
赤本
(
あかほん
)
は
見
(
み
)
ざるの
地
(
ち
)
なしと
鼻
(
はな
)
うごめかして
文学
(
ぶんがく
)
の
功徳
(
くどく
)
無量広大
(
むりやうくわうだい
)
なるを
説
(
と
)
く
当世男
(
たうせいをとこ
)
殆
(
ほと
)
んど
門並
(
かどなみ
)
なり。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
呼吸を
矯
(
た
)
めていた、兵さんは、ウンと
唸
(
うな
)
りながら、
殆
(
ほと
)
んど
奇蹟
(
きせき
)
的な力で腰をきった。が、石は肩に乗り切らないで
背後
(
うしろ
)
に、
辷
(
すべ
)
った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
それの外形や、間どりや、窓などの部分の意匠のデテイルなどが、
殆
(
ほと
)
んど毎夜のやうに、彼のノオトブックの上へ縦横に描き出された。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
セザンヌやゴーグの感染時代には、素描の確実な画家や
林檎
(
りんご
)
を林檎と見せる画家は、
殆
(
ほと
)
んどこの世から一時姿を消さねばならなかった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
殆
(
ほと
)
んど
立続
(
たてつづ
)
けに
口小言
(
くちこごと
)
をいいながら、
胡坐
(
あぐら
)
の
上
(
うえ
)
にかけた
古
(
ふる
)
い
浅黄
(
あさぎ
)
のきれをはずすと、
火口箱
(
ほぐちばこ
)
を
引
(
ひ
)
き
寄
(
よ
)
せて、
鉄
(
てつ
)
の
長煙管
(
ながきせる
)
をぐつと
銜
(
くわ
)
えた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
答
(
こたへ
)
それは東洋種と西洋種とに分けられるかも知れない。けれども多少の西洋種を
交
(
まじ
)
へて居ないものは
殆
(
ほと
)
んどないと云つてもいいだらう。
東西問答
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして
此等
(
これら
)
の
損失
(
そんしつ
)
の
殆
(
ほと
)
んど
全部
(
ぜんぶ
)
は
地震後
(
ぢしんご
)
の
火災
(
かさい
)
に
由
(
よ
)
るものであつて、
被害民
(
ひがいみん
)
の
努力
(
どりよく
)
次第
(
しだい
)
によつては
大部分
(
だいぶぶん
)
免
(
まぬか
)
れ
得
(
う
)
られるべき
損失
(
そんしつ
)
であつた。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
近衛師団のわれらに対する待遇が初めに冷淡なりしは真に一、二の人の不心得より出でたるものにして
殆
(
ほと
)
んど偶然の結果ともいふべきか。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
当時
(
とうじ
)
の
私
(
わたくし
)
に
取
(
と
)
りましては、
死
(
し
)
んだ
良人
(
おっと
)
に
逢
(
あ
)
うのがこの
世
(
よ
)
に
於
(
お
)
ける、
殆
(
ほと
)
んど
唯一
(
ゆいいつ
)
の
慰安
(
いあん
)
、
殆
(
ほと
)
んど
唯一
(
ゆいいつ
)
の
希望
(
きぼう
)
だったのでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
もちろん文句は同じもので、先生は
殆
(
ほと
)
んど息をころしている。するとかれらの中から、船宿「千本」の
長
(
ちょう
)
の呼びかける声がする。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼らはかくの如く辛苦して達せり、
殆
(
ほと
)
んど生命を賭して達せり、
而
(
しこう
)
して
已
(
すで
)
に艦に上れり、
然
(
しか
)
れどもその志を達する
能
(
あた
)
わざるなり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
汽車は西へ西へと走って、日の
夕暮
(
ゆうぐれ
)
に
十勝
(
とかち
)
国境
(
こっきょう
)
の
白茅
(
はくぼう
)
の山を
石狩
(
いしかり
)
の方へと
上
(
のぼ
)
った。此処の
眺望
(
ながめ
)
は全国の線路に
殆
(
ほと
)
んど無比である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
これ実に
愕心
(
がくしん
)
瞠目
(
だうもく
)
すべき大変転也。歴史の女神は
嘗
(
かつ
)
て常に欧洲の天を往来して、
未
(
いま
)
だ
殆
(
ほと
)
んど東洋の地に人間あるを知らざりき。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
街道には一人の通行人も無かったし、これから川崎までは、
殆
(
ほと
)
んど人家の無い道であった。川崎は、未だ深い眠りの中にいるうちに通った。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その
殆
(
ほと
)
んどが強制移民であればなおのこと——あなた方はちがいますよ、先ずサッポロを中心に、兵農兼備の
屯田兵
(
とんでんへい
)
を養わねばなりません
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
殆
(
ほと
)
んど背負い切れないほどの負債を
荷
(
にな
)
いながら、劇の向上進歩に専心努力した彼の功績は、明治の演劇史に特筆大書せらるべきものである。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
処
(
ところ
)
で、
一刻
(
いつこく
)
も
疾
(
はや
)
く
仕上
(
しあ
)
げにしやうと
思
(
おも
)
ふから、
飯
(
めし
)
も
手掴
(
てづか
)
みで、
水
(
みづ
)
で
嚥下
(
のみおろ
)
す
勢
(
いきほひ
)
、
目
(
め
)
を
据
(
す
)
えて
働
(
はたら
)
くので、
日
(
ひ
)
も
時間
(
じかん
)
も、
殆
(
ほと
)
んど
昼夜
(
ちうや
)
の
見境
(
みさかひ
)
はない。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
殊更
(
ことさら
)
に俳優をして観客の群集中に出没せしむるが如きは西洋近代の文学論を以てしては
殆
(
ほと
)
んど解釈すべからざるものたるべし。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
併し吉田は、温泉の町の遊廓へ、出張費を持って行くことが
殆
(
ほと
)
んどなかった。彼は出張費の大半で新しい本を買うことにしているのであった。
機関車
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
神様は深く人間をお愛しになつて、その心に十分の九まで自分の魂をお吹込みなさるつもりです。ですから
殆
(
ほと
)
んど神様と同じになるわけです。
悪魔の尾
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
ところが真空のなかではこの圧力が
殆
(
ほと
)
んど無くなってしまうのですから、それで水は低い温度で沸騰することになるのです。
ロバート・ボイル
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
これが須磨子を知っている人の
殆
(
ほと
)
んどが
抱
(
いだ
)
いた感じではなかったろうか、この偶然の言葉が須磨子の全生涯を批評しているようだといわれた。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
芭蕉は「漂泊の詩人」であったが、蕪村は「炉辺の詩人」であり、
殆
(
ほと
)
んど生涯を家に
籠
(
こも
)
って、炬燵に転寝をして暮していた。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼の国では国民の動員が
殆
(
ほと
)
んどその極限に達しているのに、日本では二十歳以下の青年は、まだ軍隊に召集されていない。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この
辺
(
へん
)
一帯を
蔽
(
おお
)
うている
涯
(
は
)
てしもない雑木林の間の空地に出てから間もない処に在る小川の
暗渠
(
あんきょ
)
の上で、
殆
(
ほと
)
んど
干上
(
ひあが
)
りかかった
鉄気水
(
かなけみず
)
の流れが
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
耕地整理
(
こうちせいり
)
になっているところがやっぱり
旱害
(
かんがい
)
で
稲
(
いね
)
は
殆
(
ほと
)
んど
仕付
(
しつ
)
からなかったらしく赤いみじかい
雑草
(
ざっそう
)
が
生
(
は
)
えておまけに一ぱいにひびわれていた。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
然
(
しか
)
し
其麽
(
そんな
)
ことは
勘次
(
かんじ
)
を
苦
(
くるし
)
めて
其
(
そ
)
のさもしい
心
(
こゝろ
)
の
或
(
ある
)
物
(
もの
)
を
挽囘
(
ばんくわい
)
させる
力
(
ちから
)
を
有
(
いう
)
して
居
(
ゐ
)
ないのみでなく、
殆
(
ほと
)
んど
何
(
なん
)
の
響
(
ひゞき
)
をも
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
に
傳
(
つた
)
ふるものではない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
次ぎに本篇二頁下段「余は幼なきころより厳重なる家庭の教へを受け云々」より以下六十余行は
殆
(
ほと
)
んど無用の文字なり。
舞姫
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
今余を以てこれを
観
(
み
)
るに、本邦政治の改良すべきもの、法律の前進すべきもの、一にして足らず、
殆
(
ほと
)
んど皆なこれを更始すべきが如し(大喝采)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
彼の駭きは、前よりも、もっと
烈
(
はげ
)
しかった。彼は、声こそ出さなかったが、
殆
(
ほと
)
んど叫び出しでもするような表情をした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ところで日本の古い話し本に、今云った事と
殆
(
ほと
)
んど同じ感情的経験を起させる小説の断片が、不思議にも残っている。
茶碗の中
(新字新仮名)
/
小泉八雲
(著)
彼は自分の最も働き盛りの
殆
(
ほと
)
んど
全
(
すべ
)
ての歳月と精力とをその子供等の教育費や、それから娘たちの嫁入りの
仕度
(
したく
)
の為めに費さなければならなかつた。
夢
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
けれども
僕
(
ぼく
)
の
故郷
(
くに
)
は
二萬石
(
にまんごく
)
の
大名
(
だいみやう
)
の
城下
(
じやうか
)
で、
縣下
(
けんか
)
では
殆
(
ほと
)
んど
言
(
い
)
ふに
足
(
た
)
らぬ
小
(
ちひさ
)
な
町
(
まち
)
、
殊
(
こと
)
に
海陸
(
かいりく
)
共
(
とも
)
に
交通
(
かうつう
)
の
便
(
べん
)
を
最
(
もつと
)
も
缺
(
かい
)
て
居
(
ゐ
)
ますから、
純然
(
じゆんぜん
)
たる
片田舍
(
かたゐなか
)
で
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
十月もなかばを過ると、落葉の早い
碧梧桐
(
あおぎり
)
、朴、桜などは
殆
(
ほと
)
んど
散
(
ちり
)
尽し、
外
(
ほか
)
の樹木も枝がうすくなって、透いて見える秋の空がくっきりと高かった。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
ソコでその私の
考
(
かんがえ
)
から
割出
(
わりだ
)
して、この徳川政府を見ると
殆
(
ほと
)
んど
取所
(
とりどころ
)
のない有様で、当時日本国中の
輿論
(
よろん
)
は
都
(
すべ
)
て攘夷で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
被害者が富豪の子息であり、支那の留学生というところから、事件は重大となったと見え、その日の夕刊の社会面は
殆
(
ほと
)
んどその記事で埋められていた。
広東葱
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
己
(
じぶん
)
の家へ
伴
(
つ
)
れて来て和歌を
詠
(
よ
)
みあって
懐
(
おもい
)
を述べ、それから
観眤
(
かんじ
)
を極めると云う
殆
(
ほと
)
んど
追字訳
(
ついじやく
)
のような処もあって、
原話
(
げんわ
)
からすこしも発達していないが
牡丹灯籠 牡丹灯記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
殆
(
ほと
)
んど、必然的に——倉さん等、先輩の言葉を信ずれば——心にもなき殺人を行わなければならなかったのだ……。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
そして翌日になってますますつかれ、
殆
(
ほと
)
んど息が絶えそうになった。王は
懼
(
おそ
)
れて、送って孝廉の許に帰した。孝廉はまたそれを舁がして喬の許へ帰した。
連城
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
不幸にしてわが国にこの種の人は
殆
(
ほと
)
んどない。富者は多けれども神を
畏
(
おそ
)
るるの信仰なきは
勿論
(
もちろん
)
、わが生みし子をすら治め得ざるもの
比々
(
ひひ
)
皆しかりである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
殆
漢検準1級
部首:⽍
9画
“殆”を含む語句
危殆
殆不可同日論
殆末期
殆為金馬門之想云
殆面