)” の例文
と、いうことは素気そっけないが、話を振切ふりきるつもりではなさそうで、肩をひとゆすりながら、くわを返してつちについてこっちの顔を見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
觀世縒くわんぜよりで卷いて、生澁きしぶを塗つてありますから、ひどく特色のあるものですが、不思議なことに、大して血が付いては居りません。
耕一はよろよろしながらしっかりをつかまえていましたらとうとう傘はがりがり風にこわされて開いたきのこのような形になりました。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
しな天秤てんびんおろした。おしなたけみじか天秤てんびんさきえだこしらへたちひさなかぎをぶらさげてそれで手桶てをけけてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかしながら殺人犯人の見当は中々はっきりついては来なかった。第一、証拠が全くのこされていない。短刀のにも指紋はない。
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
するとたちまち出遇つたのは兄の英吉でございます。兄は煤竹すすだけのついた置きランプを一台さげた儘、急ぎ足に其処そこを歩いて居りました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
突然庫裏くりの方から、声を震わせて梵妻だいこくが現われた。手にくわのような堅い棒を持ち、ふとった体を不恰好ぶかっこうに波うたせ、血相かえて来た。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
匕首あいくちをみずおちに当てて、力いっぱい、板壁をいてみた。だが、けやきかなんぞの厚板とみえて、刃物のさきがツウ! とすべった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲なる人に短刀のを一度握らせたばかりでも、その柄を嗅がせると同時に牛肉を与えて、所謂条件反射を起させると、一定の時日の後
新案探偵法 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
胡弓のはぽっきりと三つばかりに折れたかと思うと、物凄い夜嵐の音も、いかれる乞食の姿も美しいお祭の景色もべて消えてしまって
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
桑苗発送季の忙しくて人手が足りぬ時は、彼の兄なぞもマカウレーの英国史をほうり出して、の短い肥後鍬を不器用な手に握ったものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
太い指がガッシリと、鉄扇のを握っていた。指に生えている細い毛が、幽かに幽かに顫えていた。造酒は鉄扇の持ち主を見た。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当主の、福子の良人には父にあたるその人は、温厚おんこう一途いちずで、仕事の上のことでは、まだまだ隠居のの下にいた。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
坂になった馬籠の町は金のあおいの紋のついた挾箱はさみばこ、長い日傘ひがさ、鉄砲、箪笥たんす長持ながもち、その他の諸道具で時ならぬ光景を呈した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
南天や紅梅の如き庭木が目隠しの柴垣をうしろにして立っている有様、春のあしたには鶯がこの手水鉢ちょうずばちの水を飲みに柄杓のにとまる。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
和紙を用いた加工品としては、肥後ひご来民くたみ団扇うちわを挙げねばなりません。平竹ひらたけを用い、骨は上にやや開き、色は淡い渋色に染められます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
これに反して木製ので割り竹を無理にしめつけたのは、なんとなく手ごたえが片意地で、柄の付け根で首がちぎれやすい。
錯覚数題 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「この馬鹿めが」といって、鞭のの方でこつんと軽く松次郎の耳の上をたたいた。そしてまた馭者台に乗ると馬車を走らせていってしまった。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
へば、あたまから青痰あをたんきかけられても、かねさへにぎらせたら、ほく/\よろこんでるといふ徹底てつていした守錢奴しゆせんどぶりだ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
彼の目はすばやく兇器の上に走った、そして一瞬間、そのにくっついた、折れた骨片の上に釘づけにされたようであった。
お坊さんは、壇の上の独鈷とっこをとって押頂おしいただき、長い線香を一本たて、捻香ねんこうをねんじ、五種の抹香を長いのついた、真ちゅうの香炉こうろにくやらす。
老人は、押し入れの中に頭をつっこんでしばらく何かさがしましたが、やがて何枚もの白い紙と、のついた大きな眼鏡めがねを、取り出しました。
金の目銀の目 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
一體いつたいこれらの石斧せきふ使用しようするときはどうしたかといひますのに、いしのまゝにぎつて使つかつたものもありますが、けた場合ばあひもありまして
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ナイフの刃にはがついていて、その柄を歯でぐっとかみしめ、顔ぜんたいを上下に動かして、あさなわをこするのです。
仮面の恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やがて手桶の尻をどっさと泥の底にえてしまった。あやうく倒れるところを手桶のかかって向うを見ると、叔父さんは一間ばかり前にいた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白い頭を手拭てぬぐいに包んで、くわを杖に、ほころびかけた梅の花を仰いでいるお爺さんを想い描かずにはおられないのです。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ナイフは真珠貝しんじゅがいのついた綺麗きれいなものだったし、一ルーブリ銀貨ぎんかはのっぴきならぬようにいるのであった。で、先生せんせいのところへいいつけにった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
丸裸体まるはだかとなって新しいメリヤスの襯衣シャツに着かえ、軍隊手袋と靴下を穿うがってサテ藁切庖丁を取出してみると、新しいですこしグラつくようである。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と一杯すくい上げてこぼれない様に、たいらに柄杓のくわえて蔦蔓つたかづらすがり、松柏の根方を足掛りにして、揺れても澪れない様にして段々登って来る処を
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
中に厚紙の台に木のを附けて蝋燭を立てた手燭てしよくを売る老爺おやぢが一人まじつて居る。見物人は皆其れを争つて買ふのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
タオルには折ったあいだへ、石鹸や歯みがきは包み紙に、小刀ナイフにはへ飾り、靴下はなかへ落し、その他の小箱類には蓋の内側へ貼りつけたりして。
「そうかね。」と、長いの網をもった人がきらりと眼鏡めがねを光らせて、蟹の登っている枝のあたりを見上げました。
椰子蟹 (新字新仮名) / 宮原晃一郎(著)
言はざれば主税之助は彌々いよ/\怒り此奴こやつ勿々なか/\澁太しぶとき女なり此上は槍玉やりだまあげて呉んずと云ひつゝ三間の大身の槍を追取さや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが漸次しだいちかづくと、女の背におぶはれた三歳みっつばかりの小供が、竹のを付けた白張しらはりのぶら提灯ぢょうちんを持つてゐるのだ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
踏み出し足溜りをこしらへてはまた踏み固め二間餘のところ道をつけさて立戻り蝙蝠傘かふもりがさの先を女にしかと掴ませ危うくも渡り越して互にホト息して無事を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
現存石器時代人民中には、此の如き物にみぢかへて短刀たんとうの如くに用ゐ、或は長き柄を添へてやりとする者有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
上州じょうしゅう田舎いなかの話である。某日あるひの夕方、一人の農夫が畑から帰っていた。それはの長いくわを肩にして、雁首がんくび蛇腹じゃばらのように叩きつぶした煙管きせるをくわえていた。
棄轎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
うてなからちぎり取られた紅、紫、瑠璃色、白、絞り咲きなどの朝顔の花が、幾十となくを抜いた小傘のやうに、たつぷり張つた耳盥の水面に浮んでゐる。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
そしてのついた雨除け眼鏡を持ちなおして、しげしげと相手の顔を見入っていましたが、こんなせち辛い世のなかに、のん気にぶらんこをして遊ぶような
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
肉屋にくやはおこって、そこにあったほうきのをつかむと、いきなりお百姓ひゃくしょうさんをたたきだしてしまいました。
をつけると、ぶかっこうながら丈夫な、南九州の農家などでよくつかっている竹びしゃくが出来あがる。
白い道 (新字新仮名) / 徳永直(著)
高慢というのでもなく謙遜けんそんというのでもなく、きわめて自然に落ち着いてまっすぐに腰かけたまま、の長い白の琥珀こはくのパラソルの握りに手を乗せていながら
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
セルギウスは「只今」と声高く答へて、左の手の示指ひとさしゆびを薪割台の上に置いて、右の手に斧のを握つて、斧を高く振り上げて、示指の中のふしを狙つて打ち下した。
さて柴刈鎌しばかりがまの小長い奴を右手に持ったり左手に持ったりしながら、だんだんと川上へ登り詰めた。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほかに取りもなし、もう三十六にもなって、いまさら職業がえでもあるまいから、まあ、社で使ってくれている間は観念して、はたらいてゆくことにきめているが
或る探訪記者の話 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
そして町役場などがあり、その裏には貧しい漁夫や、貝を採るための長いの付いた竹籠たけかごを作る者や、その日によって雇われ先の変る、つまり舟をぐことも知らず
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一寸法師いっすんぼうしたいへんよろこんで、さっそくたび支度したくにかかりました。まずおかあさんにぬいばりを一ぽんいただいて、むぎわらでとさやをこしらえて、かたなにしてこしにさしました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
左の胸に突込つっこんだるナイフの木の現われおる。この男舞台の真中まんなかに立ち留まり主人に向いて語る。
こちらの武士は、耳を着けていたところより一尺ばかり下の透間へ手を当てると、その透間からスーッと抜き取ったのは、のない一挺のやすりのようなものであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私はとうとうのめりそうになって、強く突き立てた蝙蝠傘に思わず全身の重みを托したので、それが弓のようにたわむと、そのからボキリと折られてしまったものだ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)