東雲しのゝめ)” の例文
可笑をかしき可憐あはれなる事可怖おそろしき事種々しゆ/″\さま/″\ふでつくしがたし。やう/\東雲しのゝめころいたりて、水もおちたりとて諸人しよにん安堵あんどのおもひをなしぬ。
海戰かいせん午前ごぜん三十ぷんはじまつて、東雲しのゝめころまでをはらなかつた。此方こなた忠勇ちうゆう義烈ぎれつ日本軍艦につぽんぐんかんなり、てき世界せかいかくれなき印度洋インドやう大海賊だいかいぞく
はつとすると、構内こうないを、東雲しのゝめの一てんに、ゆきの——あとでつた——苅田嶽かつただけそびえたのがえて、あきらかつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬は耳へ水を入れられると死ぬ、お前は折を狙つて『東雲しのゝめ』の耳に水を入れ、馬のお上手でない相澤樣を落馬させて、御墨附の文箱を摺り換へるつもりだつたらう。
ぼく此小學校このせうがくかうはひわづ四年前よねんぜん此學校このがくかう創立さうりつされたので、それよりさら十年前じふねんぜんのこと、正月元日しやうぐわつぐわんじつあさでした、新年しんねん初光しよくわういままさ青海原あをうなばらはてより其第一線そのだいゝつせんげ、東雲しのゝめ横雲よこぐも黄金色こんじきそま
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まづ仄白ほのしろ東雲しのゝめ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
取り裏口うらぐちより忍びいでしは出たれどもいかに行ば街道がいだうならんと思ひながらも一生懸命しやうけんめいの場所なれば足に任せて走る程に何程なにほど來りしかは知らざるうち夏の夜の明安く東雲しのゝめ近く成しと覺えて行先に驛路の鈴の人足にんそくの聲など遙に聞えければ友次郎もお花もはじめて蘇生よみがへりたる心地して扨は街道に近く成しぞと猶も道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その翌日よくじつから、わたくしあさ東雲しのゝめ薄暗うすくら時分じぶんから、ゆふべ星影ほしかげうみつるころまで、眞黒まつくろになつて自動鐵檻車じどうてつおりのくるま製造せいぞう從事じゆうじした。
兩側りやうがは大藪おほやぶがあるから、ぞくくらがりざかとなへるぐらゐたけそらとざして眞暗まつくらなかから、烏瓜からすうりはな一面いちめんに、しろほしのやうなはなびらいて、東雲しのゝめいろさつす。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さいはひ、主人、大場石見は大の馬好き、近頃手に入れた『東雲しのゝめ』といふ名馬、南部産八寸やきに餘る逸物いちもつに、厩中間うまやちうげんの黒助といふ、若い威勢の好い男を附けて貸してくれました。
あらず、あをしろ東雲しのゝめいろくれなゐえて、眞黒まつくろつばさたゝかふ、とりのとさかにたのであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たちまる! 東雲しのゝめの、はるか/\の海上かいじやうより、水煙すいゑんげ、怒濤どとうつて、驀直まつしぐら一艘いつそう長艇ちやうていあり、やゝちかづいてると、その艇尾ていびには、曉風げふふうひるがへ帝國軍艦旗ていこくぐんかんき! るより
往きは先づ無事、御評定所で御墨附を受取り、一應懷紙をふくんで改めた上、持參の文箱に移して御評定所を退き、東雲しのゝめまたがつて、文箱を捧げ加減に、片手手綱たづなでやつて來たのは牛込見附です。
……東雲しのゝめくも野末のずゑはなれて、ほそながたて蒼空あをぞらいといて、のぼつてく、……ひとうまも、其処そことほつたら、ほつほつとゑがかれやう、とりばゞえやう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こと今朝けさ東雲しのゝめたもと振切ふりきつてわかれやうとすると、お名残なごりしや、かやうなところうやつて老朽おひくちるの、ふたゝびおにはかゝられまい、いさゝ小川をがはみづとなりとも
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寒さは寒し恐しさにがた/\ぶるひ少しもまず、つひ東雲しのゝめまで立竦たちすくみつ、四辺あたりのしらむに心を安んじ、圧へたる戸を引開くれば、臥戸ふしどには藻脱もぬけの殻のみ残りて我も婦人も見えざりけり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昨夜ゆうべやとつた腕車くるまが二だいゆきかどたゝいたので、主從しうじうは、朝餉あさげ支度したく匇々そこ/\に、ごしらへして、戸外おもてると、東雲しのゝめいろともかず黄昏たそがれそらともえず、溟々めい/\濛々もう/\として、天地てんちたゞ一白いつぱく
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おなたかさにいたゞきならべて、遠近をちこちみねが、東雲しのゝめうごきはじめるかすみうへたゞよつて、水紅色ときいろ薄紫うすむらさき相累あひかさなり、浅黄あさぎ紺青こんじやう対向むかひあふ、かすかなかゆきかついで、明星みやうじやう余波なごりごと晃々きら/\かゞやくのがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東雲しのゝめ太陽たいやうめぐみの、宛然さながら處女しよぢよごとく、さわやか薄紅うすくれなゐなるに、難有ありがたや、きつねともらず、たぬきともならず、紳士しんしり、貴婦人きふじんとなり、豪商がうしやうとなり、金鎖きんぐさりとなり、荷物にもつり、おほいなるかばんる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翌日は花また二ツ咲きぬ、いづれも入相いりあひの頃しぼみて東雲しのゝめに別なるが開く、三朝みあさにして四日目の昼頃見れば花唯一ツのみ、葉もしをれ、根も乾きて、昨日には似ぬ風情ふぜい、咲くべき蕾も探し当てず
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)