トップ
>
掴
>
つか
ふりがな文庫
“
掴
(
つか
)” の例文
向柳原は縄張内で、平次も暮へかけて一と働きしましたが、こればかりは、雲を
掴
(
つか
)
むようで、全く手の付けようがなかったのでした。
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
男は入口にうずくまるフランシスに眼をつけると、きっとクララの方に鋭い
眸
(
ひとみ
)
を向けたが、フランシスの
襟元
(
えりもと
)
を
掴
(
つか
)
んで引きおこした。
クララの出家
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
掴
(
つか
)
まされたものはこの作家もまた一日に三度三度のめしを食べた、あの作家もまた房事を好んだ、等々の平俗な生活記録にすぎない。
もの思う葦:――当りまえのことを当りまえに語る。
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
父はもう片足の
下駄
(
げた
)
を手に取っていた。そしてそれで母を撲りつけた。その上、母の
胸倉
(
むなぐら
)
を
掴
(
つか
)
んで、
崖下
(
がけした
)
に
衝
(
つ
)
き落すと母を
脅
(
おど
)
かした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
変化
(
へんげ
)
の術ももとより知らぬ。
途
(
みち
)
で
妖怪
(
ようかい
)
に襲われれば、すぐに
掴
(
つか
)
まってしまう。弱いというよりも、まるで自己防衛の本能がないのだ。
悟浄歎異:―沙門悟浄の手記―
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
時は、洋行帰りの新人や、学者たちの間に、丁度演劇改良熱の
勃興
(
ぼっこう
)
しつつあったおりで、勘弥はその機運をいちはやくも
掴
(
つか
)
んだのだ。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は、有王が泣き止むのを待って、有王の右の手を
掴
(
つか
)
んで、妻を
麾
(
さしまね
)
くと、有王をぐんぐん引張りながら、自分の小屋へ連れて帰った。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
『水汲むギリシヤ少女』と云ふ名画の写真や
一重芍薬
(
ひとへしやくやく
)
の艶なるを
掴
(
つか
)
み
揷
(
ざ
)
しにしたる水瓶など筆立や
墨汁壺
(
インキつぼ
)
に隣りて無雑作に列べらる。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
青嵐居士は、自分がこういう意見の所有者ではない、広く歴史を読んでいる間に、こういう史上の事実を
掴
(
つか
)
み出でて語るものらしい。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ふと思いついて、頭の上を手さぐりして、天井から
斜
(
はす
)
ッかいに引っ張られている紐を
掴
(
つか
)
んで、
手繰
(
たぐ
)
り寄せると、大丈夫手答えがある。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一喝
(
いっかつ
)
して首筋を
掴
(
つか
)
みたる様子にて、
場
(
じょう
)
の内外
一方
(
ひとかた
)
ならず
騒擾
(
そうじょう
)
し、表門警護の看守巡査は、いずれも
抜剣
(
ばっけん
)
にて非常を
戒
(
いまし
)
めしほどなりき。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そいつを
掴
(
つか
)
めば自分は偉くなれる、さうすれば、自分は世の中の人々を救ふことが出来るに違ひない——さう良寛さんは考へてゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
或る晩などは
逃後
(
にげおく
)
れた輝方氏が女中に
掴
(
つか
)
まつて、恋女房の蕉園女史にしか触らせた事のない口の
端
(
はた
)
を思ひ切り
抓
(
つね
)
られたものださうだ。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
お銀は格子に
掴
(
つか
)
まって、窓へ上ったり下りたりしているその子供の姿をじっと眺めていた。その姿はどこか影が薄いようにも思えた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
肩
(
かた
)
を
掴
(
つか
)
んで、ぐいと
引
(
ひ
)
っ
張
(
ぱ
)
った。その
手
(
て
)
で、
顔
(
かお
)
を
逆
(
さか
)
さに
撫
(
な
)
でた八五
郎
(
ろう
)
は、もう一
度
(
ど
)
帯
(
おび
)
を
把
(
と
)
って、
藤吉
(
とうきち
)
を
枝折戸
(
しおりど
)
の
内
(
うち
)
へ
引
(
ひ
)
きずり
込
(
こ
)
んだ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
栄二はすばやく手を伸ばし、万吉の腕を
掴
(
つか
)
んで、よせと囁きながら坐らせた。ほんの一瞬のことだったが、義一は見のがさなかった。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それでいて彼女は相手の吹きかける議論の要点を
掴
(
つか
)
むだけの才気を充分に具えていた。彼女はすぐ小林の主意を一口に
纏
(
まと
)
めて見せた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは細部に亙って客観的に一々調べてゆくというのでなく、先生自身の立場から直観的にその本質的な内容を
掴
(
つか
)
むという風であった。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
この怪談仕掛物の
劇
(
はげ
)
しいのになると真の
闇
(
やみ
)
の内からヌーと手が出て、見物の袖を
掴
(
つか
)
んだり、蛇が下りて来て首筋へ触ったりします。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
いきなりシューラの
両肩
(
りょうかた
)
を
掴
(
つか
)
んで、自分の
寝室
(
しんしつ
)
へ引っぱって行った。シューラは
心配
(
しんぱい
)
になって、
胸
(
むね
)
がどきりとした。ママはこういった。
身体検査
(新字新仮名)
/
フョードル・ソログープ
(著)
枯つ葉一つがさつか無え桑畑の上に
屏風
(
びやうぶ
)
を
立
(
たて
)
てよ、その桑の枝を
掴
(
つか
)
んだ
鶸
(
ひは
)
も、寒さに
咽喉
(
のど
)
を痛めたのか、声も立て無えやうな
凍
(
い
)
て
方
(
かた
)
だ。
鼠小僧次郎吉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ベルセネフは叫ばすまいとして
隻手
(
かたて
)
を口にやろうとした。それがために女を
掴
(
つか
)
んだ手が緩んだ。エルマは揮り放して林に沿うて逃げた。
警察署長
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「十三
囘忌
(
くわいき
)
、はあ、
大分
(
だいぶ
)
久
(
ひさ
)
しいあとの
佛樣
(
ほとけさま
)
を、あの
徒
(
てあひ
)
には
猶更
(
なほさら
)
奇特
(
きとく
)
な
事
(
こと
)
でござります。」と
手拭
(
てぬぐひ
)
を
掴
(
つか
)
んだ
手
(
て
)
を、
胸
(
むね
)
に
置
(
お
)
いて
傾
(
かたむ
)
いて
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
赫怒
(
かくど
)
した佐伯に詰責されて禿は今度はおい/\声を挙げて泣き出し、
掴
(
つか
)
まへようとした私から滑り抜けて飛鳥のやうに舎監室に走つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
かの女はこんな出来上った美丈夫が、むす子の友達だなんて信じて好いのかと思った。むす子を片手で
掴
(
つか
)
んで振り
廻
(
まわ
)
しそうにも思えた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
さながら矢のごとくに流れる
眼眩
(
めまぐる
)
しさ! しかも波の色の毒々しいまでのドス黒さ! 黒泡の
鬣
(
たてがみ
)
を逆立たせつつ
噛
(
か
)
み合い
掴
(
つか
)
み合い
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
『それも
駄目
(
だめ
)
だ』と
心
(
こゝろ
)
秘
(
ひそ
)
かに
思
(
おも
)
つてる
中
(
うち
)
、
愛
(
あい
)
ちやんは
兎
(
うさぎ
)
が
窓
(
まど
)
の
下
(
した
)
へ
來
(
き
)
たのを
知
(
し
)
り、
急
(
きふ
)
に
片手
(
かたて
)
を
伸
(
の
)
ばして
只
(
たゞ
)
當
(
あて
)
もなく
空
(
くう
)
を
掴
(
つか
)
みました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
不意にムックリと身を動かした
乾分
(
こぶん
)
の多市が、親分の危急! と一心に
掴
(
つか
)
み寄せた
道中差
(
どうちゅうざし
)
、
床
(
とこ
)
の上から弥助を目がけてさっと突き出す。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
溝
(
みぞ
)
の底の汚泥を
掴
(
つか
)
み出すのは世態に通じたもののすることでは無い、と天明度の
洒落者
(
しゃれもの
)
の山東京伝は
曰
(
い
)
ったが、秀吉も
流石
(
さすが
)
に洒落者だ。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
中川君、それではね、食卓を飾るのに西洋風の粗雑な
掴
(
つか
)
み
挿
(
ざ
)
しの花を用いずとも
我邦
(
わがくに
)
には古来より練習した
活花
(
いけばな
)
の特技があるでないか。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
けれど泥が
深
(
ふか
)
いから、足がはまつたら最後二度と拔けなかつた。水の外に
掴
(
つか
)
まる
物
(
もの
)
が無いのだから、もがけばもがく
程
(
ほど
)
泥
(
どろ
)
に吸はれて行く。
筑波ねのほとり
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
その人はおどろき
懼
(
おそ
)
れて遂に馬から転げおちると、怪物は跳りかかって彼を
掴
(
つか
)
もうとしたので、いよいよ懼れて一旦は気絶した。
中国怪奇小説集:03 捜神記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そしてその手紙の要点を
掴
(
つか
)
まえようと努力した。手紙の内容を
約
(
つづ
)
めて見れば、こうである。政治は多数を相手にした
為事
(
しごと
)
である。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
さっき
胡坐
(
あぐら
)
をかいていた処へどっさり腰をおとすが否や、
腹掛
(
はらがけ
)
の中から汚れた古ぎれに包んだものを
掴
(
つか
)
み出したのは、勲章にちがいない。
勲章
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その中は、
瓢箪
(
ひょうたん
)
を立てたような青い酒壜があった。目賀野はその酒壜の首を
掴
(
つか
)
むと外に出し、もう一方の
開
(
あ
)
いた手を戸棚の奥へ差入れた。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
紀久子はそう心の中に
呟
(
つぶや
)
いて、手文庫の底からそこにありたけの
紙幣
(
さつ
)
を
掴
(
つか
)
むと、それをポケットに突っ込んで自分の部屋を出た。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
室へ戻って見るとお房は一時気の
狂
(
ちが
)
った少女のようで、母親の鼻の穴へ指を突込み、顔を
掴
(
つか
)
み、急に泣き出したりなぞしていた。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その紙片の上に書かれてある文字を見て、法水はギュッと心臓を
掴
(
つか
)
まれたような気がした。検事は、むしろ呆れたように叫んだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
自己の霊と肉とをひっさげてその神秘を
掴
(
つか
)
まんとするものは恋である。最も内面的に直観的に「女性」なるものを捕捉する力は恋である。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
文麻呂 さ、しっかりとお
掴
(
つか
)
み! しっかりとお掴み!……お前のいのちよりも大切な……(なよたけは死んでいる)なよたけ‼
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
と手を引き伴藏の方を見ると、伴藏はお札を
掴
(
つか
)
んで倒れて居りますものだから、
袖
(
そで
)
で顔を隠しながら、裏窓からズッと
中
(
うち
)
へ這入りました。
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また起き上がって
椅子
(
いす
)
の背を
掴
(
つか
)
んで、椅子を前へずらせながら歩き出した。「マリイや。マリイや。
己
(
おれ
)
は一人では死なれない。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
お勢が
開懸
(
あけか
)
けた障子に
掴
(
つか
)
まッて、出るでも無く出ないでもなく、唯
此方
(
こっち
)
へ背を向けて
立在
(
たたず
)
んだままで坐舗の
裏
(
うち
)
を
窺
(
のぞ
)
き込んでいる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
番兵に
掴
(
つか
)
み出さる で翌朝六時に食事を終えてじきに
猟宮
(
かりみや
)
に出掛けて行きまして、まず番兵の居らぬ所から
柵内
(
さくない
)
に入りましたが
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
そればかりか、生きているうちはぬらぬらしているから、これを
掴
(
つか
)
んで
串
(
くし
)
に刺すということだけでも、
素人
(
しろうと
)
には容易に、
手際
(
てぎわ
)
よくいかない。
鮎の食い方
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
兩手で
掴
(
つか
)
まへて力一ぱいゆすぶるやうな聲、嘆聲をあげてあはれを賣るやうな聲、哀音をしのばせて可憐さを訴へるやうな聲。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
のちにわかつたが、
死
(
し
)
の
原因
(
げんいん
)
は
青酸加里
(
せいさんかり
)
による
毒殺
(
どくさつ
)
だつた。
死体
(
したい
)
の
両手
(
りょうて
)
がつきのばされて、
鉢
(
はち
)
のふちに
掴
(
つか
)
みかかろうという
恰好
(
かっこう
)
をしている。
金魚は死んでいた
(新字新仮名)
/
大下宇陀児
(著)
と男はいうと彼女の手首を
掴
(
つか
)
まえて背を向けると両手で彼女の足を抱いて歩き出した。母は男の背の上で「
険
(
あぶな
)
い険い。」と笑い声でいった。
火
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
ところが、それほどの疑惑にも
拘
(
かかわ
)
らず、私は何一つ、疑い以上の、ハッキリしたものを
掴
(
つか
)
むことは出来ないのでございました。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
實
(
じつ
)
に
雲
(
くも
)
を
掴
(
つか
)
むやうな
話
(
はなし
)
だが、
萬
(
まん
)
が一もと
旅亭
(
やどや
)
の
主人
(
しゆじん
)
を
呼
(
よ
)
んで
聽
(
き
)
いて
見
(
み
)
ると、
果然
(
くわぜん
)
!
主人
(
しゆじん
)
は
私
(
わたくし
)
の
問
(
とひ
)
を
終
(
みな
)
まで
言
(
い
)
はせず、ポンと
禿頭
(
はげあたま
)
を
叩
(
たゝ
)
いて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
掴
漢検準1級
部首:⼿
11画
“掴”を含む語句
引掴
一掴
大掴
鷲掴
手掴
掴出
掴取
掴合
打掴
鰌掴
掻掴
掴殺
掴寄
掴込
片手掴
掴得
荒掴
諸掴
掴拳
鼻掴
...