おが)” の例文
旧字:
かみさま、どうぞ、わたしをおたすけくださいまし。」と、かれは、こたえるかわりに、くらい、御堂おどううちかってわせておがんだのです。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
といって、くわしくみちおしえてくれました。ぼうさんはなみだをこぼして、わせておがみながら、ころがるようにしてげていきました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はあと嘉十かじふもこつちでその立派りつぱ太陽たいやうとはんのきをおがみました。みぎから三ばん鹿しかくびをせはしくあげたりげたりしてうたひました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「あの夢のお告げのとおり、出雲の大神をおがんでおしるしがあるならば、その証拠しょうこにこの池のさぎどもを死なせて見せてくださるように」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
その頃もう馬場のまわりには人かかすみかと疑われるほど、数十万の民衆は、この日の盛儀をかすかにでもおがもうものと雲集していた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士はその間その姿勢ではとても見ることのできないはずの、聖なる新月の神々こうごうしい姿を心眼の中にとらえて、しっかりとおがんでいたのだ。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かけ朝夕おがんでおりました効があって有難や望みがかな今朝けさ起きましたらこの通り両眼がつぶれておりました定めし神様も私の志をあわれみ願いを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
むらさき袈裟けさをかけて、七堂伽藍だうがらんんだところ何程なにほどのこともあるまい、活仏様いきほとけさまぢやといふてわあ/\おがまれゝばひといきれでむねわるくなるばかりか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふくろじゃねえよ。おいらのせるなこの中味なかみだ。文句もんくがあるンなら、おがんでからにしてくんな。——それこいつだ。さわったあじはどんなもんだの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
安庠漸々あんじょうにぜんぜん向菩提樹ぼだいじゅにむかう。』女人にょにんを見、乳糜にかれた、端厳微妙たんごんみみょうの世尊の御姿が、のあたりにおがまれるようではないか?
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
徳川の天下も二百六十年、そろそろ交替していい時だ。偶像をおがむのは惰性に過ぎない。こびり付くのは愚の話だ。新時代を逃がしてはいけない。
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こんな真面目まじめなおはなしをなさるときには、玉依姫様たまよりひめさまのあのうつくしいおかおがきりりときしまって、まともにおがむことができないほど神々こうごうしくえるのでした。
それを見ていた岡田弥市は何と思ったか、太刀を振りかぶってちょうど島田虎之助の背後うしろへ廻り、やッとおがうち
「イヤ、あらたかなもんだ。外からおがんでいたんじゃアきりがねえ。どれ、そろそろ中身を拝見するとしようか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……お天道様をおがめる子があんなことをするはずがないわ。……さあ、みんなも白状してごらん! あんなあなに取っ憑かれて、どんな悪いことをしたか。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「奥さまはモウおなくなりなさったから、おいとましなければならない、見納みおさめにモウ一度お顔をよくおがんでおけ」
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
それにはその人の思うことをいってあったが、すこしもちがうということがなかった。成の細君は前の人がしたように銭をつくえの上に置いて、香を焚いておがんだ。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
まア、おがまなくたってよかろう、お品さん、力になるのも、なられるのも、お互の事だ——お静、支度を
道の行きどまりに小さなほこらがあった。いつもは、その前を何べん通りすぎても、特に気をとめて見たこともない。しかし、私はその前にひざまずいておがんだ。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
見舞に来た百姓に旦那がお辞義の百遍もして、何でもよいから食う物を、とおがむように頼んだものです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「食いしんぼう」なんて、からかうどころではありません、ありがたくっておがみたいくらいです。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それで、不思議な魔法めいた術のことも、空の星の数も頭の毛の数も、誰にも伝えられずに、ただ彼の石の身体だけが、永く残りまして、学者達からとうとばれおがまれています。
魔法探し (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そしてコデは五年おきもしくは七年おきに今帰仁なきじんおがみとか東廻あがりまわりとかいうように族中の男女二、三名を携えて祖先の墳墓の地に往って祖先の神を拝し山川を祭るのであるが
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
美しいなあおぬいさんは……涙が出るぞ。土下座どげざをしておがみたくならあ……それだのに、今でも俺は、今でも俺は……機会さえあれば、手ごめにしてでも思いがとげたいんだ。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なんまみだぶ、なんまみだぶといいながら、ごんごろがねおがんでいるばあさんもあった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
席亭せきていの主人が便所へ出掛けて行く、中の役者が戸をあけて出る機会とたん、その女の顔を見るが否や、席亭せきていの主人は叫喚きゃっと云って後ろへ転倒ひっくらかえてめえまだ迷っているか堪忍してくれとおがみたおされ。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
それは或る奥ぶかい路地の突きあたりにあって、大きな樹かなんかがその門のそばに立っていた。幼い私は母につれられたまま、誰れの墓とも知らずに、一しょにそれをおがんで帰ってきた。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
出してご覧下さい。ナポリと同じようにきらきらした日の光りがおがまれますよ
見ると、妹の墓地の前——新ぼとけをまつる卒塔婆そとばや、白張しらはり提灯や、しきみや、それらが型のごとくに供えられている前に、ひとりの男がうつむいておがんでいた。そのうしろ姿をみて、僕はすぐに覚った。
海亀 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日のおがんでかへつてくる習慣であつたさうだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
太郎「おぢさんくまあはせておがんでるよ」
基督キリストのところへ来ておがんでいる
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
思はずおがめば、たまんねえで
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「こりゃ不思議ふしぎだ、あんなまちなか電信柱でんしんばしらが一ぽんっている。そして、あの屋根やねにいるおとこが、しきりときながらおがんでいる。」
電信柱と妙な男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「たしかにさようとぞんぜられます。今朝けさヒームキャのこうぎしでご説法せっぽうのをハムラの二人の商人しょうにんおがんでまいったともうします」
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大先生の尊顔そんがん久々ひさびさにておがみたいし、旁々かたがたかの土地を見物させて貰うことにしようかと、師恩しおんあつき金博士は大いに心を動かしたのであった。
都夫良つぶらはそれを聞くと、急いで武器を投げすてて、皇子おうじ御前ごぜんへ出て来ました。そして八度やたびおがんで申しあげました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
すでくらんでたふれさうになると、わざわひ此辺このへん絶頂ぜつちやうであつたとえて、隧道トンネルけたやうにはるかに一りんのかすれたつきおがんだのはひるはやし出口でくちなので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きつねはまるで人間にんげんが手をわせておがむようなかたちをして、二三おがんだとおもうと、さもうれしそうにしっぽをって、草叢くさむらの中へげて行ってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
払った刀を持ちなおすまもあらばこそ、数歩急進すると同時に、捨て身のおがち、すぐに一刀をひっかついで
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
後家は、嗚咽おえつして、奉行の慈悲をおがんでいた。甲斐守は、きょうも一つ、祖師の法然上人によろこんでいただける事をしたと思い、自分も心が明るかった。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最後さいごわたくしが、最近さいきんたき竜神りゅうじんさんの本体ほんたいおがましていただいたはなしいたしますと、ははおどろきは頂点てうてんたっしました。
おがみたけりゃおがませる。だが一つだってけちゃァやらねえから、そのつもりでいてくんねえよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
日頃おがみなれた、端厳微妙たんごんみみょうの御顔でございますが、それを見ると、不思議にもまた耳もとで、『その男の云う事を聞くがよい。』と、誰だか云うような気がしたそうでございます。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
文麻呂 (そっと友のかたに手を掛けて)よかろう、清原。僕は決してとがめ立てはしないぜ。いやむしろ君のその碧空あおぞらのごとく清浄無垢せいじょうむくなる心をとらえた女性の顔が一目おがみたい位だよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
日本郵船のある水夫は、コロムボで気が変になり、春画しゅんがなど水夫部屋にかざっておがんだりして居たが、到頭印度洋の波を分けて水底深くしずんで了うた、と其船の人が余に語り聞かせた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
何かと妙子の顔をおがむ機会があろうという、友人達の敵本てきほん主義のたまものだった。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「ありがとうござります」と、お染は手をあわせておがんだ。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おがんで鍬打つ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「よく剣ヶ峰けんがみねおがまれる。」と、じいさんは、かすかはるかに、千ゆきをいただく、するどきばのようなやまかってわせました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)