御殿ごてん)” の例文
それで、ひすいを見分みわけるために、御殿ごてんされた老人ろうじんは、きさきくなられると、もはや、仕事しごとがなくなったのでひまされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これで勝負しょうぶはつきました。芦屋あしや道満どうまんくらいげられて、御殿ごてんからされました。そして阿倍あべ晴明せいめいのお弟子でしになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたくしは、御殿ごてんをつくって、住むことはできません。でも、わたくしの好きなときに、こさせていただきとうございます。
……まず、立派な御殿ごてんを想像してちょうだい。夏の夜で、すばらしい舞踏会ぶとうかいがあるの。その舞踏会は、若い女王のおもよおしなのよ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
同じ御殿ごてんでいっしょにおくらしになるのがおいやだものですから、そのまますぐに、父の神の方へお送りかえしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
またの下からさかさまに見ると、曲馬小屋はまた一段いちだんと美しくはなやかに、まるで空中にかんだ御殿ごてんのように見えました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「あっしゃまだ、御殿ごてん女中の殺されたのア、見たことがねえんで。……きょうはひとつ、手柄を立てさしておくんなせえ」
王樣わうさま御殿ごてんかもしれねえ、自分じぶんはあそこへくのだらう。きつと王樣わうさま自分じぶんをおしになつたんだ。おかゝつたらなにだい一にはう。そうだ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
で、その御殿ごてんがほろびることになったら、いったい何が人びとの目を、この地方にひきつけておくことになるのでしょう。
もしここに金の延べ金があったら二人はそれを御殿ごてんに持って行くともとのとおり御家来にしてくださる約束やくそくがある。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
陛下へいか、しばらくお待ちくださいまし。私はお姫さまがお住みになる御殿ごてんを立てますまでは、婚礼はできません。」
「お邸内やしきうちのおなり御殿ごてんは、おととしから去年にかけて竣工できあがっているが、またことしの春も、おなりがあるというので、庭のお手入れだ。大したものだぜ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、わたしも思いのほか、盗みばかりしてもいないのです。いつぞや聚楽じゅらく御殿ごてんへ召された呂宋助左衛門るそんすけざえもん手代てだいの一人も、確か甚内と名乗っていました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
としはじめて三歳さんさい國君こくくんいろきこし、すなは御殿ごてんにおむかあそばし、たなごころゑられしが、たちま恍惚うつとりとなりたまふ。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
われるままにわたくし小娘こむすめみちびかれて、御殿ごてんながなが廊下ろうか幾曲いくまがり、ずっとおくまれる案内あんないされました。
見渡すかぎり平坦の、曠野と言つていいくらゐの鈍く光る大廣間で、御殿ごてんらしいものの影は、どこにも無い。
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
有名なパサデナの邸宅街ていたくがいを通り、御殿ごてんのような建物に、貧富ひんぷ懸隔けんかくにつき、考えさせられることも多かった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
しかしこゝでちょっとまをしてくことは、かういふおてら建築けんちく支那しな朝鮮ちようせんからつたはり、天皇てんのう御殿ごてん貴族きぞく家屋かおくもさういふふうにつくられるようになりましたが
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
これがオノゴロ島です。その島におくだりになつて、大きな柱を立て、大きな御殿ごてんをおてになりました。
畔柳はこの手よりとりいるる利のなかばは、これを御殿ごてんの金庫に致し、半はこれをふところにして、鰐淵もこれにりて利し、きんいつにしてその利を三にせる家令が六臂ろつぴはたらき
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さん公谷こだにと云う渓合たにあいに移り、そこに王の御殿ごてんを建て、神璽はとある岩窟がんくつの中にかくしていたと云う。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
將監御拾おひろひ申上將監の子とならせ玉ひしは御可憐いたはしき御事なり御殿ごてんにて御成長あそばし候へば我々とても肩身かたみひろく御奉公ごほうこうつとむべきに殘念ざんねんの事なりと四人ともども申上しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれど、このひいさまは、なんだかままおかあさまがこわいので、王さまに、どうぞ、せめて今夜もうひとばん、このまま森の御殿ごてんにいさせてくださいといってたのみました。
「お時間じゃ、お時間じゃ。御殿ごてんのしまるお時間じゃ」と、どこからかふいに声がしました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
法王の御殿ごてんが峰の上にあるからで、この法王の宮殿は宮殿なり寺なりまた城なり、即ち一つで三つをねて居るというてよろしい。城の建て方としてはチベット第一流である。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やるにはいけませんね。近ごろは東京があまりやかましくなりすぎて困る。これが御殿ごてん
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
桃吉ももきち御殿ごてんとよばれたほど豪華な住居をつくって住んだりしたはてが、負債のために稼がなければならないという口実で、彼女がきていた内裏雛だいりびな生活から、多くの異性に接触しやすい
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのゴロゴロした岩道の向うに、大きい帆船が、御殿ごてんのようにそそりたっていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
御殿ごてんもわが家も捨てて、身を隠したということを、はっきりと知りながら、そっと忍んで、訪ねてくれることは愚か、なつかしい文一つ、ことづけてよこそうともせぬ雪之丞を、うらみごとも
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
住んでいる御殿ごてんは御所の中の東北のすみのような桐壺きりつぼであった。
源氏物語:01 桐壺 (新字新仮名) / 紫式部(著)
すると、「すわ、大事だいじだ!」と、いって、三まん兵士へいしは、るものもとりあえず、いくさ仕度したくをして、御殿ごてんのまわりにあつまりました。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天子てんしさまはそのうたをおよみになって、かわいそうにおおもいになり、頼政よりまさ四位しいくらいにして、御殿ごてんのぼることをおゆるしになりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「王さまの御殿ごてんへ行って、お姫さまと話をするのさ。たいこを鳴らして、国じゅうにふれまわっていたのを、おまえ、聞かなかったのか?」
さっそく御殿ごてんにお召使めしつかいになるおつもりで、皇子の大碓命おおうすのみことにお言いつけになって、二人をしのぼせにおつかわしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ヴァードステーナ僧院の栄誉えいよがくずれないうちに、そのすぐそばに御殿ごてんが建てられて、それがその時代じだいでは、もっともすばらしいものとなるでしょう。
昔から物語の本にもある、屋のむねへ白羽の征矢そやが立つか、さもなければ狩倉かりくらの時貴人あでびとのお目にとまって御殿ごてん召出めしだされるのは、あんなのじゃとうわさが高かった。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見渡すかぎり平坦の、曠野と言つていいくらゐの鈍く光る大広間で、御殿ごてんらしいものの影は、どこにも無い。
お伽草紙 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
ジャンはしまいにはたいそうな金持ちになって、町じゅう第一とも見えるような御殿ごてんを建ててそれに住まい、ぜいたくざんまいなくらしをするようになりましたが
かたわ者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
わたくしはそれがかえつってみょう御殿ごてん構造つくりにしっくりとてはまって、たいへんうつくしいようにかんぜられました。
ところがなか/\れないので、そのかなしいごゑが、天皇てんのう御殿ごてんにまできこえてました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「お時間じゃ、お時間じゃ、御殿ごてんのしまるお時間じゃ」と、うしろで歌う声が聞こえました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
とお答えになつて、御殿ごてんのうちにお入りになりましたが、なかなか出ておいでになりません。
けれども、とうとう、ある日、アラジンは王さまの御殿ごてんの中へ入ることができました。そして、お姫さまがゆどのへおいでになるところを、戸のすきまからのぞいてみました。
だが、いかに万太郎が御殿ごてん育ちでも、昼狐につかれる程なボンヤリではありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その板の真中には花の御殿ごてんがあり、その御殿の中には仏が衆生しゅじょう済度さいどする有様を模擬もぎしたるものあれば、また王公大臣の模造もあります。その下にもいろいろ人形が置いてあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
森のおくにぽつんと立っている御殿ごてんのなかに、お子たちをつれて行きました。
なにわたくしからふと、じつはあの文庫ぶんこはうむし大切たいせつしなでしてね。祖母ばゞむか御殿ごてんつとめてゐた時分じぶんいたゞいたんだとかつて、まあ記念かたみやうなものですから」とやうこと説明せつめいしてかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「それは、わたしだけが知った煩い——なぜ、御殿ごてんにもいられぬほどの病気になったか、そのわけは、どんなお方も、知ろうはずがありませぬ——でも、太夫、そなただけは、いくらか気付いてくれそうなものに——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
陶器師とうきしは、おそって御殿ごてんがりました。それから、その有名ゆうめい陶器師とうきしは、厚手あつでちゃわんをつく普通ふつう職人しょくにんになったということです。
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
召使めしつかいの女官じょかんたちはおおさわぎをして、あかさんの皇子おうじいて御産屋おうぶやへおれしますと、御殿ごてんの中はきゅう金色こんじきひかりでかっとあかるくなりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)