まち)” の例文
此処こゝでござえますよ、ままどうも…今朝けさっから忰も悦んで、殿様がおいでがあると云うので、まちに待って居りました処でござえます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二十六夜まちというのはどんなものか、なにかの参考のために見て置くのもよかろうと思ったので、涼みがてらに宵から出かけた。
月の夜がたり (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は女の来ないのがまちどおしかった。彼はももじりになって入口の方を見ていた。二人づれの客があったが女の姿は見えなかった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ぐわつ十一にちまちまつつたる紀元節きげんせつ當日たうじつとはなつた。前夜ぜんやは、夜半やはんまで大騷おほさわぎをやつたが、なか/\今日けふ朝寢あさねどころではない。
追駈おひかけ昌次郎と途中にて行違ひと成り梅一人河原にまち居たる所雲助風俗ふうぞくの者女を勾引かどはかし來り打叩くをかたはらにて梅は驚き迯出にげいだす所を又其者梅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
宇治山田の米友はこの時、冗談でなく槍をとって、それを中段に構えてまちの位に附けたのは、正格にしてまさに堂に入れるものであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
よこすからこゝまちなと云ふを聞かず亭主大きに世話であつたなと大勇みで飛び出しは出たものゝ痛みは先より尚強し一丁行きては立止り景色を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
吾輩皆に先駆さきがけて死んで見せたら観感して起るものあらん。それがなきほどでは、なんぼう時をまちたりとて時は来ぬなり。
ある時は、朝早くから訪れて午過ひるすぎまで目ざめぬ人を、雪の降る日の玄関わきの小座敷につくねんと、火桶ひおけもなくまちあかしていたこともあった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『何……駕籠へ乗れとか。……よそう、夕霧の顔見るまでの途中が、申さばまち座敷の娯しみ、まして、このよい春のよいを』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朱の盤 (空へ云う)輿傍かごわきへ申す。此方こなたにもおまちうけじゃ。——姫君、これへおりのよう、舌長姥したながうば、取次がっせえ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思ふ人を遠きあがたなどにやりて、あけくれ便りのまちわたらるゝ頃、これをききたらばいかなる思ひやすらんと哀れなり。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唐土もろこしこれ火井くわせいといふ。近来きんらい此地獄谷に家を作り、地火ちくわを以てわかし、きやくまちよくさしむ、夏秋のはじめまでは遊客いうかく多し。此火井他国にはきかず、たゞ越後に多し。
「コラ何する、おまちなさい。」と翁におどりかかって、その釘にしがみ付いたのは母親である。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
その時飯田さんが、「ちょいとおまち下さい、念のためにさいにきいて見ますから」といった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
子の生長そだちにその身のおゆるを忘れて春を送り秋を迎える内、文三の十四という春、まちに待た卒業も首尾よく済だのでヤレ嬉しやという間もなく、父親は不図感染した風邪ふうじゃから余病を引出し
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その内まちに待った産婆が来たので、健三はようやく安心して自分のへやへ引き取った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
停車場ギヤアルの前には御者ぎよしや台に鞭をてて御者ぎよしや帽をかぶつた御者ぎよしや手綱たづなを控へて居るひんの好い客まちの箱馬車が十五六台静かに並んで居た。ぐ左手に昔の城を少し手入して其れに用ひた博物館がある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それは誰しもはずかしければ其様そのようにまぎらす者なれど、何もまぎらすにも及ばず、じじが身に覚あってチャンと心得てあなたの思わく図星の外れぬ様致せばおとなしくまちなされと何やら独呑込ひとりのみこみの様子
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まだいきころして、ちぢめて、もう一たれはせぬかとまちかまえている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「宅の奥様のお手紙を持つて参つたのです。何の御用事があるか私には分りません。返事を承はつて来い! おかへりになるまで、おまちして返事を承はつて来い! と、申し付けられましたので。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
まちよ。何か考え込んで、まごまごして立ち止まってよ。7720
一寸おまちなさい。リルケの著作目録を上げますから。これです。
ちよいと、おばあさん、おまちなさいよ、これ………
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
まちよろこびや、またの
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
まちて仮の内裏だいり司召つかさめし 碩
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
再びまんとまち構ふ。
後ろへさがって米友はまちかたに槍を構え直した。兵馬は敵の退いただけ、それだけ足を進めて槍もそれと合致して進む。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此方こちら左様そんな事は知りませんから、明日あしたは来るに違いないとまちに待って居りました、橋本幸三郎、岡村由兵衞の二人は
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
内職の片手間に、近所の小女こむすめに、姉が阪東を少々、祖母さんが宵はまちぐらいを教えていたから、豆煎は到来ものです。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まちしに此度は是迄とはかはおよそ百五十人餘りの大勢にて名主甚兵衞方へ着しすぐ村中むらぢうへ觸をいだして十五歳以上の男子なんし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あけぬれば月は空に帰りて余波なごりもとゞめぬを、硯はいかさまになりぬらん、な/\影やまちとるらんとあはれなり。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唐土もろこしこれ火井くわせいといふ。近来きんらい此地獄谷に家を作り、地火ちくわを以てわかし、きやくまちよくさしむ、夏秋のはじめまでは遊客いうかく多し。此火井他国にはきかず、たゞ越後に多し。
露に湿しめりて心細き夢おぼつかなくも馴れし都の空をめぐるに無残や郭公ほととぎすまちもせぬ耳に眠りを切って罅隙すきまに、我はがおの明星光りきらめくうら悲しさ、あるは柳散りきりおちて無常身にしみる野寺の鐘
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
出征してから白銀しろがねの筋は幾本もえたであろう。今日始めて見る我らの眼には、昔の将軍と今の将軍を比較する材料がない。しかし指を折って日夜にまちびた夫人令嬢が見たならば定めし驚くだろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少年せうねんよ、まちつたる富士山ふじさんるのもとほことではないよ。』
まちなさいよ。ちょっと鬼火を一つ傭いますから。3855
ちゞめて、もう一たれはせぬかとまちかまへてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さゝるゝな立派な出世致すべしかくてこそ予にたい忠義ちうぎなるぞと申聞られ一人々々ひとり/\盃盞さかづきを下され夫より夜のあくるをまちける此時越前守の奧方おくがたには奧御用人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京のある学校を卒業ますのをまちかねて、故郷へ帰って、心当りの人に尋ねましたが、誰のを聞いても、どんなに尋ねても、それと思うのが分らんのです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まちの槍にはかかりの槍が含んでいるのであります。その両面には磐石ばんじゃくの重きに当る心がこもっているのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時はふるき暦の五月さつきにさへあれば、おのが時たゞいまと心いさみて、それよりのな/\目もあはず、いかで聞きもらさじとまちわたるに、はかなくて一夜ひとよは過ぎぬ。
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて今を去㕝さること(天保十一子なり)五百四十一年前、永仁えいにん六年戌のとし藤原為兼卿ためかねきやう佐渡へ左遷させんの時、三嶋郡寺泊てらどまりえき順風じゆんふうまち玉ひしあひだ初君はつぎみといふ遊女いうぢよをめし玉ひしに
父様ととさま御帰りになった時はこうしてる者ぞと教えし御辞誼おじぎ仕様しようく覚えて、起居たちい動作ふるまいのしとやかさ、仕付しつけたとほめらるゝ日をまちて居るに、何処どこ竜宮りゅうぐうへ行かれて乙姫おとひめそばにでもらるゝ事ぞと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どうぞ赤さんにお乳を飲ませる間おまち下さいまし。
菊「何ういう理由わけで、まおまちよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あけぬれば月は空にかへりて名残なごりもとゞめぬを、すずりはいかさまになりぬらん、な/\影やまちとるらんとあはれなり。
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さて今を去㕝さること(天保十一子なり)五百四十一年前、永仁えいにん六年戌のとし藤原為兼卿ためかねきやう佐渡へ左遷させんの時、三嶋郡寺泊てらどまりえき順風じゆんふうまち玉ひしあひだ初君はつぎみといふ遊女いうぢよをめし玉ひしに
揚場あがりば奧方おくがたは、小兒こどもはう安心あんしんなり。まちくたびれた、とふうで、れいえり引張ひつぱりながら、しろいのをまたして、と姿見すがたみらして、かたはらつた、本郷座ほんがうざ辻番附つじばんづけ
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
またのおいでまちますといふ、おいほどことをいふまいぞ、空誓文そらせいもん御免ごめんだとわらひながらさつ/\とつて階段はしごりるに、おりき帽子ぼうしにしてうしろからひすがり
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)