馬鹿ばか)” の例文
娘売らぬ親を馬鹿ばかだとは申しがたそろへども馬鹿ばか見たやうなものだとは申得まうしえられそろ婿むこを買ふ者あり娘を売る者あり上下じやうげ面白き成行なりゆきそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
、あはしませんわ。あたし本当に馬鹿ばかだつたのねえ。でも、貴方、これから強く/\なつて、成吉斯汗ジンギスカンのやうな英雄になつて下さいね
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
老人としより子供こどもだから馬鹿ばかにしておもふやうにはうごいてれぬと祖母おばあさんがつてたつけ、れがすこ大人おとなると質屋しちやさして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬鹿ばかげた笑い方をし、うれしそうに眼を輝かしながら、淫逸いんいつな話をつづけるので、そういう会話の中に出ると彼は面食めんくらってしまった。
與太郎という名が顔に出ているから人が馬鹿ばかにするのだろうか。與太郎は、菓子屋の飾窓のガラスに自分の顔をうつして見ました。
たどんの与太さん (新字新仮名) / 竹久夢二(著)
A 馬鹿ばかつちやいかん。統計とうけい神聖しんせいだ。勝手かつて算出さんしゆつしてたまるもんか。それよりかきみおれ今度こんど年賀状ねんがじやう趣向しゆかうせてやらう。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
町の人たちは、あの馬鹿ばか甚兵衛がたいそうな看板かんばんをだしたが、どんなことをするのかしらと、面白半分おもしろはんぶん小屋こやへはいってみました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「お前知らなかったのかい。フゥフィーボー博士さ。化学の。」とその赤いばけものは馬鹿ばかにしたように目を光らせて答えました。
それは見張りをしているのだ。が、私は躊躇ちゅうちょする。なぜなら、その首が動かないのである。間違えて、木の根を撃っても馬鹿ばか馬鹿しい。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「マリイ。己はが明けたって、もう馬鹿ばかな望みは起さない。南の方へ行ったって駄目だ。きょうそれが己にはっきり分かったのだ。」
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
しかし奇妙きみょうなことには、重吉は目から鼻へけるほどの利口者りこうものでしたが、六兵衛は反対はんたいに何をやらせても、のろまで馬鹿ばかでした。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
村の庄屋しやうやの息子に、智慧蔵ちゑざうといふ、長い間江戸へ出て、勉強して来た村一番の学者がありました。或時あるときその馬鹿ばか七の話を聞いて
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
うして、んだツて馬鹿ばかな、土方どかた眞似まねたいなことるんだらうと侮辱的ぶぢよくてきかほが、あり/\と焚火たきびけむりあひだからえるのである。
「なんていふお馬鹿ばかさんなの! 心の……十二単衣……」彼女は、水色ガラスのシュミーズを着ながら、あざけるやうに繰り返した。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「そろそろもう治ろうと思っているんです。発作を起こすなんて、そんな馬鹿ばからしい真似まねをする必要はなくなったようですから」
街頭の偽映鏡 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
まさかそんな馬鹿ばかげたことがとは思うけれども、リリーを家庭から追い払ってしまいさえすれば、イヤな心配をしないでも済む。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
からはきらりと光りを放って、二尺あまりの陽炎かげろうむこうへ横切る。丘のごとくにうずたかく、積み上げられた、貝殻は牡蠣かきか、馬鹿ばかか、馬刀貝まてがいか。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ええ、馬鹿ばかつくせえ。なんとでもなるやうになれだ」と、途中とちうで、あらうことかあるまいことかをんなくせに、酒屋さかやへそのあしではいりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
「あゝよして呉れ!」父ははら退けるように云った。「そんな事は聞きたくない。馬鹿ばかな! 画描きなどが、画を描くことなどが、……」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
若いころのことを思うと、よくもああいろいろ馬鹿ばかなことができたものだと思う。それでも、武士の生まれであることは、身にしみている。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
しかし人間の注意力などというものは、案外たよりないもので、掏摸すりの眼から見ると、大抵の人間は馬鹿ばかに見えるそうである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
父はわたしの教育のことには、ほとんど風馬牛ふうばぎゅうだったが、さりとてわたしを馬鹿ばかにするような真似まねは、ついぞしたことがない。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
此樣こん工夫くふうをやるのだもの、この武村新八たけむらしんぱちだつてあんまり馬鹿ばかにはなりますまい。』と眞丸まんまるにして一同いちどう見廻みまわしたが、たちまこゑひくくして
馬鹿ばかつてばかし所爲せゐからばかしびつちやつて、そんだがとれねえはうでもあんめえが、夏蕎麥なつそばとれるやうぢや世柄よがらよくねえつちから
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
母はまた笑ひながら「さうとも」といひましたから、余り馬鹿ばからしいこといふて恥しいとおもひ、出直でなほしてモソツト悧巧りこうらしい考案を出しました。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
馬鹿ばからしい。だが好いよ。かきかけたスケッチはあそこにあるし、己の頭の中には印象がはっきりしているのだから。じゃあ明日あした来て貰おう。
馬鹿ばかをいわッし。おいらがんで、うしかわようがあるんだ。もっともこの薬罐やかんそばはなッつけて、よくいで見ねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
……今にもわたし、大声でわめきだすか……何か馬鹿ばかなまねをしそうだわ。わたしを助けて、ペーチャ。何か話をしてちょうだい、ね、何か……
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
御渡しなされて下されましと金子きんす二分を渡しけるに非人共は受取千人ための方へゆくれ/\傳助や彼の富右衞門とやらのくびを知てるかと聞て馬鹿ばか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おれかはりにくんだ。弥「ハヽヽそれぢやアわたし身上しんしやうもらふのだ。女房「御覧ごらんなさい、馬鹿ばかでも慾張よくばつてますよ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
毎日馬鹿ばかのやうに、もくもくと仕事をし勉強をしてゐた。良寛もだんだん人間が出来て来た、ほんたうの自分を知つて来た、と国仙和尚は思つた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
その見事さには無邪気にを丸くして驚き、日本一の美人をここで見つけたと騒ぎ、なおも見ていると、その金魚を五両、十両の馬鹿ばか高い値段で
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
だけど、わっしは馬鹿ばかで、どうしてもそんな元気が出ねえんでがす。——旦那があんまり可哀かええそうな様子をしてるで
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
やはり少し馬鹿ばかにする気味で、好意を表していてくれる人と、冷澹に構わずに置いてくれる人とがあるばかりである。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
八月の末で馬鹿ばかに蒸し暑い東京の町を駆けずり廻り、月末にはまだ二三日があるというのを拝みたおして三百円ほど集ったその足で、熱海あたみへ行った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
わがまゝのやうだけれど、銀杏返いてふがへし圓髷まるまげ不可いけない。「だらしはないぜ、馬鹿ばかにしてる。」が、いきどほつたのではけつしてない。一寸ちよつとたびでも婦人をんなである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして馬鹿ばかにえらいとおもツてゐた自分が、馬鹿にけちなつまらないものになツて了ツて、何にもが無くなツて了ふ………爲る氣が無いのでは無い
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これは、たとへば、さるに利刀を持たせ、馬鹿ばかに鉄砲を放たしむるやうなもので、まことに危いことのはなはだしいでござる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ロスタンは言つた『時代を間違へるな。』わたしは云はう『時代を間違へよう。』ロスタンは云つた『ばかは止せ。』わたしはいはう『馬鹿ばかこそせよ。』
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
「ねえ、これはあンた、つぶしにしたってせいぜい弐参拾円で買える家ですよ。どう考えたって、拾七円の家賃だなんて、ひどすぎるわ、馬鹿ばかだと思うわ」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
っともないという理由りゆう馬鹿ばかにされたかれ、それがいまはどのとりよりもうつくしいとわれているのではありませんか。
馬鹿ばかなペンペはだまされるともらずに、また片方かたほう眼玉めだまをたべてしまつた。もう四千メートルにちかきりなかだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
ガラス絵は特に、大ものはいけないようであります、第一馬鹿ばかに大きいガラスというものが、人に、何時いつ破れるかも知れぬという不安を与えていけません。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
ロミオ 馬鹿ばかな、なんの、そんなことを! おれには介意かまはいで吩咐いひつくることをせい。御坊ごばうからの書状しょじゃうかったか?
「どこのお方か覚えません私が世話になった方ならば知って居る筈ですが」というと「そういう馬鹿ばかだから困る。それダージリンで差込さしこみが起った時尊い薬を ...
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「そんなこと、おまえ、気にする馬鹿ばかがあるかいな。でもまあ、一年のしんぼうじゃ。しんぼう、しんぼう」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
求婚に応じてくれないことのわかった家を訪問して、失望した顔でそこを出て来る恰好かっこう馬鹿ばかに見えるだろうと、良清は悪いほうへ解釈して行こうとしない。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
潔白のわが心中をはかる事出来ぬじいめがいらざる粋立すいだて馬鹿ばか々々し、一生に一つ珠運しゅうんが作意の新仏体を刻まんとする程の願望のぞみある身の、何として今から妻などもつべき
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
馬鹿ばか言え、大きな大人を教育してさえ金が取れんのに、子供に少しばかり本を読ませて金が要るのか」
端午節 (新字新仮名) / 魯迅(著)
働く者はみんな食える、貧乏はない、ということはかくごとく死の如く馬鹿ばか阿呆あほうの如く平穏であることを銘記する必要がある。人間の幸福はそんなところにはない。
魔の退屈 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)