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躯
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からだ
ふりがな文庫
“
躯
(
からだ
)” の例文
舅はやや肥えた
躯
(
からだ
)
の大きな人で、血色のいい顔に温和な微笑を湛え、眼をほそめてわたくしを見ながら、ゆっくりと幾たびも
頷
(
うなず
)
いた。
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
躯
(
からだ
)
を
捐
(
す
)
て頂を
糜
(
び
)
し、もって万一に報ずるを思わず、かえって
胸臆
(
きょうおく
)
を
恣
(
ほしいまま
)
にし、
擅
(
ほしいまま
)
に威福を
作
(
な
)
す。死すべきの罪、髪を
擢
(
ぬ
)
きて数えがたし。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
私は欧洲から帰って来ると、すぐまた戸隠山へ出掛けた。山で一ヶ月を暮らして帰って来ると、尾崎さんは
躯
(
からだ
)
を悪くして困っていた。
落合町山川記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
ひとつは父が不自由な
躯
(
からだ
)
であったせいであろうが、いわば私はお祖父さん子というようなものであった。湯にもよくいっしょに入った。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
余は空を仰いで町の
真中
(
まなか
)
に
佇
(
たた
)
ずんだ。二週間の後この地を去るべき今の余も、病む
躯
(
からだ
)
を
横
(
よこた
)
えて、
床
(
とこ
)
の上に
独
(
ひと
)
り佇ずまざるを得なかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
この世に未練は沢山有るけれど、私は早く死んで、この
苦艱
(
くげん
)
を
埋
(
う
)
めて了つて、さうして早く元の
浄
(
きよ
)
い
躯
(
からだ
)
に生れ
替
(
かは
)
つて来たいのです。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
礼儀ただしいので
躯
(
からだ
)
をこごめて坐っているが、退屈をすると
鬢
(
びん
)
の毛の一、二本ほつれたのを手のさきで
弄
(
いじ
)
り、それを見詰めながらはなす。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
父は私の
躯
(
からだ
)
についている薬の匂いをいやがったので、私は間もなく病院の雑役夫をよして、ある貯蓄会社の外交員になりました。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
その二つの人影は、屋上から
躯
(
からだ
)
をのりださんばかりにして、何か、映画に使うような
移動照明器
(
いどうしょうめいき
)
のようなものを、動かしている。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
わがベルナルドオと叫びて、その
躯
(
からだ
)
に抱き付かんとするに先だちて、姫は早くもその傍に跪き、鮮血湧き出づる創口を押へたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
躯
(
からだ
)
ののんびりした彼女は銀子よりも姿がよく、人目につくので、嫁に望む家も二三あるのだったが、そうした時に病気が出たのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は今度
躯
(
からだ
)
に
腫物
(
できもの
)
が出来たので、これは
是非共
(
ぜひとも
)
、入院して切開をしなければ、いけないと云うから、
致方
(
いたしかた
)
なく、
京都
(
きょうと
)
の某病院へ
入
(
い
)
りました。
死体室
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
馬
(
うま
)
の
方
(
ほう
)
でも
亦
(
また
)
私
(
わたくし
)
によく
馴染
(
なじ
)
んで、
私
(
わたくし
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えようものなら、さもうれしいと
言
(
い
)
った
表情
(
ひょうじょう
)
をして、あの
巨
(
おお
)
きな
躯
(
からだ
)
をすり
附
(
つ
)
けて
来
(
く
)
るのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
彼の風采や趣向について、古書の記述を綜合してみると、玄徳の如く肥満してもいないし、孫権の如く
胴長
(
どうなが
)
で脚の短い
躯
(
からだ
)
つきでもなかった。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さあそいつだが、むずかしそうで。あのいい
躯
(
からだ
)
、貫目もあろう、とうてい妾の力では、引っ担いで行くということもならず」
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「掴まつたつて殺されるだけだわ。殺されれば妾本望だわ、こんな
躯
(
からだ
)
、いつだつて……妾、貴方見たいに臆病ぢやないわ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
チチコフは何もすることがないので、後ろに突っ立ったまま、相手のだだっぴろい
躯
(
からだ
)
を隅から隅までしげしげと眺めていた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「オヽイ、馬丁さん、早くしてお呉れよ、
躯
(
からだ
)
がちぎれて飛んで
仕舞
(
しま
)
ひさうだ——
戯譃
(
じやうだん
)
ぢやねえよ」と、車の
裡
(
うち
)
なる
老爺
(
おやぢ
)
は
鼻汁
(
はな
)
すゝりつゝ呼ぶ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
私は只一人其中に立って痛いほどの冷たい雨に
躯
(
からだ
)
を打たしている。そこには一点の塵気を止めようとしても止めることの出来ない潔い心持であった。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
よっぽど悪戯がきいたと見え、汗ばんだ
躯
(
からだ
)
がびくびく
痙攣
(
ひきつ
)
りなかなか昂奮のおさまらぬ面持だった。
馬勒
(
くつわ
)
がとれ、
鞍
(
くら
)
もどこかへ落ちてしまっている。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
いゝあんばいに
躯
(
からだ
)
が
利
(
き
)
いて
来
(
き
)
ました、
斯
(
か
)
うなると
慾
(
よく
)
が出てまた
上
(
あが
)
つて
包
(
つゝみ
)
を
斜
(
はす
)
に
背負
(
せお
)
ひ
道中差
(
だうちゆうざし
)
をさして
逃
(
に
)
げ出しました。
鰍沢雪の夜噺(小室山の御封、玉子酒、熊の膏薬)
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夭折
(
ようせつ
)
せる小児の教育の一手段としては、しばしば
之
(
これ
)
を霊媒の
躯
(
からだ
)
につけて、地上生活の経験を繰り返させることもある。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
……
扉
(
とびら
)
浅
(
あさ
)
うして、
然
(
しか
)
も
暗
(
くら
)
き
奥
(
おく
)
に、一
個
(
こ
)
人面蛇体
(
にんめんじやたい
)
の
神
(
かみ
)
の、
躯
(
からだ
)
を三
畝
(
うね
)
り、
尾
(
を
)
と
共
(
とも
)
に一
口
(
ふり
)
の
剣
(
つるぎ
)
を
絡
(
まと
)
うたのが
陰影
(
いんえい
)
に
立
(
た
)
つて、
面
(
おもて
)
は
剣
(
つるぎ
)
とゝもに
真青
(
まつあを
)
なのを
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
よ。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
わたしひとりが人類の最後の生き残りかとおもうと、わたしの
躯
(
からだ
)
はぶるぶると震え、わたしの吐く息の一つ一つがわたしに別れを告げているのがわかる。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
二人とも
躯
(
からだ
)
にくらべて頭が大きい。貧相な感じの子供だった。頭が似ているから、兄弟なのに違いない。上は数え年で十二か十三、小さい方は十歳ぐらいか。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
それとも死ぬまでも惑い
悶
(
もだ
)
えて衰頽した
躯
(
からだ
)
を荒野に
曝
(
さら
)
すのが偉大であるか愚であるか、それは別問題として
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この時突然、彼には二間とは間隔のない
路巾
(
みちはば
)
が、彼自身の
躯
(
からだ
)
を
圧
(
お
)
しつぶすように、同じ速度を踏んで、左右から盛り上り盛り上り
逼
(
せま
)
って来るように感じられた。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
其一に
躯
(
からだ
)
を
凭
(
もた
)
せたまま、眼はいつしか三千米の天空に今年のこの夏の唯一日であるかの如くに今日を
矜
(
ほこ
)
っている高根の花を
趁
(
お
)
うて、その純なる姿にうっとりと見入った。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
が、
小肥
(
こぶと
)
りの
躯
(
からだ
)
をつつむ
寛
(
ゆる
)
い黒衣の影を石階の
日溜
(
ひだま
)
りに落したまま、
暫
(
しば
)
しは黙然と耳を澄ます。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
やがて
吻
(
ほっ
)
という息を
吐
(
つ
)
いてみると、
蘇生
(
よみがえ
)
った様に
躯
(
からだ
)
が楽になって、女も
何時
(
いつ
)
しか、もう
其処
(
そこ
)
には居なかった、
洋燈
(
ランプ
)
も
矢張
(
やはり
)
もとの如く
点
(
つ
)
いていて、本が
枕許
(
まくらもと
)
にあるばかりだ。
女の膝
(新字新仮名)
/
小山内薫
(著)
また満洲帝国は武装して立ち、勇敢な
蒙古
(
もうこ
)
民族は、「われ等の
躯
(
からだ
)
には
成吉思汗
(
ジンギスカン
)
の血が流れているのだッ。」と叫んで、ゴビの
沙漠
(
さばく
)
の中で、赤軍の騎兵集団を監視している。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
単に大和の国で、私は
郡
(
ぐん
)
も町の名も知らない、古宿の破れ二階に、独り旅の疲れた
躯
(
からだ
)
を据えていた、道中の様々な刺戟に頭は重くて
滅入
(
めい
)
り込むよう、
草鞋
(
わらじ
)
の紐の
痕
(
あと
)
で足が痛む。
菜の花物語
(新字新仮名)
/
児玉花外
(著)
カヤノは茶の間の火鉢のそばに坐りこんだままぷすっとして、いつものように
姑
(
しゅうとめ
)
が何とかいったとか、
躯
(
からだ
)
の具合が悪いだとか、そんな口実を洩さず黙って頬をふくらしていた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
おれは釈放されて、自分の
住室
(
へや
)
へ帰って来たのだ。そしてもう一度市街の
雑鬧
(
ざっとう
)
や、店屋の明るい電飾が見られる
躯
(
からだ
)
になったのである。今夜は久しぶりにゆっくりと晩餐を使おう。
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
車中
何人
(
なんびと
)
も一語を発しないで、皆な屈托な顔をして
物思
(
ものおもひ
)
に沈んで居る。御者は今一度強く鞭を加へて
喇叭
(
らつぱ
)
を吹き
立
(
たて
)
たので
躯
(
からだ
)
は小なれども
強力
(
がうりよく
)
なる北海の健児は
大駈
(
おほかけ
)
に駈けだした。
空知川の岸辺
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
「ああ既ういけない。
迚
(
とて
)
も堪らない」彼の心は泣き叫んだ。
躯
(
からだ
)
を
藻掻
(
もが
)
く様に振動させた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
ファッツ平気で象の
尸
(
しかばね
)
に
騎
(
の
)
っており、
落著
(
おちつき
)
払ってちょっと突いたらこの通り象は
躯
(
からだ
)
が大きいが造作もなく殺さるるものをと言う、国王叡感斜めならず、即時彼を元帥と
為
(
な
)
された
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それに、
躯
(
からだ
)
に比較しては長過ぎる二三寸の尾を動かしながら
頻
(
しき
)
りに
逆
(
さかしま
)
に松の枝へ吊さっては餌をむさぼる。尾に触れ嘴に打たれて、小さな松の皮、古松葉などがはらはらと落ちて来る。
茸をたずねる
(新字新仮名)
/
飯田蛇笏
(著)
遠いそとの雪景色を見ている彼女のすももの頬っぺたの横顔やおなかのところで白い大前掛のもりあがっている若い丈夫な
躯
(
からだ
)
つきには、強壮さといっしょにどこか真面目な重々しさがある。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
浪路の全身は、火のようだ——その
躯
(
からだ
)
を、もっともっと抱きしめて貰いたい。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
がっかりして、拳をほぐして、平手で額の汗を拭きますと、急に
躯
(
からだ
)
の疲れを覚えました。トシオの小さな躯は、もう立って居ることに堪えられないほど、ぐたぐたに疲れて仕舞って居ました。
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
人の心がこの
躯
(
からだ
)
を見棄てて後まで、夢に現れまたしばしばまぼろしに姿を示すのを、魂が異形に宿を移してなお存在するためと推測したのがもし自然であるならば、それを野の鳥の声
殊
(
こと
)
に清く
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
むかし
或
(
あ
)
る
深山
(
みやま
)
の奥に、一匹の虎住みけり。
幾星霜
(
いくとしつき
)
をや経たりけん、
躯
(
からだ
)
尋常
(
よのつね
)
の
犢
(
こうし
)
よりも
大
(
おおき
)
く、
眼
(
まなこ
)
は百錬の鏡を欺き、
鬚
(
ひげ
)
は
一束
(
ひとつか
)
の針に似て、
一度
(
ひとたび
)
吼
(
ほ
)
ゆれば声
山谷
(
さんこく
)
を
轟
(
とどろ
)
かして、
梢
(
こずえ
)
の鳥も落ちなんばかり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
お松は娘の
躯
(
からだ
)
を抱えるように曳きずって行った。
反逆
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
娘は
躯
(
からだ
)
をくさらして病院に閉じこもり
飢えたる百姓達
(新字新仮名)
/
今野大力
(著)
酔っているのではなく神経が耗弱しているのである、玄関を出てゆく後ろ姿にも、肩から背へかけて
躯
(
からだ
)
の衰えがあからさまにみえた。
落ち梅記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
軈
(
やが
)
て、昼間の頬紅の赤い女が二階へ上つて来た。まだ十八か九位で、
躯
(
からだ
)
は、ゆき子より大柄だつたが、眠つたやうな静かな女だつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
山田
(
やまだ
)
は
元来
(
ぐわんらい
)
閉戸主義
(
へいこしゆぎ
)
であつたから、
其
(
そ
)
の
躯
(
からだ
)
が
恁
(
かう
)
云
(
い
)
ふ
雑務
(
ざつむ
)
に
鞅掌
(
わうしやう
)
するのを
許
(
ゆる
)
さぬので、
自
(
おのづ
)
から
遠
(
とほざ
)
かるやうに
成
(
な
)
つたのであります
硯友社の沿革
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
船
(
ふね
)
のはげしき
動揺
(
どうよう
)
につれて、
幾度
(
いくたび
)
となく
投
(
な
)
げ
出
(
だ
)
さるる
私
(
わたくし
)
の
躯
(
からだ
)
——それでも
私
(
わたくし
)
はその
都度
(
つど
)
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
りて、
手
(
て
)
を
合
(
あわ
)
せて、
熱心
(
ねっしん
)
に
祈
(
いの
)
りつづけました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「あーッ。」と長い溜息が、持て余しているような先生の
躯
(
からだ
)
から
漏
(
も
)
れて来た。じろりと皆の顔を見る目のうちにも、包みきれぬ不安があった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
躯
漢検準1級
部首:⾝
11画
“躯”を含む語句
体躯
病躯
痩躯
巨躯
躯幹
老躯
體躯
身躯
躰躯
小躯
短躯
矮躯
形躯
大躯
上躯
長躯
一躯
偉躯
亡躯
白髯痩躯
...