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蒸暑
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むしあつ
ふりがな文庫
“
蒸暑
(
むしあつ
)” の例文
するとある
蒸暑
(
むしあつ
)
い午後、小説を読んでいた看護婦は突然
椅子
(
いす
)
を離れると、寝台の側へ歩み寄りながら、不思議そうに彼の顔を
覗
(
のぞ
)
きこんだ。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蒸暑
(
むしあつ
)
い
中
(
うち
)
にも
凡
(
すべ
)
てが
水
(
みづ
)
の
樣
(
やう
)
な
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
びて
凉
(
すゞ
)
しい
微風
(
びふう
)
が
土
(
つち
)
に
觸
(
ふ
)
れて
渡
(
わた
)
つた。おつぎは
臼
(
うす
)
から
餅
(
もち
)
を
拗切
(
ねぢき
)
つて
茗荷
(
めうが
)
の
葉
(
は
)
に
乘
(
の
)
せて
一
(
ひと
)
つ/\
膳
(
ぜん
)
へ
並
(
なら
)
べた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
また瀬戸内海の沿岸では一体に雨が少なかったり、また夏になると夕方風がすっかり
凪
(
な
)
いでしまって大変に
蒸暑
(
むしあつ
)
いいわゆる夕凪が名物になっております。
瀬戸内海の潮と潮流
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一日に十里も歩けば、二日目は骨である。二人は
大胯
(
おおまた
)
に歩いた。
蒸暑
(
むしあつ
)
い日で、二人はしば/\額の汗を
拭
(
ぬぐ
)
うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
空は
蒸暑
(
むしあつ
)
い雲が
湧
(
わ
)
きいでて、雲の奥に雲が隠れ、雲と雲との間の底に蒼空が現われ、雲の蒼空に接する処は白銀の色とも雪の色とも
譬
(
たと
)
えがたき純白な透明な
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
▼ もっと見る
今年
(
ことし
)
は
非常
(
ひじやう
)
な
暑
(
あつ
)
さだつた。また
東京
(
とうきやう
)
らしくない、しめり
氣
(
け
)
を
帶
(
お
)
びた
可厭
(
いや
)
な
蒸暑
(
むしあつ
)
さで、
息苦
(
いきぐる
)
しくして、
寢
(
ね
)
られぬ
晩
(
ばん
)
が
幾夜
(
いくよ
)
も
續
(
つゞ
)
いた。おなじく
其
(
そ
)
の
夜
(
よ
)
も
暑
(
あつ
)
かつた。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
現今
(
げんこん
)
では
精神病者
(
せいしんびやうしや
)
の
治療
(
ちれう
)
に
冷水
(
れいすゐ
)
を
注
(
そゝ
)
がぬ、
蒸暑
(
むしあつ
)
きシヤツを
被
(
き
)
せぬ、
而
(
さう
)
して
人間的
(
にんげんてき
)
に
彼等
(
かれら
)
を
取扱
(
とりあつか
)
ふ、
即
(
すなは
)
ち
新聞
(
しんぶん
)
に
記載
(
きさい
)
する
通
(
とほ
)
り、
彼等
(
かれら
)
の
爲
(
ため
)
に、
演劇
(
えんげき
)
、
舞蹈
(
ぶたふ
)
を
催
(
もよほ
)
す。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それは
蒸暑
(
むしあつ
)
い夏の陽が、平和な島の草や木に、キラキラあたっているある日であったが、ジョン少年と日出夫とは、海岸の岩へ腰を掛け、愉快な会話に耽けっていた。
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その日も
蒸暑
(
むしあつ
)
かつた。
凡
(
すべ
)
てに公平なお
天道様
(
てんとうさま
)
は、禅坊主が来たからといつて、
取
(
と
)
つて
置
(
おき
)
の風を御馳走する程の慈悲も見せなかつた。皆は
襟
(
えり
)
を
寛
(
くつろ
)
げて扇をばたばたさせた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「いまに車掌さんが知らせに来ますよ。それまでは、すこし
蒸暑
(
むしあつ
)
いが、我慢しましょうや」
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だから
主馬頭
(
モンテイロ
)
が宮廷に
宿直
(
とのい
)
の夜なんか、
蒸暑
(
むしあつ
)
い南国のことだから窓を開け放して、本人は寝巻か何か引っかけた
肉感的
(
エロティック
)
なスタイルのまんま、窓枠に
靠
(
もた
)
れて下の往来を覗きながら
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
風の
飜
(
あふり
)
が
蒸暑
(
むしあつ
)
く、
呼吸
(
いき
)
の
出入
(
でいり
)
も苦しいと……ひとしほマノンの戀しさに、ほつと
溜息
(
ためいき
)
二
度
(
ど
)
ついた……風の
飜
(
あふり
)
が
蒸暑
(
むしあつ
)
く、踏まれた花の
香
(
か
)
が高い……見渡せば、
入日
(
いりひ
)
華
(
はな
)
やぐポン・ヌウフ
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
殊に
門司
(
もじ
)
の
街
(
まち
)
を午後三時に散歩した時のやるせなき
蒸暑
(
むしあつ
)
さが直ちに思い出された。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
すると気候は
恐
(
おそろ
)
しく
蒸暑
(
むしあつ
)
くなつて来て、自然と
浸
(
し
)
み出る
脂汗
(
あぶらあせ
)
が
不愉快
(
ふゆくわい
)
に人の
肌
(
はだ
)
をねば/\させるが、
然
(
しか
)
し
又
(
また
)
、さう
云
(
い
)
ふ時にはきまつて、
其
(
そ
)
の強弱と
其
(
そ
)
の方向の定まらない風が
突然
(
とつぜん
)
に吹き
起
(
おこ
)
つて
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
じっとり霧がこめて、いとど
蒸暑
(
むしあつ
)
い夜だった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
現今
(
げんこん
)
では
精神病者
(
せいしんびょうしゃ
)
の
治療
(
ちりょう
)
に
冷水
(
れいすい
)
を
注
(
そそ
)
がぬ、
蒸暑
(
むしあつ
)
きシャツを
被
(
き
)
せぬ、そうして
人間的
(
にんげんてき
)
に
彼等
(
かれら
)
を
取扱
(
とりあつか
)
う、
即
(
すなわ
)
ち
新聞
(
しんぶん
)
に
記載
(
きさい
)
する
通
(
とお
)
り、
彼等
(
かれら
)
の
為
(
ため
)
に、
演劇
(
えんげき
)
、
舞蹈
(
ぶとう
)
を
催
(
もよお
)
す。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼の郷里熊本などは、
昼間
(
ひるま
)
は百度近い暑さで、夜も
油汗
(
あぶらあせ
)
が流れてやまぬ程
蒸暑
(
むしあつ
)
い夜が少くない。
蒲団
(
ふとん
)
なンか滅多に敷かず、
蓙
(
ござ
)
一枚で、真裸に寝たものだ。
此様
(
こんな
)
でも困る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
が、それは必ずしも子供の病気のせいばかりではなかった。その
中
(
うち
)
に、庭木を鳴らしながら、
蒸暑
(
むしあつ
)
い雨が降り出した。自分は書きかけの小説を前に、何本も
敷島
(
しきしま
)
へ火を移した。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幻
(
まぼろし
)
のやうな
蒸暑
(
むしあつ
)
い
庭
(
には
)
に、
恰
(
あたか
)
も
曠野
(
あれの
)
の
如
(
ごと
)
く
瞰下
(
みおろ
)
されて、やがて
消
(
き
)
えても
瞳
(
ひとみ
)
に
殘
(
のこ
)
つた、
簪
(
かんざし
)
の
蒼
(
あを
)
い
光
(
ひかり
)
は、
柔
(
やはら
)
かな
胸
(
むね
)
を
離
(
はな
)
れて
行方
(
ゆくへ
)
も
知
(
し
)
れぬ、……
其
(
そ
)
の
人
(
ひと
)
の
人魂
(
おにび
)
のやうに
見
(
み
)
えたのであつた。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
丸文
(
まるぶん
)
へと思いしが知らぬ家も興あるべしと停車場前の丸万と云うに入る。二階の一室狭けれども
今宵
(
こよい
)
はゆるやかに寝るべしと思えば船中の窮屈さ
蒸暑
(
むしあつ
)
さにくらべて中々に心安かり。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
橋の
眼鏡
(
めがね
)
の
下
(
した
)
を行く
濃
(
こ
)
い
紫
(
むらさき
)
の水の色、みるに心が結ぼれて——えい、かうまでも思ふのに、さても
情
(
つれ
)
ないマノンよと、恨む
途端
(
とたん
)
に、ごろ、ごろ、ごろ、遠くで
雷
(
らい
)
が鳴りだして、
風
(
かぜ
)
の
飜
(
あふり
)
が
蒸暑
(
むしあつ
)
い。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
すると気候は恐しく
蒸暑
(
むしあつ
)
くなって来て、自然と
浸
(
し
)
み出る
脂汗
(
あぶらあせ
)
が不愉快に人の肌をねばねばさせるが、しかしまた、そういう時にはきまって、その強弱とその方向の定まらない風が突然に吹き起って
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
午後になって、いやに
蒸暑
(
むしあつ
)
い
空気
(
くうき
)
が
湛
(
たた
)
えた。
懶
(
ものう
)
い自然の気を感じて、眼ざとい鶴子が
昼寝
(
ひるね
)
した。掃き溜には、犬のデカがぐたりと寝て居る。芝生には、
猫
(
ねこ
)
のトラが
眠
(
ねむ
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
蒸暑
(
むしあつ
)
かつたり、
涼
(
すゞ
)
し
過
(
す
)
ぎたり、
不順
(
ふじゆん
)
な
陽氣
(
やうき
)
が、
昨日
(
きのふ
)
も
今日
(
けふ
)
もじと/\と
降
(
ふ
)
りくらす
霖雨
(
ながあめ
)
に、
時々
(
とき/″\
)
野分
(
のわき
)
がどつと
添
(
そ
)
つて、あらしのやうな
夜
(
よる
)
など
續
(
つゞ
)
いたのが、
急
(
きふ
)
に
朗
(
ほがら
)
かに
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
つた
朝
(
あさ
)
であつた。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
蒸暑
(
むしあつ
)
いのが
續
(
つゞ
)
くと、
蟋蟀
(
こほろぎ
)
の
聲
(
こゑ
)
が
待遠
(
まちどほ
)
い。……
此邊
(
このあたり
)
では、
毎年
(
まいねん
)
、
春秋社
(
しゆんじうしや
)
の
眞向
(
まむか
)
うの
石垣
(
いしがき
)
が
一番
(
いちばん
)
早
(
はや
)
い。
震災前
(
しんさいぜん
)
までは、
大
(
たい
)
がい
土用
(
どよう
)
の
三日
(
みつか
)
四日
(
よつか
)
めの
宵
(
よひ
)
から
鳴
(
な
)
きはじめたのが、
年々
(
ねん/\
)
、やゝおくれる。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
その
)
まゝ
押開
(
おしあ
)
けると、
襖
(
ふすま
)
は
開
(
あ
)
いたが
何
(
なん
)
となくたてつけに
粘氣
(
ねばりけ
)
があるやうに
思
(
おも
)
つた。
此處
(
こゝ
)
では
風
(
かぜ
)
が
涼
(
すゞ
)
しからうと、
其
(
それ
)
を
頼
(
たのみ
)
に
恁
(
か
)
うして
次
(
つぎ
)
の
室
(
ま
)
へ
出
(
で
)
たのだが
矢張
(
やつぱり
)
蒸暑
(
むしあつ
)
い、
押覆
(
おつかぶ
)
さつたやうで
呼吸苦
(
いきぐる
)
しい。
怪談女の輪
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蒸暑
(
むしあつ
)
い
夜
(
よ
)
で、
糊澤山
(
のりだくさん
)
な
浴衣
(
ゆかた
)
を
抱
(
だ
)
きながら、
涼
(
すゞ
)
んで
居
(
ゐ
)
ると、
例
(
れい
)
の
柳
(
やなぎ
)
の
葉越
(
はごし
)
に
影
(
かげ
)
が
射
(
さ
)
す、
五日
(
いつか
)
ばかりの
月
(
つき
)
に
電燈
(
でんとう
)
は
點
(
つ
)
けないが、
二階
(
にかい
)
を
見透
(
みとほし
)
の
表
(
おもて
)
の
縁
(
えん
)
に、
鐵燈籠
(
かなどうろう
)
の
燈
(
ひ
)
ばかり
一
(
ひと
)
つ、
峰
(
みね
)
の
堂
(
だう
)
でも
見
(
み
)
るやうに
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“蒸暑”の意味
《名詞》
蒸し暑いこと。
(出典:Wiktionary)
蒸
常用漢字
小6
部首:⾋
13画
暑
常用漢字
小3
部首:⽇
12画
“蒸”で始まる語句
蒸
蒸籠
蒸気
蒸焼
蒸氣
蒸汽
蒸物
蒸々
蒸發
蒸被