みづ)” の例文
おゝ、自然しぜんてきたいして、みづから、罵倒ばたうするやうな木像もくざうでは、前方さき約束やくそくげんのも無理むりはない……駄物だもの駄物だもの駄物だもの
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
光線の圧力を研究するために、女を轢死させる事はあるまい。主人の妹は病気である。けれどもあにつくつた病気ではない。みづからかゝつた病気である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つぎまをしたいのは責任せきにんみづからるといふのてんであります。英學塾えいがくじゆく寄宿舍きしゆくしやには唯今たゞいま五十めいらずの生徒せいとます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
この第三回のかう、われは髪を剃りつゑを曳きて古人の跡を蹈み、みづから意向を定めてありしかば義友も遂に我に迫らず、遂に大坂の義獄にあづからざりしも
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
又錦の馬せんふさはしきを犬の脊に打かけ、かの美人を乗せて、犬を叱して奔せしむるに、美人はみづから起ちて馬上さまざまなるしぐさを為して神変の技をしめす。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
けれども先生せんせい其家そのいへかこ幾畝いくせかの空地くうちみづからたがやして菜園さいゑんとし種々しゆ/″\野菜やさいゑてます。また五六羽ごろつぱにはとりふて、一もちゆるだけのたまごつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ともおもまたみづからはげましては、なんわけもなきこと、大英斷だいえいだん庭男にはをとことさへりしわれ此上このうへ出來できごと覺悟かくごまへなり、たゞあやふきは令孃ひめこヽろにて、首尾しゆびよくふみとヾきたりとも
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みづから一の目的もくてきさだめ、万障ばんしやうはいし、終生しうせいてつその目的点もくてきてんたつせんとつとむるが如きは不信仰ふしんこう時代じだい行為こうゐなりき、しゆめいしたがひ、今日こんにち今日こんにちげふす、今日こんにち生涯しやうがいなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
言ひすべのなからんやと、事に托して叔母なる人の上京を乞ひ、事情を打明うちあけて一身いつしんの始末を托し、只管ひたすら胎児の健全を祈り、みづから堅く外出をいましめし程に、景山かげやまは今何処いづくに居るぞ
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
世の係累をしばし戦ひのちまたのがれやうとしたか、それともまだ妻子のめに成功の道を求めやうとしたか、それは何方どつちであるかわからぬが、かくみづから進んでこの地につて来たことは事実である。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
わがともなる——そのが、みづからわたしはなした——のおはなしをするのに、ねんのため時間表じかんへうつてると、奥州おうしう白河しらかはいたのはよるの十二二十四ぷんで——
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これにれるひとみづから睡眠ねむりもよふすほどの、だらりとした心地こゝち土地柄とちがらせいでもあらう。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
われはみづから問ひ、自から答へて安らかなる心を以て蓬窓ほうさうかへれり。わがたる群星は未だ念頭を去らず、静かに燈をつて書を読まんとするに、我が心はなほ彼にあり。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
それからフロツクコートや何か着たえらさうな男が沢山集まつて、自分が存外幅の利かない様に見えた事であつた。新時代の青年を以てみづから居る三四郎は少し小さくなつてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みづからほしひまゝにする歡樂悲愁のおもひは一字に溢れ一句に漲る、かくて單純な言葉の秘密、簡淨な格調の生命は殘る隈なくこゝに發現したのである。島崎氏はこの外に何者をももとめなかつた。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
これは御世話おせわふでやのつまにも挨拶あいさつして、祖母ばゝみづからのむかひに正太しようたいやがはれず、そのまゝれてかへらるゝあとはにはかにさびしく、人數にんずのみかはらねどえねば大人おとなまでもさびしい
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よめ姿すがた彩色さいしきしては、前後左右ぜんごさいう額縁がくぶちのやうなかたちで、附添つきそつて、きざんでこしらへたものが、くものか、とみづから彫刻家てうこくかであるのをあざける了見れうけん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「矢っ張り、電気燈に圧倒されて、段々退却するんでせう」と云ひ終つて、みづから、えへゝゝと、洒落しやれの結末をつけて、書生部屋へ帰つて行つた。代助もつゞいて玄関迄た。門野は振返ふりかへつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
またともゆめむ。たび蒋侯神しやうこうじん白銀しろがね甲胄かつちうし、ゆきごと白馬はくばまたがり、白羽しらはひてしたしみづからまくらくだる。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
広田先生の話しかたは、丁度案内者が古戦場を説明する様なもので、実際を遠くから眺めた地位にみづからを置いてゐる。それで頗る楽天のおもむきがある。あたかも教場で講義を聞くと一般の感を起させる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ふ。われすこちからありて、やわか座頭ざとうおとるまじい大力だいりきのほどがおもはれる。みづからくま張殺はりころしたと名乗なのるのと、どちらが点首うなづかれるかはろんおよばぬ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また奥方様おくがたさまをくはせる……あまつさへ、いま心着こゝろづいて、みゝませてけば、われみづからも、ごろでは鉦太鼓かねたいここそらさぬけれども、土俗どぞくいまる……天狗てんぐさらはれたものをさが方法しかた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すると按摩あんまわれながらちからのほどを、みづからこゝろみたことがないとふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)