しゅ)” の例文
すなわち、「いき」を単にしゅ概念として取扱って、それを包括する類概念の抽象的普遍を向観する「本質直観」をもとめてはならない。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
「そのむすめは、一しゅ精神病者せいしんびょうしゃにちがいなかろう。診察しんさつをして、できることなら自分じぶんちからでなおしてやりたいものだ。」とおもいました。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
呂宋兵衛の辞退をきくと、半助は、だれも刑場けいじょうへでると、一しゅ鬼気ききにおそわれる、その臆病風おくびょうかぜ見舞みまわれたなと、苦笑くしょうするさまで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駒井甚三郎が竜の疑惑から、しゅの問題に進んで行く時、あわただしく金椎キンツイが紙を持って来て、二人の前に提示しました。それを読むと
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その品種すなわち植物学上にいわゆるしゅ(Species)を異にし、特に殊域の品に在てはなお多くはその属(Genus)を同じくせず
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
その線はしゅじゅの色をあらわすもので、光線の成分にしたがって完全な色を見せるのだそうだが、われわれにはそれを区別することが出来ない。
いずれにしても翻訳ということはずいぶん困難な事業でありますが、それについて想い起こすことは、かの「五しゅほん」ということであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
ダーウィンのこれ等の著述のうちで最も名だかいのは、一八五九年に出版された『しゅの起源』と題する書物であります。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
ともかく、そのアヒルは、ポルトガルしゅと呼ばれました。卵を生みましたが、やがて殺されて、料理されました。これが、そのアヒルの一生でした。
わたしはしゅの名の oleracea(料理用の、という意味)が食欲をそそるのでラテン語の学名を挙げたのだ。
一つは人に負けぬこと、一つは人に勝つことである。ゆえにつことについても、この二しゅの考えが含まれている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
いま小樽おたるの公園にる。高等商業こうとうしょうぎょう標本室ひょうほんしつも見てきた。馬鈴薯ばれいしょからできるもの百五、六十しゅの標本が面白おもしろかった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
蓄音機から出てくる音楽と、音叉から出る正しい振動数の音とがたがい干渉かんしょうし合って、また別に第三の音——一しゅ異様いよううなる音が聴えはじめたのであった。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は人間のしゅの改良に努力しているんだから、そうした彼の眼から見ればわれわれなんぞ、たかだか奴隷か、砲火の餌食、乃至駄獣にしきゃ見えんのだ。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
つまるところ、本書ほんしょ小櫻姫こざくらひめ通信者つうしんしゃ、Tじょ受信者じゅしんしゃ、そしてわたくし筆録者ひつろくしゃ総計そうけいにんがかりで出来できあがった、一しゅ特異とくい作品さくひん所謂いわゆる霊界れいかい通信つうしんなのであります。
正月のうちにわたしはしゅじゅの場所に入れておいた私たちの手紙の残りを探し出して、ことごとく焼き捨てた。
事務所へはいってみると、場長じょうちょうはじめ同僚どうりょうまでに一しゅの目で自分は見られるような気がする。いつもは
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
このしゅ仙郷説話の通り名のようになっているが、是は或る一地に保存せられていた歌物語で、筋も単純にすぎ結果も淋しく、時の経過の速さという一点を除けば
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
およそ文章ぶんしょうでは書きあらわせないような、まことにあいすべき、一しゅ特別とくべつな想像力をもっていたのだ。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
今一疋デカと云うポインタァしゅ牡犬おいぬが居る。甲州街道の浮浪犬で、ポチと云ったそうだが、ズウ体がデカイから儂がデカと名づけた。デカダンを意味いみしたのでは無い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
新吉しんきち見物けんぶつしたくてたまらないのですが、そうは出来ません。十いく頭という馬のかいばをつくらねばなりません。何十しゅという動物の食べものをつくらねばなりません。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
その男は、コスモ以上の魔法の力を所有していて、あのときにためらって鏡を砕き得なかった彼の利己的な不決断を呪うような、しゅじゅの事故を作りはしないであろうか。
『ジョリクールの家来』『大将たいしょうの死』『正義せいぎ勝利しょうり』『下剤げざいをかけた病人』、そのほか三、四しゅ芝居しばいをやってしまえば、もうおしまいであった。それで一座いちざの役者のげい種切たねぎれであった。
神学の課程をえますと、つづいてしゅじゅの雑務に従事しましたが、牧師長の人たちはわたしがまだ若いにもかかわらず、わたしを認めてくれまして、最後に聖職につくことを許してくれました。
けだし当時南北戦争ようやみ、その戦争せんそうに従事したる壮年そうねん血気けっきはい無聊ぶりょうに苦しみたる折柄おりからなれば、米人にはおのずからこのしゅはいおおかりしといえども、あるいはその他の外国人にも同様どうようの者ありしならん。
さらなに一種宛ひとくさづゝ靈妙いみじいことなる效能かうのうのある千しゅしゅ吸出すひいだす。
多情卿是傾城種 多情たじょうきみ傾城けいじょうしゅ
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
麺麭料理ぱんりょうり五十しゅ 秋付録 パン料理五十種
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そういった、はは言葉ことば調子ちょうしには、一しゅ安堵あんどがあらわれていました。さきは、って、木枯こがらしのなかあるいてきたおとうと出迎でむかえました。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これはまた、忍剣の鉄杖より、龍太郎のはやわざより、一しゅべつな気稟きひんというもの、下郎大九郎は、すでに面色めんしょくもなく、ふるえあがって両手をついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、確信はない。しかし、もしも針目博士が生きていたら、このしゅの妖術を使うかもしれないと思うだけだ」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それほどたくさんのしゅがどうして生じて来たかとうことが、ともかくふしぎな事がらに違いありません。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
答『いけは一しゅ行場ぎょうばじゃ。人間界にんげんかい御禊みそぎおなじく、みずきよめられる意味いみにもなってるのでナ……。』
かれはその眼中がんちゅう社会しゃかい人々ひとびとをただ二しゅ区別くべつしている、義者ぎしゃと、不義者ふぎしゃと、そうして婦人ふじんのこと、恋愛れんあいのことにいては、いつもみずかふかかんってくのであるが
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
駒井甚三郎と、田山白雲とは、しゅの問題にまで会話が進んだ時に、金椎キンツイのために腰を折られました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さあみんな、あしをつけて。それで、行儀ぎょうぎただしくやるんだよ。ほら、あっちにえるとしとった家鴨あひるさんに上手じょうずにお辞儀じぎおし。あのかたたれよりもうまれがよくてスペインしゅなのさ。
低いアーチ型のドアをはいると、そこには世間によく見うけるしゅじゅのかびくさい、ほこりだらけの古道具がならべてあった。学生はコスモの鑑定に満足して、すぐその鎧を買うことに決めた。
白の旧主きゅうしゅの隣家では、其家の猫の死の為に白が遠ざけられたことを気の毒に思い、其息子が甘藷売りに往った帰りに神田の青物問屋からテリアルしゅねずみほどな可愛い牝犬めいぬをもらって来てくれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうして、これらのしゅじゅの感情の上に、この世の中の有象無象うぞうむぞうが一つの憐れなたましいを墓に追いやるために、こんなにも騒いでいるのかという、ぼんやりした弱い驚きの感じが横たわっている。
米料理こめりょうりしゅ 秋付録 米料理百種
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「三しゅともみんな出しますか」
信吉しんきちはそれをると、一しゅ哀愁あいしゅうかんずるとともに、「もっとにぎやかなまちがあるのだろう。いってみたいものだな。」と、おもったのでした。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しゅ殺気さっき群集ぐんしゅう心理しんりをあっして、四ばん試合じあい、五番試合をいいつのる者も、それをぼうかんしている立場たちばの者も、なんとなくあらッぽい気分にねっしてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ダーウィンが『しゅの起原』を出版したのはその翌年のことで、そこに詳しく自分の説を述べたのです。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
かれには悲愴ひそうかんほかに、まだ一しゅ心細こころぼそかんじが、こと日暮ひぐれよりかけて、しんみりとみておぼえた。これは麦酒ビールと、たばことが、しいのであったとかれつい心着こころづく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それは勿論もちろんかなう……イヤかなわねばならぬふか因縁いんねんがある。なにかくそうそちはもともと乙姫様おとひめさま系統すじいているので、そちの竜宮行りゅうぐうゆきわば一しゅ里帰さとがえりのようなものじゃ……。
そして、どのはながいいだろうと、みまってあるいていますうちに、彼女かのじょは、そばのびんのなかにさしてあった、あかと、しろの二しゅのばらのはなつけたのでした。
花と少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼が働いたり、探険に出掛けたり、そこで頸根っこを折ったりするのは、隣人愛のためじゃなくて、人類だの次世代だの人間の理想しゅだのという抽象概念のためなんだ。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それほど、他国たこくひとのだれか、らないとおくにからきたひとだという、一しゅあこがごころをそそったのでした。
青いボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれ何時いつ囚人しゅうじん出会でっくわせば、同情どうじょう不愉快ふゆかいかんたれるのであるが、そのはまたどううものか、なんともわれぬ一しゅのいやな感覚かんかくが、つねにもあらずむらむらといて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)