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涼
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すず
ふりがな文庫
“
涼
(
すず
)” の例文
そして
凝視
(
ぎょうし
)
している
涼
(
すず
)
しい
眼
(
め
)
には深い
哀
(
かな
)
しみの色がやどっていた。その眼で若者はさっきから
一対
(
いっつい
)
のおしどりをあかずながめていた。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「ああそうか。あすこは
涼
(
すず
)
しいからな。
将棋
(
しょうぎ
)
をさしたり、ひるねをしたりするのにはいいだろう。」と、お
父
(
とう
)
さんはわらわれました。
おさらい帳
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
こう口のうちで
呟
(
つぶや
)
きながら、初めて
瞑目
(
めいもく
)
をみひらいた法月弦之丞、その
涼
(
すず
)
やかな
眸
(
ひとみ
)
には、何か強い記憶のものがよみがえっていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が、今年もお
揃
(
そろ
)
ひの派手な縮み
浴衣
(
ゆかた
)
を着は着ても、
最早
(
もは
)
やその
裾
(
すそ
)
から玉のやうな
踵
(
かかと
)
をこぼして
蛍狩
(
ほたるがり
)
や庭の
涼
(
すず
)
みには歩かなかつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
その晩宗助は裏から大きな
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉を二枚
剪
(
き
)
って来て、それを座敷の縁に敷いて、その上に御米と並んで
涼
(
すず
)
みながら、小六の事を話した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「おあげしましょう、なんなら上へおあがりになって、お休みになったら
如何
(
いかが
)
でございます、奥の
室
(
へや
)
が
涼
(
すず
)
しゅうございますよ」
雑木林の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「やあ、だいぶん
涼
(
すず
)
しくなりましたねえ」と声をかけたものがある。もちろんそれは帆村荘六だった。光技は、どぎまぎして
什器破壊業事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その上、朝早いので
涼
(
すず
)
しくて、何とも言えない楽しい気がした。僕は子供の時の遠足の朝を思い出しながら気が勇み立った。
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
あなたは
縫
(
ぬ
)
うて居られた彼
露台
(
バルコニー
)
の
夕
(
ゆうべ
)
! 家の息達と令嬢とマンドリンを
弾
(
ひ
)
いて歌われた彼ヹランダの一夜! 彼ヷロンカの水浴! 彼
涼
(
すず
)
しい
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
昨夜なア、うちの河堀と金沢が、ボオト・デッキで
涼
(
すず
)
んでいたら、暗い
蔭
(
かげ
)
になったほうでガサゴソ物音がするんだそうだ。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
枷
(
かせ
)
にして
詰
(
つ
)
め寄るとなにとぞどこへなとお
遣
(
や
)
りなされて下さりませ一生独り身で
暮
(
く
)
らす私に足手まといでござりますと
涼
(
すず
)
しい顔つきで云うのである
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
眠
(
ねむ
)
くなった。
今夜
(
こんや
)
はどこに
寝
(
ね
)
ようかな、
臼
(
うす
)
の中にしようか。
釜
(
かま
)
の中にしようか。下に
寝
(
ね
)
ようか。二
階
(
かい
)
に
寝
(
ね
)
ようか。そうだ、
涼
(
すず
)
しいから二
階
(
かい
)
に
寝
(
ね
)
よう。
山姥の話
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
ト同じ
燈籠
(
とうろう
)
を手に
提
(
さ
)
げて、とき色の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
の透いて見える、
羅
(
うすもの
)
の
涼
(
すず
)
しい
形
(
なり
)
で、
母娘連
(
おやこづれ
)
、あなたの
祖母
(
おばあさん
)
と二人連で、ここへ来なすったのが、
※
(
ねえ
)
さんだ。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今その格子戸を明けるにつけて、細君はまた今更に物を思いながら外へ出た。まだ
暮
(
く
)
れたばかりの
初夏
(
しょか
)
の
谷中
(
やなか
)
の風は上野つづきだけに
涼
(
すず
)
しく心よかった。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は
涼
(
すず
)
しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
白髥橋を徒歩で往来する人は、よくよく急ぎの用でもない限り、妙なもので、一度は立止って
欄干
(
らんかん
)
に
凭
(
もた
)
れて、じっと
川面
(
かわも
)
を見下している。夏の
外
(
ほか
)
は、
涼
(
すず
)
みの為とは云えぬ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ある
夕
(
ゆうべ
)
、雨降り風
起
(
た
)
ちて
磯
(
いそ
)
打つ波音もやや荒きに、
独
(
ひと
)
りを好みて言葉すくなき教師もさすがにもの
淋
(
さび
)
しく、二階なる
一室
(
ひとま
)
を下りて主人夫婦が足投げだして
涼
(
すず
)
みいし縁先に来たりぬ。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それからひと月ばかり花前の
新傾向
(
しんけいこう
)
はさしたる
発展
(
はってん
)
もなく秋もようやく
涼
(
すず
)
しくなった。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
フリージア、珍しくいい匂いでしょう? さっぱりしたいい匂いかぐと眼の中が
涼
(
すず
)
やかになるでしょう。
袍着
(
わたいれ
)
のこと、ああ云っていらしたので気にかかります。悪寒がなすったのでしょうか。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
『お
涼
(
すず
)
みですか。』と吉野が言つて、一行はゾロ/\と玄関に寄つた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
世人
(
せじん
)
、イヤ歌読みでも、
俳人
(
はいじん
)
でも、また学者でも、カキツバタを燕子花と書いて
涼
(
すず
)
しい顔をして
納
(
おさ
)
まりかえっているが、なんぞ知らん、燕子花はけっしてカキツバタではなく、これをそういうのは
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
その時、ふっと私は、
久方振
(
ひさかたぶ
)
りで、
涼
(
すず
)
しい幸福感を味わいました。
おさん
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
眞夏過ぎ
簾
(
すだれ
)
うごかす
廂合
(
ひあはひ
)
の朝の
涼
(
すず
)
かぜを君はたのめぬ
白南風
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
やあ これは
涼
(
すず
)
しい
小熊秀雄全集-22:火星探険―漫画台本
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
「ほんとう、ここは
涼
(
すず
)
しいよ。そんなら、
明日
(
あした
)
から、
木
(
き
)
の
下
(
した
)
で、おもしろいお
話
(
はなし
)
をしてくれたり、ハーモニカを
吹
(
ふ
)
いて
聞
(
き
)
かしておくれよ。」
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
切れ目のはっきりした
涼
(
すず
)
しい
眼
(
め
)
つきだけは
撮
(
うつ
)
されている男女に共通のものがあってこの土地の人の
風貌
(
ふうぼう
)
を特色づけていた。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
手摺
(
てすり
)
の前はすぐ大きな川で、座敷から
眺
(
なが
)
めていると、大変
涼
(
すず
)
しそうに水は流れるが、
向
(
むき
)
のせいか風は少しも入らなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
涼
(
すず
)
しいはずの信州や上越の山国地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。
三十年後の世界
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
白布
(
しらぬの
)
の
汗止
(
あせど
)
め、キッチリとうしろに
結
(
むす
)
び、思いきって
袴
(
はかま
)
を高くひっからげた
姿
(
すがた
)
——
群集
(
ぐんしゅう
)
のむかえる眼にも
涼
(
すず
)
しかった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ああ、ジョバンニ、お
仕事
(
しごと
)
がひどかったろう。
今日
(
きょう
)
は
涼
(
すず
)
しくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ」
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
建具
(
たてぐ
)
取払って食堂が
濶
(
ひろ
)
くなった上に、風が立ったので、晩餐の
卓
(
たく
)
は
涼
(
すず
)
しかった。飯を食いながら、
唯
(
と
)
見
(
み
)
ると、夕日の残る
葭簀
(
よしず
)
の二枚屏風に南天の黒い影が
躍
(
おど
)
って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と、
恁
(
こ
)
う申すのではござりませぬか、と言ひも
未
(
ま
)
だ果てなかつたに、島の
毒蛇
(
どくじゃ
)
の
呼吸
(
いき
)
を消して、
椰子
(
やし
)
の峰、
鰐
(
わに
)
の
流
(
ながれ
)
、
蕃蛇剌馬
(
ばんじゃらあまん
)
の黄色な月も晴れ渡る、世にも
朗
(
ほがら
)
かな
涼
(
すず
)
しい声して
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「やめてもよかろう、やめて別院の下の
涼
(
すず
)
しいところへ往って、一杯やるとしょうか」
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
静子は、私よりも一足先に来て、
涼
(
すず
)
しい土蔵の中のベッドに腰かけて待っていた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
大抵
(
たいてい
)
のひとが暑さにかまけて、
昼寝
(
ひるね
)
でもしているか、
涼
(
すず
)
しい船室を選んで
麻雀
(
マアジャン
)
でも
闘
(
たたか
)
わしているのに、ぼくは
炎熱
(
えんねつ
)
で
溶
(
と
)
けるような甲板の上ででも、あなたや内田さんと、デッキ・ゴルフや
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
こう暑くなっては皆さん
方
(
がた
)
があるいは高い山に行かれたり、あるいは
涼
(
すず
)
しい
海辺
(
うみべ
)
に行かれたりしまして、そうしてこの悩ましい日を充実した生活の一部分として送ろうとなさるのも
御尤
(
ごもっと
)
もです。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
真夏過ぎ
簾
(
すだれ
)
うごかす
廂合
(
ひあはひ
)
の朝の
涼
(
すず
)
かぜを君はたのめぬ
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
鈴虫
(
すずむし
)
が、
涼
(
すず
)
しい声でなくようになりました。
赤とんぼ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
風はも
涼
(
すず
)
し。
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そのとき、
二人
(
ふたり
)
の
目
(
め
)
には、
水
(
みず
)
の
清
(
きよ
)
らかな、
草
(
くさ
)
の
葉先
(
はさき
)
がぬれて
光
(
ひか
)
る、しんとした、
涼
(
すず
)
しい
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
く
川面
(
かわも
)
の
景色
(
けしき
)
がありありとうかんだのであります。
海ぼたる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
涼
(
すず
)
しいはずの
信州
(
しんしゅう
)
や
上越
(
じょうえつ
)
の
山国
(
やまぐに
)
地方においてさえ、夜は雨戸をあけていないと、ねむられないほどの暑くるしさだった。
三十年後の東京
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その柱の一本に
掴
(
つかま
)
って青白い
生
(
いき
)
ものが水を掻いている。薫だ。薫は小初よりずっと体は大きい。
顎
(
あご
)
や
頬
(
ほお
)
が
涼
(
すず
)
しく
削
(
そ
)
げ、整った美しい顔立ちである。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
心頭
(
しんとう
)
を
滅
(
めっ
)
すれば火も
涼
(
すず
)
し——と
快川和尚
(
かいせんおしょう
)
は
恵林寺
(
えりんじ
)
の
楼門
(
ろうもん
)
でさけんだ。まけおしみではない、
英僧
(
えいそう
)
にあらぬ
蛾次郎
(
がじろう
)
でも、いまは、火のあついのを
意識
(
いしき
)
しなくなった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
校長は
瘠
(
や
)
せた白い狐で
涼
(
すず
)
しそうな
麻
(
あさ
)
のつめえりでした。もちろん狐の洋服ですからずぼんには
尻尾
(
しっぽ
)
を入れる袋もついてあります。仕立賃も
廉
(
やす
)
くはないと私は思いました。
茨海小学校
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
苗代の水に
映
(
うつ
)
る
青空
(
あおぞら
)
に
漣
(
さざなみ
)
が立ち、二寸ばかりの
緑秧
(
なえ
)
が一本一本
涼
(
すず
)
しく
靡
(
なび
)
いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
仕方がないから部屋の中へはいって
汗
(
あせ
)
をかいて
我慢
(
がまん
)
していた。やがて湯に入れと云うから、ざぶりと飛び込んで、すぐ上がった。帰りがけに
覗
(
のぞ
)
いてみると
涼
(
すず
)
しそうな部屋がたくさん空いている。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
五日目の
大入
(
おおいり
)
を
刎
(
は
)
ねたあとを、
涼
(
すず
)
みながら船を
八葉潟
(
やつばがた
)
へ浮べようとして出て来たのだが、しこみものの
鮨
(
すし
)
、
煮染
(
にしめ
)
、
罎
(
びん
)
づめの酒で月を見るより、
心太
(
ところてん
)
か安いアイスクリイムで、
蚊帳
(
かや
)
で寝た方がいゝ
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ほどよい位置に
吊
(
つる
)
された
岐阜提灯
(
ぎふぢょうちん
)
は
涼
(
すず
)
しげな光りを放っている。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼
(
かれ
)
らは、
電車道
(
でんしゃみち
)
を
横切
(
よこぎ
)
って、
緑
(
みどり
)
の
樹
(
き
)
がたくさん
目
(
め
)
に
入
(
はい
)
る、
静
(
しず
)
かな、せみの
鳴
(
な
)
き
声
(
ごえ
)
のする、
涼
(
すず
)
しい
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
いだのであります。
白い雲
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
寺の前がすぐ大堰川の流で「
梵鐘
(
ぼんしょう
)
は清波を
潜
(
くぐ
)
って
翠巒
(
すいらん
)
に
響
(
ひび
)
く」という
涼
(
すず
)
しい
詩偈
(
しげ
)
そのままの境域であります。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
“涼”の意味
《名詞》
涼(りょう)
涼しさ。
(出典:Wiktionary)
涼
常用漢字
中学
部首:⽔
11画
“涼”を含む語句
荒涼
納涼
夕涼
夜涼
涼風
朝涼
涼気
清涼
爽涼
涼台
門涼
清涼殿
凄涼
涼夜
新涼
涼衣
涼炉
涼船
清涼院
涼傘
...