きはま)” の例文
木曾の溪山は十數里、其特色たる、山に樹多く、けい激湍げきたん多く、茅屋ばうおく村舍山嶰さんかい水隈すゐわいに點在して、雲烟の變化殆どきはまりなきにありといふ。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
あひだ婦人ふじん心痛しんつう恐怖きようふはそも、をしぼるあせつて、くれなゐしづく垂々たら/\ちたとふ。くるしみまたきはまつて、ほとん狂亂きやうらんして悲鳴ひめいげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かげ名譽めいよたすかつた。もう出發しゆつぱつしませう。這麼不徳義こんなふとくぎきはまところに一ぷんだつてとゞまつてゐられるものか。掏摸すりども墺探あうたんども
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さうして見ると人民一般は田とも云はず畠とも云はず、道のない所を縱横に歩いて居るのであります。實に亂雜きはまつて居る、むちやであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さして送らせける其後種々しゆ/″\樣々さま/″\吟味有けるに先の申たてと相違も無きこと故これより大惡の本人ほんにんたる重四郎の段右衞門と愈々いよ/\突合つきあはせ吟味とこそはきはまりけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ながわづか日數ひかずうち渺々べうべうたるはたけをからりとさせて、しばらくすると天候てんこうきはまりない變化へんくわを一ぱいひろげて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それを私が今日こんにち始めて知つたのではない、知つて身をおとしたのは、私は当時敵手さきを殺して自分も死にたかつたくらゐ無念きはまる失望をした事があつたからです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
妾宅といふやうな不真面目ふまじめきはまる問題をば、全然其れとは調和しない形式の漢文を以て、仔細らしく論じ出して、更に戯作者風の頓智滑稽の才をふるつて人を笑はす。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
日頃ひごろ沈着ちんちやくで、何事なにごとにも動顛どうてんしたことのない大佐たいさおもてには、此時このとき何故なにゆゑか、心痛しんつうきはまりなきいろえたのである。
しからんな。名の為にじつを顧みないに至つては閥族ばつぞくの横暴もきはまれりだ。」と憤慨ふんがいした。
饒舌 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
先生せんせい言論げんろんには英雄えいゆう意氣いきみちながら先生せんせい生活せいくわつ一見いつけん平凡へいぼんきはまるものでした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「馬鹿、不親切きはまる、何を着れば好いんだ。如何いかに田舎者だつて、それ位の注意が出来んでうなる。」と散々毒づいて見たが、妹は病上やみあがりの蒼い顔して黙つて俯向うつむいてばかり居るので
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
警察の方なども緩漫くわんまんきはまつて居りまするから——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しん不亂ふらんいのりしに今日ははや源内の罪きはまり御仕置と聞し故娘の豐は其日ちゝの引れゆきし御仕置場へ行て見るに終にあだつゆ消果きえはてしゆゑ泣々なく/\も其所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一隊いつたい三十有餘名いうよめい三年さんねん以來いらい馴染なじみ水兵等すいへいらは、わかれをしまんとて、輕氣球けいきゝゆう周圍ぐるり取卷とりまいたが、たれ一言いちごんはつするものい、なかには感慨かんがいきはまつて、なみだながしたものもあつた。
みちぬるものなら一あしでもまへすゝんで、世間せけんものゆめにもらぬどろ大沼おほぬま片端かたはしでもかうと、覚悟かくごきはまつては気味きみわるいもなにもあつたものぢやない
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
る、宮は行き行きて生茂おひしげる柳の暗きに分入りたる、入水じゆすいの覚悟にきはまれりと、貫一は必死の声をしぼりてしきりに呼べば、咳入せきいり咳入り数口すうこう咯血かつけつ斑爛はんらんとして地にちたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其のかはりに残忍きはま殺戮さつりくの描写は、他人種の芸術に類例を見ざる特徴であつて、所謂いはゆる「殺しの場」として黙阿弥劇中興味の大部分を占めてゐる事は、今更らしく論じ出すにも及ぶまい。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
不汚ふけつきはま動物どうぶつで、始終しゞゆうはなくやうな、むねわるくなる臭氣しうきはなつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
合せ見るにしつくりとあひければ扨は此者に相違さうゐなしとて家内を檢査あらためしに戸棚のすみの重箱に財布さいふに入りたる金八十兩有りければ彌々いよ/\盜賊火附にきはまりしと此趣このおもぶきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『いや、けつしてわらふのではないが、其事そのこと心配しんぱいするにはおよばぬよ、奧樣おくさま日出雄少年ひでをせうねんも、わたし生命いのちにかけて保護ほごしてげる。』とつたが、亞尼アンニーほとんど絶望ぜつぼうきはまりなきかほ
今日こんにちのこの軽薄きはまつた世の中に、とてもそんな心掛のある人間は、私は決して在るものではないと念つてをつた。で、もし在つたらば、どのくらゐ嬉からうと、さう念つてをつたのです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
或時あるときづる立山りふざんかたより、或時あるとき神通川じんつうがは日沒につぼつうみよりさかのぼり、えのき木蔭こかげ會合くわいがふして、お月樣つきさまび、お十三じふさんし、パラリとつて三々五々さん/\ごゞかのつゑひゞところ妖氛えうふんひとおそひ、變幻へんげん出沒しゆつぼつきはまりなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
車室しやしつうちはさのみ不潔ふけつ人間計にんげんばかりではなかつたが、ミハイル、アウエリヤヌヰチはすぐ人々ひと/″\懇意こんいになつてたれにでもはなし仕掛しかけ、腰掛こしかけから腰掛こしかけまはあるいて、大聲おほごゑで、這麼不都合こんなふつがふきはま汽車きしやいとか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)