)” の例文
とにかくに四つか五つの年から数年の間、毎年この実が熟すると必ずりに行き、草履ぞうりを泥だらけにしてしかられたことも覚えている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
慈悲深い男は、家外の寒さを思い遣り乍ら室内のストーヴの火に暖をり、椅子にふかふかと身を埋めて静に読書して居りました。
慈悲 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
植木屋うえきやは、日当にっとうがもらえるし、ゆけば、またなにかめずらしい高山植物こうざんしょくぶつってこようとおもいましたので、ついにゆくことにしました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くさでは「いたどり」や「すいこぎ」がべられましたが、あの「すいこぎ」のくきつてておうち鹽漬しほづけをしてあそぶこともありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
昔かの岩代いわしろ〔福島県の西部〕の安積あさかの沼のハナショウブをり来って、園芸植物化せしめたといわれるが、それはたぶん本当であろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「これだけでもらせるのは、やっとだったよ。……でも、恭一や俊三が、これからはめったに食べられないだろうと思ってね。」
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
この尾行者のあるのに気がついたのは、横浜はまの銀座といわれるあのにぎやかな伊勢佐木町いせざきちょう夜食やしょくり、フラリと外へ出た直後のことだった。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「へエ、いらつしやいまし。丁度今年つたばかりの新しいのが御座います。これ徳どん、其處からお入れ物を持つて來てお眼にかけな」
処が明政府は既に李如松を提督に任命して、朝鮮救援の軍を遼東に集中しつつあったので、今更惟敬の説をり上げ様としない。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
是公の話によると、この間高峯譲吉たかみねじょうきちさんが来て、高粱からウィスキーをるとか採らないとかしきりに研究していたそうである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次には鏑矢かぶらやを大野原の中に射て入れて、その矢をらしめ、その野におはいりになつた時に火をもつてその野を燒き圍みました。
その客観的表現である自然形式の要点は、一元的平衡を軽妙に打破して二元性を暗示するという形をるものとして闡明せんめいされた。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
ありません。その代りお直段ねだんは少し高うございますけれども京都の本場で、昨日きのうれた品ですからこの通りまだにおいが抜けません
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
平日しめしていはれしは、我雪頽なだれうたれしとき筆をりてたりしは、たふと仏経ぶつきやうなりしゆゑたゞにやはとて一ごと念仏ねんぶつ申て書居かきをれり
これは一じょうの笑話であるが、活世界かつせかいにおいては、あからさまにいわなくとも、胸中ではこういう算盤そろばんるものがたくさんある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おつぎは勘次かんじないとき牝鷄めんどり消魂けたゝましくいてればぐにとやのぞいてあたゝかいたまごひとつをつて卯平うへいむしろころがしてやることもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
土耳古帽氏はふたたび畠のそばから何かって来て、自分の不興を埋合うめあわせるつもりでもあるように、それならこれはどうです、と差出してくれた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
丑之助は、った自分の芋を、自慢して肩へかついだ。だが、その芋の先は完全でなかった。折れ口が白い乳を出していた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本官がってもって、この裁判に応用して、最後の断案を下さむと欲する、所謂第二の手段の憑拠ひょうきょとなるべき、根本原則に外ならないのである。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お千代は気楽に田圃たんぼを眺めて、ただならぬおとよの顔には気がつかない。おとよは余儀なく襷をはずし手拭をって二人一緒に座敷へ上がる。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
るべからずといった命令を取り消す。近く仏軍首脳部において全線総攻撃の計画ありと聞く。いかなる方法をもってもその時日を確かめよ。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
それがぼく出身しゆつしん學校がくかうなのです、四十幾歳いくさい屈強くつきやう體躯からだをした校長かうちやう大島氏おほしましは、四五にん教員けうゐん相手あひてに二百餘人よにん生徒せいと教鞭けふべんつてられます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
学校のラボラトリーでやっている実験ですが、五升芋ごしょういも馬鈴薯ばれいしょの地方名)から立派なウ※スキーのれる方法に成功しそうになっているんです。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
だいこんでも里芋さといもでもねぎでも、りたてのものばかりしか食べていませんが、この採りたてのものは、質が違うと思われるほど美味うまいものです。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
といって、外にこの不思議な消失を解くすべはないのだから、どんなに不自然に見えようとも、やっぱりその方法をったと考えなければならぬ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
斯うよう、周玄さんが□□□□ても、禮三さんが□□□□ても議論の種だから中をって此の長治が今夜□□□□よう
行先ゆくさきあんじられて、われにもあらずしよんぼりと、たゝずんではひりもやらぬ、なまめかしい最明寺殿さいみやうじどのを、つてせうれて、舁据かきすゑるやうに圍爐裏ゐろりまへ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
製法せいはうは自然の扁平石へんへいせきの小さきものをり、又は石を打ちり减らして斯かる形と爲し、其上に燧石抔ひうちいしなぞの尖りたる角にて切り目を付けしものならん
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
山葡萄をちぎっては猿に気の毒、コクワをっては熊に気の毒、深林を開いてはアイヌに気の毒なのも、自然である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これは明らかに荷が勝ち過ぎたのと、彼の体力の不足から来たものだろう。予は彼の為に、後者を其の原因にる。
爺奴ぢゞいめおどかす氣になつて、「竿持つて來て叩き落すぞつ。」つて云ふから「そんな事するならうして呉れるぞ。」つて、僕は手當り次第林檎をつて打付ぶつつけた。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ガエタアノ、お婆さんが病気でたきぎりに行かれないから、今夜わたしと一所に森へ行つて、薪を一二お婆さんへ持つて行つてやる手伝ひをして頂戴な。」
翻訳小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
青山あおやま兵営の裏手より千駄せんだくだる道のほとりにも露草つゆくさ車前草おおばこなぞと打交うちまじりて多く生ず。きたりてよく土を洗ひ茎もろともにほどよくきざみて影干かげぼしにするなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
またある人はごくじょうぶそうな、どこからみてもたくさんちちを出しそうな雌牛めうしを買ったが、二十四時間にコップに二はいのちちしかれなかったという話もある。
野からって来て紙に張ったままそのままにしてあったのを一つ一つ誰にもわかるように分類してみた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「百合花のやうに美しく、彼のいのちの誇であるばかりか、彼の眼の希望のぞみだ。」それから十分間だけ何か朝食をる時間をあげると云つて、彼は呼鈴ベルを鳴らした。
天地あめつちに少し至らぬ丈夫ますらをと思ひし吾や雄心をごころもなき」(巻十二・二八七五)、「大地おほつちらば尽きめど世の中に尽きせぬものは恋にしありけり」(巻十一・二四四二)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
すると先生は軽快な口調で、この屋敷がさう呼ばれるのは決していちごれるからといふ訳ではないので、実は、フレジエと云ふ人が現今の規模に改修したからなのです。
これは徹底的に小田原北条氏を討滅することが、直ちに関東奥羽全体の処分を定むる所以であることを述べたのである。我が古い俗諺ぞくげんに、「木乃伊みいらりが木乃伊になる」
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
自意識過剰かじょうで、あんな君、逃避的とうひてきな態度ばかりっていたら、力ある文化の芽は新鮮な若葉をももたらさず、来るべき新時代の雄渾ゆうこんな精神の輝やかしき象徴たり得ずして
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
槍に登って余裕のある人は、中途高山植物の奇品をりながらこの峰に登るも面白かろう。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
須勢理毘売すせりひめと婚するに臨み、今も蛮民間に行わるるごとく、姫の父須佐之男命すさのおのみことが、種々と大黒主神を苦しめてその勇怯を試みる中に、鳴鏑かぶらやを大野の中に射てその矢をらしめ
「オヽ、もう品川ぢや、浜子」と侯爵は少女の手をりて急がしつ「今夜は杉田の別荘に一泊するから失敬する」と言ひ棄てたるまゝ悠然いうぜん降り立ちて、やみうちへと影を没せり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
犠牲ぎせいだとか精神的せいしんてき教育けういくだとか能弁的のうべんてき社界しやかいうつたへながら自らは米国的べいこくてき安楽主義あんらくしゆぎるものなり、即ち義を見て為し得ざる卑怯者ひけうしやなり、即ち脳髄のうずい心臓しんざう性質せいしつことにするものなり
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
「天下の風雲をよそにして、菊を南山なんざんるという趣があります、おうらやましい境涯です」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その外国人がこの小川に砂金さきんれるなど云い出し一時非常に騒がれたことがあった。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いまだ全部の完結せざる故にや、地理学者の多くは同所の予察図にり、約三十年前に出版されたる日光図幅の正確なるものにらずして、『大日本地誌』の如きも平ヶ岳を省きて
平ヶ岳登攀記 (新字新仮名) / 高頭仁兵衛(著)
「山がないとすると、ダイヤモンドはどこからってくるのでしょうね。」ジェッシイはくすくす笑いながらいいました。「あなた、ガアトルウドが、何といったとお思いになる?」
たきゞる翁、牛ひくわらんべ、餘念なく歌ふふし、餘所に聞くだに樂しげなり。瀧口く/\四方よもの景色を打ち眺め、稍〻やゝ疲れを覺えたれば、とある路傍の民家に腰打ち掛けて、暫く休らひぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
合符がっぷ、剣にしたがっていまだに別在しているところに、地下の孫六のたましいは休まる暇とてもなく、それが地表にあらわれてこのあらゆる惨風凄雨さんぷうせいうかたちっているのであろう……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)