うけたま)” の例文
火星の女こと甘川歌枝と、娘のアイ子が県立高女在校中、無二の親友であったと言うようなお話も、只今初めてうけたまわった位の事です。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それは意義のあることだ。是非うけたまわり度い。あのレコードは何処どこの国語か知らないが、望月君の翻訳で聴くのも一段ではないか」
「平素より御隠居さま、一芸一能のある者共を、あまさず、御見知り置き遊ばしたいという、お言葉をうけたまわり居りましたれば——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「マ、そ、その、人斬庖丁ひときりぼうちょうという物騒ぶっそうなものを納めなされ。そして、そして、何なりと、ゆっくり話をうけたまわろうではござらぬか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
こういうにがい真理をうけたまわらなければならない我々日本人も随分気の毒なものだが、彼のようにたった一人の秘密を、つかもうとしては恐れ
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのこたうけたまはらずば歸邸きていいたしがたひらにおうかゞひありたしと押返おしかへせば、それほどおほせらるゝをつゝむも甲斐かひなし、まことのこと申あげ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その館へ参ってお泊りなされ。和田の翁よりうけたまわったと、このように申せば喜んで泊めよう。さあさあおいで、行ってお泊り
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老叟らうそうわらつて『さう言はるゝにはなに證據しようこでもあるのかね、貴君あなたものといふれきとした證據しやうこが有るならうけたまはりいものですなア』
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うけたまわってみるといかにもごもっともの点もあるように考えます。会議の結果早速旅行券を上げることに決定致しましたから四時頃までお待ち下さい
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やはらげ相摸殿よくうけたまはられよ徳川は本性ほんせいゆゑ名乘申すまたあふひも予が定紋ぢやうもんなる故用ゆるまでなり何の不審ふしんか有べきとのことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
段々だん/″\うけたまはれば蓄音器ちくおんきから御発明ごはつめいになつたとふ事を聞きましたがえらいもんや、うしてもこれからの世界に世辞せじふものは無ければならぬ、必要ひつえうのものぢや
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……さて時にうけたまはるが太夫たゆう貴女あなたは其だけの御身分、それだけの芸の力で、人が雨乞あまごいをせよ、と言はば、すぐに優伎わざおぎの舞台に出て、小町こまちしずかも勤めるのかな。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「単に一身上の都合によりと書いてあるが、その辺をハッキリうけたまわって置かないと、相談が出来ません」
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何でも私が人伝ひとづてうけたまわりました所では、初めはいくら若殿様の方で御熱心でも、御姫様はかえって誰よりも、素気すげなく御もてなしになったとか申す事でございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
伝わっているようにもうけたまわるのはかたじけないことで、少なくとも是は一国の古事を学ばんとする者に、或る方法を設けてあずかり知らしめておくべきとうとい事実であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
勿論もちろんこれには深い事情がお有んなさるのでせう。ですから込入こみいつたお話はうけたまはらんでもよろしい、但何故ただなにゆゑに貴下方はきてをられんですか、それだけお聞せ下さい」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「時に太夫は京師けいしを出発される前に妻子を離別してこられたとうけたまわるが」と、一人がまた言いだした。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
雪合戦ゆきがっせんをすると、にんじんはたった一人で一方の陣をうけたまわる。彼は猛烈だ。で、その評判は遠くまで及んでいるが、それは彼が雪の中へ石ころを入れるからである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
殊に今晩の御趣意をうけたまわりまして、主人もお話の選択によほど苦しんでいたようでございました。
『御家老。——うけたまわればすでに、公儀御使こうぎおつかいの大目付荒木十左衛門まで、開城のお受けを差出された由でござるが、それは、噂でござろうか、それとも、真実でござろうか』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陛下はまれに見る美人でおわしました。明眸皓歯めいぼうこうしとはまさにこの君の御事と思わせられた。いみじき御才学は、包ませられても、御詠出の御歌によってうけたまわる事が出来た。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「それでは申しあげますが、今うけたまわれば、当方こちらの奥さまが、何かまちがいをしでかしまして」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
して、櫻木君さくらぎくん一行いつかう意外ゐぐわい天變てんぺんのために、きたる二十五にち拂曉ふつげう橄欖島かんらんたう附近ふきんにて貴下等きから應援おうえんつのですか、よろしい、うけたまはる以上いじやう最早もはや憂慮いうりよするにはおよびません。
「君にはなにごとを躊躇ちゅうちょしたもうや、敵の軍勢はいきおいに乗じたり、ここは本城に退きて後日の合戦をまつべきなり、はやはや浜松へ退きたまえ、それがししんがりをうけたまわる」
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
御当所は繁華にまさる御名地とうけたまわり、名ある諸芸人、入れかわり立ちかわり、芸に芸当を取りつくしたるそのあとに、みじくなる我々どもがまかりいで、相勤あいつとめまする極彩色写絵ごいさいしきうつしえ
顎十郎捕物帳:15 日高川 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「劍山登攀とうはん冒険談」なる、昨四十年七月末『富山日報』にでたる切抜を郵送せられ、かつ「先日山岳会第一大会に列席して諸先輩の講演、ことに志村氏の日本アルプスの話など、うけたまわり、 ...
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
うけたまわると、犯人は妙な三重の渦巻の指紋を持った奴だということですが……」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ところが、私といたしましたことが、宿を出て、道の一、二丁も参りましたとき、思いついたのでございますが、御隠居さまの御用をうけたまわって来ることを、失念いたしていたのでございます。
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
いや、じつに私めも今朝けさそのおはなしをうけたまわりまして、なみだながしてござります
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
嗚呼、何等の特操なき心ぞ、「うけたまはりはべり」とこたへたるは。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「町方の御用を勤める平次と申すものですが、福井町の城彈三郎さんのことに就て、ちよいとお話をうけたまはり度いことが御座いますが——」
それで二人のうちの一人が他を招待して、秋刀魚のご馳走ちそうをする事になりました。そのむねうけたまわって驚ろいたのは家来です。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「貴殿のお話うけたまわらぬ以前まえなら、お譲りしたかは知れませぬが、承わった現在においては、お譲りすることなりませぬ」
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「初めてうけたまわるお痛わしいおはなし、なんとも申しあげようがございません。村の方々をはじめ大次郎さまも、さぞ、さぞ口惜しく思召して——。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そういうお医者であるということをうけたまわる上は、実はこちらにも非常な病人がありますからそれも見て戴きたい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
なんだつておまへまつてらアね、うけたまはりますれば御邸おやしきからなに御拝領物ごはいりやうものきまして、私共わたくしどもまでお赤飯せきはん有難ありがたぞんじますてんだよ。亭「おせきさんを有難ありがたう。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さりながら徃日いつぞや御詞おんことばいつはりなりしか、そちさへに見捨みすてずば生涯しやうがい幸福かうふくぞと、かたじけなきおほうけたまはりてよりいとゞくるこゝろとめがたく、くちにするは今日けふはじめてなれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とき扇子使あふぎづかひのめて、默拜もくはいした、常光院じやうくわうゐん閻王えんわうは、震災後しんさいご本山ほんざん長谷寺はせでらからの入座にふざだとうけたまはつた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一斉にスッパ抜いているという風評をうけたまわった位ですが……これはむしろ外務省の機密局か、もしくは
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「御経をうけたまわり申した嬉しさに、せめて一語ひとことなりとも御礼申そうとて、まかいでたのでござる。」
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
當分たうぶん押込おしこめおきなほたすけ候半んと存ぜし中相役の立花左仲と申者竊に主人しゆじんと申合せ絞殺しめころし其儀に付右等の儀は全くあとにてうけたまはりたることゆゑ萬事の儀ども相違さうゐ仕つりて候と申たてけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うけたまわりますれば、殿様がお成りあそばされたそうで、さぞお疲れの事と存じます」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし、段々と、お話をうけたまわっていますと、それにも道理のあること、と合点がてんしたのでございます。この方は、私が最初に推量いたしましたように、名ある資産家の御隠居さまでございました。
両面競牡丹 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
何卒なにとぞ余所よそながらもうけたまはりたく存上候ぞんじあげさふらふは、長々御信おんたよりも無く居らせられ候御前様おんまへさま是迄これまで如何いか御過おんすご被遊候あそばされさふらふや、さぞかしあら憂世うきよの波に一方ひとかたならぬ御艱難ごかんなんあそばし候事と、思ふも可恐おそろしきやうに存上候ぞんじあげさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「いや、今うけたまわって思い当ったんです。矢っ張り凄いな、吉川君は」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
名所などころとほど(程)などをうけたまはり候へ 殿へも申合せさうらふべく候
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大きな事を言やがる。お上の御用をうけたまはる者が、手弄てなぐさみなどしちやならねえと、あれほどやかましく言つて居るぢやないか」
ってその人物をうけたまわると、もとは家老かろうだったが今では家令かれいと改名して依然として生きていると何だか妙な事を答える。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「討手をうけたまわるほどの人々の、何んというきたなき振る舞いぞ、あなたよりおいでないならば、こなたより推参つかまつる!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はい。男「少々せう/\ものうけたまはりたうございますが、此処こゝ何処どこですね。女「此処こゝは六だうつじでございますよ。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)