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彼方此方
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かなたこなた
ふりがな文庫
“
彼方此方
(
かなたこなた
)” の例文
そこは、帝都のあっちこっちを見下ろすに、
可也
(
かなり
)
いい場所だった。眺めると、帝都の
彼方此方
(
かなたこなた
)
には、三四ヶ所の火の手が上っていた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に駈け𢌞つて、
球
(
たま
)
を投げてゐる學生の姿が、日の輝きと
眺望
(
ながめ
)
の
廣濶
(
ひろさ
)
に對して、小さく黒く影の動いて居るやうに見える。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
目科も立留りて
暫
(
しば
)
し
彼方此方
(
かなたこなた
)
を眺め居たるが
頓
(
やが
)
て目指せる家を見出せし如く
突々
(
つか/\
)
と
歩去
(
あゆみさ
)
るにぞ藻西の家に入る事かと思いの外
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
それへ答えるのではないが、すでに営中の
彼方此方
(
かなたこなた
)
で、敵だッ、敵々ッ、と叫んでいるのが、耳には聞えているのに、なお、頭のどこかに
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
切て
駈付
(
かけつけ
)
來り兩人にて又々
彼方此方
(
かなたこなた
)
と尋ね廻り地内の鎭守稻荷堂或ひは
薪部屋
(
まきべや
)
物置等
(
ものおきとう
)
殘
(
のこ
)
らず
搜
(
さが
)
しけれ共
影
(
かげ
)
だに見えざれば掃部は
不審
(
いぶかり
)
最
(
もう
)
此上は和尚を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
その所を出て本堂の
彼方此方
(
かなたこなた
)
を見廻って居りますと始めはそんなに思いませんでしたが非常に嫌な臭いがして居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
何をするかと
窺
(
うかゞ
)
っていると、
彼方此方
(
かなたこなた
)
を蹈み分けて行って、云いようもなく腐りたゞれた死人の傍に寄って、或は眼を閉じ、或は眼を開いて祈念を凝らし
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その
中
(
うち
)
樽前
(
たるまへ
)
は
明治四十二年
(
めいじしじゆうにねん
)
の
噴火
(
ふんか
)
に
於
(
おい
)
て、
火口
(
かこう
)
からプレー
式
(
しき
)
の
鎔岩丘
(
ようがんきゆう
)
を
押
(
お
)
し
出
(
だ
)
し、それが
今
(
いま
)
なほ
存在
(
そんざい
)
して
時々
(
とき/″\
)
その
彼方此方
(
かなたこなた
)
を
吹
(
ふ
)
き
飛
(
と
)
ばす
程
(
ほど
)
の
小爆發
(
しようばくはつ
)
をつゞけてゐる。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
と友の言ひしは、猶それより
彼方此方
(
かなたこなた
)
を逍遙して、美しき月の光を充分に賞し盡したる
後
(
のち
)
なりき。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
麝香草
(
じゃこうそう
)
や
薄荷
(
はっか
)
や
薔薇
(
ばら
)
の咲き乱れた花壇が
彼方此方
(
かなたこなた
)
に設けられ、そして甃の両側には、緑の街路樹が
眼路
(
めじ
)
の限りに打ち続き、その葉陰に真っ白な壁、磨き上げたような円柱
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この季節特有の
薄靄
(
うすもや
)
にかげろわれて、
熟
(
う
)
れたトマトのように赤かった。そして、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に散在する雑木の森は、夕靄の中に
黝
(
くろず
)
んでいた。
萌黄
(
もえぎ
)
おどしの
樅
(
もみ
)
の
嫩葉
(
ふたば
)
が殊に目立った。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
却説
(
かへつてと
)
く鷲郎は、
今朝
(
けさ
)
より黄金丸が用事ありとて里へ行きしまま、日暮れても帰り来ぬに、漸く心安からず。
幾度
(
いくたび
)
か門に出でて、
彼方此方
(
かなたこなた
)
を
眺
(
ながむ
)
れども、それかと思ふ影だに見えねば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
ちょうど、今
彼方此方
(
かなたこなた
)
と疲れた足取りで歩くという話が出たので、そのために起ったのかと思われるほどに、こちらへとやって来る足音が、鳴り響くようにその一劃に反響し始めた。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
木戸口に殺到する群集のわめき声、
将棋
(
しょうぎ
)
倒しの下敷きになって悲鳴を上げる老人、泣き叫ぶ女子供、その騒然たる物音の中に
一
(
ひ
)
ときわ高い怒号の声が、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に響きわたっていた。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
貞盛は良兼には死なれ、
孤影蕭然
(
こえいせうぜん
)
、たゞ
叔母婿
(
をばむこ
)
の維幾を頼みにして、将門の眼を忍び、常陸の
彼方此方
(
かなたこなた
)
に
憂
(
う
)
き月日を送つて居た。良兼が死んでは、下総一国は全く将門の
旗下
(
はたした
)
になつた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
云
(
い
)
ひながらも
王樣
(
わうさま
)
は、
名簿
(
めいぼ
)
を
彼方此方
(
かなたこなた
)
と
索
(
さが
)
して
居
(
を
)
られました、ところで
愛
(
あい
)
ちやんは、
次
(
つぎ
)
なる
證人
(
しようにん
)
が
何
(
ど
)
んなのだらうかと
頻
(
しき
)
りに
見
(
み
)
たく
思
(
おも
)
ひながら、
凝
(
じつ
)
と
白兎
(
しろうさぎ
)
を
瞻戍
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
ました、が
軈
(
やが
)
て
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
あの
辺
(
あたり
)
へ、
夕暮
(
ゆふぐれ
)
の
鐘
(
かね
)
が
響
(
ひゞ
)
いたら、
姿
(
すがた
)
が
近
(
ちか
)
く
戻
(
もど
)
るのだらう、——と
誰
(
た
)
が
言
(
い
)
ふともなく
自分
(
じぶん
)
で
安心
(
あんしん
)
して、
益々
(
ます/\
)
以前
(
もと
)
の
考
(
かんがへ
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると、
榾
(
ほだ
)
を
焚
(
た
)
くか、
炭
(
すみ
)
を
焼
(
や
)
くか、
谷間
(
たにま
)
に、
彼方此方
(
かなたこなた
)
、ひら/\
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
亭乎
(
すらり
)
とした体を
真直
(
まつすぐ
)
にして玄関から上つて行くと、早出の生徒は、毎朝、控所の
彼方此方
(
かなたこなた
)
から駆けて来て、
敬
(
うやうや
)
しく渠を迎へる。中には
態々
(
わざわざ
)
渠に
叩頭
(
おじぎ
)
をする
許
(
ばつか
)
りに、其処に待つてゐるのもあつた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼女は何んでも約束通り探検を果そうと思う一心に小さな角燈の光に
路
(
みち
)
を照して
彼方此方
(
かなたこなた
)
と歩いて居る内に森林の入口から
凡
(
およ
)
そ四五町も来たと
覚
(
おぼ
)
しき
頃
(
ころ
)
、前方に当り一個の驚くべき物を発見した
黄金の腕環:流星奇談
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
にむらむらと立
駢
(
なら
)
ぶ
老松奇檜
(
ろうしょうきかい
)
は、
柯
(
えだ
)
を交じえ葉を折重ねて
鬱蒼
(
うっそう
)
として
翠
(
みどり
)
も深く、観る者の心までが
蒼
(
あお
)
く染りそうなに引替え、
桜杏桃李
(
おうきょうとうり
)
の
雑木
(
ざつぼく
)
は、
老木
(
おいき
)
稚木
(
わかぎ
)
も押なべて一様に枯葉勝な立姿
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
後甲板の
彼方此方
(
かなたこなた
)
を、探し廻っている。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に浮んだ
蓮田
(
はすだ
)
の蓮の花は青田の
天鵞絨
(
ビロウド
)
に紅白の
刺繍
(
ぬいとり
)
をなし
打戦
(
うちそよ
)
ぐ稲葉の風につれて
得
(
え
)
もいわれぬ香気を送って来る。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
愕
(
おどろ
)
いて、
彼方此方
(
かなたこなた
)
の家で、戸の音も聞えたが、外を見ると、みな首をひそめ、もとのように急いで戸をたててしまった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
緑
滴
(
したた
)
る眼も遥かな芝生の
彼方此方
(
かなたこなた
)
には
鬱蒼
(
うっそう
)
たる
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
がクッキリした
群青
(
ぐんじょう
)
の空を限って
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
又
(
また
)
菜花煙
(
さいかえん
)
の
彼方此方
(
かなたこなた
)
に
電光
(
でんこう
)
の
閃
(
ひらめ
)
くのが
見
(
み
)
られる。この
際
(
さい
)
の
雷鳴
(
らいめい
)
は
噴火
(
ふんか
)
の
音
(
おと
)
に
葬
(
はうむ
)
られてしまふが、これは
單
(
たん
)
に
噴煙上
(
ふんえんじよう
)
にて
放電
(
ほうでん
)
するのみで、
地上
(
ちじよう
)
に
落雷
(
らくらい
)
した
例
(
れい
)
がないといはれてゐる。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
麦畑は四方の白雪
皚々
(
がいがい
)
たる雪峰の間に青々と快き光を放ち、その間には光沢ある薄桃色の蕎麦の花が今を盛りと咲き競う、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に
蝴蝶
(
こちょう
)
の数々が
翩々
(
へんぺん
)
として花に戯れ空に舞い
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
と見物して來かゝる處に
髮結床
(
かみゆひどこ
)
の前にて往來の人が
立噺
(
たちばな
)
しをなし居たるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
山は廣いので思い/\の半出家たちが
彼方此方
(
かなたこなた
)
に宿を求め、めい/\己れの
性
(
しょう
)
にかなった教について
行
(
ぎょう
)
を修めているのであるが、或る晩そう云う人たちが或る宿房へ寄り合った時だった。
三人法師
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ふツくり
蒼
(
あを
)
く、
露
(
つゆ
)
が
滲
(
にじ
)
んだやうに、
其
(
そ
)
の
手巾
(
ハンケチ
)
の
白
(
しろ
)
いのを
透
(
とほ
)
して、
土手
(
どて
)
の
草
(
くさ
)
が
淺緑
(
あさみどり
)
に
美
(
うつく
)
しく
透
(
す
)
いたと
思
(
おも
)
ふと、
三
(
み
)
ツ
五
(
いつ
)
ツ、
上﨟
(
じやうらふ
)
が
額
(
ひたひ
)
に
描
(
ゑが
)
いた
黛
(
まゆずみ
)
のやうな
姿
(
すがた
)
が
映
(
うつ
)
つて、すら/\と
彼方此方
(
かなたこなた
)
光
(
ひかり
)
を
曳
(
ひ
)
いた。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二人は園内を
彼方此方
(
かなたこなた
)
へと、つむじ風の様に走った。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
道行く若いものの口々には早くも
吉原
(
よしわら
)
の
燈籠
(
とうろう
)
の
噂
(
うわさ
)
が伝えられ、
町中
(
まちなか
)
の家々にも
彼方此方
(
かなたこなた
)
と
軒端
(
のきば
)
の燈籠が目につき出した。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そこから往来の
彼方此方
(
かなたこなた
)
を見まわす。
欄干
(
らんかん
)
から橋の下を
覗
(
のぞ
)
いて見る。——だが、お通の姿は、まだここに見当らない。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例の通り石の転げて居るのがヤクに見えるではないか知らんと思うと
彼方此方
(
かなたこなた
)
に動くです。こりゃいよいよヤクに相違ないと思ってその方向に進むと果せるかなヤク追いがその辺に居りました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
唯好い加減に時間を見はからって
彼方此方
(
かなたこなた
)
の横町を折れ曲るより外の方法はなかったが、丁度この辺と思う所に、予想の如く、橋もあれば、電車通りもあって、確かにこの道に相違ないと思われた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この
山
(
やま
)
は
平均
(
へいきん
)
十年毎
(
じゆうねんごと
)
に
一回
(
いつかい
)
ぐらゐ
爆發
(
ばくはつ
)
し、
山側
(
さんそく
)
に
生
(
しよう
)
ずる
裂
(
さ
)
け
目
(
め
)
の
彼方此方
(
かなたこなた
)
を
中心
(
ちゆうしん
)
として
鎔岩
(
ようがん
)
を
流
(
なが
)
し、
或
(
あるひ
)
は
噴出物
(
ふんしゆつぶつ
)
によつて
小圓錐形
(
しようえんすいけい
)
の
寄生火山
(
きせいかざん
)
を
形作
(
かたちづく
)
るなどする、つぎに
郵船
(
ゆうせん
)
がメシナ
海峽
(
かいきよう
)
を
通過
(
つうか
)
すると
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
駈拔
(
かけぬけ
)
んとて皆々駈出し
頓
(
やが
)
て三里の松原に出で大勢の雲助共今や來ると
彼方此方
(
かなたこなた
)
に
潜
(
ひそ
)
み手ぐすね引て待伏たり半四郎は
神
(
かみ
)
ならぬ身の夢にも知ずたどり/\て
道芝
(
みちしば
)
の
露
(
つゆ
)
踏分
(
ふみわけ
)
つゝ程なくも三里の松原へ差懸るに木の間の月は
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
自分は呆然として却て物珍らしく
彼方此方
(
かなたこなた
)
を眺めながら歩いて行くと偶然にも向うから來掛る宇田流水に出會つた。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
土けむりの中で、宇喜多の部将のしゃがれ声が聞えると、
彼方此方
(
かなたこなた
)
の散兵も、わっと
鬨
(
とき
)
を合わせて
退
(
ひ
)
いて行った。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いずれも
真蒼
(
まっさお
)
な顔をして三人四人と寄合いながら何やらひそひそ話合っていると、土地の顔役らしい男がいかにも事あり気に
彼方此方
(
かなたこなた
)
と歩き廻っていた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
城主の笑い声に、何の意味ともしらず、
彼方此方
(
かなたこなた
)
で、城兵たちも笑った。藤吉郎は、
黙然
(
もくねん
)
と、満城からわき起る嘲笑をあびて立っていたが、やがてまた
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、
彼方此方
(
かなたこなた
)
の小乱に打ち向い、一死一番、大義と大道へましぐらに
赴
(
おもむ
)
くことをなさずにしまったのである。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
庭はさして廣いと云ふではないが、歩むだけの
小徑
(
こみち
)
を殘して、一面に竹を植ゑ、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に大きな海岸の巖石を据ゑ立てゝ、其の
傍
(
そば
)
には陶器の腰掛を竝べた。
新帰朝者日記 拾遺
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に、こう駈け廻りつつ叫ぶ声が、
夜叉
(
やしゃ
)
の襲来のようであった。——若い声、しゃがれた声、
憤
(
いか
)
り声。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを
待構
(
まちかま
)
へて
彼方此方
(
かなたこなた
)
から見物人が声をかけた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
敵の武者の乗りすてた駒が、鞍のまま、放牧されてあるように、
彼方此方
(
かなたこなた
)
に駈けまわっていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
を無遠慮に眺めまわし、ああ懐かしいなア、などといったり、いつも変らず山鳩が
啼
(
な
)
いているの、この柿の木が大きくなったのと——独り合点にたわ言を
呟
(
つぶや
)
いている
態
(
てい
)
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その、わずかな郎党と、妻子をつれて将門は数日のあいだ、
彼方此方
(
かなたこなた
)
、逃げまわった。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
また荒武者と荒武者とが、首を取りつ首を取られつ、
雄
(
お
)
たけび
交
(
か
)
わして、火に火を降らせている血戦の中へ、ほとんど、気でも狂ったかのような姿で、
彼方此方
(
かなたこなた
)
、
奔
(
はし
)
りめぐっていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
で百足隊の伝令たちが、こう告げわたり馳け廻りしているまに、はや先陣山県三郎兵衛の隊、その他の部隊が、
峡
(
かい
)
を出る雲のように動き出したが——時すでに遅かったといえる。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
常用漢字
中学
部首:⼻
8画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“彼方此”で始まる語句
彼方此處