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兎
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と
ふりがな文庫
“
兎
(
と
)” の例文
しかしあの
逞
(
たくま
)
しいムツソリニも一
椀
(
わん
)
の「しるこ」を
啜
(
すゝ
)
りながら、
天下
(
てんか
)
の
大勢
(
たいせい
)
を
考
(
かんが
)
へてゐるのは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
想像
(
さうぞう
)
するだけでも
愉快
(
ゆくわい
)
であらう。
しるこ
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
妙子に
質
(
ただ
)
してみないことには、彼女がどう云う考でそんなことを云っているのか諒解に苦しむ点が多いのであったが、それは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
たゞ早く死んだ和作の父親が不運で、長寿ではなかつたが
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も十何年か後れた徳次郎の父は、得意時代の一部を見たわけだつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
しかしその菫菫菜が我がスミレの
何
(
いず
)
れに
中
(
あた
)
るかは今
遽
(
にわ
)
かに分り兼るが
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
スミレのある一種の名でそれは支那でそういうのである。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
が、
折角
(
せっかく
)
の
依
(
たの
)
みとあって
見
(
み
)
れば
何
(
なん
)
とか
便宜
(
べんぎ
)
を
図
(
はか
)
って
上
(
あ
)
げずばなるまい。
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
母人
(
ははびと
)
を
瀑壺
(
たきつぼ
)
のところへ
連
(
つ
)
れてまいるがよかろう……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
理屈は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
として、何もかもがヤタラに面倒臭くなって来たようだ。どうせ破れカブレの罰当り仕事だ。後は野となれ山となれだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
兎
(
と
)
にも
角
(
かく
)
にも
亜剌比亜物語
(
アラビアンナイト
)
や
十日物語
(
デカメロン
)
の昔から、この世の中には幾十万とも知れぬ物語が生まれましたが、この物語の数を百倍しても
奇談クラブ〔戦後版〕:17 白髪の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
画だっても、
巴里
(
パリ
)
の町で見る
affiche
(
アフィッシュ
)
のように気の利いたのはない。しかし
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
広告柱があるだけはえらい。これが一つ。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「
然
(
しか
)
しまさか母死すなんて事が冗談に
云
(
い
)
えるもんじゃない、
殊
(
こと
)
に
依
(
よ
)
ると何か変事でも起ったのかも知れない、——
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
行ってみよう」
殺生谷の鬼火
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私はそれは非常に不自然なことだと云ふことが第一に感ぜられます。
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、それがどう育つてゆくか枯れるかは未知の問題ですわね。
私信:――野上彌生様へ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
薬売りは
顫
(
ふる
)
えあがったそうで、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
主人にあって、その
顛末
(
てんまつ
)
を語りますと、主人のいわれるには、思い当ることがあるというのです。
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
至極
(
しごく
)
静かに知らせるといっていたが、それは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
何
(
いず
)
れの僧侶に訊ねても、この寺へ知らせに来るというのは、真実のものらしい。
テレパシー
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
それは
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、キーシュの狩はその後も成功つづきです。
意気地
(
いくじ
)
のない村人たちは、彼が取った肉を運ぶのに
忙
(
せわ
)
しいという有様でした。
負けない少年
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
何故? とお訊きになるでしょうね。さあ何う云ったらよろしいやら、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
どうも悪かったので、虫がついたのでございますよ。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「これに
就
(
つ
)
きましては、いろいろ申しあげたいことがございますが、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、御子息の死骸をお眼にかけたうえで、申しあげます」
悪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
おおそうそう、宵に
母屋
(
おもや
)
の律師さまから頂いた大根の葉の煮ものがここにある。これを菜にして
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
箸に口をつけてご覧なさい。
ある日の蓮月尼
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
釣道の極意を得ざりしを惜むなり。と、
兎
(
と
)
さま
角
(
こう
)
さまに、苦悶し、懊悩し、少時は石像木仏の如し。船頭、余り気を落せるを見て
大利根の大物釣
(新字新仮名)
/
石井研堂
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、あの原稿は徹頭徹尾、君のそういう思い過しに出ているものだから、大変お気の毒だけれども書き直してはくれないだろうか。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
此日
(
このひ
)
も
宗助
(
そうすけ
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
もと
思
(
おも
)
つて
電車
(
でんしや
)
へ
乘
(
の
)
つた。
所
(
ところ
)
が
日曜
(
にちえう
)
の
好天氣
(
かうてんき
)
にも
拘
(
かゝは
)
らず、
平常
(
へいじやう
)
よりは
乘客
(
じようきやく
)
が
少
(
すく
)
ないので
例
(
れい
)
になく
乘心地
(
のりごゝち
)
が
好
(
よ
)
かつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
是等を救助せずして静まるべきの筋にあらずとて、先づ救民小屋
造立
(
つくりたて
)
の間、本所
回向院
(
えこういん
)
、
谷中
(
やなか
)
天王寺、
音羽
(
おとは
)
護国寺、
三田
(
みた
)
功運寺
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうして斯樣な人が叔母の家を借りて居たのか、
皆目
(
かいもく
)
私には解りませんでしたが、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
村の旦那衆がよく集るところではありました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
この場合面と向って愚図愚図云合おうよりは勢を示して
一先
(
ひとまず
)
外へ出た上、何とか適宜の処置を取ろうと思い定めたのである。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お駒は唯一人、
怖々
(
こはごは
)
で病室に坐つてゐたが、
兎
(
と
)
ても
堪
(
たま
)
らぬといふ顏をして、玄關に廣い蚊帳を吊つて寢てゐる竹丸の蒲團に這ひ込んだ。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
其處
(
そこ
)
に
何者
(
なにもの
)
かゞ
居
(
を
)
るに
相違
(
さうゐ
)
ない、
人
(
ひと
)
か、
魔性
(
ましやう
)
か、
其樣
(
そん
)
な
事
(
こと
)
は
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
られぬ、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
探險
(
たんけん
)
と
覺悟
(
かくご
)
したので、そろ/\と
丘
(
をか
)
を
下
(
くだ
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
主人
(
しゆじん
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
は
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
明日
(
あす
)
のことにするからといつた
丈
(
だけ
)
だといふ
返辭
(
へんじ
)
である。
勘次
(
かんじ
)
はげつそりとして
家
(
うち
)
へ
歸
(
かへ
)
ると
蒲團
(
ふとん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
畢
(
しま
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
私
(
わたし
)
はばけものといふものは
非常
(
ひぜう
)
に
面白
(
おもしろ
)
いものだと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るので、
之
(
これ
)
に
關
(
くわん
)
するほんの
漠然
(
ばくぜん
)
たる
感想
(
かんさう
)
を、
聊
(
いさゝ
)
か
茲
(
こゝ
)
に
述
(
の
)
ぶるに
過
(
す
)
ぎない。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
然れども事実として、我は牢獄の
中
(
うち
)
にあるなり。今更に歳の数を
算
(
かぞ
)
ふるもうるさし、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
に我は数尺の牢室に
禁籠
(
きんろう
)
せられつゝあるなり。
我牢獄
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、見たところ飛行機の型をして居り、申訳でいいから、エンジンもついて居り、プロペラの恰好をしたものがついて居ればいいのだ
戦時旅行鞄:――金博士シリーズ・6――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
このモダーンガールというものの好みの審美的考察は
如何
(
いかん
)
、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
その美しさの種類は、「洋風」の美しさが基本となっている。
新古細句銀座通
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
しかし御客人の御都合は
兎
(
と
)
もあれ、折角十枚揃ひましたる大切の御道具を、一枚欠きましたる不調法は、手前も共におわび申上げまする。
番町皿屋敷
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
江戸の
開城
(
かいじょう
)
その事
甚
(
はなは
)
だ
奇
(
き
)
にして当局者の
心事
(
しんじ
)
は
解
(
かい
)
すべからずといえども、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
その
出来上
(
できあが
)
りたる
結果
(
けっか
)
を見れば
大成功
(
だいせいこう
)
と認めざるを得ず。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
『さて
此
(
この
)
鼠
(
ねずみ
)
に
何
(
なに
)
を
話
(
はな
)
してやらうかしら?
大抵
(
たいてい
)
皆
(
みん
)
な
變
(
へん
)
な
事
(
こと
)
ばかりだが、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
話
(
はな
)
しても
關
(
かま
)
はないだらう』と
愛
(
あい
)
ちやんが
思
(
おも
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
貴女
(
あなた
)
をお
疑
(
うたが
)
ひ
申
(
まを
)
すんぢやない。もと/\
封
(
ふう
)
の
切
(
き
)
れて
居
(
ゐ
)
る
手紙
(
てがみ
)
ですから、たとひ
御覽
(
ごらん
)
に
成
(
な
)
つたにしろ、
其
(
それ
)
を
兎
(
と
)
や
角
(
か
)
う
言
(
い
)
ふのぢやありません。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
己
(
おれ
)
が死んだ後では己の金を藻西太郎が
何
(
ど
)
の様に仕ようと勝手だけれど
兎
(
と
)
角も己の稼ぎ溜た金だから生て居る間は己の勝手にせねば成らぬ
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
『
兎
(
と
)
ても帰れとは言はれません。』校長が言つた。『一体お
老人
(
としより
)
は、今日のやうな遠方の会へは出なくても可ささうなもんですがねえ。』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
そこでは、首領らが無政府の実例を示していた。不統一な政策が一時に十
兎
(
と
)
を追って、途中でそれを一つ一つ取り逃がしていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
偶々
(
たまたま
)
感じ候故
序
(
ついで
)
に申上候。荒木令嬢の事、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
相迎
(
あいむかえ
)
候事と決心仕候。
併
(
しか
)
し随分苦労の種と存候。夜深く相成候故
擱筆
(
かくひつ
)
仕候。草々不宣。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
何か不吉なことがあると、必らずこの音を聞いたと、この自伝の中に書いてあるが、これが
爰
(
ここ
)
に
所謂
(
いわゆる
)
『不吉な音』の
大略
(
たいりゃく
)
であるのだ。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
だが
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
神楽坂は、私にとっては東京の中で最も好きな街の一つだ。こないだも芝の方に住んでいる友達が来て私にいった。
早稲田神楽坂
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
然
(
しか
)
し、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、その時、私の眼に映じましたのは、小さい
乍
(
なが
)
らも人間の形を具えた三ヶ月ほどの胎児でありました。私はぞっと致しました。
手術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
むろん、音などとは比較にならぬ速度を持っている光に追いつくことは、まだ遠い夢にすぎないが、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
そこに一つの飛躍が起ったのだ。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
僕は忙しくてとてもそんな所へ出かける
理由
(
わけ
)
には行かぬというと、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
非常に忙しいからとても教えられないと体よく断られてしまった。
先生を囲る話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
上述の様な間違を起すことが稀にはあっても、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
慣れぬ旅をする人に取りては、輯製二十万分の図よりも頼りになるものでありました。
登山談義
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、
庫裡
(
くり
)
——二三年前まで留守居の男のゐた庫裡を掃除して、そこに
住居
(
すまひ
)
することの出来る準備を世話人達がして呉れた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
折
(
おり
)
から
下坐敷
(
したざしき
)
より
杯盤
(
はいばん
)
を
運
(
はこ
)
びきし
女
(
おんな
)
の
何
(
なに
)
やらお
力
(
りき
)
に
耳打
(
みゝうち
)
して
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
下
(
した
)
までお
出
(
いで
)
よといふ、いや
行
(
ゆ
)
き
度
(
たく
)
ないからよしてお
呉
(
く
)
れ
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
里子は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も妹ですから、僕の結婚の不倫であることは言うまでもないが、僕は妹として里子を考えることは
如何
(
どう
)
しても出来ないのです。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
どちらも余り
当
(
あて
)
にはならない。貧富を幸不幸から引離してしまおうというのも、理窟は
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
、余り甘心する人はあるまい。
貧富幸不幸
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
素
(
もと
)
より田舎の事とて泥臭いのは
勿論
(
もちろん
)
だが、
兎
(
と
)
に角常陸から
下総
(
しもうさ
)
、
利根川
(
とねがわ
)
を股に掛けての縄張りで、
乾漢
(
こぶん
)
も掛価無しの千の数は揃うので有った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ああ、鎧戸や窓硝子を壊した音は
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
として、電気仕掛の報知器はシムソンの部屋のあたりで鳴り響いているでしょうに。
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
芸術というものは、作品に表現された世界の中に真実の世界があるのであって、これを他にして模写せられた実物があるわけではない。
FARCE に就て
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
“兎”の意味
《名詞: ja》
うさぎ(詳細は、「うさぎ」の項を参照)
(出典:Wiktionary)
兎
漢検準1級
部首:⼉
7画
“兎”を含む語句
木兎
兎角
玉兎
熟兎
脱兎
野兎
兎口
赤兎
家兎
兎狩
兎耳
月兎
耳木兎
兎原
兎道
兎毛
赤兎馬
兎唇
小兎
白兎
...