食物しょくもつ)” の例文
まだ二三日は命がつながれようというもの、それそれ生理せいり心得草こころえぐさに、水さえあらば食物しょくもつなくとも人はく一週間以上くべしとあった。
こころあるひとなら、だれでもこのようにしてつくられた、食物しょくもつはむだにし、また器具きぐ粗末そまつあつかうことをよくないとおもうでありましょう。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
和郎さんは消化こなすのが役、私は絞るのが役だから和郎さんの方でよく食物しょくもつを消化してくれれば私だって絞る仕事も楽だけれども
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お前さんの食べられる食物しょくもつもあるから、おいでなさいよと云いたかったが、心の余裕がなかったので、思い詰めている男の名を
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と、一行は尻をたたいてこのを出たが、婆さん一向いっこう平気なもの、振向いてもみない。食物しょくもつ本位の宿屋ではなかったと見える。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
食物しょくもつの消化時間は大抵たいていしってるだろう、今吐剤とざいのんでも無益だ。河豚の毒がかれるならはいて見ろといったら、三刀も医者の事だからわかって居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
透明人間とうめいにんげんをつかまえるには、食物しょくもつをあたえないことです。ねむらせないことです。この二つのことを実行じっこうすることです」
保吉やすきちいまだに食物しょくもつの色彩——鮞脯からすみだの焼海苔やきのりだの酢蠣すがきだの辣薑らっきょうだのの色彩を愛している。もっとも当時愛したのはそれほどひんい色彩ではない。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
又「だがあがりもしようが、婦人をそばへ置いてたゞ寝る訳にもかんが、何か食物しょくもつを取らんではならんが、酒と肴はどのくらいな値段であるか承わって置こう」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とこについてもさっぱり安眠あんみんができない……はしっても一こう食物しょくもつのどとおらない……こころなかはただむしゃくしゃ……、口惜くやしい、うらめしい、味気あじきない、さびしい
また小食の人も健啖家けんたんかも、にくを注文すれば同じ分量をさずけられる。ほとんど個性を無視しておとこぴき食物しょくもつ何合なんごう、衣類は何尺なんじゃくと、一人前なる分量が定まっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
まって二三日置きに国から来る、お祖母あ様の手紙が来た。食物しょくもつに気を附けろ、往来で電車や馬車や自動車にさわって怪我をするなというような事が書いてあった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ねえきみ病院びょういんはまだ比較的ひかくてき食物しょくもつはよし、看護婦かんごふはいる、エウゲニイ、フェオドロイチもいる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからは蜘蛛は、もう一生けん命であちこちにとおも網をかけたり、夜も見はりをしたりしました。ところが困ったことは腐敗ふはいしたのです。食物しょくもつがずんずんたまって、腐敗したのです。
蜘蛛となめくじと狸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一人のためには輿は乗るもので、一人のためには輿は肩から血を出すものだ。一人のためには犬は庭へ出て輪をくぐって飛ばせて見て楽むもので、一人のためには食物しょくもつをやって介抱をするものだ。
彼女もまた妾のここに移りてより、何くれと親しみ寄りつ、読書とくしょに疲れたる頃を見斗みはからいては、おのが買い入れたる菓子その他の食物しょくもつを持ち来り、算術を教え給え、算用数字は如何いかに書くにやなど
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「火はないか。何ぞ、食物しょくもつはないか」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのとき、食物しょくもつがないから、きっとさけみ、みずむにちがいないとおもったのです。そうして、このまちからげてゆきました。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ケンプ博士はくしは、透明人間とうめいにんげんはかならず町にもどってくると思っていた。食物しょくもつをもとめてのためか。それだけではない。
最後にその「花かすていら」さえ今はもう食物しょくもつではない。そこには年の若い傾城けいせいが一人、なまめかしいひざを崩したまま、斜めにたれかの顔を見上げている。………
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この昼飯ひるめし分は剛力に担がせて持って来たのだが、この前途さき山中に迷わぬものでもないから、なるべく食物しょくもつを残しておけと、折りから通り掛かった路傍みちばた
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
西洋人は生活費の過半を食物しょくもつついやすと聞きましたが、日本人は生活費の過半を無駄な遊びに浪費します。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
すなわち冷水浴を実行するとか、睡眠すいみんが不足するものであれば、充分にこれを取るとか、あるいは営養が不足するのおそれがあれば、食物しょくもつを改良するとかせねばならぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
お鉢が其処そこに出してあるから、銘々に茶碗にもっ百鬼ひゃくき立食りっしょく。ソンナけだから食物しょくもつも勿論安い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
家内はむつましく、翌年になりますと、八月が産月うみづきと云うのでございますから、まず高い処へ手を上げてはいかぬ、井戸端へ出てはならぬとか、食物しょくもつを大事になければならんと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくしのようなあの住人じゅうにん食物しょくもつ衣類いるいなどにつきてとおとおむかしおもがたりをいたすのはなにやらお門違かどちがいをしているようで、何分なにぶんにも興味きょうみらないでこまってしまいます……。
母の乳を食物しょくもつとなし
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しまひとたちは、三にんふねをなおして、あたらしいってくれたばかりでなく、食物しょくもつや、また、みずなどの用意よういもしてくれたのです。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やつは食物しょくもつをのみおろすと、消化しょうかするまでは体の中のものが見えるので、しばらくは、どこかにかくれてやすまねばならんのです。ここが、こちらのねらいです。
人は気楽なもの、腹の中にてかかる恐慌きょうこうを起すとも知らず、平生へいぜい胃吉や腸蔵を虐使ぎゃくしするにれけん。遠慮もなく会釈えしゃくもなく上の方よりドシドシ食物しょくもつを腹の中へ詰め込みきたる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
死灰再燃しかいさいねん、人も同様、身体が弱れば食物しょくもつを変えたり、転地療治りょうじをしたり、温泉にゆあみしたりして健康を回復するが、住居も変えず、居ながらにして心的境遇を一変する方法もあろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ソコで洗手盥ちょうずだらい金盥かなだらいも一切食物しょくもつ調理の道具になって、暑中など何処どこからか素麺そうめんを貰うと、その素麺を奥の台所で湯煮ゆでて貰うて、その素麺を冷すには、毎朝、顔を洗う洗手盥をもって来て
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
それから食物しょくもつ……これは只今ただいまなかよりずっと簡単かんたんなように見受みうけられます。
待てど暮せど人も来ず、身の上にも別に変りたる事もなく、食物しょくもつあさるのほかは日々船繕いに余念なく、無事に大海たいかいへ乗出すことの出来るようにと工夫する外にはなんの考えもございませぬ。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たれたこともあれば、食物しょくもつをへらされたこともあれば、られたこともありました。かれは、いくたびいたかしれなかった。
サーカスの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
食物しょくもつ原則げんそく 春 第三十二 料理の原則
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「こんなゆきには、こまるのは、だれもおなじこった。そら、おまえにもくれてやろう。」と、平三へいぞう自分じぶん食物しょくもつをわけて、からすにげてやりました。
赤いガラスの宮殿 (新字新仮名) / 小川未明(著)
心臓病しんぞうびょう食物しょくもつ 春 第四十六 病気全快
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そこで、おつ軍勢ぐんぜいが、こうのあるちいさなまち占領せんりょうしたときに、こう大将たいしょうは、すっかりそのまち食物しょくもつはらって、ただ、さけみずばかりをのこしておきました。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
胃病いびょう食物しょくもつ 春 第四十六 病気全快
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
食物しょくもつこまるときは、美代子みよこうちけんばかりのことでなく、まち全体ぜんたい人々ひとびとこまることですから、いつまでも食物しょくもつがこなくて、すまされるわけはありませんでした。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこには、するど無数むすうとげがあって、そとからのてきまもってくれるであろうし、そのやわらかな若葉わかばたまご孵化ふかして幼虫ようちゅうとなったときの食物しょくもつとなるであろうとかんがえたからでした。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなのちからで、たちまちのうちに、いろいろの食物しょくもつが、まち商店しょうてん到着とうちゃくしました。それで、美代子みよこの一も、このくずだらけのまめべなければならぬことがなくてすみました。
ごみだらけの豆 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたして、おつ軍勢ぐんぜいはえらいいきおいでこのまち占領せんりょうしましたけれど、食物しょくもつがありません。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここにすんでいればこそ安心あんしんなんだよ。それは、もっとさとちか野原のはらにゆけば食物しょくもつもたくさんあるし、おまえたちのよろこびそうなはなや、ながれもあるけれど、すこしも油断ゆだんはできないのだ。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわせみさん、そこが、わたし用心深ようじんぶかいところなんですよ。だれもすぐあなのまわりに、わたしたちのきな食物しょくもつがあるとおもうでしょう。わたしが、それをらないのは、のありをかくすためです。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
診察しんさつ結果けっかは、おかあさんのいわれたとおり、だれかにどくはいった食物しょくもつをたべさせられたのだろうということです。医者いしゃはボンのからだ子細しさいしらべていましたが、後足あとあしについている傷痕きずあとゆびさして
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここにはもう長年ながねんいるけれど、そんな心配しんぱいはすこしもない。それにやまには、あかじゅくしたがなっているし、あのやま一つせば、たんぼがあって、そこにはわたしたちの不自由ふじゆうをしないほどの食物しょくもつちている。
兄弟のやまばと (新字新仮名) / 小川未明(著)
五日分いつかぶん食物しょくもつ用意よういしていったそうです。」
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)