きょう)” の例文
旧字:
庵主あんじゅさんは、よそゆきの茶色ちゃいろのけさをて、かねのまえにつと、にもっているちいさいかねをちーんとたたいて、おきょうみはじめた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
寺の僧侶が毎朝まいちょう早起そうききょうしょうし粗衣粗食して寒暑の苦しみをもはばからざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
玄翁げんのう殺生石せっしょうせきまえすわって、熱心ねっしんにおきょうみました。そして殺生石せっしょうせきれいをまつってやりました。殺生石せっしょうせきがかすかにうごいたようでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
自分じぶんは、ちょうどはげあたまなので、そのてらぼうさんになりました。くろころもをまとって、一にち御堂おどうなかでおきょうんでらしました。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
これはただに儒学じゅがくのみでなく、仏教においても同然で、今日こんにちもなおがたき句あれば「珍聞漢ちんぷんかん」とか、あるいは「おきょうよう」なりという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
腰袴こしばかまで、細いしない竹のむちを手にした案内者の老人が、硝子蓋がらすぶたを開けて、半ば繰開くりひらいてある、玉軸金泥ぎょくじくこんでいきょうを一巻、手渡しして見せてくれた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なるほどやっぱり陳氏だ、おきょうにある青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光をやったんだなと、私はつくづく感心してそれを見上げました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
真言しんごんのうちでも封教となっておる秘密なきょうだ。それへ勝手な教義や荘厳しょうごんを加え、宮中でおすすめしているばかりでない。
そして、そこのおぼうさんにたのんで、小さい美しい二人のたましいのために、ねんごろにおきょうをあげてもらいました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
摂津の国きょうしまに着いた。ここは平の清盛が一千部の法華経を石の面に書写して海の底へ沈めたところである。島の老若男女が多く集って、法然に結縁した。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私はそれまでにおきょうの名を度々たびたび彼の口から聞いた覚えがありますが、基督教キリストきょうについては、問われた事も答えられたためしもなかったのですから、ちょっと驚きました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
郅伯夷しつはくいという男がそこに宿って、しょくを照らしてきょうを読んでいると、夜なかに十余人があつまって来て、彼とならんで坐を占めたが、やがて博奕の勝負をはじめたので
終戦のちょっとまえに帰った善法寺さんは、帰るとすぐ供養くようにきてくれたが、今また、つづけて八津のためにおきょうをあげてもらうことになるなど、どうして考えられたろう。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しかるにこまったことにこの両親りょうしんは、きつい仏教ぶっきょう信者しんじゃであっため、わがはや極楽浄土ごくらくじょうどけるようにと、あさばんにおきょうげてしきりに冥福めいふくいのってるのじゃ……。
この、わば悪魔のおきょうが、てるの嫁入りまえの大事なからだに悪い宿命の影を投じた。
古典風 (新字新仮名) / 太宰治(著)
貧乏徳利びんぼうどっくりがいつも台どころにころがっているだけで、きょうを読む声さえ、通りがかりの誰もが聴いたことがないというのだから、いずれ、破戒無慚はかいむざんの悪僧とはわかっていたが、さりとて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
同じく七日、火葬にして、骨を円実法眼えんじつほうげんが首にかけ、摂津国きょうしまにおさめた。
今日から五日間おきょうをたてる、と云う言いつぎが来た。先帝の御冥福ごめいふくの為。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その夜は特におきょうを読み夜中一睡いっすいもせずにテントの中で夜を明かしました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一葉いちよう女史の「きょうづくえ」は、作としてほかのものより高く評価されていないが、わたしはあの「経づくえ」のお園の気持ちを、いまでも持っている女はすけなくはなったであろうが、あるとおもう
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
明窓浄几めいそうじょうきとはいかなくても、せめて庭に対してきょうづくえの一脚をすえ、それに面して書見するなり、ものにはならないまでも、詩箋のひとつもひねくろうというのなら、さすがは徳川幕下直参じきさんの士
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鐘供養かねくようというのは、どんなことをするのかとおもっていたら、ごんごろがねまえ線香せんこうてて庵主あんじゅさんがおきょうをあげることであった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
天皇てんのうははじめて、なるほど太子たいしはそういうとうとい人のまれかわりであったのかとおさとりになって、おきょう太子たいしくださいました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かゆいのか、それともくすぐったいのかもいわれぬ苦しみさえなかったら、うれしさにひと飛騨山越ひだやまごえ間道かんどうで、おきょうふしをつけて外道踊げどうおどりをやったであろう
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤犬あかいぬも、おきょうのあげられる時分じぶんには、ちゃんときて、いつものごとくまぶたほそくして、おきょうこえいていました。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただかすかなかすかなすすり泣きの声が、あちこちに聞えるばかり、たしかにそれはふくろうのおきょうだったのです。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
十名ほどの僧が出て、背をならべて、誦経ずきょうしていた。けいが、谷までひびいて行った。そして、谷間からも、きょうの声と、磬の音が、こだまになって返ってきた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからそのそばに、あみだ寺をたてて、とくの高いぼうさんを、そこにすまわせ、あさゆうにおきょうをあげていただいて、海のそこにしずんだ人びとのれいをなぐさめました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
仏教ぶっきょうのおきょうげることはめてくださるようにと、両親りょうしんみみにひびかせてやったのじゃ。
浴衣ゆかたが着せてありますから、あの上へきょうかたびらを着せればよいでございましょう。時計だの指輪だのというものは、かえってとってあげたほうがよろしいでしょうよ。ああしたお方でしたから。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
寒山詩は読んだが、おきょうのようで面白くなかった。なかに一句あり。
太子たいしが六さいときでした。はじめて朝鮮ちょうせんくにから、ほとけさまのおきょうをたくさん献上けんじょうしてまいりました。するとある太子たいしは、天子てんしさまのおまえへ出て
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
霊魂れいこんは、まったくかばれなかったのです。りっぱなおてらへいって、おきょうをあげてもらい、丁寧ていねいとむらいをしてもらってから、冥土めいどたびにつこうとおもいました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かくて胸なるくれないの一輪をしおりに、かたわら芍薬しゃくやくの花、ほう一尺なるにきょうえて、合掌がっしょうして、薬王品やくおうほんを夜もすがら。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その兵庫港の築港をつくる時も、人柱ひとばしらを沈めなければ、海底の礎石がすわらないという工人たちの愚を笑って、石に経文を書かせて沈め、きょうしまを築きあげて
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まさかそんなことはあるまいが、すいこ屁(音なしの屁)ぐらいは、おきょうの最中にするかもしれない。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
しん不乱ふらんにおきょうげたのでございました。
和尚おしょうさん、ごめんください。わたしはにます。もうとてもたすかりません。んだあとは、かわいそうだとおもって、おきょうの一つもんでください。」
和尚さんと小僧 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
めずらしく智深は奇特きとくな合掌をして、うろ覚えなおきょうをとなえた。それを見て、九紋龍もそばからいう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
和尚おしょうさまは、毎日まいにち御堂おどうにいっておきょうげられていました。ひるも、よるも、あたりはえたように寂然ひっそりとしてしずかでありました。いぬもだいぶとしをとっていました。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女は片手拝かたておがみに、白い指尖ゆびさきを唇にあてて、俯向うつむいてきょうを聞きつつ、布施をしようというのであるから
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめはみんなだまってきいていたが、すこしたいくつになったので、おきょうっている大人達おとなたちは、庵主あんじゅさんといっしょにとなした。なんだか空気くうきがしめっぽくなった。まるでおとむらいのようながした。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ある日、和尚おしょうさんは、御法事ごほうじばれて行って、小僧こぞう一人ひとりでお留守番るすばんをしていました。おきょうみながら、うとうと居眠いねむりをしていますと、玄関げんかん
和尚さんと小僧 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、どこの家にも、近ごろは、念仏の唱えが洩れていて、修験者しゅげんじゃきょうに耳をかす者がなかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼうさまは、もう、毎朝まいあさ、おどうて、おきょうげるのがやっとのくらいでありました。
娘と大きな鐘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
というのが、にとるようにこえるので、ぼうさんはもういよいよ絶体絶命ぜったいぜつめいとかくごをきめて、一心いっしんにおきょうとなえながら、はしれるだけはしって行きました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
やがて内陣のうちから僧正は袈裟けさをつけ直して出て来た。そして台座に坐って朗々ときょうをあげた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤犬あかいぬは、毎日まいにち御堂おどうがりくちにおとなしくはらばいになって、和尚おしょうさまのあげるおきょう熱心ねっしんいていたのであります。和尚おしょうさまは、どんなでもおつとめをおこたられたことはありません。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがておきょうがすむと、玄翁げんのうがって、呪文じゅもんとなえながら、っていたつえで三石をうちました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それも憎まず、仏が即心即仏をすすめ、菩提ぼだいの眼をひらけよかしと、千万のきょうをもって説かれているが、それもこれも、生きているうちのこと。——死んでは救いの手にすがれぬ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)