深山しんざん)” の例文
全部壁で密閉してあって、電灯が燦然さんぜんとついている。物音なんて、なにも入って来ない。深山しんざんのなかのように静かなところさと答えた。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
文「なアに雪女郎は深山しんざん雪中せっちゅうで、まれに女のかおをあらわすは雪の精なるよしだが、あれは天神様へお百度でも上げているのだろう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
山へ登るのもくいいことであります。深山しんざんに入り、高山、嶮山けんざんなんぞへ登るということになると、一種の神秘的な興味も多いことです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、うすると、深山しんざん小驛せうえきですから、旅舍りよしやにも食料しよくれうにも、乘客じようかくたいする設備せつび不足ふそくで、危險きけんであるからとのことでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あんずるに和漢わかん三才図会づゑ寓類ぐうるゐに、飛騨美濃ひだみのあるひは西国の深山しんざんにも如件くだんのごとき異獣いじうある事をしるせり。さればいづれの深山にもあるものなるべし。
「やはり苔の種類でしょう。深山しんざんでなければないのだそうです。根がないでしょう? 霧の湿気で生きてるんだそうです。」
帰途 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
ところが、近年、或人が金坑や石炭坑を發見するつもりで本道の深山しんざんをまはつてゐたところ、ふと珍らしい林に出くわした。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
この深山しんざんすこしばかり迂回うくわいしてかへつたとて、左程さほどおそくもなるまい、またきわめて趣味しゆみあることだらうとかんがへたので、わたくし發議はつぎした。
深山しんざんにある紅葉もみぢはまた種類しゆるいちがひ、いちばんうつくしいのは、はうちはかへでで、それは羽團扇はうちはのようで、ながさが二三寸にさんずんもあるおほきなものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
るとそのあたり老木ろうぼくがぎっしりしげっている、ごくごくさびしい深山しんざんで、そして不思議ふしぎ山彦こだまのよくひびところでございました。
『それはたわことだ。考えてみろ、俺たちはもう南宋の社会からは容れられない人間だ。こうして深山しんざんひそんで喰いつないでゆくのがせきのやまじゃないか』
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾月もかかって、まっすぐに北の方を指して旅を続けました。野を越え山を越えて進みました。しまいには、人里遠く離れた深山しんざんに迷い込んでしまいました。
手品師 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
果して寤か、果して寐か、我是を疑ふ。深山しんざん夜に入りて籟あり、人間昼に於て声なき事多し。むる時人真に寤めず、寐る時往々にして至楽の境にあり。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
そして、深山しんざんしずけさをやぶって、いわにはげしくつきあたるながれが、しろくあわだつであろうとおもいました。
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
深山しんざんのふかい森にかこまれて、いかめしくそびえる鉄の城。その中には、いったい、どんなおそろしいものが、すんでいるのでしょうか。死の城、妖魔の城です。
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
に入れば当宿の主人かへきたる、主人は当地の深山しんざん跋渉ばつしやう経験けいけんありとの故を以て、んで一行と共にせんことをだんず、主人答へて曰く、水源を溯源さくげんして利根岳にのぼ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
其子そのこの身に宿りしより常に殺気さつきべる夢のみ多く、或時は深山しんざんに迷ひ込みて数千すせんおほかみに囲まれ、一生懸命の勇をならして、その首領しゆりやうなる老狼らうらう引倒ひきたふし、上顎うはあご下顎したあごに手をかけて
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
すなわち当時の僕の感傷主義は、曇った眼一つでとぼとぼと深山しんざん幽谷ゆうこくを歩む一人の遍路を忘却し難かったのである。しかもそれは近代主義的遍路であったからであろうか、僕自身にもよく分からない。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「その方は、こうした深山しんざんの中で独り何をしておらるる」
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
田楽の笛ひゆうと鳴り深山しんざんに獅子の入るなる夕月夜かな
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
致し候因て貴所には何れの御方にて候哉と問返とひかへされ安五郎は又驚き扨々さて/\女子にはめづらしき者かな如何なる心願しんぐわんかは知らねども斯る深山しんざんこもらるゝ事かんじ入たり某しは信州へ秋葉越あきばごえして參らんと思へども一人たびゆゑとめてはなく斯る深山しんざん踏迷ふみまよひ漸々是まで參りし者なればかならず心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そんな大木のあるのはけだ深山しんざんであろう、幽谷ゆうこくでなければならぬ。ことにこれは飛騨山ひだやまからまわして来たのであることを聞いて居た。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あんずるに和漢わかん三才図会づゑ寓類ぐうるゐに、飛騨美濃ひだみのあるひは西国の深山しんざんにも如件くだんのごとき異獣いじうある事をしるせり。さればいづれの深山にもあるものなるべし。
『おじいさま、ここはよほどの深山しんざんなのでございましょう……わたくしはぞくぞくしてまいりました……。』
人里離れた深山しんざんでね、一人旅の男が、大猿に出会ったのです。そして、わきざしを猿に取られてしまったのですよ。猿はそれを抜いて、面白半分に振りまわしてかかって来る。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
鐵車てつしやが、いよ/\永久紀念塔えいきゆうきねんたふ深山しんざんいたゞきてんがめに、此處こゝ出發しゆつぱつするのは明朝めうてう午前ごぜん六時ろくじさだまつたが、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさは、海底戰鬪艇かいていせんとうてい運轉式うんてんしき間近まぢかせまつてるので
人夫中にては中島善作なるものはりやうの為めつねゆきんで深山しんざんけ入るもの、主として一行の教導けうどうをなす、一行方向にまよふことあればただちにたくみに高樹のいただきのぼりて遠望ゑんぼう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
私ひとりでこの深山しんざんを占有しているような気持がし、私の心は暢々ちょうちょうとしていた。
このあたりの名寺なる東禅寺は境広く、樹古く、陰欝として深山しんざんに入るのおもひあらしむ。この境内に一条の山径やまみちあり、高輪たかなわより二本榎に通ず、近きをえらむもの、こゝを往還することゝなれり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ある時は深山しんざんに迷い込みて数千すせんおおかみかこまれ、一生懸命の勇をならして、その首領なる老狼ろうろうを引き倒し、上顎うわあご下顎したあごに手をかけて、口より身体までを両断せしに、の狼児は狼狽ろうばいしてことごと遁失にげう
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ほかの深山しんざんにもゐるにちがひありません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そん大木たいぼくのあるのはけだ深山しんざんであらう、幽谷いうこくでなければならぬ。ことにこれは飛騨山ひだやまから𢌞まはしてたのであることをいてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こと朝日島あさひじま紀念塔きねんたふ設立せつりつ顛末てんまつ——あの異樣ゐやうなる自動冐險車じどうぼうけんしやが、縱横無盡じうわうむじんに、深山しんざん大澤たいたくあひだ猛進まうしんしたる其時そのとき活劇くわつげき猛獸まうじう毒蛇どくじやとの大奮鬪だいふんとう武村兵曹たけむらへいそう片足かたあしあぶなかつたこと
深山しんざんには、にわかに風が出て来た。焚火の火の子が暗い空にまいあがる。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一行が準備じゆんびせらるる十日間の食糧しよくれう到底とうてい其目的そのもくてきを達せず、ことに五升ばかりの米をふをめいぜられて此深山しんざん険崖けんがい攀躋はんさいする如きは、拙者のあたはざる所なりと、だんじて随行をこばむ、衆相かへりみて愕然がくぜんたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
深山しんざん孤家ひとつや白痴ばかとぎをして言葉ことばつうぜず、るにしたがふてものをいふことさへわすれるやうながするといふはなんたること
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わしは一あし退すさつたがいかに深山しんざんだといつてもこれ一人ひとりくといふはふはあるまい、とあし爪立つまだてゝすこ声高こはだか
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大抵たいてい推量すゐりやうもなさるであらうが、いかに草臥くたびれてつても申上まをしあげたやうな深山しんざん孤家ひとつやで、ねむられるものではないそれすこになつて、はじめのうちわしかさなかつたこともあるし、えて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
沢はのあたり、深山しんざんの秘密を感じて、其処そこからあと引返ひっかえした。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)