旅僧たびそう)” の例文
いつともなく菊亭右大臣家きくていうだいじんけばしにたたずんだ三人づれの旅僧たびそうは、人目ひとめをはばかりがちに、ホトホトと裏門のをおとずれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
れいしたいて悠々いう/\小取廻ことりまはし通抜とほりぬける旅僧たびそうは、たれそでかなかつたから、さいはひ其後そのあといてまちはいつて、ほツといふいきいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さして立去たりあとに殘りし男はなほ内の樣子をうかゞひ居る故旅僧たびそうは見付られなば殺されもやせんといきこらへて車のかげかゞみ居る中此方の板塀いたべいの戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
地主じぬしは、縁側えんがわで、にわをながめながら、たばこをすっていました。そのとき、きたないふうをした、旅僧たびそうが、はいってきて
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かゝれ/\と刀柄つかをたゝけば、応と意気込む覚えの面々、人甲斐ひとがいも無き旅僧たびそう一人。何程の事やあらむとあなどりつゝ、雪影うつらふ氷のやいばを、抜きれ抜き連れきそひかゝる。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ハイ/\これ猪口ちよくかい、大分だいぶ大きな物だね、アヽ工合ぐあひについたね。グーツと一くちむかまんうち旅僧たびそうしぶい顔して、僧「アツ……御亭主ごていしゆついで愚僧ぐそうしばつておれ。 ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おに真昼まひるひかりにあってはいくじのないものですから、うらめしそうに、しばらくは、旅僧たびそうのうしろ姿すがたとおくからながめていましたが、ふいと姿すがたえてえなくなりました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこでほこらの扉を開けた。中には袈裟けさ頭陀袋ずだぶくろかさ手甲てこう脚絆きゃはんの一切が入っていた。道家は老人のことばに従ってそれを着て旅僧たびそうの姿になり、うしこくになって法華寺の別院へ往った。
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雨期を過ぎて未だ久しからねば、泉の清水満々とたゝへたるに、旅僧たびそうらしきが二人、驢馬を放ち真裸になりて、首までひたり居りぬ。ぐるりの石に縄かけてすがり居るを見れば、水の深さも知らる。
竹童ちくどうみたいな小僧こぞうにはりまくられ、旅僧たびそうににらまれればすぐげだすなんて、いくら町人ちょうにんにしても、あまり度胸どきょうがなさすぎるね」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糺問きうもんありければつひに白状致しけりよつて金屋の盜賊たうぞくも相知れ夫より清三郎へ追手おつてかけられたり扨牢内より彼の旅僧たびそう雲源うんげん呼出よびいだされ又伊勢屋三郎兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旅僧たびそうわたしおなじすしもとめたのであるが、ふたけると、ばら/\と海苔のりかゝつた、五目飯ちらし下等かとうなので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と云う声はこだまに響きます、うしろ三峰堂みみねどうの中に雨止あまやみをしていた行脚あんぎゃ旅僧たびそう、今一人は供と見えてすげの深い三度笠さんどうがさに廻し合羽で、柄前つかまえへ皮を巻いて、鉄拵てつごしらえの胴金どうがねに手を掛け
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところが、三日みっかめのことであります。一人ひとり年老としとった旅僧たびそうが、自分じぶんまえとおりかかりました。
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは旅僧たびそうであった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ねおきて見ると、いつのにそこへきたか、網代あじろかさ眉深まぶかにかぶったひとりの旅僧たびそう、ひだりに鉄鉢てっぱちをもち、みぎにこぶしをふりあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こと炬燵こたつ出来できたからわたしそのまゝうれしくはいつた。寐床ねどこう一くみ同一おなじ炬燵こたついてあつたが、旅僧たびそうこれにはきたらず、よこまくらならべて、のない臥床ねどこた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
旅僧たびそう扨々さて/\やかましい強情者がうじやうものめと無理無體むりむたい引摺々々ひきずり/\行處へ九助は何なく行掛ゆきかゝりければ彼の娘は九助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何か知らんとすかして見れば、樵夫きこりが立てましたか、たゞしは旅僧たびそう勤行ごんぎょうでもせし処か、家と云えば家、ほんの雨露うろしのぐだけの小屋があります。文治は立止って表から大声に
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旅僧たびそうは、こんど、むらはずれの、ちいさな百姓家しょうやへはいって、たのみました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これは、旅僧たびそう
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かつじやうぬまふち旅僧たびそうくちから魔界まかい暗示あんじつたへられたゝめに——いたいまはしかつたので、……権七ごんしち取寄とりよせさした着換きがえきぬは、あたかほこら屋根やねふぢはなきかゝつたのを
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
旅の事だから布施物ふせもつを出さんでも宜しい、それやア一文ずつ貰って歩く旅僧たびそうですから、一文でも二文でも御回向をいたすのは当然あたりまえで、しかし布施のない経は功徳にならんと云うから、これは戴きます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
旅僧たびそうは、そのまま、だまって、木戸口きどぐちていきました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一人女ひとりをんな」「一人坊主ひとりばうず」は、暴風あれか、火災くわさいか、難破なんぱか、いづれにもせよ危險きけんありて、ふねおそふのてうなりと言傳いひつたへて、船頭せんどういたこれめり。其日そのひ加能丸かのうまる偶然ぐうぜんにん旅僧たびそうせたり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
旅僧たびそう冷々然れい/\ぜんとして、きこえよがしに風説うはさして惡樣あしざまのゝしこゑみゝにもれざりき。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
旅僧たびそうはそういって、握拳にぎりこぶしを両方まくらに乗せ、それで額を支えながら俯向うつむいた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅僧たびそう年紀とし四十二三、全身ぜんしんくろせて、はなたかく、まゆく、耳許みゝもとよりおとがひおとがひよりはなしたまで、みじかひげまだらひたり。けたる袈裟けさいろせて、法衣ころもそでやぶれたるが、服裝いでたちれば法華宗ほつけしうなり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「さて、夜もけました、」といって旅僧たびそうはまた語出かたりだした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、小次郎法師の旅僧たびそう法衣ころもの袖を掻合かきあわせる。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)