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崩
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くず
ふりがな文庫
“
崩
(
くず
)” の例文
それを無惨に突き
崩
(
くず
)
そうとするのはみじめのようでもある。そうかと思うと、また自分という者を振り返ってみると、どうであろう。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
今日限りの命だ。二竜山を
崩
(
くず
)
す大砲の声がしきりに響く。死んだらあの音も聞えぬだろう。耳は聞えなくなっても、誰か来て墓参りを
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こうした出迎えにも、古い格式のまだ
崩
(
くず
)
れずにあった当時には、だれとだれはどこまでというようなことをやかましく言ったものだ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
酒を呼んで、わざと膝を
崩
(
くず
)
し初める。
頼母子講
(
たのもしこう
)
の事などを、雑談のあいだにわざとして、やがて茶漬を食べ、思い思いに散じて去る。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
歳は三十の前後、
細面
(
ほそおもて
)
で色は白く、身は
痩
(
や
)
せているが骨格は
冴
(
さ
)
えています。この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと、
青嵐
(
あおあらし
)
が
崩
(
くず
)
れる。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
ミドリは悲しげに叫ぶと、ガッカリしたのか、大地の上にヘタヘタと身体を
崩
(
くず
)
した。それは見るも気の毒な気の落としようだった。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
補佐役の
青木主膳
(
あおきしゅぜん
)
という侍から「あれは
寄手
(
よせて
)
が追い
崩
(
くず
)
される物音です」とか、「今度は味方が門内に引き揚げる合図の
貝
(
かい
)
の
音
(
ね
)
です」
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この時振動の力さらに加わりてこの室の壁眼前に
崩
(
くず
)
れ落つる勢いすさまじく岡村と余とは宮本宮本と呼び立てつつ戸外に駆けいでたり。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
類人猿が、じぶんを埋葬にくる悲愁の
終焉地
(
しゅうえんち
)
だと思うと、私はその壁を無性にかき
崩
(
くず
)
した。すると、その響きにつれてどっと
雪崩
(
なだ
)
れる。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何もかも、しんと静まり返って、うちの犬までが、木戸のそばに丸くなって
眠
(
ねむ
)
っていた。わたしは、温室の
崩
(
くず
)
れ残りによじ登った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
御用邸に近い海岸にある
荘田
(
しょうだ
)
別荘は、裏門を出ると、もう
其処
(
そこ
)
の白い砂地には、
崩
(
くず
)
れた波の名残りが、白い
泡沫
(
ほうまつ
)
を立てているのだった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
大概
(
たいがい
)
のことでは一
向
(
かう
)
に
騷
(
さわ
)
がぬやうな
彼
(
かれ
)
の
容子
(
ようす
)
が
外
(
ほか
)
からではさうらしくも
見
(
み
)
えるのであつた。も一つは
服裝
(
ふくさう
)
を
決
(
けつ
)
して
崩
(
くず
)
さぬことであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
滅多に電車も通らないだだ広い路を曲ると、川に添った堤に出て、
崩
(
くず
)
された土塀のほとりに、
無花果
(
いちじく
)
の葉が重苦しく茂っている。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
『若き君の多幸を祈る』と啄木歌集の余白に書いてくれた美少年上原が、女に身を持ち
崩
(
くず
)
し、下関の旅館で自殺をしたときいた。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
それは破れた数本の
椽
(
たるき
)
のある小家で、
崩
(
くず
)
れ
堕
(
お
)
ちようとしている壁を木の股で支えてあるのが見えた。そこに小さな室があった。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
橋は、丸木を
削
(
けず
)
って、三、四本並べたものにすぎぬ。合せ目も
中透
(
なかす
)
いて、板も朽ちたり、人通りにはほろほろと
崩
(
くず
)
れて落ちる。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
高鳴りひびく音が旗を巻き、
崩
(
くず
)
れ散り、
怨
(
うら
)
みこもる低音部の苦しみ
悵快
(
ちょうおう
)
とした身もだえになると、その音は寝ている梶の
腸
(
はらわた
)
にしみわたった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
私の部屋の窓からは、いまにも
崩
(
くず
)
れそうな
生墻
(
いけがき
)
を透かして、
一棟
(
ひとむね
)
の貧しげな長屋の裏側と、それに附属した一つの古い井戸とが
眺
(
なが
)
められた。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
明朝
(
あした
)
目を覚ますと、お作はもう起きていた。
枕頭
(
まくらもと
)
には綺麗に火入れの灰を
均
(
なら
)
した莨盆と、折り目の
崩
(
くず
)
れぬ新聞が置いてあった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
見るさえまばゆかった雲の
峰
(
みね
)
は風に
吹
(
ふ
)
き
崩
(
くず
)
されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の
傾
(
かたむ
)
くに連れてさすがに
凌
(
しの
)
ぎよくなる。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
湖の
縁
(
へり
)
はそこから左に
開
(
ひら
)
けて人家がなくなり、傾斜のある畑が丘の方へ続いていた。黒いその丘は
遥
(
はるか
)
の前に
崩
(
くず
)
れて湖の中へ出っぱって見えた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朝の跡片づけの手伝いをすませた瀬川艶子は、自分の部屋に
定
(
き
)
められた
玄関脇
(
げんかんわき
)
の三畳に引っ込むと、机の前に
崩
(
くず
)
れ
坐
(
すわ
)
った。
五階の窓:04 合作の四
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
しかし生来の烈しい気性のためか、この発作がヒステリーに変わって、泣き
崩
(
くず
)
れて理性を失うというような所はなかった。
私の父と母
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
と私の
面
(
かお
)
を見て
微笑
(
にッこり
)
しながら、
一寸
(
ちょいと
)
滑稽
(
おどけ
)
た手附をしたが、其儘
所体
(
しょてい
)
崩
(
くず
)
して駈出して、
表梯子
(
おもてはしご
)
をトントントンと
上
(
あが
)
って行く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
川が直接この美しい珠玉を運んで来るわけではないのだが川は山を
崩
(
くず
)
して岩にし岩を崩して石にし石をくだいて
砂利
(
じゃり
)
にし砂利をふるって土にする。
さくらんぼ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
林の
裾
(
すそ
)
の
灌木
(
かんぼく
)
の間を行ったり、
岩片
(
いわかけ
)
の小さく
崩
(
くず
)
れる
所
(
ところ
)
を何べんも通ったりして、達二はもう原の入口に近くなりました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
数日後ニネヴェ・アルベラの地方を
襲
(
おそ
)
った
大地震
(
だいじしん
)
の時、博士は、たまたま自家の書庫の中にいた。彼の家は古かったので、
壁
(
かべ
)
が
崩
(
くず
)
れ
書架
(
しょか
)
が
倒
(
たお
)
れた。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
障子
(
しょうじ
)
は破れたきり張ろうとはせず、
畳
(
たたみ
)
は
腸
(
はらわた
)
が出たまゝ、
壁
(
かべ
)
は
崩
(
くず
)
れたまゝ、
煤
(
すす
)
と
埃
(
ほこり
)
とあらゆる
不潔
(
ふけつ
)
に
盈
(
みた
)
された家の内は、言語道断の汚なさであった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
綱雄はむずかしき顔も
崩
(
くず
)
さず、
眉根
(
まゆね
)
を打ち寄せて黙然たり。見るにこなたも燃え立つ心、いいわ、打っちゃっておけ!
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
寒さもまさり来るに急ぎ家に帰れば
崩
(
くず
)
れかかりたる火桶もなつかしく、
風呂吹
(
ふろふき
)
に
納豆汁
(
なっとうじる
)
の
御馳走
(
ごちそう
)
は時に取りての
醍醐味
(
だいごみ
)
、風流はいづくにもあるべし。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それ喧嘩だというと、大勢が
崩
(
くず
)
れて、私たちの跳ね出し店の
手欄
(
てすり
)
を被り、店ぐるみ
葭簀張
(
よしずば
)
りを打ち抜いて、どうと
背後
(
うしろ
)
まで崩れ込んで行ったものです。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「むずかしいですね」と、Kは言い、口もとに
皺
(
しわ
)
を寄せ、唯一のつかみどころである書類が覆われているので、ぐったりと椅子の
肘掛
(
ひじかけ
)
に
崩
(
くず
)
れかかった。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
その友人とは、彼の言葉によると「左翼
崩
(
くず
)
れ」で、内地は特高がうるさいもんだから、上海に逃避したのだと言う。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
この工場と
相対
(
むかいあ
)
ってる北側に、今は地震で
崩
(
くず
)
されて旧観を
更
(
あらた
)
めてしまったが、附属の倉庫の白壁の土蔵があった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
足元から
崩
(
くず
)
れ落ちる真黒な山路も、物の
怪
(
け
)
のような岩の間を
轟
(
とどろ
)
き流れる
渓川
(
たにがわ
)
も、慣れない身ながら恐れもなく、このような死人の息さえきこえぬ山奥で
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
袴の
襞
(
ひだ
)
を
崩
(
くず
)
さずに、前屈みになって据わったまま、主人は
誰
(
たれ
)
に話をするでもなく、正面を向いて目を据えている。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
かれは今の境遇を考えて、理想が現実に触れてしだいに
崩
(
くず
)
れていく一種のさびしさとわびしさとを痛切に感じた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あるひはまた
平
(
ひら
)
たく畳の上につくばひて余念もなく咲く花を仰ぎ見たる、あるひは
膝
(
ひざ
)
を
崩
(
くず
)
して身を
後
(
うしろ
)
ざまに
覆
(
くつがえ
)
さんばかりその背を軽く欄干に
寄掛
(
よせか
)
けたる
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
敵
(
てき
)
の
大将
(
たいしょう
)
の
高丸
(
たかまる
)
はくやしがって、
味方
(
みかた
)
をしかりつけては、どこまでも
踏
(
ふ
)
み
止
(
とど
)
まろうとしましたけれど、一
度
(
ど
)
崩
(
くず
)
れかかった
勢
(
いきお
)
いはどうしても
立
(
た
)
ち
直
(
なお
)
りません。
田村将軍
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
それでは
崩
(
くず
)
れてしまうと思ったものが、
塩水
(
しおみず
)
によく
浸
(
ひた
)
してから焼くようにと教えたという話しかたもある。「打たぬ太鼓の鳴る太鼓」などは
何処
(
どこ
)
にもない。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
雪
(
ゆき
)
のためには、ある
年
(
とし
)
はおされて
危
(
あや
)
うく
折
(
お
)
れそうになったこともあり、また、ある
年
(
とし
)
の
夏
(
なつ
)
には、
大雨
(
おおあめ
)
に
根
(
ね
)
を
洗
(
あら
)
われて、もうすこしのことで、この
地盤
(
じばん
)
が
崩
(
くず
)
れて
葉と幹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ほかの者の
膳
(
ぜん
)
には
酢味噌
(
すみそ
)
の
飯蛸
(
いいだこ
)
や
海鼠
(
なまこ
)
などがつけられていて、大きな
飯櫃
(
めしびつ
)
の山がみるみる
崩
(
くず
)
されていた。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
現代詩壇に於ける自由詩は、その始め、実に新体詩から解体して、次第に
済
(
な
)
し
崩
(
くず
)
しになったのである。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼が、
崩
(
くず
)
れゆく、
荘園
(
しょうえん
)
貴族文化の最後の典型的な歌い手と呼ばれる所以は、じつにそこにあります。
「はつ恋」解説
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
街
(
まち
)
へ
赴
(
おもむ
)
くとそれを抵当にしてあっちこっちの茶屋や酒場で
遊蕩
(
ゆうとう
)
に
耽
(
ふけ
)
っては、経川に面目を
潰
(
つぶ
)
すのが例だったが、相変らずさようなことに身を持ち
崩
(
くず
)
していると見える。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
エレベーター・ガールは二人の顔を見てニヤ/\笑った。二人も覚えず
相好
(
そうごう
)
を
崩
(
くず
)
して、逃げ出した。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
むかしの
任侠
(
にんきょう
)
と称する者を見ても、彼らは外見上
放蕩
(
ほうとう
)
三
昧
(
まい
)
に身を持ち
崩
(
くず
)
すようでありながら、なお女子に対する関係は思いのほかに潔白で、足を
遊里
(
ゆうり
)
に踏み込んでも
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
赤
禿
(
は
)
げの
前額
(
ひたえ
)
の湯げも立ち上らんとするを、いとどランプの光に輝かしつつ、
崩
(
くず
)
るるようにすわり
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
香織
(
かおり
)
はそれを
両手
(
りょうで
)
にささげ、『たとえお
別
(
わか
)
れしても、いつまでもいつまでも
姫
(
ひめ
)
さまの
紀念
(
かたみ
)
に
大切
(
たいせつ
)
に
保存
(
ほぞん
)
いたします……。』と
言
(
い
)
いながら、
声
(
こえ
)
も
惜
(
おし
)
まず
泣
(
な
)
き
崩
(
くず
)
れました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
と思うとまた、銀座通りの町並が、その灰色の中から浮き上って、
崩
(
くず
)
れるように
後
(
うしろ
)
へ流れて行く。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
崩
常用漢字
中学
部首:⼭
11画
“崩”を含む語句
崩折
崩御
雪崩
崩潰
崩壞
大崩崖
崩壊
持崩
一雪崩
総崩
人崩
居崩
崖崩
大崩
山崩
崩落
崩掛
御家人崩
分崩
御崩御
...