つい)” の例文
ついては方今の騒乱中にこの書を出版したりとて見る者もなかるべしといえども、一度ひとたび木に上するときは保存の道これより安全なるなし
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
三ヶ津総芸頭と云う美称を、長い間享受して来た藤十郎は、自分の芸については、何等の不安もないと共に、十分な自信を持っていた。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
父がここへ来たのは丁度ちょうど幸いである。市郎はの𤢖について父の意見をただすべく待ち構えていた。が、父の話はんな問題で無かった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ついては、御親類樣方御一統の思召をたまはり、御異存がなければ明日にも公儀に屆出の上、改めて世間へも披露いたしたいと存じます。
嫁入盛りだの……はいお目出度う……ついてはソノ火急な事であってぞ困ったろうが、昨日きのう番頭が國綱のお刀を持って帰られたろうな
「今もネ、花ちやん」と丸井老人は真面目顔「例の芸妓殺げいしやころし——小米こよねの一件について先生に伺つて居た所なんだ」と言ひつゝさかづき差しいだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
コルネエユは自分がモリエエル夫人に懸想けさうして居る事についてモリエエルが煩問して居るのだと解釈してモリエエルの前に懺悔をする。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
格別に受居しこと成れば勿々なか/\以て意趣いしゆ意恨いこんなど有べき樣御座なく候により私しに於て更々さら/\うらみとは存じ申さず候ついては格別の御慈悲じひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
原始人類の知識状態又は生活状態を知るに最も有力なる手がかりは、現今世界に散在する未開地に住する蛮族ばんぞくついての研究である。
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
かくまでも印象深い街の灯の風景が無残にくずれたとなると、私はもはや小田原の街について一語の印象を語る勇気も持ち合せない。
流浪の追憶 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
万年筆について何等の経験もない余は其時丸善からペリカンと称するのを二本買って帰った。そうしてそれをいまだに用いているのである。
余と万年筆 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然るにアリストテレスは何が故にたゞ罪過をのみ説いて歓喜戯曲コムメヂーの「歓喜に終る源因」について説くことなかりしや。是れ大なる由縁あり。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
それから——あのわたしにとつて明確に不適当である若者が、娘にとつてはどうやら不適当に見えた事についての、本能的な喜びだつた。
愚かな父 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
注意 この切図と各部の名称価格等は『食道楽』夏の巻付録に委しければ読者ついらるべし〔夏の巻付録「西洋食品価格表」〕。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
父の茶道はもとよりしかるべきやぶうちの宗匠について仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性はいたずらな風流を欲しなかった。
「パンドラのはこ」という題については、明日のこの小説の第一回に於て書き記してあるはずだし、此処ここで申上げて置きたい事は、もう何も無い。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それにね、当時の鎌倉というものは新興都市には違いないが、何といっても田舎で文化については何かと京都をあこがれている。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「君だって怖くない事はあるまい、——が、かくそれについて少し考えている事があるんだ、まあ……後で僕の部屋へ来給え」
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
次々と、その場に居合せた程の人々は、順に訊ねられたが、口数少く、いずれも女の身元については未知みちとの答ばかりであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
富岡先生が折角上京されたと思うと突然帰国された、それについて自分は大に胸を痛めている、先生は相変らず偏執ひねくれておられる。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
実はネお前さんのお嫁の事についちゃアイと良人うちでも考えてる事があるんだから、これから先き母親さんがどんな事を言ッておよこしでも
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかし、オットセイなるものについては、この番兵さんも、名前こそ聞いているが、その知識はあんまり深くないものだから
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此燒土このやけつちついて、武内桂舟畫伯たけうちけいしうぐわはくせつがある。陶器通たうきつう立場たちばからしてかんがへてたので、つちやけさうすまでくといふのは、容易よういでない。
そして茲にこそ氏の作家さくかとして天稟てんびん素質そしつの尊さがあるのでせう。恐らくこの點については各人に異論いろんのない事と思ひます。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すなは戰時中せんじちう膨張ぼうちやうした日本にほん經濟けいざい戰後せんごおい收縮しうしゆくした状態じやうたいついての國民自體こくみんじたい自覺じかく喚起くわんきすることが非常ひじやう必要ひつえうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
そういう先生についてやるのだから、書生は同じ方向に進んで、何事も一時の間に合せであって、精々せいぜいく行って、試験に及第すればよい位である。
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それは頼家よりいえが生れて間もない時のこと、政子には継母けいぼに当る遠江守時政の後妻まきかたから頼朝のおこないついて知らして来た。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
たゞわが身については我汝の願ひを滿みたさむ、我はグイード・グィニツェルリなり、未だ最後いまはとならざる先に悔いしため今既に罪を淨む。 九一—九三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
最初に假名遣かなづかひと云ふものはどんなものだと私は思つて居るか、それから假名遣にはどんな歴史があるかと云ふことについて少し申したいのであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ついては、甚だ恐れ入るが、妻の許まで、使をせて、水装束みずしょうぞくを取寄せたいと存じますが、お許し下さいましょうか』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「狭山さん。貴方のお考えは実に御尤も至極ですが、それについてちょっとお伺いしたい事があります。これはほんの参考のために過ぎないのですが」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夏蕎麥なつそばでもとれんなかうい鹽梅あんべえぢやつぶえけやうだな」おつたはにはまゝだい一にれる蕎麥そばついていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ついては、それの日、あたかも黄道吉辰きっしんなれば、揃って方々かたがたを婿君にお迎え申すと云う。汗冷たくして独りずつ夢さむ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人が決してすままわないとの事だった、その怪物ばけものの出る理由については、人々のいうところが皆ちがっているので取止とりとめもなく、解らなかったが、そののちにも
怪物屋敷 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
しからば北歐羅巴きたようろつぱ方面はうめんはどうかと見遣みやるに、この方面はうめんついてはわたしあまおほらぬが、えうするに幼稚えうちきはまるものであつて、規模きぼきはめてちいさいやうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
邪慳じやけんしうとめのこと、意地くね曲つたヒステリーのあによめのこと、相変らず愚図で気のきかぬ頼りない亭主のこと、それから今度のごた/\についてのことだつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
尤も老人病弱者にてもし肉食をきらうものがあればこれに適するような消化のいい食品をつくる事については私共只今充分努力を致して居るのであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
敬の実用の才ありて浮文ふぶんの人にあらざるをるべし。建文のはじめに当りて、燕を憂うるの諸臣、おのおの意見を立て奏疏そうそたてまつる。中について敬の言最も実に切なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、そんな風物の移り変りについては、今度の手紙は何も知らさなかった。ただいつもの通りの送金受取りの簡単な礼と、次のようなことが記してあった。
あまり者 (新字新仮名) / 徳永直(著)
それから彼等は眠りについて暫く会話をした。礼助が相変らず朝寝坊で、といふよりは、昼寝て夜起きてゐるやうな悪習慣を持つてゐることを彼女等は心配した。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
いま濱田ハマダ宮本ミヤモト兩先生りようせんせい御話おはなしついて、わたくし已徃きおうおいかんじましたること一寸ちよつと貴方所あなたがたまうげましたのです。
きょうは午后ごごから鵞口瘡がこうそう疫の事について。組合本部の役員会があるはずなれど差支さしつかえる事があって往をやめた
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
妖怪とか変化へんげとか、生霊とか死霊とか種々いろいろ怪物ばけものついては度々たびたび前に話をしたり書いたりしたから改めて申すまでも無かろうから今度は少し変った筋の話をする事にする。
大きな怪物 (新字新仮名) / 平井金三(著)
その上、妹の最初の結婚については、ルーダオには特殊な、頭目としての責任が残っている。社の風習や、社人の暗黙の反対やを無視して、彼は妹を他種族にとつがせた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
薬剤の容器については、私は知る所がない。が、物好きな読者が、彼の線路の附近を丹念に探し廻ったならば、恐らくは水田みずたの泥の中から、何ものかを発見するであろう。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それについて運動費が要るから一万元ばかり呉れと、出鱈目の嘘八百を並べ、まんまと大金をせしめて上海に帰り何食わぬ顔していたが、驚いたのは知事とそのおやじで
明るい色、明るい活字、すがすがしい紙、健康な絵を、あの教科書はみんな忘れてしまっている。沢山のお母さんたちが、もっと子供の本についてアリチブになってほしいと思う。
平凡な女 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
宗教的要求は自己の生命についての要求である。我々の自己が相対的にして有限なるを知ると共に、絶対無限なる力に合一しこれりて永遠の真生命を得んと欲するの欲求である。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
女子教育上ぢよしけういくじやう意見いけんとしては別段べつだん申上まをしあげることも御在ござませんが、わたくしが一昨年さくねんはる女子英學塾ぢよしえいがくじゆくひらいてから以來いらい種々いろ/\今日こんにち女子ぢよしすなは女學生ぢよがくせいつい經驗けいけんしたことがありますから
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
鎔岩ようがん破片はへん六里ろくり遠距離えんきよりばしたといふ、このてんついての記録保持者きろくほじしやである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)