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逃
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のが
ふりがな文庫
“
逃
(
のが
)” の例文
そして、もう一
刻
(
こく
)
もここにいるのが
危険
(
きけん
)
になりましたときに、
二人
(
ふたり
)
は
相談
(
そうだん
)
をして、どこか
安全
(
あんぜん
)
なところへ
逃
(
のが
)
れることにいたしました。
幸福に暮らした二人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
法師丸は間一髪のところを
逃
(
のが
)
れてまだ外囲いの篠垣を越えないうちに、方々の櫓や望楼から貝や太鼓を一時に鳴らし出すのを聞いた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
幾分は責任が
逃
(
のが
)
れるし、もし評判通り非常な名剣であった時には、思い入りこの老人からとっちめてやろうという腹なのでしょう。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一字一句の瑕疵も見
逃
(
のが
)
せなかつた。或時は百首の内九十首を棄て、十首の内九首を棄てた。或時はたつた一句のために七日七夜も坐つた。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ましてそういう、世の耳目に触れた記事を、取り入れないではおかない種類では、
雑俳
(
ざっぱい
)
に、
川柳
(
せんりゅう
)
に、
軽口
(
かるくち
)
に、
一口噺
(
ひとくちばなし
)
に
逃
(
のが
)
しはしなかった。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
蟲の
音
(
ね
)
亙
(
わた
)
りて月高く、いづれも哀れは秋の夕、
憂
(
う
)
しとても
逃
(
のが
)
れん
術
(
すべ
)
なき
己
(
おの
)
が影を踏みながら、
腕
(
うで
)
叉
(
こまぬ
)
きて小松殿の
門
(
かど
)
を立ち出でし瀧口時頼。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
津田はこの子供に対するような、
笑談
(
じょうだん
)
とも訓戒とも
見分
(
みわけ
)
のつかない言葉を、苦笑しながら聞いた後で、ようやく室外に
逃
(
のが
)
れ
出
(
で
)
た。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一年前、何者かから
逃
(
のが
)
れるように日本を去られて、支那へ赴かれてからも、二三度森さんは私のところにもお便りを下すった。
楡の家
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
さばれ
生
(
いき
)
とし生ける者、何かは命を惜まざる。
朝
(
あした
)
に生れ
夕
(
ゆうべ
)
に死すてふ、
蜉蝣
(
ふゆ
)
といふ虫だにも、追へば
逃
(
のが
)
れんとするにあらずや。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
又
(
また
)
なんじら
我
(
わ
)
が
名
(
な
)
のために
凡
(
すべ
)
ての
人
(
ひと
)
に
憎
(
にく
)
まれん。されど
終
(
おわり
)
まで
耐
(
た
)
え
忍
(
しの
)
ぶものは
救
(
すく
)
わるべし。この
町
(
まち
)
にて、
責
(
せ
)
めらるる
時
(
とき
)
は、かの
町
(
まち
)
に
逃
(
のが
)
れよ。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
怨
(
うら
)
み種々樣々に
悲
(
かな
)
しみつゝ何卒して夫文右衞門殿が身の
證
(
あか
)
りの立工夫を授け給へ何か無實の難を
逃
(
のが
)
るゝ樣なさしめ給へと神佛を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
まるで絶海の孤島に流された囚人がこの船一艘
逃
(
のが
)
しては一生涯本國へ歸る望みがないと必死に先を爭ふと同樣な有樣である。
新帰朝者日記
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
柳吉は「もうちょっと待ちイな」と言い
逃
(
のが
)
れめいた。「子供が可愛いことないのんか」ないはずはなかったが、娘の方で来たがらぬのだった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「はいっ……」と、
恐懼
(
きょうく
)
しながらも、こう主従顔のそろった絶好な機を
逃
(
のが
)
すまいとするものの如く、大和守は喰いさがって
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
貞盛方の佗田真樹は戦死し、将門方の
文屋好立
(
ぶんやのよしたつ
)
は負傷したが助かつた。貞盛は
辛
(
から
)
くも
逃
(
のが
)
れて、
遂
(
つひ
)
に京に
到
(
いた
)
り、将門暴威を振ふの始終を申立てた。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
其留守は
何
(
どん
)
なに静で好だろう是からネ
其様
(
そんな
)
時には
逃
(
のが
)
さず手紙を遣るから来てお泊りよ、二階が広々として、エお出なネお出よお出なね、お出よう
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ときどき眼をあげてこの老僧の面貌を味はひながら、そのなまなましい印象を
逃
(
のが
)
さないやうに木に移し植ゑようとした。
茶話:11 昭和五(一九三〇)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そして二人とも
揃
(
そろ
)
って何か
逃
(
のが
)
れるような足どりで、その前から直角に、暗い瓢箪池の方へそそくさと
逸
(
そ
)
れたのであった。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
英国の
倶楽部
(
クラブ
)
の発達というものが、家庭における主婦の形式的
女権
(
じょけん
)
の
窮屈
(
きゅうくつ
)
から
逃
(
のが
)
れようとする男性の自由の欲望から発達したものだという話もある。
女性崇拝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
やがて青木さんはその冷やかな
現実
(
げんじつ
)
の
意識
(
いしき
)
を
逃
(
のが
)
れようとするやうに、
新
(
あら
)
たな空
想
(
さう
)
をゑがきながら、
奧
(
おく
)
さんを
振返
(
ふるかへ
)
つた。
夢
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
きわめてさまざまなやりかたをしてみて、彼女に近づこうとしたが、彼女はいつでもそれを
逃
(
のが
)
れることを心得ていた。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
ハハハハハ、奥さんつかまえましたよ。もう
逃
(
のが
)
しっこはありません。曲者はこの金庫の中に隠れているのです。今扉を
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お君さんはその実生活の迫害を
逃
(
のが
)
れるために、この芸術的感激の涙の中へ身を隠した。そこには一月六円の
間代
(
まだい
)
もなければ、一升七十銭の米代もない。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
甲の声 ツ、ツ、皆さん、早く
逃
(
のが
)
れて下さい。逃げて! (と言いざま第一の塀と第二の塀の間で倒れたらしい音)
天狗外伝 斬られの仙太
(新字新仮名)
/
三好十郎
(著)
酒ぶとりした六十翁の、
溝
(
みぞ
)
を
刎
(
は
)
ね越え、阪を
駈
(
か
)
け上る元気は、心の苦から
逃
(
のが
)
れようとする犠牲のもがきの様で、彼の心を
傷
(
いた
)
ませた。やがて別荘に来た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ああいう
淀
(
よど
)
み果てた生活を押し進めて行ったら、
仮令
(
たとえ
)
節子のことが起って来なくとも、早晩海の外へでも
逃
(
のが
)
れて行くの外はなかったろうと想って見た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ところが、明日おそろしい禍いが迫って参りまして、どうにも
逃
(
のが
)
れることが出来なくなりました。それを救って下さるのは、あなたのほかにありません。
中国怪奇小説集:15 池北偶談(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
逃
(
のが
)
れんとしてはまつわられ、あわれ見る人もなき庭のすみに
新日高川
(
しんひたかがわ
)
の一幕を
出
(
いだ
)
せしが、ふと思いつく由ありて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
船長はストキや船員を
反撥
(
はんぱつ
)
して、登別へ引きつけられた。そこでは彼は自然の冷酷さからしばらく
逃
(
のが
)
れうるのだ!
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
澄
(
す
)
んだ
空
(
そら
)
の
月
(
つき
)
を
寢
(
ね
)
ながら
眺
(
なが
)
める、
人
(
ひと
)
いきれから
逃
(
のが
)
れた
郊外
(
こうがい
)
の
樂
(
たのし
)
みは、こゝに
止
(
とゞ
)
めを
刺
(
さ
)
す……それが
觀
(
み
)
られない。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
羂
(
わな
)
は破れて鳥は
逃
(
のが
)
れた!(詩編一二四の七)。パリサイ人もヘロデ党もイエスの言葉尻をつかむどころか、舌を巻いてびっくりしてしまった(一二の一七)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
片方は
大河
(
おおかわ
)
で
遮
(
さえぎ
)
られているから、この
一方口
(
いっぽうぐち
)
へ
逃
(
のが
)
れるほかには逃げ道はなく、まるで袋の鼠といった形……振り返れば、諏訪町、黒船町は火の海となっており
幕末維新懐古談:13 浅草の大火のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「まア、そう言えばそうですが、ここに一つ、どうしても定太郎に
逃
(
のが
)
れられない弱い尻ッ尾があるんです」
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
瀬田済之助
(
せたせいのすけ
)
が東町奉行所の危急を
逃
(
のが
)
れて、大塩の屋敷へ駆け込んだのは、
明
(
あけ
)
六つを少し過ぎた時であつた。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
又「無いよ、どうせ人を害せば
斬罪
(
ざんざい
)
だ、僕が証書を持ってゝ
自訴
(
じそ
)
すれば一等は減じられるが、君は
逃
(
のが
)
れられんさ、
宜
(
よろ
)
しいやねえ、まア
宜
(
い
)
いから心配したもうな」
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
或は遠方より熊を
銃殺
(
じゆうさつ
)
する位なり、
若
(
も
)
し命中
誤
(
あやま
)
りて
熊
(
くま
)
逃
(
のが
)
るれば之を追捕するの
勇
(
いう
)
なきなり、而るに秋田若くは越後の猟人年々此山奥に入り来りて
猟
(
りやう
)
するを見れば
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
昔
(
むかし
)
から臣下の者が皇子さま方のお宮へ
逃
(
に
)
げかくれたことは聞いておりますが、
貴
(
とうと
)
い皇子さまがしもじもの者のところへお
逃
(
のが
)
れになったためしはかつて聞きません。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
ここに阿知の直白さく、「墨江の中つ王、大殿に火を著けたまへり。かれ
率
(
ゐ
)
まつりて、倭に
逃
(
のが
)
るるなり」
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
応仁乱がはじまると関東に
逃
(
のが
)
れ、文明元年心敬の供をして
川越
(
かわごえ
)
の
太田道灌
(
おおたどうかん
)
のもとに招かれた。それから美濃の郡上城に
赴
(
おもむ
)
いて常縁から古今の伝授を受けたのである。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
その上、もし討ち洩らして、やみやみ
逃
(
のが
)
れられでもしたら、もはや、剣の師として、江戸で標札が上げられぬことにもなろう——どうしても、斬ッてしまわねば——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
兎雨と降る矢の下に逃げ道を
覓
(
もと
)
め歩卒の足下を
潜
(
くぐ
)
り出んとすれば歩卒これを踏み殺しまた蹴り戻す、あるいは矢を受けながら走りあるいは一足折られ三足で
逃
(
のが
)
れ廻る
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
私は、悪夢が醒めたような心持で、怖しいもの汚らわしいものから、
逃
(
のが
)
れるように逃げ帰ったのです
ある恋の話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
執達吏は其の
産衣
(
うぶぎ
)
をも
襁褓
(
むつき
)
をも目録に記入した。何物をも見
逃
(
のが
)
さじとする債権者の山田は
押入
(
おしいれ
)
の
襖子
(
からかみ
)
を開けたが、
其処
(
そこ
)
からは
夜具
(
やぐ
)
の外に大きな手文庫が一つ出て来た。
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
駕籠
(
かご
)
を
帰
(
かえ
)
したおせんの
姿
(
すがた
)
は、
小溝
(
こどぶ
)
へ
架
(
か
)
けた
土橋
(
どばし
)
を
渡
(
わた
)
って、
逃
(
のが
)
れるように
枝折戸
(
しおりど
)
の
中
(
なか
)
へ
消
(
き
)
えて
行
(
い
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「病気になった方がよろしく候」というのは、たしかにそれです。病気という災難を
逃
(
のが
)
れる妙法は、まさしく病気になりきってしまうことです。病に負けぬことです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
決斷心も、理性に劣らず刺㦸されて、
耐
(
こら
)
へきれない壓迫から
逃
(
のが
)
れる爲めに、思ひもよらぬ手段を
唆
(
そゝの
)
かした。逃げるか、それが出來ないなら、絶食して死なうと決心した。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
(二三)
其傳
(
そのでん
)
に
曰
(
いは
)
く、
伯夷
(
はくい
)
・
叔齊
(
しゆくせい
)
は
(二四)
孤竹君
(
こちくくん
)
の二
子
(
し
)
也
(
なり
)
。
父
(
ちち
)
、
叔齊
(
しゆくせい
)
を
立
(
た
)
てんと
欲
(
ほつ
)
す。
父
(
ちち
)
卒
(
しゆつ
)
するに
及
(
およ
)
んで、
叔齊
(
しゆくせい
)
、
伯夷
(
はくい
)
に
讓
(
ゆづ
)
る。
伯夷
(
はくい
)
曰
(
いは
)
く、『
父
(
ちち
)
の
命
(
めい
)
也
(
なり
)
』と。
遂
(
つひ
)
に
逃
(
のが
)
れ
去
(
さ
)
る。
国訳史記列伝:01 伯夷列伝第一
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
悲慘
(
ひさん
)
なのもあれば、
船
(
ふね
)
に
逃
(
のが
)
れた
御殿女中
(
ごてんぢよちう
)
が、
三十幾人
(
さんじふいくにん
)
、
帆柱
(
ほばしら
)
の
尖
(
さき
)
から
焚
(
や
)
けて、
振袖
(
ふりそで
)
も
褄
(
つま
)
も、
炎
(
ほのほ
)
とともに
三百石積
(
さんびやくこくづみ
)
を
駈
(
か
)
けまはりながら、
水
(
みづ
)
に
紅
(
あか
)
く
散
(
ち
)
つたと
言
(
い
)
ふ
凄慘
(
せいさん
)
なのもある。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
こうなっては何もかも妻に打明けて、この先のことも相談しよう、そうすれば
却
(
かえ
)
って妻と自分との間の今の面白ろくない有様から
逃
(
のが
)
れ出ることも出来ると、急いで
宅
(
うち
)
に帰った。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そして最後の突然蛇のような目を持った密偵者の襲撃が一座の
有頂天
(
うちょうてん
)
を破った時「おお長老様。早く早くお
逃
(
のが
)
れになって!」と叫んで、その
膝
(
ひざ
)
もとに身を投げた時のモニカと
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
逃
常用漢字
中学
部首:⾡
9画
“逃”を含む語句
逃亡
逃出
逃路
逃去
逃散
逃入
逃避
逃走
取逃
見逃
夜逃
逃帰
逃込
逃失
逃水
逃竄
持逃
逃廻
逃延
逃入村
...