辛抱しんばう)” の例文
とにかくもう一年辛抱しんばうしなさい。今の学校さへ卒業しちまへば………母親おふくろだつて段々取る年だ、さう頑固ぐわんこばかりもやアしまいから。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
殺したとは辛抱しんばう甲斐がひのなき事ぞ假令たとへほね舍利しやりになればとて知らぬ事は何處迄どこまでも知らぬとは何故云はれぬぞと云を九助は聞終たきの如く涙を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いや/\、けつして貴下方あなたがた御辛抱ごしんばうなさるにはおよばん。辛抱しんばうをするのはおうらだ、可哀想かあいさうをんなだ。我慢がまんをしてくれ、おうらうでたしかだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからわしもお内儀かみさん、うしてひとり辛抱しんばうしてんでがすが、わしかゝあときにや子奴等こめらこたあ心配しんぺえしたんでがすかんね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蚊帳です! もうこの蚊帳があれば今年の夏は煙い辛抱しんばうをしなくともいです。障子を閉めきらないでも宜いです。これを
蚊帳の釣手 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
『あァ、公爵夫人こうしやくふじん公爵夫人こうしやくふじん!あァ、辛抱しんばうしてつてたら此麽こんななさけないやしなかつたらうに!』とつぶやきながら、大急おほいそぎでけてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つて、つてれ、だまつてゐてれとはかれにははれぬので、じつ辛抱しんばうしてゐるつらさは一ばいである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
八は椿の木の下にしやがんで、辛抱しんばう強く荒川主客の様子を見てゐる。辛抱強くとは云ふものの、実は八の性分が性急でないから、さほどにじれつたがつてもゐない。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
されど下根げこん衆生しゆじやうと生まれたからは、やはり辛抱しんばう専一に苦労する外はあるまいと思ふ。(十月三日)
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うでもいわ」と半分はんぶんをつとさからはないやう挨拶あいさつをした。宗助そうすけ折角せつかくれて御米およねたいして、かへつてどくこゝろおこつた。とう/\仕舞しまひまで辛抱しんばうしてすわつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しぶかきはもつとそこに辛抱しんばうしておいでなさい。そしてときちからといふのをおちなさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そでいま苦勞くらうはつらくとも暫時しばし辛抱しんばうぞしのべかし、やがて伍長ごちやう肩書かたがきたば、鍛工場たんこうぢやう取締とりしまりともはれなば、いへいますこひろ小女こをんなはし使づかひをきて、そのかよわきみづまさじ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかいま塲合ばあひなにはずに辛抱しんばうしてつたが、印度洋インドやう炎熱えんねつが、始終しじう其上そのうへやうてらしてるのだからたまらない、その晝食ちうしよくとき一口ひとくちくちにした無邪氣むじやき少年せうねんは、たちまそのにく海上かいじやうして
掛ずわるゆめだと斷念あきらめて御辛抱しんばうを成されなば大旦那にも安心あんしん致され家督かとくを御ゆずり有れんと思ひめぐらすことも有ば何は扨置さておき御家督を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ぢや………。」とつてしばらく黙つたのち、「いやだらうけれど当分辛抱しんばうしなさい。親孝行して置けば悪いむくいはないよ。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ひとりこれをるものは吾輩わがはいだよ。してこれすくふものもまた吾輩わがはいでなければ不可いけない。しかかれかへみちは、ちやんいてるんだ。たゞ少時しばらく辛抱しんばうです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
勘次かんじぜに自分じぶんからわかすやうにして辛抱しんばうしてりやつらいことばかりいから、なんでも人間にんげん子供次第こどもしだいだよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
実際また、女のミカドといふものは、古今ここんに少くはないのである。たしかに日本の女の位置は、家畜や奴隷のやうに売買されるにもかかはらず、存外ぞんぐわい辛抱しんばうの出来る点もないではないらしい。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今度こんどあいちやんは、芋蟲いもむしはなすまで辛抱しんばうしてつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御米およねまへばんにまたられないで、やすませそくなつたあたまかゝへながら、辛抱しんばうしてはたらきしたが、つたりうごいたりするたびに、多少たせうなうこたへる苦痛くつうはあつても、比較的ひかくてきあかるい外界ぐわいかい刺戟しげきまぎれたため
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
聞れしからば必定かならずほか盜賊たうぞくあるべきにより早々さう/\詮鑿せんさくすべし窮屈きうくつながら今少し辛抱しんばうせよといたはられ又々牢屋らうやへ下げられけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其日のうち逃帰にげかへらむかとすでに心を決せしが、さりとては余り本意ほい無し、今夜こよひ一夜ひとよ辛抱しんばうして、もし再び昨夜ゆうべの如く婦人のきたることもあらば度胸をゑての容貌とその姿態したいとを観察せむ
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつかせえればわれことも奉公ほうこうして、おとつゝあもえゝぜねつかめえんだが、おつかゞくなつておとつゝあだつてこまつてんだ、それからわれだつて奉公ほうこうつたつもり辛抱しんばうするもんだ、なあ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
談話はなし聽人きゝてみな婦人ふじんで、綺麗きれいひと大分だいぶえた、とたちのであるから、羊羹やうかんいちご念入ねんいりむらさき袱紗ふくさ薄茶うすちや饗應もてなしまであつたが——辛抱しんばうをなさい——さけふものは全然まるでない。が、かねての覺悟かくごである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まへまへだがね、おい、よく辛抱しんばうしてるぢやねえか。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)