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萎
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しを
ふりがな文庫
“
萎
(
しを
)” の例文
朴訥
(
ぼくとつ
)
な調子で話り了ると、石津右門はホツと溜息を吐きます。鬼の
霍亂
(
くわくらん
)
が
萎
(
しを
)
れ返つた樣子は、物の哀れを通り越して可笑しくなる位。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
千登世は仕上の縫物に
火熨斗
(
ひのし
)
をかける手を休めて、目顏を嶮しくして圭一郎を
詰
(
なじ
)
つたが、直ぐ心細さうに
萎
(
しを
)
れた語氣で言葉を繼いだ。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
『実際うまくいつたよ。』と友達の成功を
悦
(
よろこ
)
ぶ傍から、丑松は何か思ひついたやうに
萎
(
しを
)
れて、『県庁の方からは
最早
(
もう
)
辞令が下つたかね。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
一
般
(
ぱん
)
の
子女
(
しぢよ
)
の
境涯
(
きやうがい
)
は
如此
(
かくのごとく
)
にして
稀
(
まれ
)
には
痛
(
いた
)
く
叱
(
しか
)
られることもあつて
其
(
その
)
時
(
とき
)
のみは
萎
(
しを
)
れても
明日
(
あす
)
は
忽
(
たちま
)
ち
以前
(
いぜん
)
に
還
(
かへ
)
つて
其
(
その
)
性情
(
せいじやう
)
の
儘
(
まゝ
)
に
進
(
すゝ
)
んで
顧
(
かへり
)
みぬ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
おつ母さん、
金盥
(
かなだらひ
)
に水をくんで来て頂戴。それから美代ちやん、二階の机の上の花瓶から
桔梗
(
ききやう
)
の花を二つぬいて来て……
萎
(
しを
)
れてないのをね。
空の悪魔(ラヂオ・ドラマ)
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
▼ もっと見る
姿いと
貴
(
たふと
)
き者と
親
(
した
)
しく相かたらふさまなるかの鼻の小さき者は百合の花を
萎
(
しを
)
れしめつゝ逃げ走りて死したりき 一〇三—一〇五
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「祖母さんどうしましたの。」お梅は
訝
(
いぶか
)
しげに祖母の顏を見詰めた。
凜
(
りん
)
としたその顏も會ふたびに
萎
(
しを
)
れて來るやうに思はれて痛々しくなつた。
孫だち
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
金煙管
(
きんぎせる
)
の
莨
(
たばこ
)
の
独
(
ひと
)
り
杳眇
(
ほのぼの
)
と
燻
(
くゆ
)
るを手にせるまま、満枝は
儚
(
はかな
)
さの
遣方無
(
やるかたな
)
げに
萎
(
しを
)
れゐたり。さるをも見向かず、
答
(
いら
)
へず、
頑
(
がん
)
として石の如く
横
(
よこた
)
はれる貫一。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
吉
(
きつ
)
ちやんお
前
(
まへ
)
にもゝう
逢
(
あ
)
はれなくなるねえ、とて
唯
(
たゞ
)
言
(
い
)
ふことながら
萎
(
しを
)
れて
聞
(
きこ
)
ゆれば、どんな
出世
(
しゆつせ
)
に
成
(
な
)
るのか
知
(
し
)
らぬが
其處
(
そこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くのは
廢
(
よ
)
したが
宜
(
よ
)
からう
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それっくれえ手前たちゃ
萎
(
しを
)
れてたんだ。——それにまた、己がそれをしなかったら、手前らは
飢死
(
うえじに
)
してたろうて。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
涼しい風が
頻
(
しきり
)
と植込の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
をゆすつてゐる。縁先の鳳仙花は炎天に
萎
(
しを
)
れた
其
(
その
)
葉をば早くも真直に立て直した。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
僕はマネジヤアのN君と彼等のおりるのを
見下
(
みおろ
)
しながら、ふとその中のキユウピツドの
一人
(
ひとり
)
の
萎
(
しを
)
れてゐるのを発見した。キユウピツドは十五か十六であらう。
野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おつ
母樣
(
かさま
)
の不機嫌になつたのにも、程なく馴れて、格別
萎
(
しを
)
れた樣子もなく、相變らず小さい爭鬪と小さい和睦との刻々に交代する、賑やかな生活を續けてゐる。
最後の一句
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
私はなほ、
萎
(
しを
)
れさせられない我身を暇あるときに振返り、頼りにするだらう——孤獨の瞬間にも語り合ふべき自然な、
捉
(
とら
)
はれぬ感情を、なほ、持つことであらう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
我れから
踏
(
ふ
)
める
己
(
おの
)
が影も、
萎
(
しを
)
るゝ如く
思
(
おも
)
ほえて、
情
(
つれ
)
なき人に
較
(
くら
)
べては、月こそ中々に哀れ深けれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
けれども、うら若い佛蘭西人の目が、一瞬、異樣に
赫
(
かがや
)
いた。彼は小さな薔薇にくちづけをしたのだつた。さうしていま、その薔薇は彼の胸の上でしづかに
萎
(
しを
)
れてゐるだらう。
旗手クリストフ・リルケ抄
(旧字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
赤
(
あか
)
い
額
(
ひたひ
)
、
蒼
(
あを
)
い
頬
(
ほゝ
)
——
辛
(
から
)
うじて
煙
(
けむり
)
を
拂
(
はら
)
つた
絲
(
いと
)
のやうな
殘月
(
ざんげつ
)
と、
火
(
ひ
)
と
炎
(
ほのほ
)
の
雲
(
くも
)
と、
埃
(
ほこり
)
のもやと、……
其
(
そ
)
の
間
(
あひだ
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
綴
(
つゞ
)
つて、
住
(
す
)
める
人
(
ひと
)
もないやうな
家々
(
いへ/\
)
の
籬
(
まがき
)
に、
朝顏
(
あさがほ
)
の
蕾
(
つぼみ
)
は
露
(
つゆ
)
も
乾
(
かわ
)
いて
萎
(
しを
)
れつゝ
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
わが
詞遣
(
ことばづかひ
)
の
疵
(
きず
)
を指すことの苛酷なる、主人の君のわが獨り物思ふことの人に
踰
(
こ
)
えたるを
戒
(
いまし
)
めて、わが草木などの細かなる區別に心入れぬを咎め、我を自ら卷きて終には
萎
(
しを
)
るゝ葉に比べたる
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
漆
(
うるし
)
にかぶれた坊さんや、少しびつこをひく馬や、
萎
(
しを
)
れかかつた
牡丹
(
ぼたん
)
の
鉢
(
はち
)
を、車につけて引く園丁や、いんこを入れた
鳥籠
(
とりかご
)
や、次から次とのぼつて行つて、さて坂上に行き着くと、病気の人は
北守将軍と三人兄弟の医者
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
雲の峯の天にいかめしくて、
磧礫
(
こいし
)
も
火炎
(
ほのほ
)
を噴くかと見ゆる夏の日、よろづの草なども弱り
萎
(
しを
)
るゝ折柄、此花の紫雲行きまどひ蜀錦碎け散れるが如くに咲き誇りたる、梅桜とはまた異るおもむきあり。
花のいろ/\
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
をみなへし
萎
(
しを
)
れぞ見ゆる朝露のいかに置きける
名残
(
なごり
)
なるらん
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
太陽にそむきてさきし
向日葵
(
ひまわり
)
はその
咎
(
とが
)
にして
萎
(
しを
)
れたるかも
小熊秀雄全集-01:短歌集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
夕明下
(
ゆふあかりか
)
に投げいだされた、
萎
(
しを
)
れ
大根
(
だいこ
)
の陰惨さ
山羊の歌
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
萎
(
しを
)
れしにほひの夢よ、——ありしその日
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
萎
(
しを
)
れゆくまますべなきか。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
人は死に、花は
萎
(
しを
)
れめ。
寂寞
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
萎
(
しを
)
れし
花環
(
はなわ
)
投げずとも
花守
(旧字旧仮名)
/
横瀬夜雨
(著)
夜は
萎
(
しを
)
れて
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
お組の聲はすつかり
萎
(
しを
)
れてをります。お園と張合つて、一寸も
退
(
ひ
)
けを取らなかつたお組にしては、それは思ひも寄らぬ
挫
(
くじ
)
けやうです。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
井戸端
(
ゐどばた
)
にぼつさりと
茂
(
しげ
)
りながら
日中
(
につちう
)
の
暑
(
あつ
)
さにぐつたりと
葉
(
は
)
が
萎
(
しを
)
れて
居
(
ゐ
)
る
鳳仙花
(
ほうせんくわ
)
の、やつと
縋
(
すが
)
つて
居
(
ゐ
)
る
花
(
はな
)
が
手拭
(
てぬぐひ
)
の
端
(
はし
)
に
觸
(
ふ
)
れてぼろつと
落
(
お
)
ちた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
年長
(
うへ
)
の長ちやんは学校へ行き始めてから急に兄さんらしく成つたと言はれて居るが、何となくその日は
萎
(
しを
)
れた顔付で、
背後
(
うしろ
)
からお節にすがりついた。
出発
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
萎
(
しを
)
れかけた草の葉かげから聞える晝間の蟲の聲は、正しく「秋のヰヨロンのすゝり泣する
調
(
しらべ
)
」であらう。
虫の声
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
母
(
はゝ
)
は
情
(
なさけ
)
なき
思
(
おも
)
ひの
胸
(
むね
)
に
迫
(
せま
)
り
來
(
き
)
て、あれあんな
事
(
こと
)
を、
貴君
(
あなた
)
お
聞遊
(
きゝあそ
)
ばしましたかと
良人
(
をつと
)
に
向
(
むか
)
ひて
忌
(
いま
)
はしげにいひける、
娘
(
むすめ
)
は
俄
(
にはか
)
に
萎
(
しを
)
れかへりし
面
(
おもて
)
に
生々
(
いき/\
)
とせし
色
(
いろ
)
を
見
(
み
)
せて
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……温室の草花は外の寒い風に當てると、直きに
萎
(
しを
)
れるんですかね。人間だつてさうなんですわね。
見学
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
風「気の毒な、
萎
(
しを
)
れてゐる。あれの事だから心配してゐるのだ。君、何とかして
拯
(
すく
)
つて遣り給へな」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
折柄
(
をりから
)
杉
(
すぎ
)
の
妻戸
(
つまど
)
を徐ろに押し
開
(
あ
)
くる音す、瀧口
首
(
かうべ
)
を擧げ、
燈
(
ともしび
)
差
(
さ
)
し向けて何者と打見やれば、足助二郎重景なり。
端
(
はし
)
なくは進まず、
首
(
かうべ
)
を垂れて
萎
(
しを
)
れ出でたる有樣は仔細ありげなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
茶山は四十年前に
午
(
ひる
)
萎
(
しを
)
れぬ漳州産の
牽牛花
(
けんぎうくわ
)
を栽培してゐた。景樹が三十年前に其種子を得て植ゑ、歌を詠んだ。茶山は「私はしる人にあらず、伝へゆきしなり」と云つてゐる。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
吹き乱る風のけしきに
女郎花
(
をみなへし
)
萎
(
しを
)
れしぬべきここちこそすれ
源氏物語:28 野分
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
杉江 どうせ途中で
萎
(
しを
)
れちまふよ。
桔梗の別れ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
我手
(
わがて
)
の花は
萎
(
しを
)
れゆく……
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
萬次は
悉
(
こと/″\
)
く
萎
(
しを
)
れ返つてをります。これが筋彫の
刺青
(
いれずみ
)
などを見榮にして、やくざ者らしく
肩肘
(
かたひぢ
)
を張つてゐたのが可笑しくなるくらゐです。
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『あゝ。』と細君は
萎
(
しを
)
れ乍ら、『
何故
(
なぜ
)
私が帰つて下さいなんて言出したか、其訳を未だ貴方に話さないんですから。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「そんなに
仕
(
し
)
なくつたつて
幾
(
いく
)
らも
生
(
い
)
きやしない
老人
(
としより
)
のことをな」
内儀
(
かみ
)
さんは
熟
(
つくづく
)
と
復
(
また
)
いつた。
勘次
(
かんじ
)
は
餘計
(
よけい
)
に
萎
(
しを
)
れた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼等は習慣と道徳の雨に散りたる一片の花にして、刑罰と懲戒の暴風に
萎
(
しを
)
れず、死と破滅の空に向ひて、悪の蔓を
延
(
のば
)
し、罪の葉を広ぐる毒草の気概を欠き居り候。
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
奇麗
(
きれい
)
な
花
(
はな
)
でしたけれどもゝう
萎
(
しを
)
れて
仕舞
(
しまひ
)
ました、
貴君
(
あなた
)
にはあれから
以來
(
いらい
)
御目
(
おめ
)
にかゝらぬでは
御座
(
ござ
)
んせぬか、
何故
(
なぜ
)
逢
(
あ
)
ひに
來
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらないの、
何故
(
なぜ
)
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらぬの
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
宮は
漸
(
やうや
)
う顔を振挙げしも、
凄
(
すさまじ
)
く色を変へたる貫一の
面
(
おもて
)
に向ふべくもあらで
萎
(
しを
)
れ
俯
(
ふ
)
しぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
。打ち
萎
(
しを
)
れし御有樣、重景も瀧口も只〻袂を絞るばかりなり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
女郎花
(
をみなへし
)
萎
(
しを
)
るる野辺をいづくとて一夜ばかりの宿を借りけん
源氏物語:39 夕霧一
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
夕
(
ゆふべ
)
を待たで
萎
(
しを
)
れゆく。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
お若は今までの激しい表情を
喪
(
うしな
)
つて、急に打ち
萎
(
しを
)
れました。見る/\大粒の涙が、その長い
睫毛
(
まつげ
)
を綴つて、ポトポトと疊を濡らします。
銭形平次捕物控:176 一番札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
萎
常用漢字
中学
部首:⾋
11画
“萎”を含む語句
萎縮
萎靡
萎々
打萎
足萎
萎氣
濡萎
萎微
萎気
気萎
萎枯
萎縮腎
凋萎
萎黄病
萎靡凋落
萎靡因循
萎靡振
身萎
萎靡沈滞
萎靡沈衰
...