桔梗の別れききょうのわかれ
ある高原の避暑地。落葉松の森を背にしたテニスコートの傍ら。日が落ちて、橙色の雲の一塊が、雪をいたゞいた遠い峰を覆つてゐる。今テニスを終つたばかりの四人、そのうちの女二人は境笛子と母の杉江である。そして、二人の青年は、金津朔郎と酒巻深である。 …