ひつじ)” の例文
おろかなるひつじは草を食いながら、少しでも柔軟に、少しでも緑の草があるほうに進み、だいたいの方向も忘れて進み路を迷いやすい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたすと、乳色ちちいろくもが、ちょうど牧人ぼくじんの、ひつじれをうように、まちおろしながら、んでいくのでした。かぜは、かれみみもとへ
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、ガンたちは、ひつじたちにわかれをつげて、カクシがオヤユビくんに見せたいという場所へ、いま、むかっているところでした。
灰色はいいろ土塊どかいが長く幾畦いくあぜにもなっているかと思うと、急にそれが動きだしたので、よく見るとひつじの群れのが見えていたのでした。
しゆの色の薔薇ばらの花、ひつじが、戀に惱んではたけてゐる姿、羊牧ひつじかひはゆきずりに匂を吸ふ、山羊やぎはおまへにさはつてゆく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「さあ、先生、それじゃお気の毒でも、いっしょにきてもらいましょうか」屠所としょにひかれるひつじとは、このときの机博士のようなのをいうのであろう。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
又いにしへ六二ある僧あやしき家に旅寝せしに、其の夜雨風はげしく、ともしさへなきわびしさに六三いも寝られぬを、夜ふけてひつじの鳴くこゑの聞えけるが
鵞鳥がちょうが遊ぶあおい湖、ひつじの群れる緑の草原、赤い屋根、白い家々。大学もそんなユウトピアの中にあります。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その恩滴したゝりは野の牧場まきをうるほし、小山はみなよろこびにかこまる。牧場はみなひつじの群を、もろ/\の谷は穀物たなつものにおほはれたり。彼等はみなよろこびてよばはりまたうた
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
師走しはす中頃なかごろで、淀川堤よどがはづつみには冬枯ふゆがれのくさひつじのやうでところ/″\にまるいたあとくろえてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あるひ患者くわんじやたいして、たん形式以上けいしきいじやう關係くわんけいたぬやうにのぞんでも出來できぬやうに、習慣しふくわんやつがさせてしまふ、はやへば彼等かれらあだかも、にはつてひつじや、うしほふ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
清朗な光、虫の羽音、草葉のやさしいそよぎ、通りゆくひつじの群れの銀の鈴音、大地の力、それらのものが、自分のきよき運命をまだ知らないこの少年の夢想を揺っていた。
と忽ち、その前檣ぜんしやうにさら/\と上がつたのはドイツの鉄十字! あゝ、つひに恐しい海の上のおほかみ、「ウルフ号」は現れた。ひつじの皮を着た狼とは、まさしくこのことである。
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
沢庵の後にいて悄々しおしおと歩く彼の足つきは、屠所としょひつじという形容をそのまま思わせる姿だった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
キリストの言葉に九十九のひつじをさしおいても一頭の迷えるひつじを救えというのがあります、あれだけ悪い家庭に育ってあれだけ悪いことをする阪井はにくいにちがいないが
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
小川おがはいて、草をもぢや/\やして、其縁そのふちひつじを二匹かして、其向ふがはに大きな男が洋杖ステツキを持つて立つてゐる所を写したものである。男のかほが甚だ獰猛に出来てゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
旦那だんな、おおかみというやつは、ひつじを食うのでなく、ただおどかしてかみ殺しては喜ぶのです。一たい、羊は、千頭から三千頭までを一群にして一人ひとり二人ふたりの番人をつけておくのです。
いのちにかへてうそとはおぼしめすまじ、それほど度胸どきようすわれどおくこゝろ屠處としよひつじなり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またギカントスは兩脚れうあしへび上半身かみはんしん人間にんげん、サチルスは兩脚れうあしひつじ上半かみはん人間にんげんである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
縱令よし、それがまつたたまごかへ邪魔じやまをしないにせよ』とつてはとは、『それにしても、わたし晝夜ちうやへび見張みはらなければならない!さうへば、わたしはこの三週間しうかんちツともひつじかげないが!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ひつじのシチュー 冬付録 病人の食物調理法の「第百二十四 羊のシチュー」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しばらくするといま其奴そやつ正面しやうめんちかづいたなとおもつたのが、ひつじ啼声なきごゑになる。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おびのなかにきんぎんまたはぜにつな。たびふくろも、二枚にまい下衣したぎも、くつも、つえつな。よ、われなんじらをつかわすは、ひつじ豺狼おおかみのなかにるるがごとし。このゆえへびのごとくさとく、鴿はとのごとく素直すなおなれ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
打ちますにしろがねの鞭うつくしき愚かよ泣くか名にうときひつじ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
面澁おもしぶおしひつじともがら
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
それが十八世紀になりますと、競馬用けいばよう駿馬しゅんめっている飼養場しようじょうや、いく百というひつじのむらがっている飼羊場しようじょうとなりました。
こういう意味において表裏の差を生ずるはもちろん望ましからぬことで、いわゆるおおかみひつじの皮をかぶるがごときもの、俗にいうねこかぶるのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おとこどもは、うしや、ひつじって、つきしたのかすんだみちかえってゆきました。おんなたちは、はななかやすんでいました。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるい患者かんじゃたいして、たん形式以上けいしきいじょう関係かんけいをもたぬようにのぞんでも出来できぬように、この習慣しゅうかんやつがさせてしまう、はやえば彼等かれらあだかも、にわってひつじや、うしほふ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれは躊躇ちゅうちょした。それはさながら群がるとらの前にでたひつじのごとく弱々しい態度であった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
かつて美禰子と一所に秋のそらを見た事もあつた。所は広田先生の二階であつた。田端たばたの小川のふちすはつた事もあつた。其時も一人ひとりではなかつた。迷羊ストレイシープ迷羊ストレイシープくもひつじかたちをしてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひつじにく 冬 第三百五十二 豚とこうし
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
チョウのかたいせなかにあたる、この上では、ひつじや牛や子馬が、ぶらぶらしているだけで、鳥にしても、ナベゲリとチドリが住んでいるっきりさ。
世間の批評が我々の行為を抑制することは、あたかもひつじの群れを監督するために羊犬シェファードドッグを付けるがごとくである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「なにがこわいことがある。あれはひつじだ。くさべさせに百しょうがつれてゆくのだ。よけてやれば、おとなしくまえとおってゆく。」と、おばあさんはこたえました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
らくだや、ひつじに、をつけて、かれらは、砂漠さばくなかをあるいていきました。毎日まいにち毎日まいにちおなじような単調たんちょう景色けしきがつづきました。そして、むしあつかぜいていました。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、さびしい、あまりひととおらない田舎路いなかみちを、どこまでもまっすぐにあるいてゆきました。すると、あちらから、一人ひとりの百しょうが、二とうひつじいて、こちらにきかかりました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おばあさんと子供こどもは、みち片端かたはしによって、百しょうひつじとおしてやりました。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ぼくのもしろいね。このふでは、やはりひつじでない。」
山に雪光る (新字新仮名) / 小川未明(著)
「そう、ひつじだ。」
山に雪光る (新字新仮名) / 小川未明(著)