此儘このまゝ)” の例文
腐敗くさり易き盛りと云いことに我国には仏国巴里府ぱりふルー、モルグにる如き死骸陳列所の設けも無きゆえ何時いつまでも此儘このまゝに捨置く可きに非ず
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
國民こくみん消費節約せうひせつやく程度ていど此儘このまゝ持續ぢぞくすれば、はじめ日本にほん經濟界けいざいかい基礎きそ安固あんこなものになる、ことつていのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
此儘このまゝ下らない作者にちて了ふのは、余りに惜しい芸術的素質が自分にはあるはずだ。併し自分の創作が思ふまゝにできる日はいつ来るであらう。
手品師 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
が、久し振りで湯に入ったせいか、何となく眠気がさして、此儘このまゝ床に入って、肩の凝らない雑誌でも、読もうかと云う気にもなりました。丁度その時でした。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
こんな口惜くやしいことは御座いません、此儘このまゝ死にましては草葉の蔭の奥様に御合せ申す顔が無いので御座います
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ロミオ けふのこの惡運あくうん此儘このまゝではむまい。これはたゞ不幸ふしあはせ手始てはじめ、つゞく不幸ふかうこの結局しまつをせねばならぬ。
變て扨は私をなぐさみ者にして女房にもせず金も出さずお前はかまはぬ了簡れうけん成ん其心ならば私も此儘このまゝにはすまがたとても生ては居られねば此通り旦那樣だんなさまに申上お前の首へも繩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「色々奔走したが出来できないんだから仕方がない。已を得なければ今月末迄此儘このまゝにして置かう」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すると上人しやうにんうなづいて、わし中年ちうねんから仰向あふむけにまくらかぬのがくせで、るにも此儘このまゝではあるけれどもだなか/\えてる、きふ寐着ねつかれないのはお前様まへさま同一おんなしであらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
畢竟ひつきやう何事なにごとかの手段しゆだんかもれたことならずやさしげな妹御いもとごてにならぬよし折々をり/\たこともあり毒蛇どくじやのやうな人々ひと/″\信用しんようなさるおこゝろにはなにごとまをすとも甲斐かひはあるまじさりとて此儘このまゝ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だから妾、自分が救はれようなんぞとは夢にも望んでゐなくつてよ。却つて救はれない事を望みますわ。讃美しますわ! 本当によ! 妾は此儘このまゝで地獄に堕ちて行けば本望なんですの。
『もう何事なにごとさりますな。わたくしも、日出雄ひでをも、此儘このまゝうみ藻屑もくづえても、けつして未練みれんたすからうとはおもひませぬ。』と白※薇はくさうびのたとへばあめなやめるがごとく、しみ/″\と愛兒あいじかほながめつゝ
かねはらなかれちまつてモウたれにも取られる気遣きづかひがないから安心して死んだのだがうも強慾がうよくやつもあつたもんだな、これ所謂いはゆる有財餓鬼うざいがきてえんだらう、なにしろ此儘このまゝはうむつてしまふのはをしいや
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
『面倒臭い此儘このまゝふ、おかん最早もういだらう。』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
有りもせぬぜにを出し合つて病院へ入れたのですが、兼吉は、此儘このまゝにしては、廿世紀の工業の耻辱であると云ふので、其の腕をたづさへて、社長の宅へ面談に参つたのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
見たらしき者はなきやと聞に下女はかんがへ夫も彦兵衞殿より外に見た者は無と申ゆゑさては下女の留守を知てうばひ取たるにうたがひなし左右とかく此儘このまゝには指置難しとて早々さう/\其段うつたへ出檢使を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
嬢様ぢやうさまそんなら此儘このまゝわしまゐりやする、はい、御坊様おばうさま沢山たくさん御馳走ごちさうしてげなされ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま吾等われらは、重大ぢゆうだい使命しめいびながら、何時いつ大陸たいりくくといふ目的あてく、此儘このまゝ空中くうちう漂蕩へうたうしてつて、其間そのあひだむなしく豫定よてい期日きじつ經※けいくわしてしまつたことならば、後悔こうくわいほぞむともおよぶまい。
ならば此儘このまゝにたしとねがへどいのちこゝろのまゝならずむともなくわづらふともなくつく/″\とながめてつくづくとなみだそらとを意中いちゆうともとしておくらねどむかへねどるものはつきあらたまるはとしちりてかへらぬきみ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もし自然しぜん此儘このまゝ無爲むゐ月日つきひつたなら、ひさしからぬうちに、坂井さかゐむかし坂井さかゐになり、宗助そうすけもと宗助そうすけになつて、がけうへがけしたたがひいへへだゝごとく、たがひこゝろはなばなれになつたにちがひなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
如何いかに思ひても女房にはされずさて當惑たうわく千萬と思案しあんすれども元來愚鈍ぐどんなる生れ付故工夫も出ずこまり切していを見てお兼は今更斯なりては奉公も成難なりがたし若此儘このまゝきれる御心なら手當てあて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此儘このまゝ篠田さん」と梅子はかへつて怪みつ「貴所あなたは入獄なさるので御座いますか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
こと今宵こよひ密雲みつうんあつてんおほひ、四へん空氣くうきへん重々おも/\しく、丁度ちやうど釜中ふちうにあつてされるやうにかんじたので、此儘このまゝ船室ケビンかへつたとて、とて安眠あんみん出來できまいとかんがへたので、喫煙室スモーキングルームかんか、其處そこあつ
此儘このまゝすぐにとそこ/\身仕度みじたくして庭口にはぐちでんとする途端とたんぢやうさま今日けふもおかけか何處どこへぞと勘藏かんざうがぎろ/\おそろしけれどおくしてなるまじとわざとつくる笑顏ゑがほあいらしく今日けふもとは勘藏かんざうひどいぞや今日けふはとはねばてにを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此儘このまゝでも構はないわ」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
此儘このまゝでは」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)