よう)” の例文
旧字:
そうして、なおも夢中になって、その自記機械から、巻紙ようのものを長くひっぱり出して見ている。その目は異様な光をおびていた。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
などと、いつも悪体あくたいをつくのです。母親ははおやさえ、しまいには、ああこんなならうまれないほうがよっぽどしあわせだったとおもようになりました。
此引幕壱帳ヲ宜シク御受納被下度くだされたく御願申上候よう、拙者共ヘ委任相成候間、別紙此幕ヘ出金致シ候人々ノ名前目録モ相添、此段申進候。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
然し此は先生がトルストイである事を忘れたからの叫びです。誰にでも其人相応そうおうの生きようがあり、また其人相応の死に様があります。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それもいが、道の勝手を知ってるまい、夜道にかゝって、女の一人旅はような難儀があろうも知れぬ、さ、これで別れましょう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これはただに儒学じゅがくのみでなく、仏教においても同然で、今日こんにちもなおがたき句あれば「珍聞漢ちんぷんかん」とか、あるいは「おきょうよう」なりという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
馬鹿云うな、口があれば京にのぼる、長崎から江戸に一人行くのに何のことがあるか。「けれども私は中津にかえっておふくろさんにいいようがない。 ...
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
全くそうでございましょうね、一度聞いた位で試験してみてそれでよく出来ないと教えようが悪いというのは習う人の無理ですね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
附近の交番から警官が駈けつけて、調べて見ると、覚悟の自殺らしく、死体の胸のポケットから、一通の書置きようの紙切れが発見された。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
現在に対する虚無きょむの思想は、今尚いまなお氏を去りません。しかし、氏は信仰を得て「永遠の生命」に対する希望を持つようになりました。
これならば燃やしたくも燃えようが無い。しかしこの上にもなお何とか工夫は無かろうかと、人々は、言わず語らず胸を痛めた。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
「あなたに身をたくしたばかりに、私はこのように苦労しなければならない」と、あるいはそう話しかけていたのかも知れない。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
またふね甲板かんぱんあらっているのや、みなとまちあそびにゆこうとしてはしけをこぎはじめているのや、それは一ようでなかったのでした。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
間違まちがって原をむこがわへ下りれば、もうおらは死ぬばかりだ。)と達二は、半分思うように半分つぶやくようにしました。それからさけびました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
浮世の風をみ込ませようとする時に、最も陥り易い短所であるが、しかし之も見様に由れば、技術の洗煉されないせいで、もちように由っては
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
古焼新焼しんやけと相聯繋れんけいして、左右の濃い蒼翠そうすいの間を蜿蜒えんえんとして爬行はこうし、さながらそこに巨巌きょがんの行進曲を奏でているように見える。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
そうして私のしようとした事はその人達によってぶちこわされてしまった。一日中いらいらしたそうしてかなしい気持でばっかりくらしてしまった。
かえって心配の種子たねにて我をも其等それらうきたる人々と同じようおぼいずらんかとあんそうろうてはに/\頼み薄く口惜くちおしゅう覚えて、あわれ歳月としつきの早くたてかし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吉原よしわら出来事できごと観音様かんのんさま茶屋女ちゃやおんなうえなど、おそらくくちひらけば、一ようにおのれの物知ものしりを、すこしもはやひとかせたいとの自慢じまんからであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さてどうも長の旅路を、いろいろとお世話にあずかってかたじけない、なんともお礼の申しようもござらぬが、そなたの仕事のさわりにはなりませぬか。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
痛いのかと思うとそうでもなしに、むずがゆい、たよりない、ものでおさえつけると動気どうきおどようで切なくッてけません。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だ若いようであった。夫と子供に相ついで死にわかれ、ひとりでいるのを、私の家で見つけて、やとったのである。この乳母は、終始、私を頑強に支持した。
新樹の言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
思いきや! 鈴川源十郎の腰巾着こしぎんちゃく、つづみの与吉が、どういう料簡りょうけんか旅のしたくを調えて、今や自分の袖口に何か手紙ようのものを押し入れようとしている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一度にワーンと蜂の巣をつついたような活気が街にあふれ、長い長い冬眠から覚めて、おいも若きも、町民のおもてには、一ように、なにとなく「期待」が輝くのである。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
林野を女が歩いていると、行く手に忽然こつぜんとして地中からキノコようのものが現われて、ホタリホタリ(11)している。その時すこしもあわてず前をまくって
えぞおばけ列伝 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
しかし、これが一般向きの店となってはなかなかそうもいかぬようである。第一に客種に問題があるのだろう。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
だが、ただ一ようにほうはいたる巨浪きょろうが、無辺むへんに起伏するのを見るばかりで、何者の影も見あたらなかった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「僕の詫よう空々そらぞらしいとでも云うのかね、なんぼ僕が金を欲しがるったって、これでも一人前いちにんまえの男だよ。そうぺこぺこ頭を下げられるものか、考えても御覧な」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それにとうとうしまいには御恩ごおんになった先生があの死にようでしょう。あたしほんとに悲観しちゃったわ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ゴンドラなども支那のジャンクようの形であって、支那風の色彩と手法が面白い効果を作っているのです。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
最近、英国の田舎ミッドル・エセックス州の奥に、周囲に高さ二十フィートの石垣をめぐらした公園ようの広場ができた。疑問は、その不自然に高い石の垣である。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかるに横田家の者どもとかく異志を存する由相聞え、ついに筑前国ちくぜんのくに罷越まかりこそろ。某へは三斎公御名忠興ただおきおきの字をたまわり、沖津を興津と相改めそろよう御沙汰ごさた有之候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
巻物のよう、紐の止め方まで細かに調べてみたが、余程几帳面な人間の手でしまい込んであったものらしく、どこもここもキチンとしていて、二重に折れ曲った処や
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
母御さまにも、幾ほどの事もあるまじく候、いかようにもして、御臨終を見とどけて給わるべく候。
近来夫婦共稼ぎという声を盛んに聞くようになった。これは勿論もちろん生活の圧迫から来たのであろう。
夫婦共稼ぎと女子の学問 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
読書どくしょかれ病的びょうてき習慣しゅうかんで、んでもおよれたところものは、それがよし去年きょねん古新聞ふるしんぶんであろうが、こよみであろうが、一ようえたるもののように、きっとってるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いでや、事のようを見んとて、慢々ゆらゆら出来いできたれるは富山唯継なり。片手には葉巻シガアなかばくゆりしをつまみ、片臂かたひぢを五紋の単羽織ひとへはおりそでの内に張りて、鼻の下の延びて見ゆるやうのゑみを浮べつつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
で次の四辻にて分るゝまで語らいながら歩むなどの事も有りたれど其身分其職業などは探り知ろうようも無くだ此の目科に美しき細君ありて充分目科を愛しうやまう様子だけは知れり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
はなすので、ある僧のはなしによると、所謂いわゆる寺の亡者が知らせに来る場合には、必ずその人の生前の性質が現れる、例えば気の荒い人だったらば、かねの叩きようすこぶる荒っぽいそうだし、温和な人ならば
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
有りように言ってしまえば、こねえだからお前さん方のしていることは何から何まで、書生派がどうの江戸藩邸の実権を誰が握ったのと、水戸の藩内の内輪喧嘩だけじゃありませんかねえ? 待った
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
豚を女に渡し、ビール二三本そえて持ってくるように命じた。そうして中島にもぜひ来てくれといった。中島は今夜ちょっと出るつもりでいたのだけれど、それじゃそのほうはやめにして来ようという。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
こう言って、俊夫君は、その名刺ようの白紙を受け取りました。
深夜の電話 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
かれの衰え行くようは明らかに見える。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
間もなく、この大広間は、世界の終りが来たかのように、一人のこらず死に絶えた。まことに急激な、そして不可解な死にようだった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「君の説も一応は道理もっともように聞えるが、五個の庄の住民ははり普通の人間で、決して𤢖や山男のたぐいでは無いと云うじゃアないか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一生の思出に、一度は近郷きんごう近在きんざいの衆を呼んで、ピン/\した鯛の刺身煮附に、ゆきような米のめしで腹が割ける程馳走をして見たいものだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わたしはおまえさんのためをおもってそうってげるんだがね。とにかく、まあ出来できるだけはやたまごことや、のどならことおぼえるようにおし。
と手を放しますると、又々腰に差したる木刀ようの物を持って文治に打ってかゝる。その小手下こてした掻潜かいくゞって又も其の手をしかと押え
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とあると同じく「ひと」なる観念かんねんを二つにしていることが明らかである。すなわち「人」なる字が善悪の二ように用いられている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
クラムベルは山桃のような実ですが生ならばやはり煮てセリー酒を少し加えますし、鑵詰かんづめのゼリーならばそのまま裏漉しにしてもいいのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)