そま)” の例文
まア寺男からおさんの子じゃア有るけれども眞達さんまでもわれえ事にそまりまして、それからおさん此の頃寺で賭博ばくちますと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
掛れば瓦羅利からりと開くにいよ/\不審ふしんと進み這入はひれは如何に主個あるじ庄兵衞は何者にか殺害せつがいされたる物と見え血汐ちしほそまりてとこの上にたふれゐるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蜂矢は、そのじょうじて、長い繃帯をといた。なるほど、繃帯はどこもまっ白で血にそまっているところは見あたらなかった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そんなおしゃべりをしていますと、突然とつぜん空中くうちゅうでポンポンとおとがして、二がんきずついて水草みずくさあいだちてに、あたりのみずあかそまりました。
どうしてって言えばね、雪をつかねた鶏の鳥冠が、ほんのりと桃色にそまりましたって、日の昇り際の、峰から雲にす影が映って彩ったんです。
『麒麟』の一篇に於ては、斉の霊公が愛妃南子夫人の為めに酷刑を所せられた罪人の群が血にそまつて宮殿の階下にうごめいてゐる一節が挿入してある。
谷崎潤一郎氏の作品 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それをへば紫蘇しそあぢがして、チユー/\ふうちに、だん/\たけのこかはあかそまつてるのもうれしいものでした。このおひなむら髮結かみゆひむすめでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
新田が洋灯ランプをさしつけた。見よ、怪鳥の爪が生々しく血にそまっているではないか、——三人は愕然として息をのんだ。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
併し振り返ると、そこにはあけそまった死人が無気味な人形の様にもくしていた。その様子が明らかに夢ではなかった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
湯上りのときなど惚れぼれしたその淡紅色にそまった白い肌も、いま見るとしわだらけの、やたらと赤い斑点を散らしただんだらの臭くて粗悪なゴムの延板にすぎない。
メリイ・クリスマス (新字新仮名) / 山川方夫(著)
この手拭が湯にそまった上へ、赤いしまが流れ出したのでちょっと見ると紅色べにいろに見える。おれはこの手拭を行きも帰りも、汽車に乗ってもあるいても、常にぶら下げている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みな夜具やぐたゞ壁際かべぎははしくつたまゝきつけてある。卯平うへい其處そこ凝然ぢつた。箱枕はこまくらくゝりはかみつゝんでないばかりでなく、切地きれぢ縞目しまめわからぬほどきたなく脂肪あぶらそまつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉こうえふそまりました。紅葉もみぢがちつてうつくしく色づいた実が、玉をつづつてゐるのを見るのは、どんなにたのしかつたでせう。
(新字旧仮名) / 土田耕平(著)
カラーをとりシャツを開けば、胸部に物凄いほど大きな傷が鮮血にそまって現われた。
ぼく此小學校このせうがくかうはひわづ四年前よねんぜん此學校このがくかう創立さうりつされたので、それよりさら十年前じふねんぜんのこと、正月元日しやうぐわつぐわんじつあさでした、新年しんねん初光しよくわういままさ青海原あをうなばらはてより其第一線そのだいゝつせんげ、東雲しのゝめ横雲よこぐも黄金色こんじきそま
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
英国の海峡は珍らしいなぎの中に渡つたが、海の夜風が寒いので三等客の僕等は甲板の上でふるへて居た。一時間ののちドオヷアに着いて海峡の夜明よあけの雲の赤くそまつたもとで更に倫敦ロンドン行の汽車に乗移つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
憐愍あはれみふさの血に赤くそまつた尊い荊棘いばら
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
森の頂きは、美しく紅くそまった。
森の暗き夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雪なす鸚鵡は、見る/\全身、美しい血にそまつたが、目を眠るばかり恍惚うっとりと成つて、ほがらかに歌つたのである。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かけなば兄弟のいのちたすかる共嘉川の家は滅亡めつばうならんにより此上は最早是非もなし心にそまぬ事なれ共すけ十郎郷右衞門ら兩人をつみおと主家しゆかの滅亡をすくはんとよんどころなく愚案ぐあん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
われは彼方かなたに、忽如こつじょとして入日にそまりかがやける、怪異なる西班牙エスパンユをこそ望み見たれ。
念佛ねんぶつをはるまでには段々だん/\とほちか木立こだち輪郭りんくわくがくつきりとしてあを蜜柑みかんかはあたつた部分ぶぶんからすこしづゝいろどられてくやうにひがしそらうす黄色きいろそまつて段々だん/\にそれがつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし善という事はむずかしいもので、悪事には兎角とかくそまやすいものでござります。
自分は彼女が兄と会見を終って、自分達のへやの横を通る時、その足音を聞きつけて、用あり気に不意と廊下へ出た。ばったり出逢であった彼女の顔は依然として恥ずかしそうに赤くそまっていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「鞄から出ている赤い紐な。それは若い女の腰紐じゃぞ。その腰紐が、先がけて切れているわ。それにさ、紐の先んところが赤黒くそまっているが、血がこびりついているんじゃないのかい」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ゆきなす鸚鵡あうむは、る/\全身ぜんしんうつくしいそまつたが、ねむるばかり恍惚うつとりつて、ほがらかにうたつたのである。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此時このとき、われにかへこゝろ、しかも湯氣ゆげうち恍惚くわうこつとして、彼處かしこ鼈甲べつかふくしかうがい行方ゆくへおぼえず、此處こゝ亂箱みだればこ緋縮緬ひぢりめんにさへそでをこぼれてみだれたり。おもていろそまんぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
月夜つきよなんざ、つゆにもいろそまるやうに綺麗きれいです……おかげかうむつて、いゝ保養ほやうをしますのは、手前てまへども。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あせって、もがいて、立ったり居たり、みぎわもそちこち、場所を変えてうろついて見込んだが、ふと心づいてみまわせば、早や何がそまるでもなく、緑は緑、青は青で、樹の間は薄暮合うすくれあい
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
売ものが散らばりましたか、真赤まっかそまった木の葉を枕で、目を眠っていましたよ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
糸七は仰天した、人参のごとくしんまでそまって
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)