)” の例文
ことにっと不思議なことは、晩、登山したものが、この堂宇の裏から陰気な犬の遠吼とおぼえのようなうなりが絶え間なく漏れてくること
天狗 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
をとこ女蕩をんなたらしの浮氣うはきもの、近頃ちかごろあによめ年増振としまぶりけて、多日しばらく遠々とほ/″\しくなつてたが、一二年いちにねんふか馴染なじんでたのであつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「こんな事でもしなかったら、彼奴あいつ吃驚びっくりしますまい。……だがう私達は伊右衛門のことなど、これからは勘定に入れますまい」
隠亡堀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老人としより子供こどもだから馬鹿ばかにしておもふやうにはうごいてれぬと祖母おばあさんがつてたつけ、れがすこ大人おとなると質屋しちやさして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一行にはう旅費が尽きていたので、各々旅費の借用を申込んだので、皆川氏は少し渋面作ったが終にいくばくかを流用してくれた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
しかし朝風呂の熱いのに飛込んで、ゆで蛸のようになって喜ぶような江戸子えどっこ風の潔癖は、時勢と共にお客の方にもうなくなっている。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それに一つ私は念を押して置きますよ。久々で江戸へ帰ったとて、女という女は、どんな女とでも、仲好くすると承知しませんよ」
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
そしてはや美麗な六花の雪にはならなくなる。大抵は角柱と側面との集合になるか、各種の小結晶の不規則集合となってしまう。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
内儀もひどく心を痛められる際と云い三時からは又裁判所の呼出しにも応ぜねば成らぬ事だからう少しは休息なさらねばく有る
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
甲「出来んなら尚宜しい、さ出ろ、病身結構だ、広々した飛鳥山へ出て華々しく果合いをしなせえ、う了簡まかりならん、篦棒べらぼうめ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
写真で知つて居る詩人の垂下たれさがつた長いひげう白く成つて居るかと云ふ様な事を聞いた。詩人は故郷の白耳義ベルジツクを旅行して居るのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
私が曾て苅心かるしんと署名して四日間といふガルシンのスケッチを反訳して新小説に出したことがあるが、あんなものまでう反訳されてある。
エスペラントの話 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
弱点と申してもっと突込んで観察が深くないと、すべて男の方の勝手に作られた嘘の弱点になって、真実の女の醜い所が出て参りません。
産屋物語 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
「漣もお伽噺ばかり書いてるようではうおしまいです、その内には必ず本統の小説を書きます」と、或時私に語った事があった。
今度こんどこそはなんつても、寸分すんぶんぶた相違さうゐありませんでしたから、あいちやんもれをれてくのはまつた莫迦氣ばかげたことだとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これは薄桃色すなわちいわゆる桜色の花がう二月頃に咲く。花色が一方の緋寒桜よりうすいから人によってはこれを白寒桜しろかんざくらといっている。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「左様なら、チヨンよ、わしう帰るから、早くお父さんの所へお出で、兄さんや姉さん達もあの岩の上に居るぢやないか、左様なら……」
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「兄さん、う帰りませう。」と油井が云出したのは十二時近くであつた。二組共客は帰つて、下では最う戸を閉め始めた。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
いよいよ駄目だめ観念かんねんしましたときに、わたくし自分じぶん日頃ひごろ一ばん大切たいせつにしていた一かさね小袖こそでを、形見かたみとして香織かおりにくれました。
うですか。だが何だね、バイロンはう古いんでさ。あんなのは今ぢや最う古典クラシックになつてるんで、彼國むかうでも第三流位にしきや思つてないんだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「そんなら一度頼んで来まつさ。なに理由わけを話したら先生の事やさかい、半切の一枚や二枚ちよつくらちよつと書いて呉りやはりますやろ。」
お前が真実ほんとうに金持になれば、どんないお嫁さんだって貰えるんだから……。妾よりも若い、っと綺麗な人がお内儀かみさんにできるんだから……。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かれはう外の友達の事を問ふ気力がないから、さも困つた様に、「そして誰も此内でリツプ、フアン、ヰンクルを知つたものはありませんか。」
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
声を揚げて人を呼ぶ気力もうない。折よく連の人が来たので、自分の容態を話し、とても人力には乗れぬから釣台つりだいを周旋してくれまいかと頼んだ。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
う少し南寄りの場所、例えばニコライの塔か又は本郷元町辺の高い処ならば、頂上が見られるに相違ないと信ずる。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
お互にしばらく黙している内にも、予は我に返って考えるとなく考えた、この問題についてはすこし聞いておかねばならぬ、こうおもいついたので様子を測って
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
もう歩かないがいい、う決して外に出るなとお葉の良心は命じた。しかし良心の命ずることは常に淋しい。そして何の反抗もない悲しみが迫つて來るのだ。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
小塩津こしほづの浜まで十五町辿つて来ると、岩が無くなつて、砂浜が幅広く一帯につづいて日出ひいの絶端まで一望に見渡される。伊良湖の裏浜はう一里程で尽きるのだ。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
一心に長い手紙をひろげてゐる、お文の肉附のよい横顔の、白く光るのを、時々振り返つて見ながら、源太郎は、めひう三十六になつたのかあアと、染々しみ/″\さう思つた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
「さあきて頂戴ちようだい」にかはだけであつた。しか今日けふ昨夕ゆうべことなんとなくにかゝるので、御米およねむかひないうち宗助そうすけとこはなれた。さうしてすぐ崖下がけした雨戸あまどつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しつかりした基礎もとゐのないこの新しい劇團は、うこれで凡が滅びてしまふ運命を持つてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「じゃ、これッ切りう会えないねえ。何だか残り惜しいなあ。お別れに飯でも食べよう。……何が好いか? ……かしわにしようか。」と、私は手を鳴して朝飯めしを誂えた。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
う、とても病人はだめでございます。こゝ五六日間は餘程注意して居らなければなりません。非常にうはこと、うめきをしますので、なんとも云はれぬ心細さを感じてゐます。
湖畔手記 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
我等二分に買ふべしといふに三五郎打笑うちわらもし々先生あたらしい時でさへ四五百文位ゐおいこんで七ツすぎ代物しろものだ二百がものもあるまいに夫を二分にかはんとは合點のゆかことなりと云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私は勿論もちろん幼少だから手習てならいどころの話でないが、う十歳ばかりになる兄と七、八歳になる姉などが手習をするには、倉屋敷くらやしきの中に手習の師匠があって、其家そこには町家ちょうかの小供も来る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
当家こちらのお弟子さんが危篤ゆえしらせるといわれ、妻女はさてはそれゆえ姿をあらわしたかと一層いっそう不便ふびんに思い、その使つかいともに病院へ車をとばしたがう間にあわず、彼は死んで横倒よこたわっていたのである
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
その神々よりもっと偉大であることを、その神々よりも最っと偉大であることを!
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
うそんなお話はめに致しましょうね。でも貴郎、かかりあいになるといけませんから、他人様ひとさまにマンドリンの音を聞いたなどと仰有おっしゃらない方がようございますよ」折江は良人おっとの顔を
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
今頃このさびしい林中に、あんな光のともって居るはずは無い、実に不思議千万である、イヤ不思議なばかりでは無く、だれでも恐ろしく思うだろう、露子は此処ここから逃げ帰ろうかと考えたけれど
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
蹴散し洒落しやれ散したれ坂下驛さかもとえきを過るころより我輩はしばらくおい同行どうぎやう三人の鼻の穴次第に擴がりく息角立かどたち洒落も追々おひ/\苦しくなりうどの位來たらうとの弱音よわね梅花道人序開きをなしぬ横川に滊車を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ここにゐる兼吉さんから委細の話はじきにあるはず、一口に申せば何でもない事、ただもう清さん恋しやほうやれほといふやうなわけと、何だか分りにくい言草いいぐさに兼吉気の毒がり、一中もう沢山
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
昨日きのう……たしか昨日きのうと思うが、を負ってからう一昼夜、こうして二昼夜三昼夜とつ内には死ぬ。何のわざくれ、死は一ツだ。いっ寂然じっとしていた方がい。身動みうごきがならぬなら、せんでもい。
船脚が深く沈んで、う少しで水が入る程になつた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
名所図絵にありそうな人通りを見ていると、う何もかも忘れました。が、宝丹は用心のために、柄にもない船頭が買ったんですが。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
聞き「成る程夫は面白いがう藻西太郎が白状して仕舞たよ、すっかり白状したから外に何の様な疑いが有ても自然に消滅する訳だ」
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
若「もけません、ようよう此処まで我慢して歩いて来ましたので、わたくし此様こんなに歩いた事はないものですから、う何うしてもけません」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
悲しいとか情ないとかいうよりもっと強い混乱した感情にうたれます。不朽でない人間の運命に対するはげしい反抗をも覚えます。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
が、実はう小説どころでなかった。根本の人生の大問題が頭の中でうずを巻いていた。身に迫る生活上の苦労がヒシヒシと押寄せて来た。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
閘門かふもんが数箇所に設けられてその上に架した鉄橋は汽船の通過する度に縦に開く仕掛に成つて居る。しかこの新港しんみなとう新しくは無い。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
きよ子の性質として妙に大人じみた考えをよく話し出すことをお俊は気にわずらっていたから、——お俊はう一度たずねて見た。
童話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)