かたへ)” の例文
わが導者そのかたへにたちよりていづくの者なるやをこれに問へるに、答へて曰ひけるは、我はナヴァルラの王國のうまれなりき 四六—四八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
智恵子は、自分がその小川家の者でない事を現す様に、一足後へ退すさつた。その時、かたへの静子の耳の紅くなつてゐる事に気がついた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
眺め廻すうちに、女は早や帽子をり、上衣うはぎを脱ぎ、白く短き下衣シユミーズ一ツになりて、余がかたへなる椅子に腰掛け、巻煙草を喫し始め候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
めばことをもくなり。彼が手玩てすさみと見ゆる狗子柳いのこやなぎのはや根をゆるみ、しんの打傾きたるが、鮟鱇切あんこうぎりの水にほこりを浮べて小机のかたへに在り。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かの和子にものいふさまよ、雛鳥にふふますごとよ、かたへつき、にじり寄り、さて暑さよとな、またあふぎゐる。ほれほれと箸もてまゐる。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
絳雪かたへより、『おん身よきところに来ませり。われはかの人にあやめられて、危く死ぬべかりき』と、言う/\も辞し去りき。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ながらぢやうさまは何處いづこへぞお姿すがたえぬやうなりと人騷ひとさわがせするもあり乳母うばろく/\あはさずおたかかたへ寢床ねどこなら浮世うきよ雜談ざふだん諷諫ふうかん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ると、親父ちやん湯玉ゆだまはらつて、朱塗しゆぬりつて飛出とびだした、が握太にぎりぶと蒼筋あをすぢして、すね突張つツぱつて、髯旦ひげだんかたへ突立つツたつた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ここを以ちて意祁おけの命、みづから下りいでまして、その御陵のかたへを少し掘りて還り上らして、復奏かへりごとしてまをさく、「既に掘り壞りぬ」とまをしたまひき。
五郎三郎は不意にかたへにおきたる刀を取つて、ぬき撃に斬りつくる。外記は身をかはして碁石をうち付ける。五郎三郎透さず斬り込むを、外記は二三度掻いくゞり、碁盤を
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
硝子ガラスはから/\と鳴りたり。我は目に見えぬ威力に驅らるゝものゝ如く、走りて裏口に至り、得物えものもがなと見𢌞すかたへの、葡萄だなの横木引きちぎりつ。女はニコオロにやと叫べり。
港灣かうわんに掃除の行はるる時、人夫等の黒き集團は埠頭ふとうおほひて、船舶せんぱくかたへ立騷たちさわぐ如く
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
數々かず/″\ならべたるかたへには半兵衞と云ふ番頭が番をして居たり寶澤そばよせて色々藥種の名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
香央かさだ女子むすめ磯良いそら、かしこにきてより、つとき、おそく臥して、常に舅姑おやおやかたへを去らず、五〇をつとさがをはかりて、心を尽して仕へければ、井沢夫婦は五一孝節をでたしとてよろこびにへねば
洋琴の前に座したるは山木梅子、かたへに聴きれたるは渡辺の老女
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
綱をかいとり、ヘクト,ルのかたへにたちて任に就く。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
今わが述ぶる言の葉の君のかたへに近づかば
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
其等それらみな我のかたへを離れざりしを。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まち草臥れさせて かたへ
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
汝はがこの光(あたかも清き水に映ずる日の光の如くわがかたへひらめくところの)の中にあるやを知らんと欲す 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
酔過ゑひすごしてねたるなれば、今お村が僵れ込みて、おのかたへに気を失ひ枕をならべて伏したりとも、心着こゝろづかざるさまになむ。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このみことを聞き取りて、すなはち竊に天皇の御寢みねませるを伺ひて、そのかたへなる大刀を取りて、その天皇の頸をうち斬りまつりて、都夫良意富美つぶらおほみ一三が家に逃れ入りましき。
太竹の青き筒、つやつやし筒に、たぷたぷと素水さみづ入れ、硯の水さやけし、墨磨れと、かたへぎ、注ぎてまはりぬ。きほひける何なるならし。幼などちそのかの子らの、筒袖の、その中にしも級長われは。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
豊雄、此の事只今は一四九面俯おもてぶせなり。人つてに申し出で侍らんといへば、親兄にいはぬ事を誰にかいふぞと声あららかなるを、太郎の嫁の一五〇刀自とじかたへにありて、此の事一五一おろかなりとも聞き侍らん。
かたへの墻より高粱の殻一本を抽きて、これを横たへて、帯を解きてその上に掛け、かうべを引いてくびるるまねしたり。少婦はこの状を見て、果して哂ふ。なかまのものも亦うちはやしぬ。婦去りて既に遠くなりぬ。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
舟のかたへにわが子今横はれるや? アキリュウス
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
彼女かれ逡巡ためらひつゝ、そつかたへの大和を見やりぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
今わが述ぶる言の葉の君のかたへに近づかば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
餘所よそに見るとは何云心の人なるぞ殊には自分の身勝手みがつてのみ云散いひちらすは鬼かじやか思へば/\なさけなやと愚痴の出るも道理なり偖裏口より入んと思ふにあかり萬燈まんどうの如く大勢なる他人の居る中へかく窶然みすぼらしき姿にて這入はひらん事此家の手前も有ば如何いかゞせんと少間しばしたゝずみ居たりしにかたへに寢て居し一疋の犬あやしく思ひてや齒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またそのかたへにてわれらの組を飾る焔はピエートロ即ちかの貧しき女にならひ己が寶を聖なる寺院に捧げし者なり 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
垣に朝顔、藤豆を植ゑ、蓼を海棠かいだうもとに、蝦夷菊唐黍を茶畑の前に、五本いつもと三本みもとつちかひつ。の名にしおふシヽデンは庭の一段高き処、飛石のかたへに植ゑたり。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山茶花の朝霧ゆゑにかたへ行く鹿の子の斑毛まだらいつくしく見ゆ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
車輪のほとり塵噛みて俯せば、かたへに迫り來る
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
またそのかたへなるかの蝋燭の光を見よ、こは肉體の中にありて、天使のさがとそのつとめとをいと深く見し者なりき 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
心持こゝろもち余程よほど大蛇だいじやおもつた、三じやく、四しやく、五しやく、四はう、一ぢやう段々だん/″\くさうごくのがひろがつて、かたへたにへ一文字もんじさツなびいた、はてみねやまも一せいゆるいだ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かたへより、みて静かにかたみなる木の実りつつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さればかく荒れし路を傳ひて我に歩みを進ましむる權威ちからによりこゝに我汝に請ふ、群のひとりを我等にえさせよ、我等そのかたへにしたがひ 九一—九三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かたへに一ぽんえのきゆ、年經としふ大樹たいじゆ鬱蒼うつさう繁茂しげりて、ひるふくろふたすけてからすねぐらさず、夜陰やいんひとしづまりて一陣いちぢんかぜえだはらへば、愁然しうぜんたるこゑありておうおうとうめくがごとし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人々は皆勝者かつものとともに去り、ひとりまへに行きひとりうしろよりこれをひかへひとりかたへよりこれに己を憶はしむるに 四—六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
長蟲ながむし苦悶くもんへず蜒轉𢌞のたうちまはり、のがでんといだ纖舌せんぜつほのほよりあかく、ざるより突出つきいだかしらにぎちてぐツとけば、脊骨せぼねかしらきたるまゝ、そと拔出ぬけいづるをてて、しかばねかたへうづたか
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
師そのかたへにとゞまりていひけるは、かく多くの折際をりめより血と共に憂ひの詞をはく汝は誰なりしや 一三六—一三八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
我わが前方まへにのみ黒き地あるをみしとき、おのが棄てられしことを恐れてわがかたへにむかへるに 一九—二一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その口未だ閉ぢざる間に、ひとりの聖なる淑女、これをはぢしめんとてわがかたへにあらはれ 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)