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あざや
ふりがな文庫
“
鮮
(
あざや
)” の例文
ゆくてに高きは、
曾遊
(
そうゆう
)
の八ヶ岳——その赤岳、横岳、
硫黄
(
いおう
)
岳以下、銀甲つけて、そそり立つ。空は次第に晴れて山々も
鮮
(
あざや
)
かに現れる。
雪の武石峠
(新字新仮名)
/
別所梅之助
(著)
黒點は次第に
鮮
(
あざや
)
かになりぬ。時に一人の老漁ありて、
褐
(
かち
)
いろなる
無庇帽
(
つばなしばうし
)
を戴き指を組み合せて立ちたりしに、不意にあなやと叫べり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし往来を歩いていたり、原稿用紙に向っていたり、電車に乗っていたりする
間
(
あいだ
)
にふと過去の一情景を
鮮
(
あざや
)
かに思い浮べることがある。
お時儀
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
極く丈の詰った影で、街燈が間遠になると
鮮
(
あざや
)
かさを増し、片方が幅を利かし出すとひそまってしまう。「月の影だな」と自分は思った。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
一機が、思いきった
逆宙返
(
ぎゃくちゅうがえ
)
りをうって
遁
(
のが
)
れると、他の一機も更に
鮮
(
あざや
)
かな宙返りをうって迫り、機翼と機翼とがスレスレになるのだった。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
と、間もなく誰が打つとも知れぬ戸口の響板が、
鮮
(
あざや
)
かに三つ、輕い美しい音を立ててトン、トン、トンと鳴つたではありませんか。
銭形平次捕物控:209 浮世絵の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そして九節—十六節においては美しき
言辞
(
ことば
)
を以て神の異能を描いている。天然と人事に対する神の支配は実に
鮮
(
あざや
)
かに書き記されている。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
眼ガ四ツ、ソノ眼ト並ンデ鼻ガ二ツ、少シ飛ビ離レタ一二尺高イ空間ニ唇ガ二ツ、トイウ風ニ、シカモ極メテ
鮮
(
あざや
)
カナ色彩ヲ帯ビテ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
投げ銭を受けることは本来この男の本芸であるが、今はホンの前芸にやって見せた
手際
(
てぎわ
)
、その
鮮
(
あざや
)
かさが、見物の気に入ったものらしく
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
黒
(
くろ
)
い
髪
(
かみ
)
と、
淡紅色
(
ときいろ
)
のリボンと、それから黄色い
縮緬
(
ちりめん
)
の帯が、
一時
(
いちじ
)
に風に吹かれて
空
(
くう
)
に流れる
様
(
さま
)
を、
鮮
(
あざや
)
かに
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
に刻み込んでゐる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
一種不思議な力に
誘
(
いざな
)
われて言動
作息
(
さそく
)
するから、
我
(
われ
)
にも我が判然とは分るまい、今のお勢の眼には宇宙は
鮮
(
あざや
)
いで見え、万物は美しく見え
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
黄色
(
きいろ
)
な
光
(
ひかり
)
が
快
(
こゝろ
)
よく
鮮
(
あざや
)
かに
滿
(
み
)
ちて
居
(
ゐ
)
る
晩秋
(
ばんしう
)
の
水
(
みづ
)
のやうな
淡
(
あは
)
い
霜
(
しも
)
が
竊
(
ひそか
)
におりる
以前
(
いぜん
)
から
其
(
そ
)
の
葉
(
は
)
は
悉
(
こと/″\
)
くくる/\と
其
(
そ
)
の
周圍
(
しうゐ
)
が
捲
(
まく
)
れ
始
(
はじ
)
めて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
思えば
僅
(
わず
)
かに心の顔を合せることの出来ましたお母さんとの間は、どんな他の人との関係にも
勝
(
まさ
)
って私の心に
鮮
(
あざや
)
かでございますが
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
稜を鋭く何箇所か
空
(
そら
)
に目がけて切り立つて、孔雀石と翡翠の明暗を隈つた半島が此方の
海岸
(
かいがん
)
に詰め寄せるかのやうに
鮮
(
あざや
)
かに浮出してゐる。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
すみればかりは関東の野の方が種類も多く、色もずっと
鮮
(
あざや
)
かなように思われるが、
蒲公英
(
たんぽぽ
)
もまた
紫雲英
(
げんげ
)
も、花がやや少なくかつ色が
淋
(
さび
)
しい。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
妙念 (下手あたかも月色の渦巻ける片隅に立ちたれば、
彩
(
いろど
)
られたる血の色
鮮
(
あざや
)
かに、怪体なる微笑を浮めつつ狂喜の語調にて)
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
墨痕
(
ぼっこん
)
鮮
(
あざや
)
かだけれど、浩郎としてあるからは、お父さんだ。お父さんの字は決して巧い方でない。習字の先生が採点したら、精々
乙上
(
おつじょう
)
だろう。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
敵の艇は水を切って彼の眼前一町ほどのところを
鮮
(
あざや
)
かに漕いでゆく。三番がスプラッシュをして櫂で水を
跳
(
は
)
ね上げるのまではっきり見える。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
何やら急にまた小鳥達の声が騒がしいほど、
遠近
(
おちこち
)
にその数を増して行く。竹の葉を通す陽光は再び
鮮
(
あざや
)
かな緑にきらめき始めた。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
さて散策して見た中津の町は電飾が
鮮
(
あざや
)
かではあったが、いかにも
北国
(
ほっこく
)
の小都市らしく、簡素で、また陰暗たるところがあった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし、剛剣の名あった大迫玄蕃、浅香慶之助、猪股小膳の諸士を、ああも
鮮
(
あざや
)
かに
遣
(
や
)
ッつけた神尾である。三人では、心細い。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかしこの初めて見るメロンは、外側が浅い
鮮
(
あざや
)
かな緑色で、それが内側の
橙
(
だいだい
)
色にとけ込んでいる様子が、
如何
(
いか
)
にも美しく、また高貴に見えた。
寺田先生と銀座
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
白い岩のうえに、目のさめるような
躑躅
(
つつじ
)
が、古風の
屏風
(
びょうぶ
)
の絵にでもある様な
鮮
(
あざや
)
かさで、咲いていたりした。水がその
巌間
(
いわま
)
から流れおちていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
追い込まれる闘牛のどれを見ても、みんな素晴らしい
逸物
(
いつぶつ
)
でただただ驚嘆するばかりでした。それに又一方闘牛者達の、あの
鮮
(
あざや
)
かの戦闘ぶりは!
闘牛
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
都心の街路には、
樟
(
くす
)
の木の並木が
鮮
(
あざや
)
かで、朝のかあつと照りつける陽射しのなかに、金色の
粉
(
こ
)
を噴いて若芽を
萌
(
きざ
)
してゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
広間の
燈影
(
ひかげ
)
は入口に立てる
三人
(
みたり
)
の姿を
鮮
(
あざや
)
かに照せり。色白の
小
(
ちひさ
)
き内儀の口は
疳
(
かん
)
の為に
引歪
(
ひきゆが
)
みて、その夫の
額際
(
ひたひぎは
)
より
赭禿
(
あかは
)
げたる
頭顱
(
つむり
)
は
滑
(
なめら
)
かに光れり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
マーシャルの島民は、殊にその女は、非常にお
洒落
(
しゃれ
)
である。日曜の朝は、てんでに色
鮮
(
あざや
)
かに着飾って教会へと出掛ける。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
するすると向うへ流れて、横ざまに近づいた、細い黒い
毛脛
(
けずね
)
を
掠
(
かす
)
めて、蒼い水の上を
鴎
(
かもめ
)
が
弓形
(
ゆみなり
)
に大きく
鮮
(
あざや
)
かに飛んだ。
三尺角
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鼠色
(
ねずみいろ
)
したその羽の色と石の上に買いた盆栽の
槭
(
はぜ
)
の
紅葉
(
こうよう
)
とが如何に
鮮
(
あざや
)
かに一面の
光沢
(
つや
)
ある苔の青さに対照するでしょう。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうして、森や
草叢
(
くさむら
)
の
木立
(
こだち
)
の姿が、朝日の底から
鮮
(
あざや
)
かに浮き出して来るに従って、煙の立ち昇る
篠屋
(
しのや
)
からは木を打つ音やさざめく人声が聞えて来た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
暗黒に慣れた道臣の眼には、杉の大木へ釘付けにされた二つの人形の、白い顏から眼鼻立ちまでが、
鮮
(
あざや
)
かに見えた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
きつぱりと黒
天鵞絨
(
びろうど
)
のなかの銀糸の点のやうに、
鮮
(
あざや
)
かに
煌
(
かがや
)
いて居る……不思議なことには、立派な街の夜でありながら、どんな種類にもせよ車は勿論
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そしてその女の癖で
鮮
(
あざや
)
かな色した
唇
(
くち
)
を少し
歪
(
ゆが
)
めたようにして
眩
(
まぶ
)
しそうに
眸
(
ひとみ
)
をあげて
微笑
(
え
)
みかけながら黙っていた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そして負傷を知らないとともに疲労をも知らない身であるかのように、恐るべき二十四時間を経きたった後にもなお、その
面
(
おもて
)
は
鮮
(
あざや
)
かな
薔薇色
(
ばらいろ
)
をしていた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
こんな、ひっそりとした死……それは一瞬そのまま
鮮
(
あざや
)
かに彼の感覚に残ったが、その一齣はそのまま家にいる妻の方に伝わっているのではないかとおもえた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
日の光は次第に広く、峰から森、狭い谿、深い渓流の上までも射し込んで、目に入るものは皆透き通る位に
鮮
(
あざや
)
かだ。山の下の細径は谿の上を繞り繞って行く。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
時々刻々眼先が変りだんだん進んで来ますと、ヒマラヤ山中の名物であるロードデンドロンというその色の
鮮
(
あざや
)
かさといったら何と形容してよいか分らぬほど。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
芝生
(
しばふ
)
の
端
(
はし
)
が
垂
(
た
)
れ
下
(
さが
)
っている崖の上の広壮な
邸園
(
ていえん
)
の
一端
(
いったん
)
にロマネスクの半円
祠堂
(
しどう
)
があって、一本一本の円柱は六月の
陽
(
ひ
)
を受けて
鮮
(
あざや
)
かに紫
薔薇色
(
ばらいろ
)
の
陰
(
かげ
)
をくっきりつけ
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
怪
(
あや
)
しき
書風
(
しよふう
)
に
正躰
(
しやうたい
)
得
(
え
)
しれぬ
文字
(
もじ
)
を
書
(
かき
)
ちらして、これが
雪子
(
ゆきこ
)
の
手跡
(
しゆせき
)
かと
情
(
なさけ
)
なきやうなる
中
(
なか
)
に、
鮮
(
あざや
)
かに
讀
(
よ
)
まれたる
村
(
むら
)
といふ
字
(
じ
)
、
郎
(
らう
)
といふ
字
(
じ
)
、あゝ
植村
(
うゑむら
)
録郎
(
ろくらう
)
、
植村
(
うゑむら
)
録郎
(
ろくらう
)
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼の心には、村中に柿の木が沢山あって、秋の今頃の美しい故郷の景色が、絵よりも
鮮
(
あざや
)
かに映って来た。
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
それは、
夕暮
(
ゆうぐ
)
れ
方
(
がた
)
の
太陽
(
たいよう
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らされて、いっそう
鮮
(
あざや
)
かに
赤
(
あか
)
い
毛色
(
けいろ
)
の
見
(
み
)
える、
赤
(
あか
)
い
鳥
(
とり
)
でありました。
あほう鳥の鳴く日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
山の斜面では放牧牛が、ある奴はずつと高手に、他のある奴は下方に、又横に、のろのろと動いて、その黒と白との
斑
(
まだら
)
な胴體が
鮮
(
あざや
)
かな目のさめるやうな印象を與へる。
南方
(旧字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
鶯
(
うぐいす
)
等は山や谷を越え、今は野の上の小高いところで鳴くようにでもなったか、というので、一般的な想像のように出来て居る歌だが、不思議に浮んで来るものが
鮮
(
あざや
)
かで
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何
(
なに
)
かにつけては
美学
(
びがく
)
の
受売
(
うけうり
)
をして
田舎者
(
いなかもの
)
の
緋
(
ひ
)
メレンスは
鮮
(
あざや
)
かだから
美
(
び
)
で江戸ツ子の
盲縞
(
めくらじま
)
はジミだから
美
(
び
)
でないといふ
滅法
(
めつぱふ
)
の
大議論
(
だいぎろん
)
に
近所
(
きんじよ
)
合壁
(
がつぺき
)
を
騒
(
さわ
)
がす事少しも
珍
(
めづ
)
らしからず。
為文学者経
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
、
三文字屋金平
(著)
真直
(
まっすぐ
)
な路で両側とも十分に黄葉した林が四五丁も続く処に出ることがある。この路を独り静かに歩むことのどんなに楽しかろう。右側の林の
頂
(
いただき
)
は夕照
鮮
(
あざや
)
かにかがやいている。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
こまやかな顔色の
鮮
(
あざや
)
かさと
気質
(
きだて
)
のよさそうな様子とのために、かわいらしく見えるはずだったが、ただ、鼻が少しいかつくて
据
(
すわ
)
りぐあいが悪く、顔つきに重苦しい感じを与え
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いつの間に何処で習ったのか知らないが、彼は極めて
鮮
(
あざや
)
かな日本の詞で敬うように言った。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この奇矯な動機の説明に、前に記した
鮮
(
あざや
)
やかなパラドックスが用いられているのである。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
まぶしそうにその眼を半分
閉
(
と
)
ざしているおかげで、平生の特徴を半分失いながら、そしてその代りにその
瞬間
(
しゅんかん
)
までちっとも目立たないでいた
脣
(
くちびる
)
だけが
苺
(
いちご
)
のように
鮮
(
あざや
)
かに光りながら
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
西洋人でも随分
鮮
(
あざや
)
かな東京弁を使う人に時々出会う事があるが、全く私は恥かしい。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
鮮
常用漢字
中学
部首:⿂
17画
“鮮”を含む語句
鮮血
鮮明
新鮮
朝鮮
鮮麗
鮮紅
朝鮮人
鮮魚
鮮鯛
朝鮮征伐
鮮新
鮮鱗
鮮少
色鮮
鮮血淋漓
鮮卑
朝鮮風
朝鮮牛
朝鮮笛
鮮人
...