行末ゆくすゑ)” の例文
その得意先とくいさきの一けん橋場はしば妾宅せふたくにゐる御新造ごしんぞがおいと姿すがたを見て是非ぜひ娘分むすめぶんにして行末ゆくすゑ立派りつぱな芸者にしたてたいと云出いひだした事からである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
喚出よびいだし三四度御自分樣じぶんさま引合ひきあひたる家も有り殊に御自分の云はるゝには小夜衣は我がめひなれば行末ゆくすゑ共にねんごろに私にたのむと小夜衣が文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我はアルナルドなり、泣きまた歌ひてゆく、われ過去こしかたをみてわがおろかなりしを悲しみ、行末ゆくすゑをみてわが望む日の來るを喜ぶ 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
故郷くに靜岡しづをか流石さすが士族出しぞくでだけ人品じんぴん高尚かうしようにて男振をとこぶりぶんなく、さいありがくあり天晴あつぱれの人物じんぶついまこそ内科ないくわ助手しよしゆといへども行末ゆくすゑのぞみは十のさすところなるを
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「この子の行末ゆくすゑ相應ふさはしい方法で教育していたゞきたうございます。」と私の恩人は言葉を續けた。
三五郎とお貞——この純情な二人の男女の行末ゆくすゑはどうなるか、其處までは考へて居られません。
登り/\て足下を見れば半刻ほど前に登り来りし道、蜿々として足下に横たはれり。飴色の半月低く崖下に懸れるを見れば、かた行末ゆくすゑの事なぞそゞろに思ひ出でられつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
関白家の罪は関白の例を引き行はるきの事、もつとも理の正当なるべきに、平人へいにんの妻子などのやうに、今日の狼藉らうぜき甚だ以て自由なり、行末ゆくすゑめでたかるべき政道にあらず、あゝ、因果のほど御用心候へ
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それからまた彼女かのぢよは、自分自身じぶんじしんのことよりも、子供こども行末ゆくすゑはかつたのだつたといふ犧牲的ぎせいてきな(みづかおもふ)こゝろのために、みづか亡夫ばうふ立場たちばになつて自分じぶん處置しよちゆるした。結極けつきよくをとこ不徳ふとく行爲かうゐめられた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
日だまりにけふも来りぬ行末ゆくすゑのことをおもはば悲しからむぞ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
行末ゆくすゑ御良縁ごりやうえん祈願きぐわんします、祈願きぐわんしまする。」
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何もかも行末ゆくすゑの事みゆるごとき
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
行末ゆくすゑ遠く頼みけるかな
また夫々それ/″\へ奉公すべし兩刀りやうたうたいする者は皆々天子てんしの家來なるぞ必ず忠臣二君に仕へずとの言葉ことばを用ゆるな浪人らうにんを致して居て越前の行末ゆくすゑかと後指うしろゆび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのころ半年はんとしあまり足繁あししげかよつてくるおきやくなかで、電話でんわ周旋屋しうせんやをしてゐる田中たなかをとこが、行末ゆくすゑ表向おもてむ正妻せいさいにするとふはなしに、はじめはそのをとこのアパートに
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
こヽろざしのふみふうらねど御覽ごらんぜよ此通このとほりと、手文庫てぶんこまことせしが、さてわれゆゑけばうれしきかかなしきか、行末ゆくすゑいかに御立身ごりつしんなされて如何樣どのやうなお人物ひとたまふおにや
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かへつとく吉兵衞は宿やどりし山家やまがの樣子何かに付てうたがはしき事のみなればまくらには就けどもやらず越方こしかた行末ゆくすゑのことを案じながらも先刻せんこく主人あるじの言葉に奧の一間を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いとと自分との行末ゆくすゑ………行末ゆくすゑふよりも今夜こんや会つてのち明日あしたはどうなるのであらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもふまゝをとほして離縁りゑんとならは太郎たらうには繼母まゝはゝせ、御兩親ごりようしんにはいままでの自慢じまんはなにはかにひくくさせまして、ひとおもはく、おとゝ行末ゆくすゑ、あゝ此身このみ一つのこゝろから出世しゆつせしんめずはならず
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
亥之ゐのとほくちおもたちだしいづれおかゝつてもあつけない御挨拶ごあいさつよりほか出來できまいとおもはれるから、何分なにぶんともおまへなかつてわたしどものこゝろつうじるやう、亥之ゐの行末ゆくすゑをもおたのまをしおいてお
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いふてはるけれどおまへ親不孝おやふかう子不孝こふかうすこしは行末ゆくすゑをもおもふて眞人間まにんげんになつてくだされ、御酒ごしゆのんらすは一ときしんから改心かいしんしてくださらねば心元こゝろもとなくおもはれますとて女房にようぼううちなげくに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さへてりとくにむすめためにもためにも行末ゆくすゑわろき縁組えんぐみならずとより/\の相談さうだんれきくはらだゝしさ縱令たとひ身分みぶんむかしとほりならずとも現在げんざいゆるせし良人をつとあるいまはしき嫁入よめいり沙汰ざたきくもいやなりおもてにかざる仁者顏じんしやがほ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或時あるとききしにおたかおなじくなみだになりてわたしこゝろるものは和女そなたばかりよしさまのことはおもりても御兩親ごりやうしん行末ゆくすゑ心配しんぱいなり明日あすえんきなばかく自由じいうかなふまじ其時そのときたのむは和女そなたぞかしとゝさまのおこゝろよくりて松澤まつざはさまとのなかむかしとほりにしてしゝひとつがおたのみぞとて兩手りやうて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あし田鶴たづよはひながゝれとにや千代ちよとなづけし親心おやごゝろにぞゆらんものよ栴檀せんだん二葉ふたば三ツ四ツより行末ゆくすゑさぞとひとのほめものにせし姿すがたはなあめさそふ弥生やよひやまほころびめしつぼみにながめそはりてさかりはいつとまつのごしのつきいざよふといふも可愛かあいらしき十六さい高島田たかしまだにかくるやさしきなまこしぼりくれなゐは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)