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托
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たく
ふりがな文庫
“
托
(
たく
)” の例文
宇古木兵馬は、その晩娘のお勝を相生町にやる時、その手に
托
(
たく
)
して、母屋に居る綱田屋五郎次郎の遺子、玉枝に手紙を渡させました。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
明智は一艘の小舟に身を
托
(
たく
)
して、
遙
(
はる
)
かに明滅する、どことも知れぬ燈台の光を頼りに、腕の限りオールをあやつらねばならなかった。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
子供等へ送るつもりで買って置いた仏蘭西風の黒い表紙のついた手帳と一緒にして、帰朝する人でもある折にそれを
托
(
たく
)
そうと考えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
其
(
その
)
晩は場末の安宿に泊り翌日父は私をY中学の入学式につれて行き、そして我子を寄宿舎に
托
(
たく
)
して置くと、
直
(
す
)
ぐ村へ帰つて行つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
なぜなら、彼女等の自由意志は幼帝を育てるという事柄のうちに没入し、彼女等の夢の全てがただ幼帝の成人に
托
(
たく
)
されていたからである。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
過
(
すぎ
)
し
年
(
とし
)
北国より人ありて
拳
(
こぶし
)
の大さの
夜光
(
やくわう
)
の玉あり、よく一
室
(
しつ
)
を
照
(
てら
)
す、よき
価
(
あたひ
)
あらば
売
(
うら
)
んといひしかば、
即座
(
そくざ
)
に其人に
托
(
たく
)
して
曰
(
いはく
)
、其玉
求
(
もとめ
)
たし
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
それで、父のほうは親身に世話をしてくれる人々に
托
(
たく
)
すことが出来たので、私たちは思いきって山の家にかえることにした。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
私らの場合はむしろ外国語に持つ感覚に似たものを、古語に感じて其連接せられた文章の上に、生命を
托
(
たく
)
しているのである。
詩語としての日本語
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
燕王此の勢を
視
(
み
)
、国に帰れるより
疾
(
やまい
)
に
托
(
たく
)
して出でず、
之
(
これ
)
を久しゅうして遂に
疾
(
やまい
)
篤
(
あつ
)
しと称し、以て一時の視聴を
避
(
さ
)
けんとせり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私たちは彼の如く贅沢な、美術的な、そうしてロマンティックな作に工藝の本道を
托
(
たく
)
すことができず、また托してはならぬ。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
由来国軍は外敵に対して我が国土を防衛する任務を課せられて、国軍あるが
為
(
た
)
めに国民は自ら武器を捨て、安んじて国土の防衛を
托
(
たく
)
したのである。
二・二六事件に就て
(新字新仮名)
/
河合栄治郎
(著)
眼界
(
がんかい
)
の
達
(
たつ
)
する
限
(
かぎ
)
り
煙波
(
えんぱ
)
渺茫
(
べうぼう
)
たる
印度洋
(
インドやう
)
中
(
ちう
)
に、
二人
(
ふたり
)
の
運命
(
うんめい
)
を
托
(
たく
)
する
此
(
この
)
小端艇
(
せうたんてい
)
には、
帆
(
ほ
)
も
無
(
な
)
く、
櫂
(
かひ
)
も
無
(
な
)
く、たゞ
浪
(
なみ
)
のまに/\
漂
(
たゞよ
)
つて
居
(
を
)
るばかりである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
いまは失意の貧しい
生活
(
たつき
)
を、この大河や
湖
(
みずうみ
)
ばかりな
蕭々
(
しょうしょう
)
のうちに
托
(
たく
)
して、移りあるいている身の上と、ほそぼそ語った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
偏見から生まれた「第五元素」に成り下ってしまった……などというなど手きびしい宣告までが
托
(
たく
)
されているのだ。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
浮世絵は
最早
(
もはや
)
吹きぼかしと
雲母摺
(
きらずり
)
の二術を後世の画工に
托
(
たく
)
せしのみにして、その佳美なる制作品は世人をして
汎
(
あまね
)
く吾妻錦絵と呼ばしむるに至れるなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
先生の再婚の理由として「小供らの教育を
托
(
たく
)
する人を得て
冥途
(
めいど
)
の妻の心を喜ばすために後の妻を
貰
(
もら
)
ったのである」
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
と、井谷はいくらか自分自身の
鬱憤
(
うっぷん
)
を丹生夫人に
托
(
たく
)
して
洩
(
も
)
らす気味もあって、相当手厳しい
口吻
(
こうふん
)
であったが、何と云われても幸子は返す言葉もなかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
遠野の町の中にて今は
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
という家の先代の主人、宮古に行きての帰るさ、この川の
原台
(
はらだい
)
の
淵
(
ふち
)
というあたりを通りしに、若き女ありて一封の手紙を
托
(
たく
)
す。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
現に只今も、独機八機現わるという想定のもとに、どすんどすんと空砲をはなって、猛練習であるが、その
凄
(
すさまじ
)
い砲声を原稿に
托
(
たく
)
して送れないのが甚だ残念だ。
沈没男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それ故彼にとって、屈辱なく死を
托
(
たく
)
するに足る土地を定めることは、一刻もあらそう心せわしさでもあった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
源氏の愛のたよりなさを感じている御息所は、斎宮の年少なのに
托
(
たく
)
して自分も
伊勢
(
いせ
)
へ下ってしまおうかとその時から思っていた。この
噂
(
うわさ
)
を院がお聞きになって
源氏物語:09 葵
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
まもなく百姓たちから前後の事情を聞いた某君と軍曹は、己たちがわざわざパラシュートに身を
托
(
たく
)
して飛び降りたことを思いだして、顔を見あわして苦笑した。
人のいない飛行機
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
蓋
(
けだ
)
し
苟
(
いやしく
)
も我が国土に脚を
托
(
たく
)
するものにして誰れか
能
(
よ
)
く国民性の圏外に逸出するものあらんや。彼等は意識を役せずして皆国民性の一部を描くべきものにあらずや。
国民性と文学
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
此処
(
ここ
)
へ身を横たえて
酒精
(
アルコール
)
の力に身を
托
(
たく
)
し高い大空を仰いで居る間は、僕の心が
幾何
(
いくら
)
か自由を得る時です。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「入塾が出来ない位なら生ている甲斐がない」ト
溜息
(
ためいき
)
噛雑
(
かみま
)
ぜの愁訴、
萎
(
しお
)
れ返ッて見せるに両親も我を折り、それ程までに思うならばと、万事を隣家の娘に
托
(
たく
)
して
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼れは思わずその足の力をぬこうとしたが、同時に狂暴な衝動に
駈
(
か
)
られて、満身の重みをそれに
托
(
たく
)
した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
平吉はさっきから人待顔にすぐ前に下っていた太い
鎖
(
くさり
)
の先の
鈎
(
かぎ
)
に軽く右足をかけて鎖に全身を
托
(
たく
)
した。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
「その日の夕暮、またも行手に大敵が現われて、松本総裁は
牧岡氏
(
まきおかうじ
)
と池氏とに後を
托
(
たく
)
して、中山卿を守りて長州へ落ちよと申し含めて、自身は大敵の中で見事な
切死
(
きりじに
)
」
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
他
(
あれ
)
は小説家だから
与
(
とも
)
に医学を談ずるには足らないと云い、予が官職を以て相対する人は、他は小説家だから重事を
托
(
たく
)
するには足らないと云って、
暗々裡
(
あんあんり
)
に我進歩を
礙
(
さまた
)
げ
鴎外漁史とは誰ぞ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
しかし私はその翌る日の大雪に、通りかかった吉という五十歳近い猟人に一通の手紙を
托
(
たく
)
した。その内容は故郷の妻に宛てたもので大要次のような意味のものであった。
眼を開く
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
新奇な空気を吸収する、その眠たいまでに精神が表皮化して仕舞う忘我の心持ちに自分を
托
(
たく
)
した。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
我
(
わ
)
れに
邪心
(
じやしん
)
なきものと
思
(
おぼ
)
せばこそ、
幼稚
(
えうち
)
の
君
(
きみ
)
を
托
(
たく
)
し
給
(
たまひ
)
て、
心
(
こゝろ
)
やすく
瞑目
(
めいもく
)
し
給
(
たま
)
ひけれ、
亡主
(
ばうしゆ
)
に
何
(
なん
)
の
面目
(
めんぼく
)
あらん、
位牌
(
ゐはい
)
の
手前
(
てまへ
)
もさることなり、いでや
一對
(
いつつゐ
)
の
聟君撰
(
むこぎみえら
)
み
參
(
まゐ
)
らせて
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「鏨を。」兇悪をなすに、
責
(
せめ
)
を知って、後事を
托
(
たく
)
せよと云うがごとく聞えて、
頷
(
うなず
)
いて渡した。
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
庸三は
家
(
うち
)
を出るとき、そう言って長男に後事を
托
(
たく
)
した。訂正の記事は出したにしても、それは苦しまぎれの
糊塗的
(
ことてき
)
なもので、葉子は社会的には全く打ちのめされた形だった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何処
(
いずこ
)
にも宿り、何処にもつながりを見せるものに思われます、あそこに紀介様がお越しになったばかりではなく、かげながら
後事
(
こうじ
)
を
托
(
たく
)
されていたということも、わたくしには
玉章
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
移
(
うつ
)
る
前
(
まへ
)
に、
好
(
い
)
い
機會
(
きくわい
)
だから
一寸
(
ちよつと
)
東京
(
とうきやう
)
迄
(
まで
)
出
(
で
)
たいものだと
考
(
かんが
)
へてゐるうちに、
今度
(
こんど
)
も
色々
(
いろ/\
)
の
事情
(
じじやう
)
に
制
(
せい
)
せられて、つい
夫
(
それ
)
も
遂行
(
すゐかう
)
せずに、
矢張
(
やは
)
り
下
(
くだ
)
り
列車
(
れつしや
)
の
走
(
はし
)
る
方
(
かた
)
に
自己
(
じこ
)
の
運命
(
うんめい
)
を
托
(
たく
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかたなく、
姫
(
ひめ
)
はこの
心
(
こころ
)
の
悲
(
かな
)
しみを
琴
(
こと
)
の
糸
(
いと
)
に
托
(
たく
)
して、いつまでも
琴
(
こと
)
を
弾
(
ひ
)
いていました。
黒い塔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
呂昇が堀川のお俊や、酒屋のお園や、
壺坂
(
つぼさか
)
のお里を語るは、自己を其人に
托
(
たく
)
するのだ。同じ様な
上方女
(
かみがたおんな
)
、同じ様な
気質
(
きだて
)
の女、芸と人とがピッタリ合うて居るのだ。悪かろう筈がない。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
顧
(
おも
)
えば女性の身の
自
(
みずか
)
ら
揣
(
はか
)
らず、年
少
(
わか
)
くして民権自由の声に
狂
(
きょう
)
し、
行途
(
こうと
)
の
蹉跌
(
さてつ
)
再三再四、
漸
(
ようや
)
く
後
(
のち
)
の
半生
(
はんせい
)
を家庭に
托
(
たく
)
するを得たりしかど、一家の
計
(
はかりごと
)
いまだ成らざるに、身は早く
寡
(
か
)
となりぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
先発荷物の延着 それから四、五日待って居るけれども私が荷物を
托
(
たく
)
したシナ人が出て来ない。どうしたものか向うの方が少しあとになって立ったのだけれどもそんなに遅れる訳はない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
晋
(
しん
)
の人でその資産を弟に
托
(
たく
)
して、久しく
他郷
(
たきょう
)
に出商いをしている者があった。旅さきで妻を
娶
(
めと
)
って一人の子を儲けたが、十年あまりの後に妻が病死したので、その子を連れて故郷へ帰って来た。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
自分の翼を束縛する
此
(
こ
)
の空気が無かったならば、もっとよく飛べるだろうと思うのですが、これは、自分が飛ぶためには、翼の重さを
托
(
たく
)
し得る此の空気の抵抗が必要だということを
識
(
し
)
らぬのです。
鬱屈禍
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それから地上に一間あまり跳ね飛ばされた彼は、家の下敷になって藻掻いている家内と女中を救い出し、子供二人は女中に
托
(
たく
)
して先に逃げのびさせ、隣家の老人を助けるのに手間どっていたという。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ついに
故山
(
こざん
)
へ帰って
鍬
(
くわ
)
を握り、自分の夢をこのおれに
托
(
たく
)
した、おれには父の胸中がよくわかった、一日も早く一流の剣士になって、父によろこんでもらおうと思った、しかし、もうそのときは来ない
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
よくよく
心
(
こころ
)
して、
神
(
かみ
)
から
托
(
たく
)
された、この
重
(
おも
)
き
職責
(
しょくせき
)
を
果
(
はた
)
すように……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
托
(
たく
)
し給ふに
二個
(
ふたり
)
は
生
(
いき
)
たる
心地
(
こゝち
)
して
砂
(
すな
)
に
頭
(
かしら
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
園子の姉とか妹とかいう人達までこの老人に
托
(
たく
)
してそれぞれ
餞別
(
せんべつ
)
なぞを贈って
寄
(
よこ
)
してくれたことを考えても、思わず岸本の頭は下った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
過
(
すぎ
)
し
年
(
とし
)
北国より人ありて
拳
(
こぶし
)
の大さの
夜光
(
やくわう
)
の玉あり、よく一
室
(
しつ
)
を
照
(
てら
)
す、よき
価
(
あたひ
)
あらば
売
(
うら
)
んといひしかば、
即座
(
そくざ
)
に其人に
托
(
たく
)
して
曰
(
いはく
)
、其玉
求
(
もとめ
)
たし
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
先住の高風に比べれば百難あったが、彼も亦一生不犯の
戒律
(
かいりつ
)
を守り、
専
(
もっぱ
)
ら一酔また一睡に一日の悦びを
托
(
たく
)
していた無難な坊主のひとりであった。
閑山
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その一枚を半分に
截
(
き
)
ると、八五郎が
托
(
たく
)
された結び文と同じ繪を三つ、——念入りに眞似たくせに、わざと少しづつ寸法を變へたのを描きました。
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“托”の意味
《名詞》
物を載せておく台や受け皿。
(出典:Wiktionary)
托
漢検準1級
部首:⼿
6画
“托”を含む語句
仮托
托言
屈托
茶托
一蓮托生
結托
托児所
托胎
托鉢
托鉢僧
依托
屈托気
嘱托
委托
蓮托生
托塔
花托
言托
托送
請托
...