たて)” の例文
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。
眞正面まつしやうめんに、凹字形あふじけいおほきたてものが、眞白まつしろ大軍艦だいぐんかんのやうに朦朧もうろうとしてあらはれました。とると、あやは、なんと、ツツツときつゝ。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そんな事ない。ベルさんなんかに、あんな美しいおうちなど、たてる人などないわ。いつだつて、泥だらけの足をしてゐるから。」
お猫さん (新字旧仮名) / 村山籌子古川アヤ(著)
大佐たいさいへは、海面かいめんより數百尺すひやくしやくたか斷崖だんがいうへたてられ、まへはてしなき印度洋インドやうめんし、うしろ美麗びれいなる椰子やしはやしおほはれてる。
あやしみて或博士あるはかせうらなはするに日外いつぞやつみなくして殺されたる嫁のたゝり成んと云ければ鎭臺には大に駭かれつかたてて是をまつり訴へたる娘を罪に行ひさきの鎭臺の官を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くにかへつて田地でんちを買ふ約束をしたり、いへたて木材きざいを山からすやうにしたり、ちやんと手筈てはずけて江戸えどかへつてると、塩原多助しほばらたすけんでゐた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
其處そこ學校がくかうたて決心けつしんかれこゝろわいたのです、諸君しよくんかれ決心けつしんあま露骨むきだしで、單純たんじゆんなことをわらはれるかもれませんが、しかし元來ぐわんらい教育けういくのない一個いつこ百姓ひやくしやうです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれさむ西風にしかぜいとうてほとん勘次かんじうちあひせつして東脇ひがしわきたてようとした。勘次かんじもとより自分じぶんふところえてるのでもなし、それについてはけつしてかげつぶやくことはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さうして京都の八坂神社の塔を意外なたて込んだ街中まちなかに発見する如く、広場の一方の人家の上に有名なノオトル・ダムのカテドラルが古色を帯びて屹立きつりつする雄姿を仰ぐのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
この家は以前もと土蔵をこわした跡へたてたのだが、土蔵のあった頃当時の住居人すまいにんそれ女房にょうぼが、良人おっとに非常なる逆待ぎゃくたいを受け、嬰児こどもを抱いたまま棟木むなぎに首をつって、非命の最期を遂げた、その恨みが残ったと見えて
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
自然木の横組みたてで、熊の出はいりしそうな戸をあけて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
庭中ていちゆう池のほとりに智勇の良将宇佐美駿河守刃死じんし古墳こふんりしを、先年牧之老人施主せしゆとしてあらた墓碑ぼひたてたり。不朽ふきう善行ぜんぎやうといふべし。
地震、と欄干につかまって、目を返す、森を隔てて、煉瓦れんがたてもの、教会らしい尖塔せんとうの雲端に、稲妻が蛇のように縦にはしる。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其方てらはうむりし趣きなるが右は當時たうじ無縁むえんなるか又はしるし石塔せきたふにてもたてありやと尋けるに此祐然もとより頓智とんち才辨さいべんの者故參候若君わかぎみ澤の井の石塔せきたふは御座候も香花かうげ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
昔風むかしふうもんはひると桑園くはゞたけあひだ野路のみちのやうにして玄關げんくわんたつする。いへわづか四間よま以前いぜんいへこはして其古材そのふるざいたてたものらしくいへかたちなしるだけで、風趣ふうちなにいのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なん落語はなし種子たねにでもなるであらうとぞんじまして、門内なか這入はいつて見ましたが、一かう汁粉店しるこやらしい結構かゝりがない、玄関正面げんくわんしやうめんには鞘形さやがたふすまたててありまして、欄間らんまにはやり薙刀なぎなたるゐかゝつ
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
高田たかたしろ大手先の広場ひろばに、木をかくけづり尺をしるしてたて給ふ、是を雪竿さをといふ。長一丈也。雪の深浅しんせん公税こうぜいかゝるを以てなるべし。
よくあるならひで——醫師いしやぬかり、看護婦かんごふ不深切ふしんせつなんでも病院びやうゐん越度をちどおもつて、それ口惜くやしさに、ものぐるはしくおほきたてものを呪詛のろつてるんだらう。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不審いぶかりたてんとなす時迯出にげいだす人あるによりそれ盜人ぬすびと出逢々々であへ/\と大聲に呼はりけるに大勢馳來はせきたりて見れば加賀屋四郎右衞門なり皆々是は人違ひとちがならんと云に三郎兵衞之を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其所そこへ別荘をたてると申して出ました切り手紙を一通送ってよこさず、まるで音信おとづれがございませんから、悋気ではございませんが、万一ひょっとほか増花ますはながあってわたくしあきが来て見捨てられやしないかと
百樹もゝきいはく丁酉の夏北越ほくゑつに遊びて塩沢に在し時、近村に地芝居ありときゝて京水とともに至りしに、寺の門のかたはらくひたてよこなが行燈あんどんあり、是にだいしていはく
あまりのうれしさに、ゆき一度いちどつかへて、鎭守ちんじゆはう遙拜えうはいしつゝ、たてものの、はひりました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
し其の身に附いてゝも其の子の代には屹度消える訳のもので、火事盗難という物が有るから、どんなでか身上しんしょうでも続いて十度とたびも火難に出逢い、たてたんびに蔵までも焼いたら堪るものじゃなかろう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これを作りてまづおのれ/\がかどたておく事五月ののぼりのあつかひなり。十五日にいたりてかの場所へもちゆき、左義長にかざして焼捨やきすつるを祝ひとしなぐさみとす。
むかし本陣ほんぢんかまへのおほきなたてものは、寂然ひつそりとしてる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これを作りてまづおのれ/\がかどたておく事五月ののぼりのあつかひなり。十五日にいたりてかの場所へもちゆき、左義長にかざして焼捨やきすつるを祝ひとしなぐさみとす。