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兼
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かね
ふりがな文庫
“
兼
(
かね
)” の例文
金眸は朝より
洞
(
ほら
)
に
籠
(
こも
)
りて、
独
(
ひと
)
り
蹲
(
うずく
)
まりゐる処へ、
兼
(
かね
)
てより
称心
(
きにいり
)
の、
聴水
(
ちょうすい
)
といふ
古狐
(
ふるぎつね
)
、
岨
(
そば
)
伝ひに雪踏み
分
(
わげ
)
て、
漸
(
ようや
)
く洞の入口まで来たり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
兼
(
かね
)
て須永から聞いている
内幸町
(
うちさいわいちょう
)
の叔父さんという人に、一応そういう方の用向で会っておきたいから紹介してくれと
真面目
(
まじめ
)
に頼んだ。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わたくし
)
は
未
(
ま
)
だ
此
(
この
)
大佐
(
たいさ
)
とは
甞
(
かつ
)
て
面會
(
めんくわい
)
した
事
(
こと
)
は
無
(
な
)
いが、
兼
(
かね
)
て
聞
(
き
)
く
櫻木海軍大佐
(
さくらぎかいぐんたいさ
)
とは
無二
(
むに
)
の
親友
(
しんいう
)
で、また、
私
(
わたくし
)
の
爲
(
ため
)
には
終世
(
しゆうせい
)
忘
(
わす
)
るゝ
事
(
こと
)
の
出來
(
でき
)
ない
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
その家の庭で、供養をしてやった、何しろこういう風に、人の思いというものは恐ろしいものと、自分も
兼
(
かね
)
て人から聞いていたが
暗夜の白髪
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
暮
(
くら
)
し
兼
(
かね
)
るも二君に仕へぬ
我魂魄
(
わがたましひ
)
武士の本意と思へども
實
(
げ
)
にあぢきなき
浮世
(
うきよ
)
かなと一人涙を流したる
問
(
とは
)
ず
語
(
がた
)
りの心の中思ひ
遣
(
やら
)
れて
憐
(
あは
)
れなり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
▼ もっと見る
けどが女が人殺の直接のエジェンシー(働き
人
(
て
)
)と云う事は無い、と云って己も是だけは少し明解し
兼
(
かね
)
るけれどナニ失望するには及ばぬ
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
お
兼
(
かね
)
という十八の娘、その晩のうちに呼んでくると、もとの主人出雲のお筆にあって、手をとりあって泣いてよろこびました。
幻術天魔太郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ましてX夫人は
兼
(
かね
)
てから文人達の会合等に一種の遊興的気分を
撒
(
ま
)
いて歩く有閑婦人だった。善良な婦人で葉子はむしろ好感を
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
何程
(
なんぼ
)
すれつからしなんだんべ
兼
(
かね
)
さんは、
他人
(
ひと
)
のこと
本當
(
ほんたう
)
に」とおつぎは
手桶
(
てをけ
)
を
置
(
お
)
いて
水
(
みづ
)
に
泛
(
うか
)
んだ
青
(
あを
)
い
柹
(
かき
)
を
兼
(
かね
)
博勞
(
ばくらう
)
へ
投
(
な
)
げた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
聞惚
(
ききと
)
れて居升と、主人はます/\得意に商買口をきく、見たり
聞
(
きい
)
たりして居る私は
兼
(
かね
)
ての決心も何もかも忘れ果てゝむやみと風琴が欲しくなり
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
見送の人々は勝三郎の姉ふさ、いそ、てる、勝久、勝ふみ、
藤二郎
(
とうじろう
)
、それに師匠の家にいる
兼
(
かね
)
さんという男、
上総屋
(
かずさや
)
の親方、以上八人であった。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
これは
小生
(
わたくし
)
の父が、
眼前
(
まのあたり
)
に見届けたとは申し
兼
(
かね
)
るが、直接にその本人から聞取った一種の怪談で今はむかし文久の頃の事。その
思召
(
おぼしめし
)
で御覧を願う。
お住の霊
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
殊に娘の
兼
(
かね
)
に対しては、飼犬よりもさらに忠実だった。娘はこの時すでに婿を迎えて、誰も羨むような夫婦仲であった。
じゅりあの・吉助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
兼
(
かね
)
て自分とは普通
一片
(
いっぺん
)
の師匠以上に親しんでおったので、
或
(
ある
)
時などは私の
許
(
とこ
)
へ逃げてきて相談をした事もあった、私も
頗
(
すこぶ
)
る同情に
堪
(
た
)
えなかったが
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
気ばらし
旁々
(
かたがた
)
無音
(
むおん
)
払いを
兼
(
かね
)
て金儲けと一挙三得のうまい旅行だ。手近の碼頭から次々にと上流の方へ足を伸ばして行く。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
所が
兼
(
かね
)
ての宿願を達して学問修業とあるから、自分の本心に訴えて何としても飲むことは出来ず、滞留一年の
間
(
あいだ
)
、死んだ気になって禁酒しました。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
湖畔亭は、その名の示す
如
(
ごと
)
く、遊覧客の旅館であると同時に、附近の町や村から、日帰りで遊びに来る人々のためには、料亭をも
兼
(
かね
)
ているのでした。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
林子平も尊王の功なし攘夷の功あり。
兼
(
かね
)
て御話し申し候高山、蒲生、対馬の雨森伯陽、魚屋の八兵衛の類は、実に大切の人なり、各
神牌
(
しんぱい
)
を設くべし。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それは近江のお
兼
(
かね
)
である。この女のことは江戸時代に
芝居
(
しばい
)
の
所作事
(
しょさごと
)
などにも出ているし、絵草子にも
描
(
えが
)
かれている。
大力物語
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
兼
(
かね
)
が涙ながら來し頃は早暮て、七間間口に並びしてふちん
門
(
もん
)
並の
附合
(
つきあひ
)
も廣く、此處一町はやみの夜ならず
金屏
(
きんびやう
)
の松盛ふる色を示前に支配人の
立
(
たち
)
つ居つ
うづみ火
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お糸は今夜
兼
(
かね
)
てから話のしてある
葭町
(
よしちょう
)
の
芸者屋
(
げいしゃや
)
まで出掛けて相談をして来るという事で、その
道中
(
どうちゅう
)
をば二人一緒に話しながら歩こうと約束したのである。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
當の本人のゐない時は、三田はしきりに其ひととなりをほめたが、その批評は女達には信じ
兼
(
かね
)
る事ばかりだつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
尻餅
(
しりもち
)
ついて驚くところを、
狐憑
(
きつねつ
)
きめ
忌々
(
いまいま
)
しい、と
駄力
(
だぢから
)
ばかりは
近江
(
おうみ
)
のお
兼
(
かね
)
、顔は子供の
福笑戯
(
ふくわらい
)
に眼をつけ
歪
(
ゆが
)
めた
多福面
(
おかめ
)
のごとき房州出らしき
下婢
(
おさん
)
の憤怒
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
悪くそんな奴が
蔓
(
はびこ
)
ると、たちまち、能職が謡屋を
兼
(
かね
)
るような事が
出来
(
しゅったい
)
する。私がこのままで我を通せば、餓鬼、畜生と言われても、明日の舞台は天人だ。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
○さて御若年より
数階
(
すかい
)
を
歴
(
へ
)
給ひて後、
寛平
(
くわんびやう
)
九年御年五十三権大納言右□将を
兼
(
かね
)
らる。此時
時平
(
しへい
)
大納言に
任
(
にん
)
ぜられ左□将を兼、 菅神と並び立て
執政
(
しつせい
)
たり。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
「伯母さん、
兼
(
かね
)
てお話した通り、偉い
女性
(
ひと
)
に相違ありませぬがネ、——伯母さんより
十歳
(
とを
)
も上のお姿さんですよ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
と騒ぎまわる連中も居たが、そんな事ではいつでも先に立つ例の
向
(
むこ
)
う
疵
(
きず
)
の
兼
(
かね
)
が、この時に限って妙に落付いて
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
略解
(
りゃくげ
)
に、「袖のなれにしとは、年経て袖のなれしと、その男の
馴来
(
なれこ
)
しとを
兼
(
かね
)
言ひて、君も我も
齢
(
よはひ
)
のおとろへ行につけて、したしみのことになれるを言へり」
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
小村井に入りし時、
兼
(
かね
)
て見知れる老人の、これも竿の袋を肩にし、疲れし脚曳きて帰るに、追ひ及びぬ。
釣好隠居の懺悔
(新字旧仮名)
/
石井研堂
(著)
そして御予定通り正十二時、
兼
(
かね
)
て御休息所に充てられてあった台ヶ原の北原家の玄関にお着きになった。
朝香宮殿下に侍して南アルプスの旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
『
父様
(
とうさま
)
、私は
真実
(
ほんと
)
に父様の
児
(
こ
)
なのでしょうか。』と
兼
(
かね
)
て思い定めて置いた通り、単刀直入に問いました。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
長「ウム、初めて自分の身の上を知った、道理で此の疵のことをいうとお母が涙ぐんだのだ……
兼
(
かね
)
……己の
外聞
(
げいぶん
)
になるから此の事ア決して
他
(
ひと
)
に云ってくれるなよ」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「こんな子でも人間ですよ、まさか
金鎖
(
かなぐさり
)
で
繋
(
つな
)
いどくわけにもいかないでしょ」そして彼女は二人の若者たちに云った、「もういいよ、鉄さんに
兼
(
かね
)
さん、御苦労さま」
赤ひげ診療譚:05 徒労に賭ける
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
されど
兼
(
かね
)
ての決心なり、明くれば友人の
懇
(
ねんご
)
ろに引き止むるをも聴かず、
暇乞
(
いとまご
)
いして大阪に向かいぬ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
ローンジを
兼
(
かね
)
た美しい
主館
(
おもや
)
の食堂では、窓に近い明るい場所にテーブルを構えて、深谷夫人と黒塚、洋吉の三人が、悲嘆のうちにも、もう和やかな食事を始めていた。
死の快走船
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
それ故に善悪可否巧拙と評するも
固
(
もと
)
より画然たる区別あるに非ず、巧の極端と拙の極端とは
毫
(
ごう
)
も
紛
(
まぎ
)
るる所あらねど、巧と拙との中間にある者は巧とも拙とも申し
兼
(
かね
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「
兼
(
かね
)
や?
母
(
おっか
)
さんは? お客? そう、どなた? 国の
方
(
かた
)
なの?——お千鶴さん、今日はゆっくりしていいのでしょう。兼や、お千鶴さんに何かごちそうしておあげな」
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
やつてるのが、こないだ伊太利から帰つて来たんですよ。
鈴原
(
すゞはら
)
兼
(
かね
)
子つていふんです。ご存じないでせう。切符を押しつけられたもんだから、ひとつ利用しようと思つて……
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
貧しきを
宥
(
いたわ
)
り、弱きを助け、また世の
好漢
(
おとこ
)
どもとの
交
(
まじ
)
わりも厚く、
兼
(
かね
)
て剣技に達し、棒をよく使うが、そんな武力沙汰は、まだ一度も表にひけらして人に示したことはない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで、豊雄が真女児のことを云うと、
嫂
(
あによめ
)
は、「
男子
(
おのこ
)
のひとり寝し給うが、
兼
(
かね
)
ていとおしかりつるに、いとよきことぞ」と云ってその
夜
(
よ
)
太郎に豊雄に女のできたことを話した。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
其
状貌
(
じょうぼう
)
の
醜怪
(
しゅうかい
)
なるに九助大いに怖れを為し、是や
兼
(
かね
)
て赤倉に住むと聞きしオホヒトならんと思ひ急ぎ遁げんとせしが、過ちて石に
蹶
(
つまず
)
き転び落ちて、
却
(
かえ
)
りて大人の傍に倒れたり。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
昨日
(
きのふ
)
けふとは思はざりしを」とのこの句はちょっと
不意打
(
ふいう
)
ちをせられて、あわてたようにも聞こゆるけれども、もし彼にして「
遂
(
つひ
)
に行く道」を
兼
(
かね
)
て聞いておらなかったならば
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
先生その
大意
(
たいい
)
を人より聞き
余
(
よ
)
に
謂
(
いい
)
て
曰
(
いわ
)
く、
兼
(
かね
)
てより幕末外交の
顛末
(
てんまつ
)
を
記載
(
きさい
)
せんとして志を
果
(
はた
)
さず、今評論の
誤謬
(
ごびゅう
)
を正す
為
(
た
)
めその一端を
語
(
かた
)
る
可
(
べ
)
しとて、当時の事情を
説
(
と
)
くこと
頗
(
すこぶ
)
る
詳
(
つまびらか
)
なり。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
文学士
富尾木知佳
(
とみをきともよし
)
氏は東京音楽学校の教授で、
兼
(
かね
)
てまた邦楽調査会の委員である。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一と朝起きぬきに松尾へ
往
(
い
)
った、松尾の
兼
(
かね
)
鍛冶が頼みつけで、懇意だから、出来合があったら取ってくる積りで、日が高くなると熱くてたまんねから、朝飯前に帰ってくる積りで出掛けた
姪子
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
つまり、はじめ一寸骰子を振り、人がよく見ないうちに「五だ。もう一度」と言ってすばやく骰子をとりあげて振り「十三!」とか言って
兼
(
かね
)
て隠して置いた牌のところを取り込むのである。
麻雀インチキ物語
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
兼
(
かね
)
て決心の手綱を引き締めて出発して来たのだが、こうそれからそれへ、とぼとぼと擂鉢のふちをたどりながら行手の難路に
想
(
おも
)
いを及ぼすと夥しい危惧の念に打たれずには居られなかった。
ゼーロン
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
兼
(
かね
)
やはどうしたか知ら、お母さん、と、弘少年がふとそんなことを云った。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
村の人々は、
何故
(
なぜ
)
、母が子を殺して自殺したかを疑った。この上他人に迷惑をかけまいと思ってか?
饑
(
うえ
)
と寒さに堪え
兼
(
かね
)
てか? 中にはこう言ったものがあった。昔は武士の家庭に育った娘だ。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
愛
(
あい
)
ちやんもこれには
何
(
なん
)
とも
抗辯
(
こうべん
)
し
兼
(
かね
)
て、
今度
(
こんど
)
は
他
(
ほか
)
の
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き
初
(
はじ
)
めました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
兼
常用漢字
中学
部首:⼋
10画
“兼”を含む語句
堪兼
待兼
兼好
兼吉
申兼
小兼
思兼
兼合
気兼
兼々
見兼
兼而
兼行
瀬尾太郎兼康
兼備
兼良
仕兼
兼好法師
昼夜兼行
出来兼
...