ふり)” の例文
こまかきあめははら/\とおとして草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをもみださず、かぜひとしきりさつふりくるはにばかりかゝるかといたまし。
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
およそ雪九月末よりふりはじめて雪中に春をむかへ、正二の月は雪なほふかし。三四の月にいたりて次第にとけ、五月にいたりて雪全くきえ夏道なつみちとなる。
ふり続きたる卯の花くだしようようはれて、かき曇りたる天もところどころ雲の切間を、朧なる五日の月は西へ西へと急ぐなり。
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
もう逃げるのじゃないよといい聞かせて、再び彼を築山のかげに放してった。その日は一日ふりくらした。夕方になると彼は私の庭で歌い始めた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おもへば臆病おくびやうの、ふさいでや歩行あるきけん、ふりしきるおとこみちさしはさこずゑにざツとかぶさるなかに、つてはうとふくろふきぬ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
文治はそれと心付きまして、手燭てしょくを持って台所の戸を明けますと、表はみぞれまじりにふりしきる寒風に手燭は消えて真黒闇まっくらやみ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのうへしろゆきでもふりかゝると氷滑こほりすべりの塲所ばしよともわからないことがあります。むら人達ひとたちとほりかゝつて、らずにすべつてころぶことなぞもありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ころ享保きやうほ丙申ひのえさるしも月十六日の事なりし此日はよひより大雪おほゆきふりて殊の外にさぶき日なりし修驗者しゆげんじや感應院には或人よりさけ二升をもらひしに感應院はもとより酒を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
気候が夏の末から秋に移って行く時と同じよう、春の末から夏の始めにかけては、折々おりおり大雨おおあめふりつづく。千束町せんぞくまちから吉原田圃よしわらたんぼは珍しくもなく例年の通りに水が出た。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そして砂糖だけを嘗めて生薑を外にてた。外には雪が一めんにふり積つて居る。生薑が雪の上におちると三四のすずめが勢よく飛んで来てそれを争つたことをおぼえてゐる。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
がりいたし候處、すぐれたる散歩に相叶、洋醫も大に悦び、雨ふりには劒術をいたし候、又は角力を取候、何右等の力事ちからごとをいたし候樣申きけ候得共、是は相調かなひ申段相答候へば
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
俊男としをはまた俊男で、素知らぬ顏でふりそゝぐ雨に煙る庭の木立こだちを眺めてゐた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
外では、まだゆきがやすみなくふりりつづいている。
定むるも掛りの男居ずして知れがたし先拂ひにして下されよとの事にそれにて頼みしが此等より東京へ出すには一旦いつたん松本まで持ちかへるゆゑ日數ひかず十四五日は掛るといふ果して東京へは二十日目に屆きたり雨は上りたれど昨日きのふよりのふりに道は惡し宿しゆくの中ほどに橋ありこれを
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
堀川百首ほりかはひやくしゆ兼昌かねまさの哥に、「初深雪はつみゆきふりにけらしなあらち山こし旅人たびびとそりにのるまで」この哥をもつても我国にそりをつかふのふるきをしるべし。
こまかき雨ははら/\と音して草村くさむらがくれなくこほろぎのふしをも乱さず、風ひとしきりさつふりくるは、あの葉にばかりかかるかといたまし。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小留おやみのない雪は、軒の下ともいわず浴びせかけてふりしきれば、男の姿はありとも見えずに、風はますます吹きすさぶ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はがれしかば天も漸々やう/\受納じゆなふ有てや是よりあめふり出して三日三晩小止こやみなく因て草木もみどりの色を生ぜしとかや趙氏が妻とお菊が孝心は和漢一つゐ美談びだんいつつべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
気候が夏の末から秋に移つてく時と同じやう、春のすゑから夏の始めにかけては、折々をり/\大雨おほあめふりつゞく。千束町せんぞくまちから吉原田圃よしはらたんぼめづらしくもなく例年のとほりに水が出た。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
少し(空をながめる)なんでげすが大したふりも有りますまいから、幌は掛けますまい
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
梅も大方はちりくした頃であるが、名にし負う信濃路は二月の末からふりつづく大雪で宿屋より外へは一歩ひとあしも踏出されぬ位、日々炉を囲んで春の寒さにふるえていると、ある日の夕ぐれ、山の猟師が一匹
堀川百首ほりかはひやくしゆ兼昌かねまさの哥に、「初深雪はつみゆきふりにけらしなあらち山こし旅人たびびとそりにのるまで」この哥をもつても我国にそりをつかふのふるきをしるべし。
わしおもはず恐怖きようふこゑてゝさけんだするとなんと? 此時このときえて、うへからぼたり/\と真黒まツくろせたすぢはいつたあめからだふりかゝつてたではないか。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
取此所にも半年餘はんとしあまりも居て友次郎樣夫婦の所在ありかを尋ねしかども一向に知ず然るに或日あめふりて外へも出られねばむなしく宿屋に在し所宿の亭主の物語ものがたりにて此印籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はまだけねどふりしきるゆき人足ひとあし大方おほかた絶々たえ/″\になりておろ商家しやうかこゝかしことほ按摩あんまこゑちかまじいぬさけびそれすらもさびしきを路傍みちばたやなぎにさつとかぜになよ/\となびいてるは粉雪こゆき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
番傘を差して横町から出て来ますると、ふりが強く成りました。
当年は雪おそく冬至に成候ても駅中えきちゆうの雪一尺にたらず、此日次ひなみにては今年は小雪ならんと諸人一統悦び居候所に廿四日(十一月なり)黄昏たそがれよりふりいだし
もしみませぬと、とてみちつうじません、ふりやんでくれさへすれば、雪車そります便宜たよりもあります、御存ごぞんじでもありませうが、へんでは、雪籠ゆきごめといつて、やまなか一夜いちやうち
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
にしむさぶさはふりかゝりてののちならでれぬことなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
当年は雪おそく冬至に成候ても駅中えきちゆうの雪一尺にたらず、此日次ひなみにては今年は小雪ならんと諸人一統悦び居候所に廿四日(十一月なり)黄昏たそがれよりふりいだし
そのあかいのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい駒下駄こまげた、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、またを一つよじった姿で、ふりしきる雨の待合所の片隅に、腰を掛けていたのである。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
屹度きつとくるま今少いますこしの御辛防ごしんばうかるゝこほりつくやうなりうれしやとちかづいてればさてもやぶぐるまモシとこゑはかけしが後退あとじさりするおくりの女中ぢよちゆうソツとおたか袖引そでひきてもうすこまゐりませうあまりといへばとあと小聲こごゑなりをりしもふりしきるゆきにおたか洋傘かうもり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此諸人の気息いき正月三日の寒気ゆゑけふりのごとくきりのごとくてらせる神燈じんとうもこれがためくらく、人の気息いき屋根うらにつゆとなり雨のごとくにふり、人気破風はふよりもれて雲の立のぼるが如し。
しかも雪の中の十二月だ、なさけない事には熱くて口の渇く母親に、小さく堅めて雪を口へ入れたんだけれど、ふりたての雪はばさばさして歯にきしむばかりで、呼吸いきを湿らせるほどのしずくにならない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あめしきりにふりうへよりもり
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)