わか)” の例文
チュルゴーはこの派の人ではない。フィジオクラットは、彼らの著作の書名でわかるように、経済学の領域を制限せずむしろ拡張した。
私は今でもうつつながら不思議に思う。昼は見えない。逢魔おうまが時からはおぼろにもあらずしてわかる。が、夜の裏木戸は小児心こどもごころにも遠慮される。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思い込んでいたような悪女でないこと……おわかりかお解りか! ……なき良人の遺言を守って、家のためにこの身を苦しめ……でも
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、高等かうとうればしたがつてよりつよ勢力せいりよくもつて、實際じつさい反應はんおうするのです。貴方あなた醫者いしやでおゐでて、如何どうして那麼譯こんなわけがおわかりにならんです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
尿毒症という言葉も意味も私にはわからなかった。この前の冬休みに国で医者と会見した時に、私はそんな術語をまるで聞かなかった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ロレ (傍を向きて)それはおそうせねばならぬ仔細わけが、此方こちわかってをらなんだらなア!……あれ、御覽ごらうぜ、ひめ此庵こゝにわせられた。
独逸ドイツ語が少しでもわかつて、そしてせめて三月みつきでも此処こことゞまることが出来たら北独逸ドイツの生活の面白さが少しは内部的にわかつたであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
わかつた、松葉屋まつばやのおいねいもうと金次きんじ待合まちあひを出したと聞きましたが。乙「ぼく家見舞いへみまひいかず、年玉としだま義理ぎりをかけてさ。甲「し/\。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
御主おんあるじ耶蘇様イエスさま百合ゆりのやうにおしろかつたが、御血おんちいろ真紅しんくである。はて、何故なぜだらう。わからない。きつとなにかの巻物まきものいてあるはずだ。
いくら物がわかつてゐても、フレツシユに感じられたものでなければ芸術としては価値が乏しい。この二つの見方に就いて私は常に惑ふ。
解脱非解脱 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
およそ読易よみやすく、わかり易く、言語一様の文章を記して、もって天下にき、民の知識を進ましむるものは、もとより学者・教師の任なり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
この人もきっと会社の人で、上役が旅行をするのを見送りに来たのにちがいない。これはこの二人の風采ふうさいや態度を見くらべてもよくわかる。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
『外で何を勝手な真似まねをして居るかわかりもしない女房のお帰宅かへりつゝしんでお待申まちまうす亭主じやアないぞ』といふのが銀之助の腹である。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
若い女の心持などは私にわかりませんが、あれも變り者で、あんな優しい綺麗な顏をしてゐるくせに、飛んだ氣性者で御座いますよ。
呼ぶのはあによめお千代だ。おとよは返辞をしない。しないのではない、できないのだ。何の用で呼ぶかという事はわかってるからである。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
『それはわかつてる、大方おほかたかはづむしぐらゐのものだらう』とつて家鴨あひるは『しかし、ぼくくのは大僧正だいそうじよううしたとふのだ?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その縁側は一けん以上もある幅で、そして何処どこまで行けばしまひになるのか一寸ちよつとわからないやうに思はれるほど長く続いて居るのです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
青年の心が、美奈子にハッキリとわかってからは、彼女は同じ部屋に住みながら、自分一人いつも片隅にかくれるような生活をした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ボオイはなんだかわからないような顔をして奥へ引っ込んでいったが、それと入れちがいにその料理店の主人らしいのが出て来て
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
他の文芸を研究すれば研究するほどその文芸の長所がわかって来ると同時に、また、俳句の長所もわかって来るという事を知らねばならぬ。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
『おわかりになりしや、其時こそは此の老婆ばゞにも、秋にはなき梶の葉なれば、渡しのしろは忘れ給ふな、世にも憎きほど羨ましき二郎ぬしよ』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あなたがそうする心持ちはしみじみと私の胸にわかる。私はモラーリッシュなできごとにいちばん興奮し涙を誘われるものである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
中国地方から東ではコシキリ、東北へ行くとコシピリまたはコスピリ、或いはもっとわかりやすく、ミヂカと謂っている処もある。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
此際このさい鐵道橋梁てつどうきようりようくだ汽車きしやともさらはれてしまつたが、これは土砂どさうづまつたまゝ海底かいていまでつてかれたものであることがわかつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「うむ……。可笑おかしいね。何が何だかわからなくなって来たぞ。……待てよ。じゃ、あのどろぼう船だけが、亡霊だったのかもしれないね」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
瑠美子が産まれてから間もなくその父は死んだが、葉子を特別に愛したことは、その日常を語る彼女の口吻くちぶりでもわかるのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「とにかく、正面を見ただけでは、わかにくい人だ。柔和かと思えば剛毅、無策かと思えば遠謀家。あの隠居だけは、端倪たんげいできぬ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その動作の一つ一つを自分では意識しておらぬのである。どんな点がはっきりすれば、自分の不安が去るのか。それさえ渠にはわからなんだ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
とにかくKに逢ってみればわかることだが、荷物だけでもここへ置かしてもらわねば、差当って他へ持って行ける所もなかった。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
まづ書物しよもつへば一をしへたところは二をしへない、熟讀じゆくどくさせてて、どうしてもわからなかつたならば、ときをしへやう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
又或は何處どこかのうちとり夜啼よなきをするのが淋しく聞えたり、それから又、何者だかわからないが、見上げるやうな大きな漢子をとこが足音もさせないで
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
お父さんはまだ達者だ。しかし、そのお父さんも、この頃ではほとんど行方不明同然で、何処にどうしてゐるのかわからないのだ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
ぐ通じなくてはならない、それがこうだろうといっても、さようですかいなわかりまへんではしゃくが起る、これが度々重なると魂は衰弱をきた
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
人の嗅いも感じられない荒野の中に、手軽く求められないこともわかりきっていた。木の芽草の実のある季節でもないのだ。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
だからすべての学者、芸術家、政治家にとつて最も無難なかたは、成るべく自分の細君にわからないやうに物を言ふ事だ。
書生の田崎が見付けて取押とりおさえたので、お玉は住吉町すみよしちょうの親元へ帰されると云う大騒ぎだけは、何の事かわからずなりに、然し私は大変な事だと感じた。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
切干きりぼしでもつたもんだかな」おつぎがにはからおほきなこゑでいつたときしなはふとまくらもたげた。それでおつぎのこゑ意味いみわからずにかすかにみゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
唖の娘の言葉は筒井にははじめのほどは分らなかったが、しだいにその表情でわかるようになった。彼女はただ終日、あああ……というだけだった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
聞くに今日商賣の出先でさき神田紺屋町のうらにて職人衆が酒を飮て居ながら斯樣々々申されしが私にはすこしわからず何の事なるやととふに長兵衞は少し笑ひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それに、絵の具をぬたくったようにくっついているあのうめのきごけが、どんなに私達の心を落ち着かし、古典的クラシックな感じを与えるかわからないのです。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
だが、本当に危いのは、それから先であるということがわかった。私の身体はドンドンふくれてゆく。このままでは部屋の内に充満するに違いない。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「神田辺を歩いてる時分にはそうも思いませんでしたがなあ。欧羅巴ヨーロッパへ来て見てそれがわかりました」と高瀬も言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「東部亜弗利加アフリカのゼイラに二箇月間滞在してゐた時にも、ソマリイを横断の陣中でも、此の「一千一夜いちせんいちや」がの位自分を慰めて呉れたかわからない」と。
社長しゃちょうさんに紹介しょうかいするから……それは、よくわかった、しんせつなひとだから、きっときみのしたことに感心かんしんしてしまうよ。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ジエィン、お前は、はつきり事がわかつてゐないのですよ。子供の惡いところはなほして貰はなければいけません。」
「ああ、それでわかった。女の選手達が、大坂ダイハンのことをボンチとか、ボンボンとか呼んでいるのは、そういう意味か」と、言えば、松山さんも荒々あらあらしく
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
演説の良否よりも、内容が半分もわかれば、それでるくらいに思うであろう。また恐らくは傍聴ぼうちょうの半数以上は聴くよりも日本人を見に来たのであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
星の光も見えない何となく憂鬱なゆうべだ、四隣あたりともしがポツリポツリと見えめて、人の顔などが、最早もう明白はっきりとはわからず、物の色がすべきいろくなる頃であった。
白い蝶 (新字新仮名) / 岡田三郎助(著)
お医者の云った事は、お君にわからなかったけれ共、十中の九までは、長持ちのしない、骨盤結核になって、それも、もう大分手おくれになり気味であった。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
『いや、よくわかります。どうですか、コロンボのほうは? やっぱり景気がよくないですか、ここと同じに。』