トップ
>
穏
>
おだ
ふりがな文庫
“
穏
(
おだ
)” の例文
旧字:
穩
その
日
(
ひ
)
は
風
(
かぜ
)
もなく、
波
(
なみ
)
も
穏
(
おだ
)
やかな
日
(
ひ
)
であったから、
沖
(
おき
)
のかなたはかすんで、はるばると
地平線
(
ちへいせん
)
が
茫然
(
ぼんやり
)
と
夢
(
ゆめ
)
のようになって
見
(
み
)
えました。
赤い船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それでも風がないので、海の上は平生よりもかえって
穏
(
おだ
)
やかに見えた。あいにくな天気なので人の好い母はみんなに気の毒がった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時間の関係からいえば、上野の鐘が十二時で、この鳥の
一声
(
ひとこえ
)
が三時だから、
所謂
(
いわゆる
)
丑満刻
(
うしみつこく
)
というのでは無いが、どうもしかし
穏
(
おだ
)
やかで無い。
白い光と上野の鐘
(新字新仮名)
/
沼田一雅
(著)
あの
穏
(
おだ
)
やかな春の海を、いっぱい日光を浴びて、
金色
(
こんじき
)
に輝いて
帆走
(
ほばし
)
って来る船を! あの
姿
(
すがた
)
があなたをおどりあがらせないのは不思議というほかはない。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
長いあいだ
穏
(
おだ
)
やかに治まって、民はそれぞれの家業にいそしみ、その余暇には、春は花の下にいこい、秋はもみじの林を訪ねるというように行楽をたのしみ
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
▼ もっと見る
照りはせぬけれども
穏
(
おだ
)
やかな花ぐもりの好い暖い日であった。三先輩は
打揃
(
うちそろ
)
って
茅屋
(
ぼうおく
)
を
訪
(
と
)
うてくれた。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
万事は
穏
(
おだ
)
やかに、ゆっくりと運んだ。母は公爵夫人にわざわざ人をやって、健康がすぐれぬため出発まえにお目にかかれず、まことに残念に思いますと
挨拶
(
あいさつ
)
させた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
彼女は、こう言い放ったものの、内心、あまり
穏
(
おだ
)
やかでない。中庭に出て、空を見上げる。まるで遅れた鐘の音を探すように。わたしの顔を見なおして、首を
傾
(
かし
)
げる。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それを聞くと、花田はちょっと困ったような顔をして考えていたが、すぐに
穏
(
おだ
)
やかな表情に戻った。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
柔
(
やわ
)
らかな愛らしい自然のなかに、小さな木造の家を建てて簡素に住んでいる
穏
(
おだ
)
やかな心の人たちとして、この国の生活をゆかしく印象されたのも、これによるのでした。
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
船中の人々は今を興
闌
(
たけなわ
)
の時なりければ、
河童
(
かっぱ
)
を殺せ、なぐり殺せと
犇
(
ひし
)
めき合い、荒立ちしが、
長者
(
ちょうじゃ
)
の
言
(
げん
)
に従いて、皆々
穏
(
おだ
)
やかに解散し、
大事
(
だいじ
)
に至らざりしこそ幸いなれ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
軒下
(
のきした
)
に
縄張
(
なはば
)
りがいたしてございます
此
(
こ
)
の
中
(
うち
)
に
拝観人
(
はいくわんにん
)
は
皆
(
みな
)
立
(
たつ
)
て
拝
(
はい
)
しますので、
京都
(
きやうと
)
は
東京
(
とうきやう
)
と
違
(
ちが
)
つて
人気
(
にんき
)
は誠に
穏
(
おだ
)
やかでございまして、
巡査
(
じゆんさ
)
のいふ事を
能
(
よ
)
く守り、
中々
(
なか/\
)
縄
(
なは
)
の外へは出ません。
牛車
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
承認のうなずきではなく、そうして私の言葉を吟味している風なのに私は心
穏
(
おだ
)
やかでなく「大屋五郎といえば、君、——今度ゴロちゃんは可哀そうにはっきりと鮎子に振られてね……」
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
甲板
(
かんぱん
)
に出ても、これまで
群青
(
ぐんじょう
)
に、
輝
(
かがや
)
いていた
穏
(
おだ
)
やかな海が、いまは暗緑色に
膨
(
ふく
)
れあがり、いちめんの白波が
奔馬
(
ほんば
)
の
霞
(
かすみ
)
のように、
飛沫
(
しぶき
)
をあげ、荒れ
狂
(
くる
)
うのをみるのは、なにか、胸
塞
(
ふさが
)
る思いでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「
男
(
おとこ
)
が
行
(
い
)
っちゃァ、
穏
(
おだ
)
やかでねえから、おめえ
行
(
い
)
きねえッてんだ」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
この御堂夕照りあかし
穏
(
おだ
)
しくはしづけさのかぎりたもちたらなむ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
言葉が荒っぽく、眼の色が血走って
立居
(
たちい
)
が
穏
(
おだ
)
やかでない。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
景季の顔いろは
穏
(
おだ
)
やかでなかった。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
牛
(
うし
)
は、
穏
(
おだ
)
やかな
大
(
おお
)
きな
目
(
め
)
をみはって、
遠方
(
えんぽう
)
の
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らされて
暑
(
あつ
)
そうな
景色
(
けしき
)
を
見
(
み
)
ていましたが、からすが
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
でこう
問
(
と
)
いますと
馬を殺したからす
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
朝の散歩の
趣
(
おもむき
)
を久しく忘れていた僕には、常に変わらない町の色が、暑さと
雑沓
(
ざっとう
)
とに染めつけられない安息日のごとく
穏
(
おだ
)
やかに見えた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ドン修道院の
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
が、時おり、
穏
(
おだ
)
やかに
陰気
(
いんき
)
に
響
(
ひび
)
いてきた。——わたしはじっと坐って、見つめたり聞き入ったりしているうちに、何かしら名状しがたい感じで、胸がいっぱいになるのだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
艶黒
(
つやぐろ
)
の
穏
(
おだ
)
しき雄牛うなじ垂り日の夕かげは曳かれけるかも
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と源三はお浪の言葉に
穏
(
おだ
)
やかに答えた。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、宅助の虫は
穏
(
おだ
)
やかでなく
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「この
海
(
うみ
)
を
越
(
こ
)
えて、
島
(
しま
)
に
達
(
たっ
)
することは
容易
(
ようい
)
のことでない。
疲
(
つか
)
れを
休
(
やす
)
めて、
穏
(
おだ
)
やかな、いい
天気
(
てんき
)
のつづく
日
(
ひ
)
を
待
(
ま
)
とうではないか。」
北海の波にさらわれた蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
やむを得ず、少し語勢を変えて「いいさ。何でも話すがいい。ほかに誰も聞いていやしない。わたしも
他言
(
たごん
)
はしないから」と
穏
(
おだ
)
やかにつけ加えた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
豊けきは葉ぐみととのふ
牡丹
(
ぼうたん
)
のひと花
紅
(
あか
)
き
穏
(
おだ
)
しさにして
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
穏
(
おだ
)
やかな
夕暮
(
ゆうぐ
)
れでした。
乙
(
おつ
)
は、じっと
船
(
ふね
)
を
見送
(
みおく
)
っていますと、いつしか、
青黒
(
あおぐろ
)
い
沖
(
おき
)
の
間
(
あいだ
)
に
隠
(
かく
)
れて
見
(
み
)
えなくなってしまいました。
幽霊船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
今まで
穏
(
おだ
)
やかに
機嫌
(
きげん
)
よく話していた
長者
(
ちょうしゃ
)
から突然こう
手厳
(
てきび
)
しくやりつけられようとは、敬太郎は夢にも思わなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女童
(
めわらは
)
や
穏
(
おだ
)
し牡丹の靄だちを
禿髪
(
かむろ
)
かき垂り父にゐずまふ
黒檜
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼女
(
かのじょ
)
は、
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
く
日
(
ひ
)
も、また、
日
(
ひ
)
の
照
(
て
)
る
穏
(
おだ
)
やかな
日
(
ひ
)
も、
山
(
やま
)
の
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
はい
)
っていって、さびしく
独
(
ひと
)
りでうたっていました。ある
日
(
ひ
)
のことです。
ふるさとの林の歌
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「今夜は少し
暖
(
あっ
)
たかいようだね。
穏
(
おだ
)
やかで好い御正月だ」と云った。飯を済まして
煙草
(
たばこ
)
を一本吸う段になって、突然
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
穏
(
おだ
)
しき
笑
(
ゑまひ
)
なるかも片頬照り炉に寄る母の何か言ひつる
白南風
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして、
日暮
(
ひぐ
)
れ
方
(
がた
)
から、
幾分
(
いくぶん
)
か
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
が、
穏
(
おだ
)
やかになったので、
英吉
(
えいきち
)
は、
喜
(
よろこ
)
んで、
陸
(
りく
)
の
方
(
ほう
)
へ、あらんかぎり、
腕
(
うで
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れてこぎだしました。
海の踊り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
其時
(
そのとき
)
、
彼
(
かれ
)
は
穏
(
おだ
)
やかに人の目に
着
(
つ
)
かない
服装
(
なり
)
をして、
乞食
(
こじき
)
の如く、何物をか求めつゝ、
人
(
ひと
)
の
市
(
いち
)
をうろついて
歩
(
ある
)
くだらう。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
噴く綿の
穏
(
おだ
)
しき雲の
畳
(
たたな
)
はり影
繁
(
しじ
)
にして熱度けぶかき
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その
方
(
ほう
)
は
波
(
なみ
)
が
穏
(
おだ
)
やかで、
太陽
(
たいよう
)
が
静
(
しず
)
かに
大空
(
おおぞら
)
に
燃
(
も
)
えていました。
空
(
そら
)
は、
青
(
あお
)
く、
青
(
あお
)
く
晴
(
は
)
れて、
海鳥
(
うみどり
)
が
飛
(
と
)
んでいるのも
見
(
み
)
えました。
薬売り
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「ちっと鈴木さんにでも頼んで意見でもして貰うといいんですよ。ああ云う
穏
(
おだ
)
やかな人だとよっぽど
楽
(
らく
)
ですがねえ」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
館山寺
(
くわんざんじ
)
松山
穏
(
おだ
)
し
湖
(
うみ
)
を来てここは小春の入江さざなみ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「いや、
家
(
いえ
)
ちがいじゃありません。じつはお
父
(
とっ
)
さんからの
言
(
こと
)
づてがあったのでまいりました。」と、
黒
(
くろ
)
い
装束
(
しょうぞく
)
をした
男
(
おとこ
)
は、
穏
(
おだ
)
やかに
答
(
こた
)
えました。
ろうそくと貝がら
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
平岡の眉の
間
(
あひだ
)
に、
一寸
(
ちよつと
)
不快の色が
閃
(
ひら
)
めいた。赤い
眼
(
め
)
を据ゑてぷか/\
烟草
(
たばこ
)
を吹かしてゐる。代助は、ちと云ひ過ぎたと思つて、
少
(
すこ
)
し調子を
穏
(
おだ
)
やかにした。——
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
けれどその
影
(
かげ
)
は、
穏
(
おだ
)
やかに
動
(
うご
)
いて、そんなけはいもなく、なんとなく
笛
(
ふえ
)
の
音
(
ね
)
を
聞
(
き
)
いては、こちらを
遠
(
とお
)
くから、
透
(
す
)
かして
見
(
み
)
ているようでありました。
けしの圃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
こう
穏
(
おだ
)
やかに
寝
(
ね
)
かされた時、宗助は例の歯がさほど苦になるほど痛んでいないと云う事を発見した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こうして
耳
(
みみ
)
をすますと、
大海原
(
おおうなばら
)
の
波音
(
なみおと
)
のように、あるいは、かすかな
子守唄
(
こもりうた
)
のように、
都会
(
とかい
)
のうめきが、
穏
(
おだ
)
やかな
真昼
(
まひる
)
の
空気
(
くうき
)
を
伝
(
つた
)
ってくるのです。
花の咲く前
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
惜しい事に作者の名は聞き落したが、老人もこうあらわせば、豊かに、
穏
(
おだ
)
やかに、あたたかに見える。
金屏
(
きんびょう
)
にも、
春風
(
はるかぜ
)
にも、あるは桜にもあしらって
差
(
さ
)
し
支
(
つかえ
)
ない道具である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おばあさんは、いま
自分
(
じぶん
)
はどこにどうしているのすら、
思
(
おも
)
い
出
(
だ
)
せないように、ぼんやりとして、
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
るような
穏
(
おだ
)
やかな
気持
(
きも
)
ちですわっていました。
月夜と眼鏡
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
今まで
穏
(
おだ
)
やかに諸所を縦覧していた連中が、にわかに波を打って、右左りに
揺
(
うご
)
き始める。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
間
(
あいだ
)
には、
緑色
(
みどりいろ
)
に
空
(
そら
)
が
晴
(
は
)
れて、その
下
(
した
)
に
大
(
おお
)
きな
海
(
うみ
)
が、どさりどさりと
物憂
(
ものう
)
げに
波
(
なみ
)
を
岸辺
(
きしべ
)
に
打
(
う
)
ち
寄
(
よ
)
せて
眠
(
ねむ
)
っているような、
穏
(
おだ
)
やかな
日
(
ひ
)
もあったのです。
紅すずめ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
けれども其
穏
(
おだ
)
やかな
眠
(
ねむり
)
のうちに、
誰
(
だれ
)
かすうと
来
(
き
)
て、又すうと
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つた様な心持がした。
眼
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まして
起
(
お
)
き
上
(
あ
)
がつても其感じがまだ残つてゐて、
頭
(
あたま
)
から
拭
(
ぬぐ
)
ひ去る事が出来なかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「それで、おまえはどうしたのだ。
見物
(
けんぶつ
)
していたのか。」と、お
父
(
とう
)
さんは、
穏
(
おだ
)
やかな
調子
(
ちょうし
)
で、おききになりました。
火事
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
穏
常用漢字
中学
部首:⽲
16画
“穏”を含む語句
穏和
穏当
安穏
平穏
穏便
静穏
安穏寺
心穏
不穏
穏健
不穏当
穏田
穏顔
穏便沙汰
穏坊
穏子
穏密方
穏座
穏当人
穏戸
...