)” の例文
どれだけの薪や炭をおきになったかしら、そしてこれからもどれほどの水を流し、どれほどの薪や炭をお焚きになることでしょう
日本婦道記:風鈴 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
顔のあかい男は盛相のふた玄米げんまいいてあるぐたぐたの飯を分け、って熊笹くまざさの葉を二三枚って来てそれにのっけて僧の前にだした。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
床柱とこばしらけたる払子ほっすの先にはき残るこうの煙りがみ込んで、軸は若冲じゃくちゅう蘆雁ろがんと見える。かりの数は七十三羽、あしもとより数えがたい。
一夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
釜の下をいている三助の話によると、お吉はちょいとそこまで行って来ると云って、そそくさと表へ出て行ったとのことであった。
半七捕物帳:04 湯屋の二階 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
足利あしかが時代に作られた「はちの木」という最も通俗な能の舞は、貧困な武士がある寒夜に炉にまきがないので、旅僧を歓待するために
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
小判を欠いてくような、たかい名香を煙にするくらいなら、骨牌カルタでもしたらよかろうに、と隅であくびを噛んでいたことであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
残暑の日盛り蔵書を曝すのと、風のない初冬はつふゆ午後ひるすぎ庭の落葉をく事とは、わたくしが独居の生涯の最もたのしみとしている処である。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
穴の外に火をいて置くと、たけ六尺ほどで髪の長さはかかとを隠すばかりなる女が沢蟹さわがにを捕へて此火にあぶつて食ひ、又両人を見て笑った
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一昨日おとついばんよいの口に、その松のうらおもてに、ちらちらともしびえたのを、海浜かいひんの別荘で花火をくのだといい、いや狐火きつねびだともいった。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたしの顔を見ますると「勢州せいしゅうが見えたから何かやりな」と、面桶めんつうの中へ、きたてのご飯などを、お入れ下さるのでございます。
怪しの者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うすもころがしてました。おもちにするおこめ裏口うらぐちかまどしましたから、そこへも手傳てつだひのおばあさんがたのしいきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
薄暗い中に、紋附きの羽織を着た、斬髪の伸びた村上先生がいた。御新ごしんさんは庭で——空地で、粗末なべっついで御飯をいている。
浜辺では、今、幾カ所も盛んに火をいて、炎々たる焚火の前に、仁王の出来そこないのようなのが立ちはだかって、暖を取っている。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
桶を買うまでには、お増は小人数な家で風呂をくことの不経済を言い立てたが、浅井はいろいろの場所におかれた女を眺めたかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
又「これは至極妙策、成程い策だが、ポッポと火をいたら、又巡行の査官さかんに認められ、何故なぜ火を焚くと云ってとがめられやしないか」
風呂のきつけに使ふ大きな澁團扇しぶうちはの上に後生大事にのせたのは、成程小紋の跡も鮮やかに、灰になつた縮緬の小巾こぎれではありませんか。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
鐵材てつざい運搬役うんぱんやくでも、蒸滊機關じようききくわん石炭せきたんきでもんでもよいから、海底戰鬪艇かいていせんとうてい竣成しゆんせいするまで、わたくししかるべきやく遠慮えんりよなく使つかつてください。
「此汽車は私のために香木かうぼくいて行く」こんな返電を大連へ打つた。石炭を使はないで薪を用ひるのは次の國境迄だ相である。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
餘程よほど大火おほびかなければ、馬籠まごめにてたるごとあとのこすものでない。かまどとか、とか、それくらゐため出來できたのではおそらくあるまい。
何度も同じ小みちに出入した後、僕は古樒ふるしきみいていた墓地掃除の女にみちを教わり、大きい先生のお墓の前へやっとK君をつれて行った。
年末の一日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おい、小僧こぞうめ、これからかぜくからなどいてはならんぞ。そしてうろついていずに、どこへなりとはやくいってしまったほうがいい。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこにはしい蜜柑みかんが茂っていた。猿は二人の頭の上を枝から枝へ飛び渡った。訶和郎かわろは野犬とおおかみとを防ぐために、榾柮ほだいた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
この汽車は私のために香木かうぼくいてく」こんな返電を大連たいれんへ打つた。石炭を使はないで薪を用ひるのは次の国境迄ださうである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
風呂のき口から風呂場へ通じるくぐり戸が又五六寸開いていて、湯に漬かっている妙子の肩から上の姿が、隙間すきまからちらちら見えるので
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
落葉をく火で巻煙草をつけ、霧のなかに紛れこんでゆく白い煙りをながめながら、間もなく冬がくる、とつぶやくのである。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
蒸汽船とはいえ蒸汽は百馬力ヒュルプマシーネと申して港の出入に蒸汽をくばかり航海中はただ風を便りに運転せねばならぬ。
咸臨丸その他 (新字新仮名) / 服部之総(著)
栃は厄介やっかいなものになってしまい、場ふさげで、値もなくなったから、切り倒していてしまって、後へ杉苗とか桐苗を植えるような始末で
昔は大きな火鉢に炭火を温かにいていたのが、今はすすけた筒形の妙なストーブのようなものが一つ室の真中に突立っていた。
雑記(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
母が一人でめしいたりおさいこしらえたりして五人の小供の世話をしなければならぬから、中々教育の世話などは存じがけもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
紙幣さつきつけに使うようなもので勿体もったいないと言ったそうだ。僕達は憤慨した。あの禿げ頭のいる間はもう母校に寄りつかないと決心した。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
夕闇ゆうやみの中に泉邸の空やすぐ近くの焔があざやかに浮出て来ると、砂原では木片を燃やして夕餉ゆうげしをするものもあった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ごはんはなんだかあまりうまくけていなかったようですが、でも、三人はそのおいしさが一生涯わすれられないほどでした。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
天井裏のような処まで来ると、そこにある安ストーブの前に椅子を二つ持って来て並べながら徳市にストーブをけと命じた。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そして、牧夫たちはそのき口の前に車座になって腰を据えていた。紀久子はその中央の火に近いところへ、席を空けられた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
れている大野順平は夜道のためにたいまつを持っていた。ガンビの白い樹皮をまるく巻きあげ、先端から火をくのである。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
奥へ行ったかと思うと、直ぐに出て来て、「洋室は煖炉ストオブいてございませんから、こちらへ」と云って、赤い緒の上草履をそろえて出した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
すると良寛さんは、下男のやうに、そこの家の庭を掃いたり、赤ん坊の守をしたり、時には風呂ふろいたり、そんなことまでするのですな。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
しかし、その心は既に神聖な祭壇に捧げられて、周圍には神火がそなへられてあるのです。最早間もなく犧牲としてかれる他はないのです。
鳴尾君と私は始は二人かわりばんこに飯をいたが、そのうち私は横著を極め込んで、いつのまにか鳴尾君ひとり女房役に廻るようになった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
康頼 しかしあれには二首の歌がりつけてあります。故郷こきょうをしたう歌が。心あるものはまさかいてしまいはしますまい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼はそこで新しい酒樽の木の香を嗅いだり、ふんどし一つで、火の入った酒のき出しを手伝ったりした。彼の肉体にはぐんぐん力がはいってきた。
青草 (新字新仮名) / 十一谷義三郎(著)
もと彼には、不運だつた父親を持つた息子むすこに特有な、自分の未知の生涯に対する負けん気が潜んでゐた。それがいまきつけられたのだつた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
厳冬の一夜佐藤氏は演説に出で、予一人二階の火もかざる寒室に臥せ居ると、吹雪しきりに窓をって限りなくすさまじ。
僕はすぐ火をきつけて、羊皮紙のあらゆる部分を強い熱にあててみた。初めは、ただ髑髏のぼんやりした線がはっきりしてきただけだった。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
「こうやって火をいていると夜でもちっとも淋しくないでしょう。」僕はふいと万里子さんのほうを向いて言葉をかけた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
久さんのおかみは、び心に婆さん宅のへっついの下などきながら、喧嘩の折節おりふし近くに居合わせながら看過みすぐした隣村の甲乙を思うさま罵って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
遠洋へ乗り出してくじらの群を追ひ廻すのは壮快に感ぜられるが佃島つくだじま白魚舟しらうおぶねかがりいて居る景色などは甚だ美しく感ぜられる。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
みかどは、てん一番いちばんちかやま駿河するがくににあるときこして、使つかひの役人やくにんをそのやまのぼらせて、不死ふしくすりかしめられました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
もう、やがて雪がやつて來るが、それにとぢ籠められては、山へのぼつて、でも切るより仕かたがなくなるさうだ。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
私は破れた行李こうりを出して、その中に座蒲団を敷き母をその中に坐らせる。早く夜明けが来ればいいのだ。七輪に木切れをき部屋をあたためる。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)