炎天えんてん)” の例文
夏の炎天えんてんではないからよいようなものの跣足すあしかぶがみ——まるで赤く無い金太郎きんたろうといったような風体ふうていで、急足いそぎあしって来た。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鳥もけものも、みなえ死にじゃ人もばたばたたおれたじゃ。もう炎天えんてん飢渇きかつために人にも鳥にも、親兄弟の見さかいなく、この世からなる餓鬼道がきどうじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かんかん炎天えんてんにつツつて、うしがなにかかんがえごとをしてゐました。あぶがどこからかとんできて、ぶんぶんその周圍まはりをめぐつてさわいでゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
などと、いやうも氣恥きはづかしいが、其處そこたふれまいと、一生懸命いつしやうけんめい推敲すゐかうした。このために、炎天えんてん一滴いつてきあせなかつたのは、あへうた雨乞あまごひ奇特きどくではない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これに従事するとなると丁稚小僧でっちこぞうとなり自転車で走ることも、炎天えんてんのもと、裸足はだしで畑に草取りするのも、自動車で会社に出勤することも含まれ、範囲が非常にひろくなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そこで、みみずはつちってき、なつ炎天えんてんに出ると、やけんでしまうのだそうです。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
して相待居あひまちをりしに付直樣すぐさま案内あんないとして六月廿日に淺草寺あさくさでら明卯刻あけむつかねと共に立出たちいで炎天えんてんをもいとはず急ぎ武州ぶしう埼玉郡さいたまごほり杉戸宿名主太郎左衞門方へちやく早速さつそくに道具屋渡世林藏を呼出せし所他行たぎやうおもぶきにて女房にようばう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
唐辛子花咲く頃やほのぼのと炎天えんてんうねひずむ人かげ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
炎天えんてん東海道とうかいどうを西へ馳す。
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
炎天えんてんうみなまりかして、とろ/\とひとみる。かぜは、そよともかない。斷崖だんがいいはしほけづつてしたす。やまにはかげもない。くさいきれはまぼろしけむりく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この炎天えんてんにさらされて、くこともならず、かへりもされず、むなしく、うまはのんだくれ の何時いつだかれない眼覺めざめをまつて尻尾しつぽあぶはひとたわむれながら、かんがへました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
唐辛子花咲く頃やほのぼのと炎天えんてんうねひずむ人かげ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なつ炎天えんてんにやけてんでしまえ。」
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
眞夏まなつ日盛ひざかりの炎天えんてんを、門天心太もんてんこゝろぷとこゑきはめてよし。しづかにして、あはれに、可懷なつかし。すゞしく、まつ青葉あをば天秤てんびんにかけてになふ。いゝこゑにて、ながいてしづかきたる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
二日ふつか午後ごごけむり三方さんぱうながら、あきあつさは炎天えんてんより意地いぢわるく、くはふるに砂煙さえん濛々もう/\とした大地だいち茣蓙ござ一枚いちまい立退所たちのきじよから、いくさのやうなひとごみを、けつ、くゞりつ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くさむしれ、馬鈴薯じやがいもれ、かひけ、で、げつくやうな炎天えんてんよる毒蛇どくじやきり毒蟲どくむしもやなかを、鞭打むちう鞭打むちうち、こき使つかはれて、三月みつき半歳はんとし一年いちねんうちには、大方おほかたんで
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
晝間ひるま納屋なやなか鎭守ちんじゆもり日蔭ひかげばかりをうろつくやつ夜遊よあそびはまをすまでもなし。いろしろいのを大事だいじがつて、田圃たんぼとほるにも編笠あみがさでしよなりとる。炎天えんてん草取くさとりなどはおもひもらない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
弓杖ゆんづゑ炎天えんてんいはほいて、たまなす清水しみづをほとばしらせて、かわきあへぐ一ぐんすくつたとふのは、けだ名将めいしやうことだから、いま所謂いはゆる軍事衛生ぐんじゑいせい心得こゝろえて、悪水あくすゐきんじた反対はんたい意味いみ相違さうゐない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……極暑ごくしよみぎりても咽喉のどかわきさうな鹽辛蜻蛉しほからとんぼ炎天えんてん屋根瓦やねがはらにこびりついたのさへ、さはるとあつまど敷居しきゐ頬杖ほゝづゑしてながめるほど、にはのないいへには、どの蜻蛉とんぼおとづれることすくないのに——よくたな
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
てつぼうつゑをガンといつて、しりまくりのたくましい一分刈いちぶがり凸頭でこあたまが「麹町かいぢまち六丁目ろくちやうめやけとるで! いまぱつといたところだ、うむ。」と炎天えんてんに、赤黒あかぐろい、あぶらぎつたかほをして、をきよろりと、かたをゆがめて
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いな炎天えんてんなさけあり。常夏とこなつはなけり。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)