あした)” の例文
いや、この家も以前には浮かれ女を数多召抱えて、ゆうべに源氏のきみを迎え、あしたに平氏の殿を送られたものじゃが、今ではただの旅人宿りょじんやど
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
よる燭火ともしびきて、うれしげなあしためが霧立きりたやまいたゞきにもうあし爪立つまだてゝゐる。はやぬればいのちたすかり、とゞまればなねばならぬ。
するとくまさんが、『發句ほつくツてそんなもんですかい、ぢやわけアねえ』とふので、『たまのでんぐりかへるあしたかな』とやりだす。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
前述の通り、『淮南子』に〈鶏まさにあしたならんを知り、鶴夜半を知る〉とあり、呉の陸璣は、鶴は鶏鳴く時また鳴くといった。
大なるは七八けん、種々のかたちをなし大小ひとしからず、川のひろき所とせまき処とにしたがふ。あしたさけはじめてゆふべにながれをはる。
又年神を別に祀りながら尚あした「若えびす」を迎へる風のある如きは、常世神の異訳せられた名称なる事を明らかにしてゐる。
うらやまずあしたよりくるるまで只管ひたすら米をつきつぶにてもむだにせず其勤め方信切しんせつなりければ主人益々悦び多くの米も一向に搗減つきへりなく取扱ひ夫より其年の給金きふきん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
注ニ寒甚シク夜気霧ノ如ク木上ニ凝ル。あしたニ起キテコレヲレバ雪ノ如シ。斉人コレヲ霿淞トイフ。詩仏ノコノ作アルイハ南豊ノ詩ト駢伝へんでんスベキ也。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「およそ朝廷みかどの人どもは、あしたには朝廷に參り、晝は志毘がかどつどふ。また今は志毘かならず寢ねたらむ。その門に人も無けむ。かれ今ならずは、謀り難けむ」
さきにこれを繰つりしは、我某省の官長にて、今はこの絲、あなあはれ、天方伯の手中に在り。余が大臣の一行と倶にベルリンに歸りしは、恰も是れ新年のあしたなりき。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
あしたに稽古の窓にれば、垣をかすめて靡く霧は不斷の烟、ゆふべ鑽仰さんがうみねづれば、壁を漏れて照る月は常住じやうぢゆうともしび、晝は御室おむろ太秦うづまさ、梅津の邊を巡錫じゆんしやくして、夜に入れば
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
さるの年に人間が生れたから伸で六番目だから六に候。この間のあしたは取消故併せて御吹聴に及候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
太宰府に残って、観世音寺造営に従っていた沙弥満誓さみのまんぜいから「真十鏡まそかがみ見飽みあかぬ君におくれてやあしたゆふべにさびつつ居らむ」(巻四・五七二)等の歌を贈った。それにこたえた歌である。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
藤原が右京の屋敷を出たのもの女の為に多くの金をつかい果し今は困窮してあしたに出てゆうべに帰る稼ぎも、女房にょうぼや母をすごしたいからだ、其の夫の稼いだ金銭をくすねて置けばこそ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あした呉客ごかくの夫人となり、くれ越商ゑつしやう小星せうせいとなるも、あにことごとく病的なる娼婦型の女人と限るけんや。この故に僕は娼婦型の婦人の増加せる事実を信ずる能はず。いはんや貴問に答ふるをや。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
幸福さいはひ多かるべきかな舟の上の活計みすぎや、日に/\今朝の如くならんには我は櫓をとり舵を操りて、夕の霧、あしたの潮烟りが中に五十年の皮袋を埋め果てんかなと我知らず云ひ出づれば
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
そのあした先づ目に觸れし街の有樣、その彩色したる活畫圖を、當時の心になりて寫し出さむには、いかに筆を下すべきか。少しく爪尖あがりになりたる、長き街をば、すべて花もておほひたり。
くてあしたくれをさむ。すべ一七日いちしちにちじゆつるとしようし、でて昌黎しやうれいたいして、はじめてぢたるいろあり。いはく、うらむらくはせつおそきこと一月ひとつきなり、ときすでふゆにしておもふがまゝならずと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
父母ちちはは寿詞よごとまうさくとしあした仰ぎまみえむ視力早や無し
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あしたに道を聞いて夕べに死すとも可なり」
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ゆふべゆふべは壯大のあしたを夢み
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
とらの日のあした鍛冶かじとく起きて 翁
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
春のあしたに ひびきます
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
そこで『立派りつぱなユーモリスト』なるしぶ先生せんせいこれして、『世界中せかいぢうのひつくりかへるあしたかな』とやつたんだ。どうだわかつたか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
ロレ 灰色目はひいろめあした顰縮面しかめつらよるむかうてめば、光明ひかりしま東方とうばうくもいろどり、げかゝるやみは、かみまへに、さながら醉人ゑひどれのやうに蹣跚よろめく。
さきにこれをあやつりしは、わがなにがし省の官長にて、今はこの糸、あなあはれ、天方伯の手中に在り。余が大臣の一行と倶にベルリンに帰りしは、あたかも是れ新年のあしたなりき。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
またその神詔りたまはく、「明日あすあした濱にいでますべし。易名なかへみやじり獻らむ」とのりたまふ。かれその旦濱にいでます時に、鼻やぶれたる入鹿魚いるか、既に一浦に依れり。
ヘブリウの異伝には、アスモデウス身を隠してソロモン王の妃に通ぜしに、王その床辺に灰を撒布し、あしたに鶏足ごとき跡を印せるを見て、鬼王の所為しょいを認めたりという。
嗚呼劫火烱然として一たび輝けば、大千あしたす、天地又何の常か之れあらん、想ふに彼の功業を竹帛に留めて盛名の※りなきを望むものは、其の痴之れに等しきを得んや。
人生終に奈何 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
現代思潮の変遷はその迅速なること奔流ほんりゅうもただならない。あしたに見て斬新となすものゆうべには既に陳腐となっている。槿花きんかえい秋扇しゅうせんたん、今は決して宮詩をつくる詩人の間文字かんもじではない。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
朝の氣と暮の氣との差は、二千餘年前の孫子さへ道破して居る。あしたの氣のことは孟子も説いてゐる。人の朝の氣は實に張つてゐるのである。天地の陽性の氣に影響されて然るのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ゆふべゆふべは壮大のあしたを夢み
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
かれ朝目く汝取り持ちて天つ神の御子に獻れと、のりたまひき。かれ夢の教のまにま、あしたにおのが倉を見しかば、まこと横刀たちありき。かれこの横刀をもちて獻らくのみ
隱居いんきよ物識ものしりぶつて『新玉あらたまとしちかへるあしたかな』づこんなふうふものだと作例さくれいしめす。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
父祖ふそ十代の御恩ごおんを集めて此君一人にかへし參らせばやと、風のあした、雪のゆふべ蛭卷ひるまきのつかのも忘るゝひまもなかりしが、思ひもかけぬ世の波風なみかぜに、身は嵯峨の奧に吹き寄せられて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
桃符とうふをその傍に挿む、百鬼これを畏る〉と『荊楚歳時記』に載せ、註に董勛いわく、今正臘のあした、門前、烟火桃神をし、松柏を絞索し、鶏を殺して門戸に著け、疫を追うは礼なり。
疑へば疑はしきものとこそ覚え侍れ、笑ひも恨みも、はた歓びも悲みも、夕に来てはあしたに去る旅路の人の野中なる孤屋ひとつや暫時しばし宿るに似て、我とぞ仮に名をぶなるものの中をば過ぐるのみ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
足の糸は解くによしなし。さきにこれをあやつりしは、わがなにがし省の官長にて、今はこの糸、あなあわれ、天方伯あまがたはくの手中に在り。余が大臣の一行とともにベルリンに帰りしは、あたかもこれ新年のあしたなりき。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
何やら知らぬ小禽ことりさえずりは秋晴のあしたに聞くもずよりも一層勢が好い。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ボルネオのシイダヤク人はタウ・テパン(飛頭蛮ろくろくび)を怖るる事甚だし、これはその頭が毎夜体を離れ抜け出でて、夜すがらありたけの悪事を行い、あした近く体へかえるので里閭りりょこれと交際を絶ち
吾人はおのづからにしてあしたに起き出で、暮に歸り休みたいのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
然レドモ東西隔絶スルコト千里余ナリ。ノ羽族ノ序ヲヒ影ヲつらネテ飲啄いんたく相離ルヽコトナキガ如クナルコト能ハズ。悲ミ中ヨリ生ジ老涙さいニ交ル。コレガタメニ竟夕きょうせきやすカラズ。坐シテ以テあしたヲ待ツ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それから全くの浪人となってあしたに暮をはからずという体だったが、奇態に記憶のよい男で、見る見る会話がうまくなり、古道具屋の賽取さいとりしてどうやらこうやら糊口ここうし得たところが生来の疳癪かんしゃく持ちで