“後:おく” の例文
“後:おく”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花28
中里介山25
夏目漱石19
夢野久作10
木暮理太郎7
“後:おく”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 伝説・民話[昔話]30.0%
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション13.2%
歴史 > 地理・地誌・紀行 > 日本10.3%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
おくれて帰るのが母や兄にすまないごとく、少しも嫂に肝心かんじんの用談を打ち明けないのがまた自分の心にすまなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兵馬はおくれじと和尚について走りました。あまりのことに、兵馬は和尚がどこへ行こうとするのだか尋ねる気にもなりません。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兵馬はそのことを奇なりとしました。練兵館の鬼歓ともいわれる者が、九州地方で脆くもおくれを取ったとは聞捨てにならない。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
早や内へ入るものがあって、急に寂しくなったと思うと、一足おくれて、暗い坂から、——異形いぎょうなものが下りて来た。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山人や海人など、地主側の同化の機におくれていた人々と里人との間に、接触が多くなればなる程この問題は頻繁に起って来る。
「可哀想なことをしました。銘々めいめい身一つで逃げるのが精一杯で、竹松が逃げおくれたことに気がつかなかったのです」
雨に風に散りおくれて、八重に咲く遅きを、夜にけん花の願を、人の世のともしびが下から朗かに照らしている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ハハハハわたしの及第報告は二三日おくれただけだが、父さんのは一週間だ。親だけあって、私より倍以上気楽ですぜ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時間から云って、平常より一時間以上もおくれていたその昼食は、ぜんむさぼる人としての彼を思う存分に発揮させた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
節子はいそいそと支度した。子供等がき立てる中で新しい白足袋しろたびなぞを穿いて、一番おくれて家を出た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪はその紙に包んだ女持の帕子ハンケチを眺めながら、「汽車がおくれて、大分停車場で待ちましたよ——三十分の余も」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼女……私は仮りにそう呼ばせて頂きます……彼女は、すこしおくれて森に這入ったために生け捕りにされたものと見えます。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おかみさんは洋傘をおさしになつた片手に、びんおくれ毛の下るのを気になさりながら、そろ/\歩いてお行きになる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
もし率直にいうことを許されるならば、この方面は日本の学界においても進歩の最もおくれているものであるといわねばなるまい。
こんな小さな貧乏な島はなく、島民は文化に立ちおくれて、逼迫ひっぱくした生活に悩んでいることを聞かされていました。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
少し離れた奥にいて逃げおくれた四、五頭の中には、小石の一つ二つを横腹か尻のあたりに見舞われたのもあったように想う。
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
手術後の夫を、やっと安静状態に寝かしておいて、自分一人下へ降りた時、お延はもう約束の時間をだいぶおくらせていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
時雄はさる画家の描いた朝顔のふくを選んで床に懸け、懸花瓶けんかびんにはおくざき薔薇ばらの花をした。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
自ら未成の旧稿について饒舌じょうぜつする事の甚しく時流におくれたるが故となすも、また何のさまたげがあろう。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「土曜日であつたから、おくれて駄目よ——空知支廳長の宅へも行つたが、來客が多いので、ゆツくり話も出來なかつた。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
こんどに限っては、終始、秀吉のほうが何となく、その序戦の前からすべてにおくれをとっていたのも事実である。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おくれ先立つ娘の子の、同じような洗髪を結んだ、真赤な、幅の広いリボンが、ひらひらとちょうが群れて飛ぶように見えて来る。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
その朗らかな或日曜の午後に、宗助はあまり佐伯へ行くのがおくれるので、この要件を手紙にしたためて番町へ相談したのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は黙ってあるきながら横眼に覗くと、娘の島田はむごたらしいように崩れかかって、そのおくれ毛が蒼白い頬の上にふるえていた。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
気が気でないのは、時がおくれて驚破すわと言ったら、赤い実を吸え、と言ったは心細い——一時半時いっときはんじを争うんだ。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい。こちら様のお荷物はなか/\重いと云っておりましたから、だん/\におくれてしまったのでございましょう。」
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ほんにさうだつけなまあ、おくれつちやつたつけなあ、わすれてたつけが大丈夫だえぢよぶだんべかなあ」といつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
上州方面では古い地誌の編纂がなかったので、はるかおくれて個人の手に成った安永三年の序ある『上野国志』に、
尾瀬の昔と今 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
とても悦子を愛するようにはその児を愛しられそうもなく思えるので、それを考えると、婚期におくれていると云うことも
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
とその中年増が、自信の無い眼付をして、盃を所望した。世におくれても、それを知らずにいるような人で、座敷を締める力も無かった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「オッと来たり、その棺桶は門口へおろいとけ。上から花輪をば、のせかけとけあ、おくれた奴の目印になろう。盗む者はあるめえ」
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
余は出版の時機におくれないで、病中の君の為に、「土」に就いて是丈これだけの事を言い得たのを喜こぶのである。
我止まりて見しにふたりの者あり、我に追及ばんとてしきりにいらつ心を顏にあらはせども荷と狹き路のためにおくれぬ 八二—八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
太子はいつまで働いてもらちが明かず、阿房あほらしくなって妃におくるる数日、これまた帰国し、サア妃を打とうと取り掛かる。
しばらくの別れを握手に告ぐる妻がびんおくに風ゆらぎて蚊帳かやの裾ゆら/\と秋も早や立つめり。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
政子は何方かと言へば肥つてゐるので、坂に来ると、いくらかおくれ勝になつたけれども、多喜子は少しも疲れたやうにも見えなかつた。
父親 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
「うん、まだ——」氷峰も隔てをゆるめて、「九月一日に初號を出すつもりであつたのが、多少おくれるかも知れん。」
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「さらば行こう。おくせに北のかたへ行こう」とこまぬいたる手を振りほどいて、六尺二寸のからだをゆらりと起す。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私がKよりおくれて帰る時は一週に三度ほどありましたが、いつ帰ってもお嬢さんの影をKのへやに認める事はないようになりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いま大日本帝國だいにつぽんていこく占領地せんりようちなり、おくれてこのしま上陸じやうりくするもの
それでかれおくれながらも子供こどもいてあるかずにはられなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
如何様いかようにもしてこの鎖国の日本をひらいて西洋流の文明に導き、富国強兵もって世界中におくれを取らぬようにしたい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
が、例を引き、因を説きもうひらく、大人の見識を表わすのには、南方氏の説話を聴聞することが少しばかりおくれたのである。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
君らと同じように大学へ入って試験のたびに落第して三年もおくれてわずかに卒業し得たのは全く脳が鈍いからだ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それだから雀は親孝行の報いで、一年中里にいて食物が最も多く、時鳥はおくれて来た故に春の末にやっと出て来る。
柳髮りうはついつも高島田たかしまだむすげて、おくすぢえりにださぬたしなみのよさ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おくれた人達を待ちながら、記載を済すつもりでポケットに手をやると、大事な虎の子の手帳がない、これには全くがっかりしてしまった。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
おくれて到着した山田写真師は、雲の変化に伴うて同じく変化する山容の奇に憧れて、彼方此方と撮影に余念がない。
葉子は三人の前に来ると軽く腰をまげておくをかき上げながら顔じゅうを蠱惑的こわくてきなほほえみにして挨拶あいさつした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕は一度振り返って見たが、二人はおくれた事にいっこう頓着とんじゃくしない様子で、ごうも追いつこうとする努力を示さなかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十一時に式があるはずのところを少し時間がおくれたため岡田は太神宮の式台へ出て、わざわざ我々を待っていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白仁さんのところへ暇乞いとまごいに行ったので少しおくれて着くと、スキ焼を推挙した田中君がもう来ていた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はみんなから一足ひとあしおくれて、鴨居かもゐうへに両手がとゞく様なのびを一つした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
年齢は私生児の事だから届出がおくれているかも知れないが、多分、尋常校の三四年程度であろうという事が帰朝当時から見当が附いていた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
社会性と処世との配慮はややおくれてくるべきものであり、それが青春の夢を食い尽くすことは惜しむべきである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
されど汝が、待つことにより、たふとき目的めあておくれざるため、我は汝のかく愼しみて敢ていはざるその思ひに答ふべし 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
今の政府はただ力あるのみならず、その智恵すこぶる敏捷びんしょうにして、かつて事の機におくるることなし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
おくれたり、と玄関に走せ出で、やつと車を見出して、急げ/\と車夫を急がし、卅分後に兄に窮屈千万なる「余が最初の燕尾服」を脱ぎぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
が、実をいうと、日本人の現在の状態はそこまでいっていないので、むしろおくればせに現代文化の世界に入り込むことに全力を尽している。
「時間がおくれるともやが晴れてしまう」と熊八氏が心配していたが、山路が開けて一帯の谷を見渡した時に、
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
授業の都合つごうで一時間目は少しおくれて、控所へ帰ったら、ほかの教師はみんな机を控えて話をしている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔のような長い釣鐘マントはもう流行おくれになってしまって、オーバーを着ていなければトテモ幅が利かない。
うるうのあった年で、旧暦の月がおくれたせいか、陽気が不順か、梅雨の上りが長引いて、七月の末だというのに、畳も壁もじめじめする。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時々道草を食っておくれては、あわてゝけ出しおっついて母馬はは横腹よこはらあたまをすりつける様にして行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
私は羽織の紋が余り大きいから流行におくれぬように小さくした位それほど流行というものは人を圧迫して来る。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「青木さんがあれを私に下さると仰るのでございますよ。」と、おくみは箸を置いて、おくればせにかう言つた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
さまでに時刻おくれては、枕に就くととりうたわむ、一刻の価値あたい千金と、ひたすら式を急ぐになん。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
華麗はなやかべにの入りたる友禅の帯揚おびあげして、びんおくれのかか耳際みみぎは掻上かきあぐる左の手首には
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たとい、これを彼等「江戸ッ子」が息を吹き返しつつある一時の現象と見ても、最早もはや非常な立ちおくれになっていることはたしかである。
今御身が痍を見るに、時期ときおくれたればやや重けれど、今宵こよいうちには癒やして進ずべし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
忘れ物でもしたように振返ると、宇津木兵馬は、ずっとおくれて路のはたに、行商の女の一人としきりに話し合っているのを認めましたから、
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
我意馬をはしらしめて、その往くところに任するときは、我はかの友だちに立ちおくるゝ憂なかりしなり。
女王が親しく手もとに使っていた女房たちで、たとい少しの間にもせよ夫人におくれて生き残っている命を恨めしいと思って尼になる者もあった。
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
おくれたおんなひとは、はたりながら、田圃道たんぼみちはしってきました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
痩せこけた頬へ櫛卷きにした髮のおくが振りかゝつて、大きな圓い眼は血走つてゐるやうに思はれた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おくを掻き上げるか弱い手、ホッと溜息をく様子までが、跫音あしおとを忍ばせたガラッ八には、手に取るごとく見えるのです。
奴は凱歌かちどきの喇叭を吹き鳴らして、おくれたる人力車をさしまねきつつ、踏み段の上に躍れり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当り前の頭があって、相当に動いて居りさえすれば、君時代におくれるなどいうことがあるもんじゃないさ。
浜菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
おくれて行くものは後れて帰るおきてか」といい添えて片頬かたほに笑う。女の笑うときは危うい。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「時間におくれると悪いって、つい今しがた出掛けました」といった奥さんは、私を先生の書斎へ案内した。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時、おくればせにせつけた見慣れない大男——刀を横たえ、息せききって来合わせたのをお角が見ると、ははあ、相撲取だと思いました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかるに今は戌宮に居る、かく一宮ずつ星宿の位置がおくれて来たのを勘定すると、周時代に正しく星宿の位置に拠って十二辰を定めたのだとある。
次にここに補って置きたいのは、翻訳のみに従事していた思軒と、おくれて製作を出した魯庵ろあんとだ。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
素知らぬ顔をして横目もくれず登って行く南日君を駆抜いてやろうと思うが、かえっおくれる許りだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
また途中どこで暇取ひまどったため、宗助よりおくれて京都へ着いたかを判然はっきり告げなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と叔母に云はれるのと一緒に声を飲んだ子がをかしくて鏡子は笑ひ出したく思つた。おくれて来た花木が、
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そこで断言して、ねぎらいかえそうとした時に、末のはしためが一人、おくればせに、ここへ駈けつけて、
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
旧幕時代を慕つて明治の文明をにくむ時勢おくれの老人も、若しくは算盤そろばんを携へて、開港場に奔走する商人も、市場、田舎、店舗、学校
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
五条京極きょうごく荻原新之丞おぎわらしんのじょうと云う、近きころ妻におくれて愛執あいしゅうの涙そでに余っている男があって
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
更に遡って江戸開府より十年とはおくれていない三浦浄心の『慶長見聞集』には、次のような記事がある。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
いいおくれてはかえって出そびれて頼むにも頼まれぬ仕誼しぎにもなることと、つかつかと前へ出た。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのうちに中根も見えた。中根は一番おくれてやって来て、義雄の居るところで岸本とも一緒に成った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そんならついて来い。葡萄などもうてちまへ。すっかりくちびるも歯も紫になってる。早くついて来い、来い。おくれたら棄てて行くぞ。」
(新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
百草の花のとじめと律義りちぎにも衆芳におくれて折角咲いた黄菊白菊を、何でも御座れに寄集めて小児騙欺こどもだまし木偶でく衣裳べべ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
然しながおくがあつてもとがめる事のない気楽な日本へ早く帰りたいと思つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
われはこれに從はんとして、羽搖はたゝきするごとにおくれ、その距離千尋ちひろなるべく覺ゆるとき、忽ち又ララとおん身との我側にあるを見き。
しかるに私は瘧が落ちて間もないのだけれど、さほど弱りもせず、他の人々に比しておくれずに歩いた。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
「かたり申そうぞ。ただし物語に紛れて遅れては面目なかろう。翌日あすごろはいずれもさだめて鎌倉へいでましなさろうに……おくれては……」
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
呼吸をしている証拠として、額から、高い鼻の脇を通って、頬にかかっているおくれ毛が、揺れていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……手にもむすばず、茶碗にもおくれて、浸して吸ったかと思うばかり、白地の手拭の端を、つぼむようにちょっとくわえてしおれた。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)