とう)” の例文
いましも、ふとあねが、この不思議ふしぎたかとういただきまりますと、おもいなしか、そのとう手招てまねぎするようながしたのであります。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
じつは、あの犬どもは魔法まほうをかけられておりまして、あのとうのなかにあるたくさんのたからもののばんをしていなければならないのです。
「うそでしょう。……おやおや、みょうとうがある。それからまんじゅうみたいなものが、あちこちにありますね。あれは何ですか」
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
老人ろうじんつえると、二人は一番高いとう屋根やねにあがりました。王子はまだこんな高いところへあがったことがありませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
だが、じぶんの声が、ガーンとくらいとうの内部へひびいただけで、もう向こうにいる竹童は、それきり、かれの相手になってこなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその日はずうっと西の方の瀬戸物のとうのあるあたりまで行ってぶらぶらし、その晩十七夜のお月さまの出るころ海へもどって睡ったんだ。
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
五月六日の朝、ガンのむれが朝霧あさぎりをついて、メラールの上を飛んでいくと、湖の上に高いとうや、長いまどガラスのある家々が見えてきました。
巨男おおおとこの仕事は、どんどん進んでいきました。夜ふけでも、つみ上げられたとうの上から、つちの音がみやこの空にひびきました。
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
でもユッセルの町は子どもの目にそんなに美しくはなかったし、それに町のとうや古い建物たてものなどよりも、もっと気になるのはくつ屋の店であった。
するうち、下のへやから上のへやへと、かけあがって行って、とうとうとうのてっぺんの、ちいさなへやにはいりました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
お寺のかねがきこえて、おなじみの高いとうと、大きな町が見えてきました。それこそ、ふたりがすんでいた町でした。
そのぎにふるいのは奈良なら西にしにある藥師寺やくしじとう、それから聖武天皇頃しようむてんのうころもの奈良ならにちょい/\のこつてをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
4 山の朱い寺のとうに灯がとぼった。島の背中から鰯雲いわしぐもいて、私はうたをうたいながら、波止場の方へ歩いた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
とうさわあたりからはぽつぽつ桜が見え出した。山桜もあるが、東京辺のとは少し違った種類の桜もあるらしい。
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ともしがついて夕炊ゆうげのけむりが家々から立ち上る時、すべてのものが楽しく休むその時にお寺の高いとうの上からんだすずしい鐘の音が聞こえておにであれであれ
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
この稿は彼が米艦にとうじて去らんとするに際し、これを高原君におくりて紀念となしたるものなりという。松陰が横井小楠しょうなん翁に送りたるは、横井時雄氏の所蔵に拠る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
銀色にかがやく、直径五メートルもある大円盤の一つが、神奈川県、丹沢山ととうみねの中間、きこりさえはいったことのない、大森林の中へ墜落したというのです。
宇宙怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
四月の空はうるわしく晴れて、遠くに見ゆる伽藍がらんとうが絵のようにかすんで見えました。早くも観衆かんしゅうは場外にあふれ、勇ましい軍楽隊の合奏がっそうが天地にひびわたりました。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
廣小路ひろこうぢよりながむるに、石段いしだんのぼひとのさま、さながらありとうつるがごとく、はな衣類きもの綺羅きらをきそひて、こゝろなくには保養ほやうこのうへ景色けしきなりき
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
船頭はゆっくりゆっくりいでいるが熟練はおそろしいもので、見返みかえると、浜が小さく見えるくらいもう出ている。高柏寺こうはくじの五重のとうが森の上へけ出して針のようにとんがってる。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
欄干らんかんって見あげると、東南につらなるとうみねや観音山などが、きょうは俄かに押し寄せたように近く迫って、秋の青空がいっそう高く仰がれた。庭の柿の実はやや黄ばんで来た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ありとうを造るような遅〻たる行動を生真面目きまじめに取って来たのであるから、浮世の応酬おうしゅうに疲れたしわをもうひたいに畳んで、心の中にも他の学生にはまだ出来ておらぬ細かい襞襀ひだが出来ているのであった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けれど、まだ二、三意地悪いじわるいからすがのこっていて、どこへもらずに、とう屋根やねまって、けわしいをねらっていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
王子おうじうえのぼってたいとおもって、とう入口いりぐちさがしたが、いくらさがしても、つからないので、そのままかえってきました。
都の人びとは、ねる前に、きっとまどをあけて巨男おおおとこの働いているとうの上をみました。そこには、星と同じようなの光が、またたいていたんです。
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
高い高い肩車かたぐるまをこしらえて、とうのようになり、それがあっちからもこっちからも集って、とうとう小猿の林のようなものができてしまいました。
さるのこしかけ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見れば、並木道のはずれには、赤れんがの破風はふとうがそびえていて、それについているかざりがキラキラとかがやいています。それは大きなおしろです。
そのふしぎな人物をなんとかして地上へおろしてみたら、あるいは、日吉ひよしとうの上にいた、奇怪きかいな人間のなぞもとけようかと考えたのであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(ああ、分かった。このまえ、ほら、あの研究所のとうさ、かみなりさまのためにぶっこわされてから、心がけがすっかりかわって、やさしくなったんだろう)
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山腹の高いところに、ちょうどツバメののように、尼僧院にそういんが一つぽつんと立っています。ふたりの姉妹しまいが上のとうの中に立って、かねを鳴らしていました。
そういうわけで、しばらくすると、そとから見えるものは、お城のとうのてっぺんだけになりました。それも、よほど遠くにはなれてでなければ、見えないのです。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
あの法隆寺ほうりゆうじ金堂こんどう五重ごじゆうとう中門ちゆうもんなどが一番いちばんふるいもので、千何百年せんなんびやくねんながいあひだ木造もくぞう建築けんちくがそのまゝつたはつてゐるといふことは、世界せかいにもあまれいのないことです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
王子はうれしくてたまりませんでした。そして、しろの高いとうして老人ろうじんにいいました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
……梅子事すえの弟をれてとうさわ福住ふくずみへ参り居りそうろう処、水害のため福住はなみに押し流され、浴客よくかく六十名のうち十五名行方不明ゆくえふめいとの事にて、生死の程も分らず、如何いかんとも致し方なく
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしはいっしょうけんめい目を見張みはって、けむりやかすみの中にぼやけている屋根や鐘楼しょうろうとうなどのごたごたした正体を見きわめようとつとめていたとき、ちょうど親方がやって来た。
十字架は我〻の五輪ごりんとう同様なものです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、この不思議ふしぎたかとうだけは、なみにさらわれずにむかしのままにっていました。ひめ一人ひとりで、そのとういただきいていました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの下の古いとうのなかで、をあかすつもりがあるなら、あそこへいきなさい。だが、そのまえに注意ちゅういしておくが、いのちはないものと思いなさい。
「ちぇッ、やっぱり呂宋兵衛だ、どうして自由になりおったか、あれあれ、棟木の瓔珞に身をのばして、とうの屋根によじ登ろうとしておるのだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「王様の宮殿きゅうでんは、美しいけれど、大理石の建物たてものがないのは、玉にきずだとある旅人たびびともうしていました。大理石のとうでもたてられてはいかがですか?」
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
それから、このゴットランド島には、たくさんの公園こうえんや、高いとうをもった、古いおしろのある大きな荘園しょうえんもありません。
私の家は、そのとうの森と呼ばれる真暗な森と、玉川上水のあとである一筋の小川をへだてて向い合っていました。
三角形の恐怖 (新字新仮名) / 海野十三(著)
教会という教会のかねが鳴りわたり、高いとうからは、ラッパがき鳴らされました。兵士たちは、ひるがえる旗を持ち、きらめく銃剣じゅうけんを持って、立ちならびました。
アンヌねえさま(アンヌというのは、きょうだいのなまえでした。)アンヌねえさま、後生ごしょうです、とうのてっぺんまであがって、にいさまたちが、まだおいでにならないか見てください。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
あれた町が一つ、そこには古いおほりもあり、岩屋もあり、とうもあった。修道院しゅうどういんのあれたへいの中には、せみが雑木ぞうきの中で、そこここに止まって鳴いていた——これはセンテミリオン寺であった。
そして佛教ぶつきようさかんになつててからは御陵ごりよういつそう簡單かんたんになり、またのちには火葬かそうおこなはれまして、ちひさな御堂おどういしとう御陵ごりようてることになり、ことに武家ぶけ勢力せいりよくめるにいたつた時代じだいからは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「こんどはあのとうの上に行こう」
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それがら、とうも倒さな。」
風野又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
汽船きせんがいくとみえて水平線すいへいせんに、一まつけむりのぼり、おき小島こじまには、よるになると煌々こうこうとしてひかりはな燈台とうだいが、しろとうのようにかすんでいます。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき、王子おうじが馬にのってこの森のなかにはいってきて、このとうのそばをとおりかかりました。すると、それはそれは美しい歌声がきこえてきました。