よろ)” の例文
ひんよしとよろこぶひとありけり十九といへど深窓しんそうそだちは室咲むろざきもおなじことかぜらねど松風まつ ぜひゞきはかよ瓜琴つまごとのしらべになが春日はるび
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
母の病気に違ないと思ひ込んで、驚ろいて飛んで帰ると、母の方では此方こつちへんがなくつて、まあ結構だつたと云はぬ許によろこんでゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あはれだとおおもひなすつて、母様おつかさんがおあしめぐむで、肩掛シヨールせておやんなすつたら、ぢいさんなみだおとしてをがむでよろこびましたつて、さうして
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぼく今日けふまでをんなよろこばすべく半襟はんえりはなかつたが、むすめ此等これらしなやつたら如何どんなよろこぶだらうとおもふと、ぼくもうれしくつてたまらなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「それには、おてらはやしがいいよ。あすこには、やまがらも、こがらも、くるから。」と、せいちゃんが、いいました。正雄まさおは、いいたけはいるとよろんで、いえへもどってきました。
へちまの水 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よるなんかでも、あなたは毛色けいろがおくろいからはなあたま御飯粒ごはんつぶをくつつけてくちをあいてゐればねづさんはくろところしろいものがあるのでよろこんでべにるとべられるつていふぢやございませんか。
おもふに男心をとこごゝろたのみがたさよ周旋とりもちするとしてこととゝのふはうれしけれど優子いうこどのゝこゝろえたり三らうよろこびしとつたたまへとはあまりといへどむかしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
御米およねはこれを故意こいから小六ころく仕打しうちかともうたぐつた。しか自分じぶん佐伯さへきたいして特別とくべつ利害りがいかんじない以上いじやう御米およね叔母をば動靜どうせいみゝにしないはうを、かへつてよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
にとりつあさからぬおこゝろかたじけなしとて三らうよろこびしとたへたまほかならぬひと取次とりつぎことさらうれしければ此文このふみたまはりて歸宅きたくすべしとて懷中ふところおしいれつゝまたこそと
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけ小六ころく所置しよちける好機會かうきくわいが、もとめざるにさきだつて、はるともおのづからめぐつてたのをよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
青柳家あをやぎけかどまぬときなり、糸子いとこあいらしき笑顏ゑがほよろこびむかへて、あひらしき言葉ことばかけらるゝときには、みちそむかばそむ嗤笑ものわらひにならばなれ、君故きみゆへつるしんしからず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三四郎はすぐとこへ這入つた。三四郎は勉強家といふより寧ろ彽徊家ていかいかなので、割合書物を読まない。其代りあるきくすべき情景に逢ふと、何遍もこれをあたまなかあらたにしてよろこんでゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なにみねたかと安兵衛やすべゑ起上おきあがれば、女房つま内職ないしよく仕立物したてもの餘念よねんなかりしをやめて、まあ/\れはめづらしいとらぬばかりによろばれ、れば六でうに一けん戸棚とだなたゞ一つ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれども間接にどこかでそこに触れてもらいたい様子がありありと見えた。お延は従妹いとこよろこばせてやりたかった。と云って、後で自分の迷惑になるような責任を持つのはいやであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伯父おぢさまよろんでくだされ、つとめにくゝも御座ござんせぬ、此巾着このきんちやく半襟はんゑりもみないたゞものゑり質素じみなれば伯母おばさまけてくだされ、巾着きんちやくすこなりへて三すけがお辨當べんたうふくろ丁度てうどいやら
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
色光沢いろつやも殆んどもとの様に冴々さえ/″\して見える日が多いので、当人もよろこんでゐると、帰る一ヶ月ばかり前から、又血色けつしよくが悪くなりした。然し医者の話によると、今度のは心臓のためではない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ不圖ふと御米およね此所こゝいた消息せうそくかなければならないこといた。かれ俗用ぞくようしやうじたのをよろこぶごとくに、すぐかばんなかから卷紙まきがみふうぶくろして、御米およね手紙てがみはじめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
花紅葉はなもみぢうるはしく仕立したてむすめたちが春着はるぎ小袖こそでゑりをそろへてつまかさねて、ながめつながめさせてよろばんものを、邪魔じやまものゝあにうるさし、はやてゆけねとおもおもひはくちにこそいださね
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
代助と接近してゐた時分の平岡は、人にいてもらふ事をよろこぶひとであつた。いまでも左様さうかも知れない。が、ちつともそんなかほをしないから、わからない。否、つとめて、ひとの同情をしりぞける様に振舞ふるまつてゐる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)